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島耕二「十代の性典」若尾文子南田洋子澤村晶子江原達怡久保明

 神保町にて。「春よ!乙女よ!映画よ!」特集。53年・大映東京。
島耕二「十代の性典」若尾文子南田洋子澤村晶子江原達怡久保明_e0178641_19463274.png 若尾文子と南田洋子の出世作で、長いこと見たかったもの。特に若尾が他の映画のロケ中に、見物客から「性典女優!」と、声をかけられ、ブンむくれた、というあまりに有名なエピソードもあり、気になっていたものだ。
 で、ようやく見ることが出来た。
 ・・・・つまんねー。
 もちろん、60年前の映画だから、性的描写には一切期待してはいないのだが(笑)、それでも、ヒロイン澤村晶子が、男に襲われて倒れたとき、突風が吹き、ロングスカートが全部めくれる短いショットに、いまどきのアイドルにはけっして許されない<女優の覚悟>を見ましたね(笑)。
 ただ、この澤村晶子が大人顔の美人で、とても女子高生には見えない。学園ものなら、教師役、それもかなりヴェテランの女教師にふさわしい顔で。もちろん現在より見れば、当時の青少年は実に大人であった、という点を差し引いても。南田洋子も、ぼくが見た南田洋子全映画のなかで、最も美しい。でも、こんな大人顔の美人は、セーラー服、とことんに合わないよねー。
 やはり、若尾文子が、今の基準で見て、もっとも若々しい。実年齢も若く、おきゃんな役だからかもしれないが、口惜しいときに指をかんだり、かんしゃくを起こしたり、さすがうまいよね若尾文子。そして、こんなチンピラ女優なのに、早くも声といい演技といい顔といい、独特のセクシーさがあるんだもの、人気が出ないはずはないよ。若くても、鯛、な若尾。
 しかし、生理中に、若尾の財布を盗んだ南田洋子のエピソードは、きわめて中途半端で、だいいち性典的にはほとんど関係ないのでは。性典シーンに全然関係していないよ。
 それにしても、生理中に若尾の財布を盗んだ南田洋子より、その財布に入っていた若尾へのラブレターのほうが、教師の激怒を呼び起こすとは、さすが時代か。生理中に窃盗は良くあること、と教師は理解を示し、しかし同時に、男子生徒が女子生徒にラブレター、のほうが、許されざる罪のようだ(笑)。
 若尾にラブレターを送ったのが、いちおう二の線の江原達怡、それをからかう不良悪童が久保明、数年後東宝に移った二人は、役柄を逆転して、固定化してしまうのだが、その運命を考えると、実に味わいがあるキャスティングだなあ。

 映画を見終わったあと、隣町の九段下まで軽く散歩。靖国神社はすごい人出、桜の花びらよりも、酔っ払いや屋台のほうがにぎわっているのではないか。早くも毛布をかけて熟睡している女性もおり、平和やなあ。こんな大都会で、いくら身近に身内の人間がいるとはいえ、夜の外で熟睡できる女性というのも、日本だけではないのか。
 しかし、桜より人、の靖国に嫌気がさし、境内から出ると、通りに楚々と咲いて、誰にも省みられない街路樹の桜のほうが風情あり。
 ちょい、靖国の桜に欲求不満で、のんびりと千鳥が淵を目指す。ここもすぐ、近く。行って見て、呆然。
 満開の桜の枝枝のあいだから、満月の月。空は、薄く掃いたような雲のほかは晴れていて、しかも満月の周りにはかすかに雲があり、まるで朧月。
 朧な満月、夜だけど青空、桜。絶妙。まるで、江戸時代の千鳥が淵を歩いているみたいだった。
 一番近くのコンビニは、アルコール類全部売り切れ、つまみも少なし、少し戻って仕入れて、千鳥が淵の月と桜を堪能したのでした。

by mukashinoeiga | 2010-04-02 21:33 | 島耕二と行くメロドラ航路 | Comments(1)

Commented by mukashinoeiga at 2019-04-26 20:18
島耕二「十代の性典」若尾文子南田洋子へのセルフコメント。
たぶん「りささん以前」なので、あややとは呼んでないのね。今なら当然呼ぶんだけども。
 しかし最近当ブログに、外国語のトラックバックが多発して、それで過去の駄文が上位にきている。いったいなんでなんだ(笑)。理由がわからないのが気持ち悪い(笑)。  昔の映画
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