千葉泰樹「東京の恋人」原節子三船敏郎杉葉子モリシゲ

 神保町にて。「一年遅れの生誕100年 映画監督千葉泰樹」特集。52年、東宝。
e0178641_023565.jpg きゃぴきゃぴした頃の原節子が、銀座の町の絵描き(似顔絵描き)になる。お嬢さんでない、街場の女を演じるハラセツは珍しいが、絵描きというのはあくまで取っ掛かりで、特に重要ではない。
 靴磨き少年たち、パチンコ玉製造で儲けたモリシゲ社長、ストリート・ガールの杉葉子、気になる男・三船敏郎との、やり取りがメインになる。
 気になる男。豪快かつ繊細な三船が、やはり、いい。同じ千葉泰樹「下町ダウンタウン」の三船も絶品だが、本作の三船も、ああ、いいなあ。そう、豪快かつ繊細、二枚目で二枚目半、こういう二枚目は、日本映画では、なかなかいない。三船ならでは。まさに<好漢>を具現化したのが、三船なのだ。時代劇スタアということになる彼の、数少ない現代劇は、いつも、いいなあ。
 千葉泰樹にしては、三船アクションも本気モードで、いい。
 今井正「青い山脈」の清純派・杉葉子が売春婦。さびしげな顔が、不幸な役を呼び込むのか。むしろ年長のハラセツのほうがアイドル性を持った役なのだ。
 爆妻・清川虹子の尻にしかれる森繁社長。まだ、脇役時代のモリシゲは、アドリブもさえず、やや、イマイチか。
 靴磨き少年トリオに、小泉博(少年かー?)・増淵一夫・井上大助(この時期の好感度大な東宝少年役)。なお増淵一夫が杉葉子に写真を渡すショットが、続けて二度上映される。つまり同じショットが二度焼かれたプリントなのだ。なぜ。
 シモケンさんによれば、このプリントは今年の春に(「女優とモード」特集用に)ニュープリントされたとのこと。
 元ネガに同じショットが連続していたわけは、たぶん、ない。公開当時、そんな不手際があったら、問題になったはずだ。また、同じショットが連続する必然性のない、フツーのシーンなのだ。
 千葉泰樹は、鈴木清順や大島渚や藤田敏八や山根成之のように、意図して、同じショットを連ねるテクニシャンでもない。また、そんな<時代>でもない。なぜなんだ。
 推測だが。今回?ニュープリを焼く際に、このシーンまで焼いて、休憩して、再開するときに、また同じシーンを焼いちゃったりとか(笑)。ま、たぶん、そんなレアケースもないと思いますが。

 そして、本作の主人公はハラセツと三船敏郎と勝鬨橋!
 勝鬨橋が開閉されるところを映した映画は多いが、ここまでたっぷり映したものはない。当時は、開閉は当たり前だったので、誰も、それに淫した映画は撮っていないようだ。
 しかしエイゼンシュテイン「十月」での、素晴らしいショット。きわめて映画的に処理された巨大開閉橋は、実に映画的で、素晴らしかった。
 それに習った?本作は、開閉もたっぷり、まだ橋が完全に降りきっていないのに早くもわたり始める人や、橋が上がり始めて、係員(注意喚起のための旗を持っている)に制止され、あわてて戻る人々、途中の退避地帯やら(三船も退避する)。勝鬨橋のあれこれがたっぷり堪能できる。
 そして、完全に開ききったところを、小船が通過(笑)。いや、たまたま撮影した日には、小船がほんとに数船しか通らない。いつもは、大型船が通るのか。いやいや、終戦後は少なくも、大型船は払底したのか。なんとも開きガイのない勝鬨橋というのも、わかってしまう。
 地上交通の増加、海上交通の不振、そしてなんと、橋の中央には都電も走っていて、ハラセツらは毎日、都電で川向こうから、銀座に出勤する。線路との整合性、大勢の徒歩客、拡大するモータリゼーション、ああ、毎日の橋開閉運行は、かなり気苦労の多そうなことも、わかる。
 勝鬨橋は、閉じられるべくして、もう開く必要のなくなったことも、わかるのだ。
●追記●モリシゲが勝鬨橋の下に落ちた清川の指輪(!)を探索すべく、雇った潜水夫の水中シーンのおふざけは、バスター・キートンのパクリだし、杉葉子を訪ねてくる母親のパートは、キャプラ「一日だけの淑女」そのままだし、そもそも開く橋から落ちる指輪は、エイゼンシュテイン「十月」だし、脚本井手俊郎、パクリすぎだろ。
 なお、神保町シアター制作の配役表では、本作に河村黎吉、飯田蝶子、藤原釜足とあるが、彼らの出演はなく、キネ旬などの予定稿を、あるいはそっくりそのままなので、日本映画情報システムの孫引きであろうか。
 実際は、岡村文子や、渡辺篤(かな? もはや、記憶の彼方)に変更されている。日本映画データベースには、小林桂樹まである、でたらめで。また、宝石店主(これが渡辺篤かどうか、記憶が・・・・)夫人の沢村貞子が、抜けている・・・・元ネタが、単なる途中経過の予定稿だから、その孫引きが、みんな間違える。
 ああ、渡辺篤じゃなくて、益田キイトンだったか。
●再追記●「映画流れ者」にて、なご壱さんからご指摘ありました。宝石店主は、十朱久雄。胸のつかえが取れました。なご壱さん、ありがとうございます。


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by mukashinoeiga | 2011-10-21 08:39 | 千葉泰樹 ヤスキ節の愉しさ | Trackback(2) | Comments(4)

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Tracked from 性病検査の情報はこちら at 2018-07-20 23:19
タイトル : 性病検査を解説
千葉泰樹「東京の恋人」原節子三船敏郎杉葉子モリシゲ : 昔の映画を見ています... more
Tracked from 性病検査なら at 2018-07-23 08:59
タイトル : 性病検査を解説
千葉泰樹「東京の恋人」原節子三船敏郎杉葉子モリシゲ : 昔の映画を見ています... more
Commented by PineWood at 2016-04-22 07:36 x
同じショットが二回焼かれたのは、不思議ですね!エイゼンシュテインやバスター・キートンからフランク・キャプラまで本当に映画の記憶に充ちた作品なのかも知れませんね!杉葉子の安アパートの部屋の壁には映画女優のブロマイド写真が貼られていました。特に長く写っているのがグレース・ケリー嬢♪後年、名匠ヒッチコック監督が(泥棒成金)で花火のシーンにキスシーンを重ねたー。偶然にも、病床の杉の最期に見たのが手鏡に写った隅田川の花火!杉は花火の音に初め空襲だと思い違いをしている…。本編は焼け跡の残った銀座のロケシーンもあり敗戦の傷痕が尾を曳いている。狐と狸やがめつい奴で闇市の記憶や釜ケ崎の逞しい群像劇を放つ事になるヤスキ節の手腕が、既に本作の中に脈うっていた様に思えた♪
Commented by 昔の映画 at 2016-04-23 09:06 x
千葉泰樹「東京の恋人」へのコメント、PineWoodさん、ども。
 やはりご覧になったプリントも、二度あるヤツでしたか。今になって考えると、製作当時のずさんなミスかと。それこそ休憩を挟んで、ネガからポジへ、二度焼いちゃったのかと。
 ぼくはパクリと思い、PineWoodさんは、「本当に映画の記憶に充ちた作品」という。ぼくにはまだまだ映画愛が足りませんなあ(笑)。それとも単に、性格が悪いだけか(笑)。
 千葉泰樹の杉葉子はいつもいいのですが、できればもっと杉を不幸のどん底に追い込んだ(笑)ヤスキ節も、見てみたかった(笑)。  昔の映画
Commented by サセレシア at 2016-09-25 20:08 x
やっとこの作品を観ることが出来ました。

ご指摘の「二度焼き」のシーンですが、手渡した写真自体杉さんと三船さんが一枚の写真にそれぞれ焼かれてしまっている事に千葉さんが洒落っ気だしてか暗示の意味であのように態と演出したって事ではないですかね?

杉嬢のストリートガールですか…うーん客になりたいな…
思いっきり「チェンジ!」って言われそうですな。

森繁が浮気相手の紫さんに五十万円の宝石と偽物をめぐるシーンで「二十万円で〜買って、二十万円で電話を買って残りの金で〜買って…..」という台詞があったと思ったんですが電話って当時そんなに高価だったんですかね?大卒初任給一万円に満たないはずなんですが…。

翌日阿佐ヶ谷でみた「いらっしゃいませ」も楽しかったなぁ…。
香川のお京さまはちょっと蓮っ葉なキャラのほうが断然好き!いや〜やられちゃいましたよ。
瑳峨三智子もあんなにキュートだとは知らなかった。
母堂様と頬の形状や割合面積がほとんど同じですな。
私にとっては日本一セクシーな母娘に思えますが…。
Commented by mukashinoeiga at 2016-09-26 07:14
千葉泰樹「東京の恋人」へのコメント、サセレシアさん、ども。
「二度焼き」やっぱり不思議ですなあ。

「青い山脈」で、あれほど明朗な杉葉子も、陰のある女専門になっていきました。千葉泰樹もそれを「拡張」していましたな。
 家電の架設は、時代が下っても、相当高かったみたいですよ。
瑳峨三智子は、チョーかわいらしかった。ま、期間は、短かったみたいですけど。やはり酒と煙草と男と整形で、ダメになった口でしょうか。惜しい。 昔の映画
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