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コルノー「畏れ慄いて」

 京橋にて。「現代フランス映画の肖像 ユニフランス寄贈フィルム・コレクションより」特集。02年、アラン・コルノー監督。
 オール日本ロケのフランス映画。ヒロインをのぞいて出演者は全員日本人(ごく一部に怪しげな日本語があるが、これはフランスに帰ってからの、アフレコが、あったのか)。ヒロイン、シルヴィ・テステュは本作でセザール賞最優秀女優賞、カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭最優秀女優賞、ルイ・リュミエール賞最優秀女優賞、エトワール・ドール賞主演女優賞を受賞、確かに好演している。
 日本人出演者(比較的名が知られているのは諏訪太郎くらいか)も、全員なかなかの快演。出演陣に関しては、見ていて、なかなか気持ちいいのだが(笑)。
 日本の企業に勤める西洋人、ただし、この日本企業の描写が、大バカで、でたらめ、日本人としては苦笑せざるを得ない珍描写が続くが、しかし、いわゆる国辱映画とも違う、単に製作側の認識不足か、おバカ映画を作ろうとして、ずっこけたのか。フランス映画のコメディ感覚は、あんまり、ぼくには、笑えないからなあ。たぶん、フランス映画は、コメディ、あんまり、うまくないよね。しかし、あんまり悪口いう気がないのは、すべての出演者の好演と、ほのぼの感。いや、日本人としても、見て、損のない、好感度。凡庸な作品の、凡庸ゆえの好感度。

 平日に見に行ったら、日本がらみなのに日本未公開の映画のせいか、即満席。開場早々に、入場不可の観客が続出していたようだ。来週の日曜、2/20の最終上映は、お早めに見に行かれることをおすすめする。 これも小ホールでの上映ゆえだが、フィルムセンターも官僚気質が抜け出せないようで、最終日くらい、大ホールに移せるかどうか(笑)。
 主人公は日本で生まれ5歳まで日本にいたベルギー人。大学卒業後、「故郷」の日本に戻りたくて、「弓共商事」(名前から類推すると住友か)に、通訳として職を得る。 
 ところが通訳の仕事はない、通訳以外の仕事も、ない。
 しょうがなく、日本OLの仕事の定番、お茶くみ。あ、この映画、アメリー・ノートンの自伝的小説の映画化なのだが、時代設定は1990年なんですね。
 あるとき、重要なお得意様たちがやってきた会議室に、お茶をサーヴ。ところが、ヒロインのお茶出しに取引先グループは、激怒(笑)、映画を見ていたぼくは順番を抜かされてお茶をもらえなかった重役が激怒したかと思ったら、なんと、ヒロインが日本語で「どうぞ」といってお茶を出したのが、いけなかったらしい(なんで)。日本人たちは、お茶出しが外国人なのに、ちゃんと日本語がわかるのに、怒ったらしい。ここら辺が、よく、わからない。珍映画の珍映画たるゆえん。
 ちなみに、お茶のカップは、日本企業なのに、どう見ても、フランス仕様? 小さいし。
 次に、経理の仕事、これも使えないので、最後に●●の仕事、と彼女はどんどん通訳から、離れた仕事をさせられていく。●●の仕事なんて、ふつうに考えれば、外注の別会社の仕事だろうに。これ以外にも、日本企業の仕事の描写は、全部、でたらめ。一平社員の仕事を奪ったからって、副社長が、怒鳴るか。謎だ。
 役者たちは、みんな、いい。悪役の副社長にすら、好感を、もっだぞ(笑)。ただ、映画は、でたらめ(笑)。
 だいたい、異国にひとり住む女を描写するのに、私生活描写がまったくないのは、おかしすぎないか。出てくるのは会社と、渋谷の駅前交差点(外国人は、あの、当たり前の交差点に、なぜか、興味深々なのは、いたって不思議。昔、ぼくの数メートル先を歩いていたサラリーマン風の男が、前に来た女性の胸をいきなりわしづかみにし、女性が、ぎゃっと叫んだ、男はすばやく立ち去った、以外は、ごくふつうの交差点なんだが)の通勤風景のみ。
 私生活を描かないフランス映画というのも珍品だろ。これこそ、日本への「差別」か。

 主演のシルヴィ・テステュは、フランス映画でたびたび見る顔だ、と思って調べてみたら、フィルモグラフィーでぼくが見たのは、ギャスパー・ノエ「カルネ」、ジョニー・トー「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」くらい。
 そのほかにも、ビヨンド・サイレンス(オリジナル)、点子ちゃんとアントン、発禁本-SADE、家路、迷宮の女、エディット・ピアフ愛の讃歌、サガン 悲しみよ こんにちは、などの有名どころにも出ているらしいが、ぼくは未見。なのに、この顔の既視感は? 「カルネ」の軽い役って、まさか、あの主演の少女では、ないということか。
 しかし、テステュがおなじみの顔に思えるのはなぜ。
 「西洋人」にしては、おどおどした顔が似合う。日本でさんざん、いぢめられる役に、この被虐感バリバリの顔は、最適か。シルヴィ・テステュは、直属上司・辻かおりより、背が低く、この日本人上司を、時にはおどおどと、見上げている。「西洋」が、対日本で、自信をなくしていた時期の映画で。
 この、東洋人におどおど、へいこら追従する西洋人というのも、あまり、見たことがない図か。マニア(何のマニア)には、たまらん図かもしれんが、マニアならぬぼくは、この珍品さかげんに、ただただ不思議。
 ちょうどバブル期の日本に、こびた感じか。そういうおフランスも、今は、中国にコビコビ。そういう意味では、わかりやすいなフランス。
●追記●1990年の設定らしく、オフィスにあるパソコンは、あの、昔の、分厚い、ディスクトップ。なつかしい。しかし、諏訪太郎や辻かおりが使う、画面を見せさずるを得ないものは、90年には存在しないだろう、タイトなノート・パソコン。ここら辺がずさんだなあ。それに、コピー機のあやふやさを指摘するシーンは、リコーが見たらビックりだろ。渋谷の駅前を歩いて通勤のヒロイン、会社はどこなんだ。というのも、野暮か。
しかし、ヒロインや、脇役陣が、かわいいので、許す(笑)。いや、ほんとにこの映画の登場人物はかわいいのよ。
 フランスが、アメリカ、日本、中国と、その時々の、勢いある国に、こびるのは、わかった(笑)。
●さらに追記●映画の途中で、おなじみの曲が、いきなり流れる。「戦場のメリークリスマス」のテーマ曲。と、画面には、軍服の坂本龍一とデヴィッド・ボウイが登場。「戦メリ」フッテージの引用。
シルヴィ・テステュ「戦場のメリークリスマスは見ましたか?」
辻かおり「見たわ」
テステュ「あなたと私の関係は、坂本龍一とデヴィッド・ボウイの関係に似ていると思う」
辻「あなたは、ボウイに似ていないわ」
テステュ「もちろん。メタファーとして言っているの」
 ま、ちょっと、違うと思うが(笑)。


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by mukashinoeiga | 2011-02-13 19:54 | 旧作外国映画感想文 | Comments(0)

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