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阿部毅「性生活の知恵 第二部」早川雄三市田ひろみ目黒幸子村上不二夫

 阿佐ヶ谷にて。「昭和夫婦百景」特集。61年、大映東京。
 わっわっわっ。
 なんて地味映画。こんな超地味地味映画は、めったに見られないぜ。本家地味映画の大映といえど(笑)この地味さは、超異常だ。なんせ、スタアが一人も出ていない。オール脇役俳優、大部屋俳優のオンパレード。
 この特集で先週上映の水野洽「性生活の知恵」61年、大映東京は未見のまま、その「第二部」を見る。
 第一部と二部の公開の差は約二ヶ月。ベストセラーの映画化という、当時の勢いを感じる。第一部は<日本映画情報システム>HPによれば、成人映画レイティング。第二部は一般劇映画。
 <原作>は当時大ベストセラーの謝国権著「性生活の知恵」という、いわゆるセックス指南書、ハウツー本だから、映画化(ドラマ化)は、恣意的なものになるのは争えない(つまり、原作と映画は、あまり関係がない)今回は、ホームドラマ仕立て。

 ある一家。老父老母の元、まだ倦怠期には至らぬ長男夫婦、新婚ほやほやの次男夫婦、大学生の三男、夫の浮気から出戻りのコブつき長女、狭い一軒家に三世代9人が同居。
 新婚二男夫婦は、気兼ねなくエッチするには、家では狭すぎる、ほかの家族の目と耳もある、連れ込み旅館に行かざるをえないし、老父母は、子供たちがエッチするために、家を空けて、<夜の散歩>に、梅が丘駅近辺に行くのだ!
 現代のぼくたちは<性生活の知恵>というと、セックスのテクニックということなど考えるが、当時は、その前に、家族から隠れて、いかにのびのびとエッチするか、という、経済、家屋構造の問題のほうが大事だったのだ、と。で、ここから出される結論は、三世代同居なんかしなくて、いいじゃん、と。それぞれの夫婦が、核家族化して、アパートに住めばいいじゃん、と。
 <セックス>のモンダイをある程度<無視>出来た時代には、<狭いながらも楽しい我が家>はオーケーだったが、羞恥心が発達?すると、もう、三世代家族が、狭い家に同居するデメリットのみが増幅していく。かくて(それだけが理由でもないだろうが)核家族化が進行していく。
 主として奥さんのほうが、特に新婚の奥さんが、のびのびエッチを求めて、核家族化していく。
 というお話なのだが、<老若男女エピソードが全てセックスがらみの話で進行していく>のに、<ホームドラマ>ここに、全ての問題がある。無理ありすぎの作劇で。

 つまらない、凡庸な脚本。華のない出演者。実質、主演な長男夫婦に、早川雄三&市田ひろみ。出戻りの長姉に、目黒幸子。その、浮気夫に、村上不二夫。有名なヒトは、これくらい。いや、よほど大映マニアでないと、この人たちの名前なぞ、知らないレヴェル。
 通常の大映作品なら、長男夫婦は、船越英二・若尾文子、出戻り長女に京マチ、その浮気夫に田宮二郎、二男夫婦は川口浩・野添ひとみ、三男大学生は本郷功二郎、その彼女は叶順子、老父母には中村鴈治郎・沢村貞子といった、超華のあるキャスティングといったところか。 いや、これなら、キャスティングだけで、傑作になるに違いない!
 それが(当時としては)きわものの、セックス・テク映画(といった位置づけ)ゆえに、かくも地味に。
 みんな通常の大映映画なら、数十秒~数分で出番を終える、大映大部屋組。早川や村上は、映画によっては、準々主役として活躍するのだが、市田ひろみや目黒幸子は、2分以上の出番は、なかなかないのではないか。
 市田ひろみは、はるか後、TVCMでブレイク、その後も、京都弁の和装おばさんとして、ヴァラエティにもたびたび出た。ただ、若い頃の大映時代は、険のある、オーラのない顔立ちで、各映画、せいぜい一分ほどの出番を、こなした。
 村上不二夫は、後年、<和製コロンボ警部>として、ヴァラエティーを、にぎやかした。
 目黒幸子は(笑)。大家さんとか、近所の主婦とか、事件の目撃者とか、そういう役でチラッと出てくる大部屋女優。しかし、大映映画を見続けると、かなりの頻度で出てくるので、顔はおなじみになってしまう、その、陰気な、薄幸顔。
 本作では、ラストに、目黒幸子のクローズアップが、続けて二度(2ショット)出てくる、その、オーラのない、不幸顔のクローズアップ・ショット。いやあ、不気味だよう(笑)。オーラも華もない地味顔の目黒幸子の、瞳きらきら、さわやか笑顔の、多幸症まっしぐらの笑顔のクローズアップ。
 見てしまいました、というしかない、感想。このショットだけ捉えれば、これはかなりのカルト。
 あと、村上不二夫とのキスシーンもあったりして。うーん、華のない俳優同士のラブシーンという、不気味なもので。
 つまり、才能のある監督が、大部屋俳優だけの映画を作ったら、かなり異色作でありつつ、それなり面白いかと思うが、いかんせん、地味な、色気のない、凡庸な映画が出来上がった。
 改めて、若尾文子や田宮二郎の存在感に思いをいたすほど、華のない、オーラのない、大映大部屋俳優たち。

 おそらく、もっとも有名な俳優になるのは、ナレーターの松村達雄。これは、原作の謝国権先生の役回りと思しく、上から目線で、登場人物を<指導>するナレーター。「お嬢さん、本当に、こんなこと(男に迫られている)でいいんですか。そこに愛はあるんですか」など。映画のつまらなさに拍車をかけるていで。
 なお、ほぼ。絶えず流れるピアノソロのBGMが、きわめて異色、通常のドラマのBGMにはありえないしつこさと、曲想。まるでラウンジに絶えず流れている、意味のない、同じメロディの繰り返しの、ピアノソロ。その執拗さは、ちょっと中毒になるほど?
●追記●松村達雄の上から目線ナレでおかしいのは、終盤、「では、そろそろみんなの問題にアドバイスしますか」みたいなナレのあと、いきなり三男大学生カップルが無理心中、病院で治療中の彼に対し、「彼についてはこれでよし、では次に・・・・」。って。これでよしは、ないでしょう。


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by mukashinoeiga | 2011-09-25 03:01 | 珍品・怪作の谷 | Comments(0)

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