池広一夫「小太刀を使う女」

 阿佐ヶ谷にて。「昭和の銀幕に輝くヒロイン57・中村玉緒」モーニング特集。61年・大映京都。
 傑作というわけではないが、たいへん見所の多い、すばらしい作品。いわゆる<大映通常作品>の底力を見せつける、好編。今週末まで上映中。
 もともとは、戦前の丸根賛太郎監督・水谷八重子主演作と記憶するが、そのリメイク。戦前作は、当時の時代劇らしく、イマイチ地味だった。やはり戦争描写の迫力のなさ、および端正なのはいいのだが、メロドラマとして押すべきところも、まったく静かなものだった。
 本作は、刺激的音楽爆発、効果音炸裂、メロドラマ増量。
 明治十年。西南の役で、薩摩軍が進撃してくる。官軍が来るまでは、自分たちで町を、守らなければならない、旧臼杵藩(大分)藩士たち。
 旧藩士も、男は全て、散切り頭。けれど男でも老人、そして、はかま姿の女学生を除く全ての女は、日本髪の髷を結ったまま。建物も西洋「風」と、江戸時代式日本家屋の混交。おそらく、日本がもっとも、刺激的で、美しかった時代では、なかったか。
 散切り頭、しかし和服の、小林勝彦たち若い旧藩士たちに、髷を結った白髪交じりの老人が言う。
「官軍が来るまでは、この臼杵の町は、我らで守らねばならない。家老として、言う。いや、元家老として、お願いしたい」
 オー、と応える旧藩士たち。
「ところで」と元家老。「東京の殿様(旧藩主)から、電信をいただいた」 
 と、電報を、さながらかつての上意書のように両手で押しいだき、代読する。旧藩主の、臼杵の町を死守せよ、という激励文!
 江戸時代さながらの臼杵城から、堂々進軍する、首から下はやはり江戸時代の侍の武装ながら、頭は散切り頭。やがて、彼らの何割かは薩摩軍に惨敗し、明治の御世に、侍として死んでいくだろう。
 十年前までは侍だった、今は平民として武家の商法などに手を染めている18~50歳の男たちが、再び、侍として戦地に赴く。
 リアル「戦国自衛隊」とも言うべき、時代のミックスぶりが、何か映画的興奮を呼び起こす。
 留守を守る、小林勝彦(さわやか)の姉・京マチ子たち。
 勝彦の嫁・中村玉緒は、裕福な商家から、勝彦に嫁いだ。明治も十年すぎて、平和な四民平等の世(とりあえずは)に、いきなり西南の役の戦火・大砲の爆音。
玉緒「あたしは商家の娘です。お姉さんみたいに強くはありません」
京マチ「たとえ商家の娘でも、いったん武士の家に嫁いだからには、家名を汚さず、女ですから戦地に赴かずとも、命を掛けて留守を守るのです」
 平和になれきった惰弱な玉緒、侍の娘としてりりしく戦時に伍していく京マチ。
 今でも通じる、女と女の立場・心構えの違い。強く嫁に武家の女としての責務を迫る小姑、ビビる嫁。 
 玉緒の、いかにも下世話で惰弱な色気が商家娘にふさわしく、京マチも、凛々しい男装ぶり。
 ま、京マチも、ちょっとふっくらなのが、この映画の場合難点なんだが(笑)。
 有象無象の大映大部屋俳優たちも、素晴らしい。これだけの規模(戦闘シーンは、自社ストック・フィルム再利用っぽいのが、いかにも、らしい)の、濃縮ドラマがたった81分。他社なら確実に2時間になったろう。その濃密感こそ大映。
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by mukashinoeiga | 2011-01-31 23:40 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

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