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古沢憲吾「西の王将 東の大将」

 神保町にて。「喜劇映画パラダイス」特集。64年・東宝。
 西の王将・藤田まこと、 東の大将・谷啓が、同じ企業に新入社員として入社して、たがいに権を競い合う東宝サラリーマン喜劇。
古沢憲吾「西の王将 東の大将」_e0178641_416949.jpg このふたり、一ヶ月ずつ、研修、転勤、出向を繰り返して、大阪本社、東京支社、名古屋支社と、渡り歩く。
 それぞれの地には、浜美枝、新珠三千代、司葉子などの美女がいて、ふたりは仕事だけでなく、恋でも、競争を繰り返す。振られたり、だまされたり、利用されたり、の藤田と谷。
 代表作「無責任男」シリーズで知られる古沢演出は、とにかく一にも二にもハイ・テンション。例の植木等の「ブァーっと、行ってみよう!」、笑うのも「ぶぁっはっはっ」のC調スタイル、これは植木等だからさまになるので、どちらかというと、ローテンション体質の谷啓とか、藤田まこととかでは、やはり珍妙で。で、藤田は、やっぱり、テキトーに流して、というのも、なんとなく二のセンを維持してしまう。
 恐るべきは谷啓で、むりでも何でもハイテンション・キープ、躁状態を続けるのだが、普段のお目目しばしばも封印?して、目玉も見開きっぱなし、谷啓がこれをやり、その横に藤田がいると、なにか腹話術の人形めいてきて、だんだんこの世のものとは思えなくなってくる(笑)。
 しかし、この映画では、谷啓よりさらにハイ・テンションなのがアラタマだ。普段はしっとりした和服美女を得意とする彼女が、古沢演出のハイテンぶりに、やけくそで、異常なまでの明るさと、躁状態で。スクリーンのアラタマを見て、そのあまりの狂態にボーゼン。まるで何物かが憑依しているかのよう。はっきり言って、エクソシストか憑き物落としを、呼ぶべきレヴェル。
 あまりに真面目に?古沢メソッドに染まりきったアラタマに比べ、クールな司葉子や浜美枝は、通常をキープ。
 そして、物語は、これまた古沢メソッドに従い、たった三ヶ月の新入社員の主人公たちは、社長に認められ、係長心得に、早速の出世。この社長役が、曾我廼家明蝶。これまたハイ・テンションを常時維持するが、さすがは明蝶、軽く、サマになっておりますな。そして、社長秘書の園まりにクラクラのふたりは、彼女を追って、明るく街に消えていく。
 まあ、ハイテンションだからって、映画が面白くなるわけではないので。そこそこ、見られるプログラム・ピクチャア程度に、落ち着いてしまう。
 やはり植木等の偉大さ、古沢とのマッチングのよさ、に思い至る。

by mukashinoeiga | 2010-06-08 06:59 | 旧作日本映画感想文 | Comments(0)

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