人気ブログランキング | 話題のタグを見る

鈴木清順「パンドラの匣」

 川島版、木下版、成瀬版に続いて、清順版「パンドラの匣」を妄想する。
 その登場人物を一覧すれば、

●ひばりの同室患者
ひばり   20歳男子。結核としては軽いほう、ちゃんと養生すれば半年後退院予定。
越後獅子  なにやら大物らしい、年配患者
つくし   まじめな妻子持ち・・・・しかし後にマア坊にラヴレター 
かっぽれ  美男子にして激情家のアンちゃん 何かと感激、興奮、泣いたり怒ったり
固パン   助手たちに人気の学生 
●助手・他
マア坊   18歳の看護婦。くるくる変わる気分屋。ひばりは、いいように振り回される。
竹さん   20台半ばの看護婦。美人で気立てのよい働きもの。実はひばりに・・・・
くじゃく  やたらと厚化粧ゆえこのあだ名の助手
キントト  他に助手として、うるめ、ハイチャイ、となかい、こおろぎ、カクラン、など    
場  長  この健康道場を独自の治療法で運営する院長
ひばり友  ひばりの文通相手。道場にひばりを見舞う好青年
ひばり父
ひばり母
越後~娘  越後獅子を頻繁に見舞いに来る
隣室患者  ひばりたちと、対抗する、にぎやかし集団

 で、清順版キャスティングは、
●ひばりの同室患者
ひばり    山内賢  
越後獅子  玉川伊佐夫  
つくし    宍戸錠
かっぽれ  野呂圭介  
固パン   高橋英樹    
●助手・他
マア坊   和泉雅子  
竹さん   野川由美子 
くじゃく   松原智恵子  
キントト   初井言栄      
場  長   緑川宏  
ひばり友  和田浩二  
ひばり父  芦田伸介
ひばり母  高峰三枝子
越後~娘  伊藤弘子 
隣室患者  桑山正一
       江角英明

【当時の評】木下、成瀬など名匠の映画に、日活アクションの娯楽監督が挑戦した。面白い試みだ。しかしこれはなんとしたことか。何の工夫もない、日活お得意のバンカラ青春ものに終始した。結核患者なのに病院内を大騒ぎなのは、川島監督作以上。誰一人として病人に見えないのは、あまりに情けない。これをごまかすため、下手な隈取などして、これで病人に見せようというのだから、なんとも図々しい。
 だいいち、全員が歌い踊る、ミュージカルもどきが、この映画に必要なのか。あまりに志が低すぎる。
 川島版「喜劇 駅前入院」で浪花千栄子、木下版「パンドラ園の乙女」で東山千栄子、成瀬版「飛行機雲」で中北千枝子、など代々?名女優が演じている孔雀役を、若い松原智恵子に演じさせるのも、不見識。彼女にもかわいそうである。

 当時の清順評としては、一部マニア誌を除いて、こんなもんであろう。
 だが、これは恐るべき傑作である。
 特に、白黒シネスコ画面いっぱいに展開する、キムタケ美術が見事。見事に狂っている。だいいち、昼間のシーン夜のシーンで、同じ病室のはずが、まるきりセットを変えているのだ。いくつかベッドの配置を変えているどころではなく、本当に別のセットとしか思われない。まあ、基本ベッドしか要らない簡素の病室では、あまり予算はかからなかっただろうが、しかもメインのセットは二階までちゃんと作っていて、それを清順演出は縦横無尽に使い倒している。特に夜のシーンの圧倒的素晴らしさ、時に繊細な、時に光量マックスの月光の、なんという。それなりに繊細の光の動きを見せるスピルバーグも、市橋容疑者のように裸足で逃げかねないすさまじさ。 
 奇怪な厚化粧の孔雀・松原智恵子も素晴らしい。「悪太郎」シリーズに続いての、主役三人も、いい。
 これも形相が変わっているので、一応?つきの緑川宏。清順映画にいくつか出ている日活大部屋俳優。代表作は、なんといってもこの一本、清順「けんかえれじい」の北一輝役。北村一輝じゃありませんよ。この彼が、場長として、ほとんどせりふはないものの、繰り返し病院内の窓辺や、柱の影にたたずむ。清順「河内カルメン」破戒僧や、清順の助監督経験がある監督(名前度忘れ)の「少女地獄」校長で印象的な、桑山正一隣室患者も徘徊し、奇っ怪感を増している。
 なお、タイトルは「パンドラ娘と野郎ども」に変更されている。

●追記● 【当時の評】で、不必要とされたミュージカルもどきには、次のナンバー。
♪高橋英樹と日活男声ボーカル「入院心得数え歌」
♪和泉雅子「洗面所で会いましょう」
♪山内賢&和泉雅子「二人の健康道場」
♪通りすがりのギターを抱いた牧童(カメオ出演の小林旭)「南北東西あとにして」
 ぼくにsongsf4s.exblog.jpなみのパソコンテクがあったら、この歌の数々も貼り付けられるのだが、まったく残念だ。これだけの歌をぶち込んで、青春の哀歓に訴え、なおかつ奇ッ怪なモダンホラーでありうるのが、すごいやね。
 なお、清順は東京出身ながら、旧制弘前高校に行く。太宰や川島とは逆の体験ながら、緑川宏?に、結婚と称して拉致される野川由美子が、ぱっくりと院内に出来た恐山に逃げ込むや、
♪野川由美子&初井言栄「私は恐山の女」を歌う。桜吹雪が舞い、腐りかけの林檎の実が乱舞する。ここに、その青森体験が生きたというべきか(馬鹿)。

◎こんなのも、あります(笑)◎
★成瀬巳喜男「パンドラの匣」★
★木下恵介「パンドラの匣」★
★川島雄三「パンドラの匣」★
★増村保造「パンドラの匣」★
◎本当の映画化作品◎
★吉村廉「看護婦の日記」★

by mukashinoeiga | 2009-12-20 09:11 | 架空映画妄想キャスティング | Comments(0)

名前
URL
削除用パスワード