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出目昌伸「俺たちの荒野」黒沢年男酒井和歌子原知佐子赤座美代子清水元東山敬司

時代と寝た映画の面白さ?
 京橋にて「特集・逝ける映画人を偲んで 2015-2016」。69年、東宝。
 いや、昼の回夜の回ともがらっがら。猛烈な酷暑のなか他人様の追悼にでも出かけもしたら、下手したらわしらのほうがお陀仏じゃ、と老人連中も思ったと思しい(笑)。
 こういう法事は多少涼しくなった秋あたりがふさわしい。小津じゃあるまいに。まあ元お役人には、このあたりのキビは忖度できないか(笑)。

 さて、(以下、完全ネタバレあり)

e0178641_424041.jpg29俺たちの荒野(91分・35mm・カラー) (フィルムセンターHPより)
1969(東宝)(監)出目昌伸(音)真鍋理一郎 (原)中井正(脚)重森孝子(撮)中井朝一(美)竹中和雄(出)黒沢年男、東山敬司、酒井和歌子、原知佐子、赤座美代子、清水元、左卜全、草川直也、荒木保夫、佐田豊、横田米子、望月敦子、宮田芳子
米軍基地のある街を舞台に男女3人の青春の夢と挫折を瑞々しく描き、日本映画監督協会の新人奨励賞に輝いた出目昌伸の第2作。邦画斜陽期にようやく監督昇進を果たした出目は、藤本眞澄プロデューサーから打診された2作目の企画を蹴って、ひっそりと準備していた本作の脚本をぶつけ、役者をそのままスライドさせて実現にこぎつけた。(変色が追悼対象の方)

 ポスターの東山は似ても似つかないショットが採用されていて、悪意すら感じられる(笑)。

 日本映画監督協会新人奨励賞というものが、いかほどの権威を持つのか知らないが、いかにもさわやかな、かつモンダイ意識も少々ある青春映画を新人監督が撮りました、よしよしというところかしらん。たぶん、既成監督たちに牙をむいた新人は対象外か?
 主演トリオは、もともと暑苦しい黒沢年男が暑苦しさマックスの熱演、この酷暑にこの黒沢を見たら、確かにご老人熱中症になるわな(笑)。しかもフィルムセンター冷房ケチってるし(笑)。
 ヒロイン酒井和歌子は超かわいい。まさにアイドル女優の鏡。その彼女もセリフは声を張り上げる熱演。声を張り上げてもアイドル品質を維持。ほんまもんや。この役も相当暑苦しい役なのだが、それをサラリさわやかに演じてしまう。ほんまもんのアイドルや。
 東山敬司は、もー三浦友和クリソツな絵に画いた二枚目。友和が生き残って東山がなぜ生き残らなかったのか、男の身としては、ワカラナイ。単に時代のタイミングなのか。
 その男どおしが、少年のように、野っ原でじゃれ合うさまを延々と見せられるのも、もはや暑苦しすぎて閉口で(笑)。

 さてデメショー演出は、うまいのか。うまいことは、うまい。
 清順ファンとしては、アメリカ兵士相手の酒場での日米男女入り乱れての乱闘シーンに鈴木清順「東京流れ者」へのリスペクトを見るし、彼らの荒野の空がラストでは薄い黄色一色なのは、ともにリアル版清順ティストを妄想したりして。
 さらに男二人が網走番外地主題歌を歌ったり、やくざの仁義切ったり、いかに当時の若者に、あるいは東宝の新人監督に、東映映画が受け入れられたのか、わかりやすい。
 東宝若手が、当時の他社にあこがれの気持ちを持っているのは、よくわかる。いや、ひょっとして、この意図しない他社礼賛の結果が他社監督の支持も集めての、日本映画監督協会新人奨励賞(笑)。いや、ひょっとして、あり得るかも(笑)。

 東山敬司は、酒井和歌子にあこがれても、酒井が横たわって目をつぶっても、逃げてしまう。のちに黒沢にデキないんだ、つまり立たないんだ、とサウナの中でハダカ同士で告白する。これは童貞の逡巡か、二人の男が異常に仲が良いので、あるいは東山にはヘテロ志向が薄いのか。
 黒沢には腐れ縁の同棲相手・赤座美代子がいて、酒井和歌子を好きになった瞬間から、赤座が飽きてきて、疎ましい。
 同時に、処女酒井には立たない親友には、最初は赤座みたいなヴェテランに身をゆだね、練習してみたら、と赤座を貸してもいいという。
 ところが、いざ、それ(赤座X東山)が実現してみると、なぜか黒沢はブルー。同じ夜に黒沢は酒井とキスしている。チンピラたちに酒井を襲わせレイプさせようとした赤座に何の未練があるというのか。
 ここら辺の黒沢の心理が全く不明だ。単に深刻な青春の葛藤ブリたいだけか。東山への男の未練か。
 もしこの映画をルビルビルビッチが撮れば、二組のカップルの夫婦交換コメディとして、ハッピーエンドだろう。
 しかし残念ながら、日本の幼児的青春映画なので、はじめからバッドエンドは、約束されている。

 最後、男二人と女一人が子供のように無邪気に遊びまわるが、その中で男と女は二人だけでひそかに愛し合う。
 取り残された男は、親友とこころの恋人に同時に袖にされて、もう、死ぬしか、ない。
 ただ、それは悲劇にするためだけのお約束のように感じられるのが、このドラマの欠点だろう。


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by mukashinoeiga | 2017-08-10 04:04 | 旧作外国映画感想文 | Trackback | Comments(2)

西村潔「白昼の襲撃」黒沢年男高橋紀子岸田森殿山泰司

 渋谷にて。「岸田森」特集。70年、東宝。
e0178641_5471888.jpg 相棒格の弟分にも、「行き当たりばったり過ぎるよ。もっと計画立てなくちゃ」と批判される、直情型アマチュア犯罪者・黒沢年男の顛末。
 まだ若いのに似合わず、妙に目の据わった黒沢は、男くささと同時に、甘さのあるキャラ。
 その弟分は、女には興味のないゲイという設定だが、「そういうシーン」がまったくないのは、時代だなあ。
 メチャクチャ可愛いヒロイン高橋紀子は、なぜか、当時、人気につながらなかった。典型的な「可愛いだけじゃ駄目なのよ」女優か。本作では、早くも劣化したようで、隠れ紀子ファンとしては、残念。
 なお、この種のハードボイルド犯罪モノとは、水と油な筋違いの、若者の意見を聞くラジオ街頭インタヴュー風景(下ユーチューブ映像にもその一部あり)が冒頭に。これを離れたベンチに座って、遠くから眺めている黒沢と高橋紀子が、互いを見初めるのだが。
 明らかに時代と寝ている若者のしらけ発言だが、まあ、不用意な出会い設定だなあ。

白昼の襲撃 日野皓正スネイク・ヒップ


 なお、岸田森は、怪我をした黒沢年男を拾い、子飼いの部下にするヤクザ。
「俺は、親兄弟、仲間、お国を裏切らない」と豪語するヤクザの親分(殿山泰司)の下に仕え、上納金をちょろまかして、私設軍隊(国家転覆を目指す左翼お花畑)を、ひそかに育成している。
 これは、この当時、右翼系総会屋が、全学連崩れの左翼お花畑に編集させた論壇誌が複数出ていた状況そのまま。
 右翼系総会屋としては、<企業広告>を取る<器>としての<ちゃんと本屋で市販される月刊誌>が必要なだけなので、その論調が<左巻き>であったとしても、ノープロブレム。むしろ左巻き編集者が<反資本主義>ゆえに企業攻撃記事を書いてくれるなら、なおさら好都合という図式だ。
 まあ、もともとは右翼系なんだから、右翼系論壇誌があればいいとは思うのだが、この70年間の<戦後レジーム体制下>では、明らかに左巻き論調が絶対であり、売れていたのだからしょうがない。
 言論界、学会、教育界では、左翼にあらずんば、人にあらずの時代だったんだから。

 この岸田森とその愛人・緑魔子のカップルを見ていると、アニメ「クレヨンしんちゃん・モーレツ大人帝国の逆襲」のケンとメリーのカップルに、クリソツで、彼らが出てくるたびにニヤニヤ。

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by mukashinoeiga | 2014-05-05 12:01 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(2)