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今井正「不信のとき」

 神保町にて。「目力対決・田宮二郎と天知茂」特集。68年・大映東京。
 ファースト・ショットを見ただけで判明、ああ、これ、前に見た映画なのね(泣)。でも、ぼくの脳みその記憶中枢のずさんさと、映画自体の面白さで、堪能いたしました。バカだと、おなじ映画で何度も楽しめる。
 一応社会派と喧伝される今井正の、思いっきり娯楽に振り切った快作。有吉佐和子原作の、とにかく女は信用ならない、本当の男親は誰か、というのは女親しか知らない、というシニカルな風俗劇。田宮の元愛人・岸田今日子、現愛人・若尾文子、本妻・岡田茉莉子、田宮の仕事/飲み仲間の三島雅夫の若い愛人・加賀まり子が、とにかくばかばか赤ん坊を産むのだが、みんな本当の男親が怪しい。
 一応二枚目、でもとことん女たちに翻弄されて周到狼狽の、二郎さんがとにかく楽しい快演。こういう二の線も三の線もいける役者が、いまいないんだよね。かなり線は細いが、堺雅人くらいか。
 そして、あなたに負担はかけないわ、だからあなたの子供が産みたいの、と最初はきわめてしおらしく、でも最後はお店を出すのに足りない三百万円、あなたから絶対もらうわ、と二郎さんが勤める会社の直属上司や、会長にまで直談判のこわもてぶり、いとも簡単に豹変する女を演じて、絶対的に日本一の女優・若尾文子の圧倒的素晴らしさ。「女系家族」でもおなじみの、悪女ぶり。
 いまから40年前の静岡で、たかがおにぎり屋を開くのに、三百万円不足とは、どういうこったい、ああそういえば、年末年始の阿佐ヶ谷の若尾文子モーニング特集で「東京おにぎり娘」という、彼女がおにぎり屋を開く映画があるのだが、これを見ればおにぎり屋の<開店費用>がわかるかな。
 とにかく若尾、二郎さんがめちゃくちゃ素晴らしいので、本妻役・岡田茉莉子がお嬢さん芸にしか見えない。なお、チラシにいわく「田宮はポスターの序列で会社ともめ、本作を最後に大映を去った」とある。ポスターの序列は見ていないが、実際の映画では、

       若尾 文子              
田宮二郎
       岡田茉莉子

と、いう感じで。出ずっぱりの田宮を差し置いて、若尾が主演格のイメージ。でも、左から読めば二郎さんが主役の感じ。微妙な配置。確かに二郎さんもうまいが、それを上回る、奇跡の若尾。

●追記●弟夫婦のいる静岡に戻り、女の子を産む若尾文子(あやこ)。娘は文化の日に生まれたので「文子(ふみこ)」と命名。しかし静岡の名山富士山にちなみ、田宮「でも富士子もいいなあ」。若尾「あら、文子(ふみこ)の方がいいわ」。若尾文子と並ぶ大映女優の2トップ・山本富士子と引っ掛けた楽しい楽屋落ち。田宮は筆で「命名 文子」と大書する。こういうのをしれっと演じる、ふたりの名演。特に若尾は絶品や。

by mukashinoeiga | 2009-12-09 22:35 | 今井正 青い左傾山脈 | Trackback | Comments(0)

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