斎藤達雄「嫁ぐ今宵に」島崎雪子坂本武芦田伸介

 京橋にて。「よみがえる日本映画~映画保存のための特別事業費による」特集。53年、新東宝=新映プロ。
e0178641_2091730.jpg 戦前松竹の三羽烏スタアの一人、佐分利信「慟哭」52年、新東宝=東京プロと同様、戦前松竹以来の個性派脇役、斎藤達雄の、初監督作。
 助監督は、田中絹代「恋文」53年・新東宝と同じ、石井輝男。
 この時期の新東宝は、企画・人材不足を、有名スタアの監督・主演作という話題性で補おうとしていたのだろうか。本作も、斎藤達雄監督作であると同時に、斎藤主演作。出番も多い監督になりかわり、石井輝男が実質の監督補なのだろう。誰か(笑)、斎藤達雄の監督ぶりを石井輝男に聞いていないかな。田中絹代の監督ぶりより気になるぞ(笑)。
 斎藤達雄は、初老のサラリーマン。危ない、怪しい会社との取引はやめたほうがいい、というアドヴァイスに、アプレな二代目若社長は激怒、首。
 このアプレ社長に、ちょっと若社長が似合わない芦田伸介。ぼくたちは、おおむね、顔を切られたあとの、凄みのある顔の芦田伸介しか、見ていない。本作の芦田伸介は、顔にキズがないように見え、また、あのおなじみのイボもないように見える。切られる前の芦田の顔、しみじみ、見る(笑)。
 しかし、役者の命ともいうべき顔を切られて、イボが出来た後の、芦田の顔の、なんというシブさ。マイナスをプラスに変えた芦田伸介の奇跡。だから、この映画の、ボンクラ若社長を演じる芦田は、なんとなく物足りない。
 首になった斎藤が、頼るのは、斎藤とは真逆に下町ライクな、ボンクラにして律儀ないとこ、坂本武! 斎藤達雄と坂本武の共演シーンの、なんという安定感。
 斎藤の娘・島崎雪子(相変わらず、かわいい。この彼女がのちに、松竹京都/日活助監督の、あの神代辰巳と結婚したとは、まったく、信じられない)の、恋人に、これも戦前松竹末期の若者役でもあった、山内明。
 山内は、会社の帰りに、島崎雪子と70円のライスカレーを食べたい。
 節約娘の島崎は、ライスカレーなんてとんでもない。40円のラーメンを主張。山内、ラーメンにブーブー。
 このラーメンとライスカレー(カレーライスにあらず)の地位対比も面白い。
 ラーメンを食べる恋人たち、失業するおトーさん・斎藤達雄、娘の結婚を案ずる斎藤達雄、なんとなくお話は、戦前松竹で斎藤も常時出演していた、小津映画ライクな展開。脚本は戦前小津組常連の池忠こと、池田忠雄。
 戦前は、主に、うっひっひ、とか、へっへっへっ、とか、ふふんふんっ、とか、シニカルな役を演じることの多かったモダンボーイ斎藤達雄が、かくもべたべな人情劇に、主演・監督するとは。
 ないものねだりというか、隣の芝生は青いというか。モダンボーイも、人情劇、やりたかったのね。
 戦後の小津映画に、やはり新東宝「宗方姉妹」のみにしか、特別出演させてもらえなかった斎藤にしてみれば、戦後小津映画に、もっと出たかったのかなあ。
 戦後小津映画が、戦前小津映画の常連、斎藤達雄、坂本武、飯田蝶子、吉川満子、突貫小僧などを、軒並み出演させなかったのは、なぜか。そのうち、ちゃんと考えたい、小津マターだ。
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by mukashinoeiga | 2011-03-17 00:37 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

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