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田中重雄「夜の配当」

 阿佐ヶ谷にて。「現代文学栄華館-昭和の流行作家たち」特集。63年、大映東京。
 田宮二郎のクールな男前ぶり、さっそうとした一匹狼ぶり、そのかっこよさを前面に押し出した、ピカレスク・ロマン。
 この映画を見るもの全員が、田宮二郎に、ああ、ほれぼれ。
 というのは、田宮二郎出演の大映東京作品に共通する。本作もまたその一編。男の盛りの、スタアの絶頂期の、田宮二郎の美質にのみ、奉仕する、大映東京その職人技。プログラム・ピクチャアの幸福なる一点豪華主義。その、一点二郎主義の魅力の面白さ。
 田宮二郎は大手衣料メーカーのサラリーマンだった。自分を退社に追い込み、その裏でのうのうと会社の金を横領して、愛人の角梨枝子に料亭の女将までやらせている、悪徳専務に復讐する。原作は梶山季之。
 トラブル・コンサルタントと称して、会社の内情を探らせ、新商品の商品名をいち早く商品登録したり、新工場予定地の一部を先に買い占めたり、つまりあとで高額に買い戻させるために。
 田宮の、そのいちいちの行動、物言いに、われわれ観客は喝采を送る。
 いっぽう、冷酷なる悪徳専務が、結局、おろおろ田宮の言いなりになる、その悪徳専務の専横ぶりが、これまた絶品の山茶花究。冷酷な悪党をやらせたら、山茶花の右に出るものもなし。このひとが、ヴォードビリアン出身というのだから、世の中はどこでどう間違えるか、わからないもので。
 何かで読んだのだが、山茶花は色紙に座右の銘を書くときは「非情」と書いたとか。いいなあ。
 専務の軽薄なる腰ぎんちゃくの文書課長に、早川雄三。これまた、どんぴしゃり。その他、高松英郎、見明凡太郎、伊藤光一、大山健二、中村隆などなどの、有名無名の大映東京専属脇役俳優たちが、要所要所をしめ、見事な大映東京プログラム・ピクチャアが構築されていく。
 お約束の流れ作業、いつものルーティン・ワークが、いつもながら、かくも魅力的な、一点二郎主義の映画を作っていく。素晴らしい。
●追記●億単位の宣伝費をかける新商品繊維ポリレン(今は、もう聞かれなくなった<夢の新繊維>ってやつで)の、商標登録が、発売5日前って。
 当時は、そんなにのんびりだったのか。だから、田宮二郎も先を越せたわけで。映画(または原作)の創作なのか。当時はそうだったのか。もちろん、今では、そんな商品発売するのか、おそらくしないだろうというのも含めて、ばんばん商標登録されている現状に。

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by mukashinoeiga | 2011-12-31 01:24 | 旧作外国映画感想文 | Comments(0)

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