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ファヴラ「彼女の人生の役割」

 京橋にて。「現代フランス映画の肖像 ユニフランス寄贈フィルム・コレクションより」特集。04年、フランソワ・ファヴラ監督。
 なんてことないドラマなんだけど、なんか、フツーと違うような? 
 いや、特に異常なことはしていない、ごくごくフツーの<いわゆる女性映画>なのだが。
 見始めてしばらくすると、その、<異常>と言うか、<違和感>というか。何か、違う、ことに気付く。
 いや、ごく些細な<違和感>を個人的に感じているだけで、映画は、<標準的>なストーリーが、さくさく進んでいくだけ。
 そう、さくさく。まるで、流れるような、エピソードの連鎖と演出と演技と編集。見ているものに、何の負荷も与えない、流麗さ。
 そうか、まるでミッキー成瀬みたいに「流れる」ような映画なのだ。
 <違和感>を感じたのは、逆に何の<違和感>もない、さくさく感だったのだ。それに<違和感>を感じるということは、こういう、さくさく流れる映画がほんとに少ないから。
 たいていの映画のドラマには、何らかの<違和感>を感じるでしょう。え、これは、ないんじゃないの、って言う。それが、エピソード・レヴェルではともかく、<映画の流れ>のなかでは、負荷を感じさせない。
 女性雑誌ELLEの編集部。そこで、インタヴュー記事などの文字起しなどをアルバイトにしているクレールが人気映画女優エリザベットと、成り行きで知り合い、その雑用係というか、秘書的役割に、なっていく。
 ある意味(と、強引に持っていくと)ミッキー成瀬「流れる」の、芸者置屋に女中・田中絹代がやってきて、いろいろ玄人の世界を垣間見ていくこととも、通じるというのは、牽強付会というヤツか。クレールは、女優の家族、使用人、映画関係者などと次々知り合っていく。その多人数も、とくに取り立てて紹介するわけでもなく、さくさくと消化していく。 
 そして、ミッキー成瀬には欠かせない?森雅之も、いる。いい加減な二股男が。盆栽と西洋ガーデニングを融合した、こだわり植木職人の二枚目。これもやはり今日この特集で続けて見たキュルヴァル「正しい恋愛小説の作り方」05年でも、似たような色男をやっており、この当時のフランス映画の色男といえば彼なのか。ジョナサン・ザッカイという男前。 
 ヒロインは女優の少女時代のスナップを見て、「友達との写真でいつも真ん中に写る子もいる」と思う。自分はいつも端っこ、ないしは友達と友達の<肩と肩のあいだの谷間>に隠れて写る子だった、と。
 ナチュラル・ボーン・ヒロインに仕える、ナチュラル・ボーン・地味っ子の、役割関係、その進行と齟齬。
 そういう些細なドラマが、女と女の力関係、その女たちの間で右往左往するフレンチ・モリマを通して語られていく。ヒロインがルーム・シュアしているのが、いわゆるゲイ男で、この男がカレシを連れ込むときは、ヒロインは、映画館のレイトショーなどで過ごさなければならない。いかにもおフランス映画らしい展開で、でもまああからさまなジャック・レモン&シャーリー・マクレーンへのオマージュか、若い娘とゲイ男がひとつ部屋に住むという、これもまた紋切り型の展開で。しかしミッキー成瀬も、もっと長生きしていたら、あるいはこういう風俗も、映画に取り入れていたかもしれん。何せ、三国連太郎になよなよ演技をさせた人ですから。
 この特集では、あと2回上映される。ぼく的には、おすすめ。
●追記●上映時間102分で、これだけ濃密なドラマを展開するのも、やっぱり、成瀬だよね。ヒロインの無愛想な、しかしヒロインに親密な女友達は、中北千枝子か(笑)。ストーカー男は加東大介か。ゲイ男は小林桂樹で。


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by mukashinoeiga | 2011-01-24 00:11 | 傑作・快作の森 | Comments(0)

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