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大塚稔「女の宿」

 京橋にて。「逝ける映画人を偲んで 2007-2008」特集。41年・松竹京都。
 その死までは、監督最長老だった監督の追悼である。時代劇専門のイメージのある大塚稔としても、異色の現代劇。撮影所としても初の現代劇だそうである。しかしぜんぜん違和感がないのはさすが。
 若いころの小暮実千代は、後年の妖艶さもない清純派で、しかも後年よりはるかに目が細い印象。大阪が舞台なのに、誰一人大阪弁しゃべらず。高田浩吉の友人役のヒモリンが一手にコメディリリーフを引き受け、笑わせてくれるので、まあ、見られた。
 洋裁店経営の小暮が「国防婦人服」デザインの賞に応募する。一等とって、賞金の千円はあたしのものよ、と自信満々だが、結果は選外18席って(笑)。映画のヒロインなのに、何よ、この中途半端は。しかもこの国防婦人服なるもの、質実剛健の無骨なスーツばっかりで。こんなの誰が着る。そもそも「国防婦人服」とは、誰が着るのか、どういうシーンを想定しているのか。現実の「国防婦人」会は、割烹着ともんぺがユニフォーム。割烹着ともんぺは、いわゆる<洋服>の、日本語への超<趙訳>で、あるわけで。こんな無骨、かつ(当時の一般日本女性にとっては)あまりに敷居の高いスーツ、ほんとに誰が着る、どういうTPOで、だったのでは。むしろこんなセンスの悪いコンテストに、あなたが上位入選しないのは、かえっていいこと、などと友人もいう。かくも時局に抵抗したせりふが堂々と通ってしまうのも、新鮮な感じがする。その友人役・北見礼子、ぴくちゃあ通信氏ブログによれば、林与一の母、その若き日の姿という。
 いや、とにかく、ヒモリン、だけだな。

by mukashinoeiga | 2009-08-22 23:02 | 旧作日本映画感想文 | Comments(0)

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