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田中重雄「八月生れの女」

 神保町にて。「みつめていたい!若尾文子」特集。63年、大映東京。
 「八月生まれの女は、気が強い」というような、何の特徴もない主題歌(朝丘雪路)で、始まる。
 その通りの、気の強い女社長に、もちろん若尾文子。カメラ会社らしく、社長の名・由美をとって、ユミカエイトなる、8ミリ撮影機も発売している。
 ライヴァル会社の、社長の息子・宇津井健が、身分を偽って、若尾に接近、前衛劇団員の彼は、劇団立ち上げ資金が欲しくて、父親の命令どおり、若尾の会社の企業秘密をさぐろうとするが。
 ことごとく若尾のカンにさわる言動で、会えば、喧嘩ばかり。でも、そういう男女が、映画の結末で、どうなるかは、ご推察の通り。
 若尾の見合い相手は川崎敬三。川崎より、ビリングが下の宇津井が、若尾と結ばれる、川崎敬三は、そういう頼りないキャラ。もっとも大映子飼いの川崎より、新東宝からきた宇津井を優先したのか。宇津井のほうが熱血漢が似合うこともあるし。
 川崎も、徳島の実家稼業を継ぐのが嫌で、東京に家出、見合い相手の若尾の家を、頼ってくるというのも、よわっちい(笑)。見合いの席に、手ずから調理した、ふぐを出し、もっとも、免許なんか、持ってませんがね、で、若尾と、付き添いの家令格・東野英治郎をびびらせたが、上京のおりには、東野英治郎に、手土産の、ハモをすすめたりする。
 東野英治郎は、ハモ、魚ヘンに豊か、そんなことは、もちろん、いわないけどね。
 なお、宇津井も参加する前衛劇、ローマ時代ともなに時代ともつかないような風俗の、<パターンどおりの前衛劇>風。馬鹿馬鹿しくて、客席の若尾が爆笑すると、後ろの客が「しぃーっ」と、注意。
 ある時期以降の小劇団は、客が笑うために来るようになって、そして、前衛劇というのは、おそらく胡散霧消してしまったと思う。
 若尾の祖母に、ふけ作りの村田知栄子。コミカル・ホームドラマに必須の、かわいいおばあちゃん。そして、村田知栄子は、戦前若いころの、娘役よりも、断然、こちらのほうが、似合っていて、かわいい。

by mukashinoeiga | 2010-10-15 23:58 | 旧作日本映画感想文 | Comments(0)

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