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清水宏「霧の音」上原謙木暮実千代浪花千栄子見明凡太郎柳永二郎坂本武

 京橋にて。「(再映)よみがえる日本映画~映画保存のための特別事業費による」特集。56年、大映京都。
 ほんとうに、素晴らしい。
 豊穣、の一語。
e0178641_2225770.jpg 戦後の清水宏は低迷していた、というのが、<映画史>の定説だが、その低迷しているはずの清水宏作品を一本一本見るたびに、映画的豊かさを感じる作品ばかりだ。
 本作も、まさに、その通り。
 たしかに、戦前松竹の花形監督・大清水の華やかさ・清新さはないかもしれんが、この映画的豊かさは、ナンなんだ。
 山奥の、山小屋。最初は、大学所属の植物研究の寮のようなもの。それを改装して、浦辺粂子・坂本武が管理する、一種の秘境宿のような山小屋宿になり、そこにやってくる客たちのドラマ。
 「簪」「按摩と女」のような、温泉宿コメディーの系譜につながる、大快作。そのシンプル系。
 三年おきの、中秋の名月の日に、展開される、上原謙と小暮実千代のあえやかな出会いと、秘めやかなすれ違い。
 互いに逢いたい、再会したい二人なのに、同じ宿にいながら、その姿をすれ違い、かの姿は視線に入らない。
 その、人物のすれ違い、入れ替わりが、単純ながら、素晴らしい。
 木暮の同僚芸者・浪花千栄子が、酔いつぶれて、早く帰るには、ちゃんと理由がある。浪花とその道連れが消えることによって、上原と木暮がふたりきりになる。
 上原の娘が病気になるには、ちゃんと理由がある。上原の旧友・見明凡太郎を苦手とする、柳永二郎が、「あたし、その子の看病するわ」という木暮を、いや、見明がいるから、行ってはいけないと言い、木暮が上原と出会うのを、無意識に阻害する。
 あまりにかっきりしたお話、おそらく舞台劇が元かと推測されるが(原作北条秀司、脚本依田義賢)、従来の、軽快ノンシャランな清水映画とはティストが違うが、何、こんなものもお手の物という清水だ。
 宿のオヤジに、坂本武。ああ、戦前松竹清水映画に多数出演の坂本武(宿屋の主人といえば、坂本武だ)が、年で、終始居眠りしているという、爺さんキャラ。その、終始居眠りしているがゆえに、ドラマが転がってしまう、いや、逆だ、転がり損ねてしまう、という、なんという素晴らしさ。
 そして当然、戦前松竹メロ絶対のエース・上原謙も、どの戦後映画よりも疲れ果て、くたびれた顔を見せるのも、ちゃんとわけがある。戦前松竹メロのファンとしては、深く感動する。
 もちろん、小暮も、戦前松竹以来の女優。冒頭、上原謙の大学教師の助手として、戦後作品としては、珍しく素人女性として登場。戦後の木暮の素人女性役は珍しく、そっけない化粧の彼女は、貫地谷しほり似。意外であった。
 そして、特筆すべきは、縦移動の素晴らしさが語られる清水宏だが、横移動もいいのは、ご承知の通り。特に屋内における、横移動の生理的快感は、清水宏ならでは。
 なお、屋内における横移動は、ぼくの知る限り、清水宏と鈴木清順にとどめをさす。ほかの監督のも見たかもしれないが、記憶に残るのは、このふたり。
◎追記◎もちろん、小暮は、木暮の、ケアレスミス。すいません。


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by mukashinoeiga | 2011-10-17 22:39 | しぃみず学園清水宏おぼえ書 | Trackback | Comments(0)

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