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井沢雅彦「恋と十手と巾着切」

 京橋にて。「逝ける映画人を偲んで 2009-2010」特集。63年、東映京都。
 出演者の山城新伍千原しのぶの追悼として上映。
 広瀬五郎「恋と十手と巾着切」1932年、新興映画の、リメイク。オリジナル脚本・山中貞雄を、原作として、野上竜雄が脚色。
 いかにも、才人・山中が、さらさらっと書いた、小コメデイの佳作。と、思うのだが、66分の本作でも、もったりとして、長すぎる。
 いやいや、おそらく、当時の東映の新人と思われる井沢雅彦の、演出は悪くない。
 お江戸日本橋の前から、移動に移動を重ねて、さまざまな江戸の人々の歩くさまを連ねて連ねて、江戸の街の全景を俯瞰する冒頭シークエンスは、おそらくTV「JIN-仁-」より、いい。いかにも新人らしい(たぶん)はつらつさがある。おそらく、東映では、こういう新人らしい初々しさは、あまり受け入れられなかったんだろうなあ。
 たぶん、小ネタの連続小コメディである本作は、もっと、さくさくちゃらちゃらと軽快にやるべきだったのだ(今から、の目で、言うと)。各ショットが、何秒かずつ長かったと思う。だから、66分でも、長いのだ。
 また、主演の山城新伍が、二枚目半でありつつ、古い二枚目のもったりを引きずっているため、より体感時間が長くなる。
 千原しのぶの、おきゃんかつセクシーな感じは、いつものことながら、いいんだけどね。スーパー・エロティック。ああ、千原しのぶの魅力というのは、時間を無化する。いつの時代であっても、千原しのぶはいいのだ。東映お姫様女優にあって、千原しのぶと桜町弘子は、チョト違う。いや、そもそも、このふたりは、いわゆる東映お姫様女優では、なかったか。
 元の映画は、年代を考えると、しかも新興だし、たぶん、サイレントなのだと思う。そのサイレントで、才人・山中が書いた脚本、たぶん、さくさくと瞬発力ある快作だったのだと思う(おそらく残ってはいまい)。しかし、その、幸福なサイレントの魅力を、本作は伝ええたか。
 魅力的な映画でありつつ、残念さが付きまとうのは、リメイクの不幸か。しかも、サイレントをトーキーにすることの、不幸。サイレントは、サイレントで、すでに完成していたのに。


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by mukashinoeiga | 2011-08-25 00:28 | 旧作日本映画感想文 | Comments(0)

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