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吉村公三郎「戦火の果て」

 京橋にて。「(再映)生誕百年 映画監督・吉村公三郎」特集。50年、近代映画協会=大映京都。
 ドラマティック吉村の面目躍如、快作愛憎ドラマ。
 若く、精悍な森雅之との相性も抜群で。森雅之、やはり、圧倒的に、男前。全盛期のみに許される、直球勝負の素晴らしさ。何も足さない、何も引かない、それでいて、素晴らしい。コンビ作「安城家の舞踏会」以上か。

 五年前までは軍港だった。
 アメリカ軍の空襲で壊滅、今は漁港として生まれ変わろうとしている。
 もと海軍軍人仲間が、四年かけて、空襲で廃船同様の旧軍小船艇を、遠洋かつお漁船「白鯨号」に改造再生して、処女出航は、あさって早朝と、決まった。
 その「白鯨号」の名前の由来は、この港にある、彼らの溜まり場「白鯨亭」なる、船員相手の定食屋。
 この港はどこなのだろう。引込み線の貨物列車が前を通るところなど、蔵原惟繕「俺は待ってるぜ」の横浜を思わせるが。まあ、港の構造はどこも似たり寄ったりだが、東山千栄子が切り盛りするこの定食屋が、しばらくすると、石原裕次郎のこじゃれたレストランになる、というのも、面白いなあ。
 ただ、港の感じが、横浜というには、ちと、田舎くさいさびれ方ではあるが。どうなのだろう。
 
 あさっての朝は「白鯨号」出航(船長に二本柳寛、船員に殿山泰司ら)、さらに明日の夜は、「白鯨亭」の二階に住まう女・水戸光子と「白鯨号」機関長・森雅之、「白鯨号」船員の<青年>宇野重吉と関千恵子の、ダブル結婚式が「白鯨亭」で、ある。
 この時期の関千恵子は可愛いし(後年はヒロインをいぢめる役などになったりして)、宇野重吉は絵に描いたような好青年で。
 今カレ・森雅之との結婚を明日に控えた、その<運命の日の前日>に、水戸光子の元カレの、元海軍大佐・滝沢修が、帰ってくる。復員してくる。
 滝沢は、森雅之、二本柳寛らの、戦時の上官でも、あった。
 で、水戸光子は、元カレと今カレどちらを選ぶのか、という三角関係ドラマ。
 でも、づるいよなあ。
 滝沢修と森雅之、どっちを選べといわれたら、考える余地すらないじゃないの(笑)。
 しかも吉村と脚本・新藤兼人は、滝沢に旧軍人の悪をしょわせる手際で。一種の色悪に。
 昭和二十年六月、最後の死の出航した彼ら、「そのときは、ぼくもみんなも、お国のためと、高揚していたじゃないか」と、みんなの前で、かつての仲間意識をとうとうと語る滝沢修。
 朗々と語る滝沢修。大物政治家とか大物実業家を得意とする滝沢修。
 対して、<演説>の柄じゃないが、密室で、女に、ささやくのが大得意の森雅之。
 滝沢は、女に愛をささやくときも、朗々としているんじゃないかな。
 いやあ、もう勝負はハナから、ついてるだろう。しかも全盛期、精悍なモリマだし。

 そういうわかりやすい、堂々のメロドラマを、最小限のロケとセツトで作りこむ、吉村=新藤コンビの、ココロ憎さ。映画的趣向の盛り上がりも、さえている。水戸光子も、いい。
 関千恵子の父親に藤原釜足、刑事に菅井一郎、これら豪華強力メンバーに伍して、若手船員に伊達三郎というのがうれしいやね。


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by mukashinoeiga | 2011-10-22 00:29 | 旧作日本映画感想文 | Comments(0)

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