井上梅次「勝利と敗北」川口浩あやや若尾文子元本郷功次郎山村聡安部徹浦部粂子野添ひとみ新珠三千代
神保町にて。「みつめていたい!若尾文子」特集。60年、大映東京。
井上梅次、大映における初監督作とのことだが、なかなか、力のこもった快作。いや、井上梅次としても、一番の出来なのではないか。
山村總(実質の主演格)のボクシング・ジムに所属する、バンタム級ランク1位・川口浩、7位・本郷浩次郎を軸に、ヤクザの親分安倍徹のジムの選手、頑固一徹見明凡太郎のジムの選手たち、トレーナー、恋人、それぞれが入り乱れる、ゴージャスな展開。
ちょっと甘いところはあるが、川口、本郷の試合シーンは、なかなか健闘している拳闘シーンだ。俳優による、ボクシング・ファイトとしては、ベストのデキではないか。何度も何度も倒される川口、リアルだ。
◎追記◎『勝利と敗北(35mm)(117分)』公開:1960年 (渋谷シネマヴェーラHPより)
監督:井上梅次
出演:川口浩、三田村元、本郷功次郎、若尾文子、山村聡、安部徹、浦部粂子、野添ひとみ、新珠三千代
チャンピオンを目指す3人のボクサーの闘いにトレーナーや恋人など周囲の人々の思いを交えて描いたスポーツ人間ドラマの傑作。貫禄の山村聡と安部徹に加え、豪華な女性陣が脇を固めた井上梅次の大映初監督作。【坪内祐三セレクション:スポーツ映画】
リングサイドに陣取り、選手に指示を飛ばす髭づらの見明、リアル丹下段平か。
そして、山村總の、男気。それを察する見明の演技がいささか、臭すぎるのが、難点だが、まあ井上梅次に、俳優演技の微細な調整なんてものは、期待してはいけないが(笑)。
でも、最後のころ、山村總が遠めに、顔見知りを認め、やあ、と挨拶して、その後の粋な計らいは、山村のさっぱりとした演技も含め、名シーン。
名シーンといえば、特集の元になった若尾文子、要所要所にしか出てこないが、彼女にも名シーンあり。 恋人のボクサーに、ボクシングなんて野蛮な殴り合いじゃないの、と別れを告げる。でも、彼のことが気になり、喫茶店のTVで、試合観戦。肝心なところで、店に女子高生集団が乗り込み、歌番組にチャンネルを変えられてしまう。
「あの、すいません、ボクシングにチャンネルを・・・・」
喫茶店店員「でも、こちらのお客様のほうが、大勢なんで」
仕方なく喫茶店を出る。商店街をうろつき、TVが外から見えたので、蕎麦屋に。
「あの、ボクシングのチャンネルに、変えていただけません?」
客の男が、「おれ、この○○って、歌手、見てんだよ」
また、店を出て、床屋に。
「あの、ボクシングのTV見たいんですけど」
「うちは、床屋なんでねえ」(順番待ちのお客用のTVてこと)
TVを求めて、夜の商店街をさまよう若尾文子は、次に家電店に。
「あの、6チャンネルのボクシングを、見せていただけませんか」
別番組のTVを示す家電店主、「これが6チャンだよ。ボクシング終わったよ。最後は、ボロカスにパンチ食らってねー」
青ざめる若尾。
恋人の家に行く若尾。
恋人の母・浦辺粂子に、「お母さま、あたし、ボクシングが嫌い、って、別れたんですけど、でも、今日の試合で負けた彼を見て、あたし、やっぱり、彼と一緒になりたいんです」
浦辺母は、不思議そうに、「あなた、何か勘違いなさってる。息子は、今日、逆転して、勝ちましたのよ」
おもしろい。平常運転の大映、井上梅次に、かくも緊密な、熱気を帯びた快作があったとは。
by mukashinoeiga | 2010-10-13 23:43 | 井上梅次:エンタメを呼ぶ男 | Comments(5)
既見、しかもこんな感想駄文まで書いているとはつゆ知らず(笑)「シネマヴェーラ渋谷的大映男優祭 坪内祐三とシネマヴェーラ渋谷によるセレクション」で、見てまいりました。面白いので悔いは無し。
若者たちの葛藤はそれなりにこなし、でもガキのケンカで深みなし、とはがり中年男女のしみじみした葛藤も重視。ここら辺の若者重視の日活から、大人重視の大映への転換。面白い。
山村聡も抜群にいいが、安部徹もいいなあ。東宝から出向のアラタマもいい。大映東京専属脇役陣大量出演、大映俳優辞典ともいうべき映画だ。ああ、楽しい。
昔の映画
私も昔のボクシングは大好きでしたが今日日はチャンピオン大安売り時代(モンドコレクション並み)ですのでいつしか観なくなりましたが。
この作品もみたかったんですが日程が合いませんでした、、、残念!
山村、安部はどんな関係なんですかね、インテリ対決でもするんでしょうか?
ボクシング中継を観るために商店街をさまよう若尾さんですか、いいですねぇ・・・
店に入る度に何か買わされたり髪の毛切ったりしていくうちにショートカットでラジオやら扇風機やら手に蕎麦で満腹状態の若尾さんなんてさぞかし魅力的なんじゃないかなぁ・・・
PS:浦辺嬢の若い時代の映像って存在するんですか?
>ボクシング好きなんですかね?
というより、当時超人気のスポーツ興行だったので。
山村、安部もさることながら、老け作りで好紳士を演じた船越の、アシストも光ります。
>店に入る度に何か買わされたり髪の毛切ったりしていくうちにショートカットでラジオやら扇風機やら手に蕎麦で満腹状態の若尾さんなんてさぞかし魅力的なんじゃないかなぁ・・・
そりゃコントですがな(笑)。
浦辺嬢の若い時代は戦前サイレントでほとんど残っていないと思いますが、トヨシロ「雁」では意外ときれいなバストを披露。顔に風呂敷でもかぶせ、例の特徴あるだみ声の喘ぎ声を禁止させれば、サセレシアさんならイケるかもしれません。妄言多謝 昔の映画
返信御無用とは言え、申請して審査費でも払えばどんなもんでも入賞できる怪しさが広まって、最近ではあまり見かけませんな。ネット検索すれば、これまでの入賞作リストがあるのかしら。しませんけどね。 昔の映画