大林宣彦「異人たちとの夏」風間杜夫秋吉久美子片岡鶴太郎名取裕子永島敏行

郷愁絶品、強襲オノミチ、もといイマイチ。そもそもやさしさファンタジーの善人大林が、鶴太郎・秋吉パートは絶品ながら、悪意満載のホラーを撮れる体質ではまるでなく、まあ幼児向けお花畑ホラー「HOUSE」は成功させても、本作のアダルトホラーの名取裕子パートの失速はやむを得まいて。
 水と油映画祭てなものがあったら、本作は真っ先に選ばれよう。
e0178641_945516.jpg 池袋にて「新作『花筐/HANAGATAMI』完成記念! ワンダーランドの映画作家 大林宣彦映画祭2017」特集。88年、松竹配給。

 ロードショー時には、地元映画館の映写だったので、場内見回りと称して、何十回となく、特に鶴太郎・秋吉パートを、立ち寄り観察しておりました。でも名取パートには、一回も入らなかったな(笑)。
 なとりの珍味は、大好きだけど、当時のぼくには、名取裕子は珍味過ぎて良さがわからなかった。ジジイになった今見ると、結構セクシーでいい女じゃん、とも思う。でも、まあ、やはり、顔が好みではない(笑)。演技は認める。て、完全に上から目線やね。

e0178641_94645100.jpg異人たちとの夏 監督:大林宣彦 (Movie Walker HPより)
1988年 松竹 108分
原作:山田太一 脚色:市川森一 出演:風間杜夫 秋吉久美子 片岡鶴太郎 名取裕子 永島敏行 ベンガル 笹野高史
原田英雄(風間杜夫)は40歳のシナリオ・ライター。妻子と別れ、今はマンションに一人暮らしをしていた。ある日、原田は幼い頃に住んでいた浅草に出かけ、偶然、死んだはずの両親に会ってしまう。二人は原田が12歳の時に交通事故で死亡したが、なぜかその時の年齢のまま、浅草に住んでいた。原田は懐かしさのあまり、浅草の両親の家へたびたび通うようになる。一方で、原田は同じマンションに住む桂(名取裕子)という女性と、愛し合うようになっていた。

 映画初出演の、柄にあった鶴太郎の絶品。
 ヤンキーな下町のお母ちゃんを、これまた絶品の品の良さで演じる、離れ業の秋吉久美子。
 大林監督トークによれば、
「当初は、久美子ちゃんは、名取裕子さんの役にキャスティングされていた。それをぼくがこれはちがう、と風間杜夫のおかあさんの役に変更した」
 というが大正解。
 そして年下の両親と「再会」して、驚きつつ甘える風間杜夫も、素晴らしい。

 ただ本作の瑕疵は、やはり名取パート。しかしその原因は名取裕子では、ない。いつも演技が不安定かつ、なんでこんなに風間を助けるんだ、と意味不明な存在の、永島敏行だ(笑)。これぞご都合主義の最たるキャラだ。まあ、そういっちゃうと、両親との再会もご都合主義なんだけども(笑)。
 無いものねだりでいえば、浅草パートは大林でも、名取パートは、他の監督にしてもらいたかった。清順?中川?テリー石井?池田敏春?石井隆?

異人たちとの夏-予告編-

 ユーチューブのコメント欄にもあったが、ほんとに下手な予告。二つもネタバレと、いう(笑)。松竹が本当に映画を理解していなかったのが、バレバレ。
水野晴郎 解説 "異人たちとの夏"

 地上波TVでの映画放映最後の輝きか。とはいいながらヴィデオ勃興の影響避けられず、あまり意味なさそうな番宣パンフの配布という。
「異人たちとの夏」ー回想

「異人たちとの夏」ー不思議なひと夏のすべての始まり

異人たちとの夏


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# by mukashinoeiga | 2017-09-07 09:47 | いつか見た時をかける大林宣彦 | Trackback | Comments(2)

大林宣彦&秋吉久美子@池袋新文芸坐トークショー大林宣彦映画祭2017

闘病中でも饒舌な大林宣彦(笑)。
e0178641_514454.jpg 池袋にて「新作『花筐/HANAGATAMI』完成記念! ワンダーランドの映画作家 大林宣彦映画祭2017」特集。
 本特集の大林映画は、最近作は敬遠して(笑)ほぼほぼ見ているのだが、その初日に、未見のTVドラマ「可愛い悪魔」(1982/112分/16mm/TV作品)を見に行く。同時上映は「異人たちとの夏」(1988/108分/35mm)。
 で、この両方に出ている秋吉久美子のトークショーもあり、「安倍さんに頼んで、ノアの方舟に乗せてもらいたい」など元祖不思議ちゃんらしい?トーク。
 で、司会の樋口尚文が「実は大林監督がおいでになって最後列に座っておられます。現在がんなどの闘病中で、本来ならこのステージに上がってトークに参加していただきたかったのですが、この(ステージへの)階段を昇ることも危険な状態なので、席に座ってご挨拶してもらいます」
 ということで着席しながら、しゃべる大林監督。観客はいっせいに後ろを向き、監督の姿を探す(笑)。
 声はかすれ、衰えているが、とにかく、例によって延々としゃべるしゃべる。秋吉久美子が「あたしは話が長い」といっていたのを受けて「僕は久美子ちゃん以上に話が長いので」と、病を押して延々しゃべりまくり、秋吉久美子トークのはずなのに、後半ほとんど久美子トークなく時間切れ(笑)。
 二三の心ない観客が「ステージに上がればいいのに」「立ってしゃべればいいのに」とつぶやく声が意外と大きく聞こえる。

 大林監督のコメントは、
 「異人たちとの夏」では「当初は、久美子ちゃんは、名取裕子さんの役にキャスティングされていた。それをぼくがこれはちがう、と風間杜夫のおかあさんの役に変更した」
 「可愛い悪魔」でも「当初久美子ちゃんが犯人役に想定されていたが、被害者役に変更した」
 これはその前の秋吉の発言、
「最初「可愛い悪魔」という台本を見たら、この「可愛い悪魔」があたしの役なんだと、思ったら、違った」
「(「異人たちとの夏」で)なんで、あたしが下町のお母ちゃんなのか疑問だったが、初日にあのセットに入ったら、すっと溶け込めた」
を、受けたものか。
「これからぼくも30本は映画を撮りたい」といい、秋吉久美子は手で顔を覆って涙ぐむのだが、女優の演技と疑われるので、これは個人的にやめてほしいと、思いました(笑)。
 最後に、マイクを返された大林が、席から立ち上がり、秋吉へのエールの想いで地声で「はい、よーい、スタート!」

(なお、各発言はぼくのあいまいな記憶力によるうろ覚えで、全く正確性を欠いた記述であることをご理解いただきたい)
 「可愛い悪魔」「異人たちとの夏」については、後日感想を駄文します。

e0178641_5143759.jpg なお映画.com「大林宣彦映画祭2017」9月3日開幕!秋吉久美子、最初はイヤだった「異人たちとの夏」で検索していただけると、別取材の秋吉久美子発言が読め、こちらも面白い。
[映画.com ニュース] 末期がんを宣告されながら、第43作となる最新作「花筐」(12月16日公開)を完成させた“映像の魔術師”大林宣彦監督。そんな大林監督にエールを送ろうと企画された「~ワンダーランドの映画作家~ 大林宣彦映画祭2017」が9月3日から同17日まで東京・池袋の名画座「新文芸坐」で開催される。DVD化されていない貴重な作品を含め全29作品を上映。大林作品ゆかりの俳優によるトークショー(聞き手は、すべて映画監督、映画評論家の樋口尚文氏)もある。9月3日に登壇する女優の秋吉久美子に、大林作品の舞台裏や魅力を聞いた。(取材・文・写真/平辻哲也)(以上前文引用終わり)

 そういえば、はるか昔、旧文芸坐の寺山修司オールナイトに行ったら、想定外?の寺山修司トークがあり、聞けば入院中の病院から抜け出して文芸坐に来たという。文芸坐、病人に無茶しすぎ(笑)。

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# by mukashinoeiga | 2017-09-06 05:16 | いつか見た時をかける大林宣彦 | Trackback | Comments(0)

山本弘之「第五列の恐怖」轟夕起子中田弘二永田靖見明凡太郎伊澤一郎潮萬太郎水島道太郎北龍二

超レア物だが、内容は、うーん。
 阿佐ヶ谷にて。「昭和の銀幕に輝くヒロイン 第86弾 轟夕起子」モーニング特集。42年、日活多摩川。
e0178641_6495140.jpg 通常は一週間上映の阿佐ヶ谷だが、フィルムセンターから借りたプリントは、三日しかできない縛りがある。平日最終日に行ったら、上映一時間前に、すでに長蛇の列(阿佐ヶ谷レヴェルではね)。
 案内の人から「補助席になりますが」、とりあえず並ぶ。その後もどんどん客が来て、返されていく。お詫びの轟夕起子しおりをもらって。
 おそらく三日間で、延べ百人近くは、見れなかったのではないか。
 場内に入ってみれば、なぜか普通席が一つ空いていたので、そこに座った。おそらくぼくの前にいた人が一人列から離脱しているので、そのせいか。「第五列の恐怖」を見に行って、列に並ぶ。

e0178641_6502621.jpg第五列の恐怖 (ラピュタ阿佐ヶ谷HPより)
1942年(S17)/日活多摩川/白黒/64分 ○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
■監督:山本弘之/原作・脚本:北村勉/撮影:内納滸/美術:仲美喜雄/音楽:飯田景應
■出演:中田弘二、永田靖、見明凡太郎、伊沢一郎
第五列(=スパイ)への警戒を国民に呼びかけるため製作された戦争映画。日本で新開発された無音発動機をめぐり、轟夕起子扮する女スパイ・YZ七号が破壊活動を計画。それを阻止するため憲兵隊は必死の捜査に乗り出すのだった…。轟が初の悪役に挑戦した異色サスペンス。めったに上映されない映画で、今回の特集上映の超目玉作品。

 なお相変わらずこの映画解説はヒドイ。本作はスパイ映画であっても、戦争映画では、ない。偏見で勝手に映画をカテゴライズするな! 007を戦争映画というか。言わないだろう。

 始まって十数分は、実に大勢の人物が同時に登場して右往左往。誰が誰だかわからず混乱するが、これは演出家の無能だ。ヤマサツやミッキー成瀬程度(笑)の交通整理能力を欠いている。
 時間経過とともに、落ち着くが。
 驚くべきは、轟夕起子の演技。通常の愛らしい、アイドル女優演技で「悪役スパイ」を演じる。まあいかにも悪役悪役していたら、スパイは務まらないか(笑)。
 ターゲットの航空機社長・見明凡太郎の娘に取り入り、そのホームパーティーに何食わぬ顔で「潜入」した轟が最新情報を得て、即興でピアノを弾く。そのピアノ曲を盗聴している外国人スパイ、ジェームス・ペインタース=高田弘(いかにもバタ臭い外人顔)が音符暗号を解読する。って、まんまヒッチコックやないかーい(笑)。
 ピアノが弾けて、なおかつ反日スパイらしい?適度なバタ臭さ?というところで轟が選ばれたのか。和風の花柳小菊では、イメージに合わないということかしらん。

e0178641_651158.jpg なお検索で見つけた映画収集狂というブログでは、

この轟夕起子演ずる女スパイのコードネームを「Y-27号」といいますが、「Y-27号」とは、どこがで聞いたような番号だな、と考えていたら、思い出しました。
ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督「間諜X27」でディートリッヒ演ずる女スパイのコードネームが、まさにX-27号でしたよね。なるほど、なるほど。
僕は、はたして当時の日本映画に「分野としてのスパイ映画」を娯楽として成り立たせ得るような欧米に匹敵する成熟した大衆的な土壌があったのかと疑問に思い続けていたので、この命名といい、シュチエイションといい、欧米作品を全面的に拝借した手掛かりを得て、なんとなく納得した気になりました。
また、この映画が憲兵隊司令部から特別な表彰を受けたということからも察せられるように、あるいは、作られた1942年の戦局が厳しく切迫した状況にあったことを加味しても、軍部が苛立ちをつのらせて大衆に大きな影響力を持つ防諜映画に眼をつけ、「肝いり」したと考えたほうが、あるいは自然かもしれません。
この作品、当時はあからさまな酷評もありましたが、国民の防諜観念を向上させたとして憲兵司令官より感謝状も授与されたということと、映画統制によって新会社大映に統合される前の、日活多摩川撮影所名義の最終作としても記憶されるべき貴重な作品と言えます。(以上引用終わり)

 正確に轟のコードネームは、YZ7號。映画収集狂さんはZを2と「誤読」したように思うが、いずれにしても誤読させるように「間諜X27」をパクったのは、間違いなかろう。ディートリッヒのような大スタアもスパイ役を演じている、という一言は、当時の清純スタアに、本作出演を後押しする格好の口説き文句だったろうし。

 なお本作のデータについて検索したが、文化庁の日本映画情報システムHPは、他の映画を検索したときもそうだが、全くの役立たず。典型的お役所仕事の税金泥棒。ひどさもひどし。みたら笑っちゃうレヴェル。
 日活作品データベースは、さすがに詳しい。

撮影所稟議書によれば撮影=糸田頼一となっている。2003年6月6日フィルムセンターで上映(ロシアからの返還フィルムの1本として)。現存フィルムはカット入れ替り、シーンダブリ等あり、1/3位欠落した不完全版であるが、ストーリー理解は可能"(現代劇)
監督山本弘之 キャスト野口少佐(憲兵隊長)=中田弘二 森本光雄=伊沢一郎 小柳二郎=北龍二 YZ7号=轟夕起子 平田淑子=国分みさを 寺田中尉=永田靖(特別出演) 昭和航空機社長・平田兵衛=見明凡太郎 航空会社専務=村田宏寿 水田=水島道太郎 門衛=小宮一晃 渡辺伍長=笠原恒彦 森本の母=三井智恵 スコット牧師=吉井莞象 金山鉱三=斎藤紫香 江川運転手=潮万太郎 ジェームス・ペインタース=高田弘 長野軍曹=菊地良一 車掌=井上敏正 ボーズ=富士木弘 渥美君子 若原初子 町田博子 文野朋子 小林桂樹 
脚本北村勉 音楽飯田景應 その他スタッフ原作/北村勉 撮影/内納滸 糸田頼一 美術/仲美喜雄 編集/辻井正則
<ご注意>戦前の製作作品(1942年以前)は、資料の不足などの事情により、当HPのデータの内容が必ずしも正確なものとは限りません。
製作国:多摩川 製作年:1942公開年月日:1942/4/16 上映時間ほか:モノクロ/94分現存分数66分/スタンダード・サイズ/9巻/2580m(以上引用終わり)

 製作国:多摩川は、ご愛敬だが、驚くべきは、ランニングタイムの三分の一が失われた不完全フィルムとのこと。
 同時上映の島耕二「暢気眼鏡」は[不完全]と明記している阿佐ヶ谷も、フィルムセンターとずぶずぶの文化庁も明記なし(わかる人にはわかる9巻という表示で手がかりつかめって>1巻は約10分)。

現存フィルムはカット入れ替り、シーンダブリ等あり 確かにおかしい繋ぎは散見しましたが、これってなんのせい? 当時の映写技師が、フィルム切れの際、いい加減につないだってこと? 確かにそれはありそうだが。

 なお戦前戦後を通じて数多くの脇役陣が多数出演の豪華さ。OLD映画ファンにとっては、うれしき限り。ただし最後尾の小林桂樹については確認できず。電車内で新製品の噂をする職工風の男の一人だろうか。
 なお令嬢役の国分みさをには、別データベースでは、國分ミサヲという表記もあり。ここら辺があまりプリントもデータも残っていない戦前映画の難しい/面白いところ。

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# by mukashinoeiga | 2017-09-03 06:51 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(2)

映画流れ者に危険な記事を(笑)載せました

 当ブログに乗せると、いろいろな意味で危険な記事を、関連掲示板の映画流れ者に、載せました。
 まあ、開いてもがっくり(笑)なので、開かないように(笑)。
 でも、この現象についても、ご意見聞きたいですね(笑)。

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# by mukashinoeiga | 2017-09-01 19:13 | 業務連絡 | Trackback | Comments(2)

菅井一郎「泥だらけの青春」三國連太郎乙羽信子高杉早苗山内明小杉勇植村謙二郎加東大介伊藤雄之助滝沢修

面白い映画業界内幕モノだが、イマイチ不発。それもそのはず、これからも業界で生きていかなければならないスタッフキャストが、どぎつくバックキャメラ?を暴くわけにもいかず、くすぐり程度でお茶を濁さざるを得まい。
 阿佐ヶ谷にて「一役入魂 映画俳優・三國連太郎」特集。54年、日活。

e0178641_2413081.jpg泥だらけの青春 (ラピュタ阿佐ヶ谷HPより)
1954年(S29)/日活/白黒/93分 ※16mm
■監督:菅井一郎/脚本:新藤兼人/撮影:峰重義/美術:水谷浩/音楽:伊福部昭
■出演:乙羽信子、山内明、高杉早苗、小杉勇、植村謙二郎、加東大介、伊藤雄之助、滝沢修、清水将夫、三島雅夫、石黒達也
エキストラから人気スタアへ、一人の青年俳優がたどる華やかな道とその転落──。名バイプレイヤー・菅井一郎の第一回監督作品。松竹→東宝の移籍騒動でマスコミを賑わせた三國連太郎、本作への出演で今度は「五社協定違反第一号」に。

 Movie Walkerの本作スタッフ紹介にアッと驚く。スクリプター 吉村公三郎って(笑)。
 実際の画面上のクレジットは、演出看守、もとい演出監修。
 確かに吉村が出身の戦前松竹では、助監督がスクリプターを兼務していたと聞く。だから、スクリプトはお手の物だろうが、これひょっとして、スクリプターとしてぴっちり現場に張り付きつつ、演出監修していた、ということだろうか。
 新人監督にとって、嫌な現場だなあ(笑)。しかも脚本は、新藤だし、美術は水谷浩だぜー(笑)。主演は業界の問題児だし(笑)。
 映画の中の管井同様のほほんと受け流していたのだろうか。
 俳優出身監督だと出演も兼ねるのだが、本作では自身は出演せず。ただ、やはり俳優出身監督の常として、ほんの数ショットの脇役に、有名俳優多数出演。本作にも超贅沢なご祝儀出演てんこ盛りで。まともにギャラを払っていたら、それだけで赤字だろう。
 映画監督役に小杉勇、だが本作は業界内幕モノというより、人情ドラマに力点を置いてるので、さして見せ場なし、相変わらずの珍獣扱い。スケベ重役の三島雅夫の役名が根岸重役って。
 宣伝部の加東大介部長、ヒラ宣伝部の下絛正巳(最高にチャラい)。プロデューサーの石黒達也も最高にクール。高杉早苗らが囲む雀卓に「さあ、カモが来ましたよー」と、座り込む。

 三国連太郎はいささかワイルドだが、日活はこの数年後、ワイルドではあるが、三国よりはたいぶソフトな戦後派やんちゃスタア石原裕次郎という大鉱脈を掘り当てる。先輩女優スタアと割りない仲になる点も同じ。
 もし頭の良い日活プロデューサーがいたら、何らかの撮影の前に、この、わがままを言って転落する若手スタアを描く映画を、裕次郎や旭に参考上映として見せたのではないか(笑)。だとすれば本作自体はさしてヒットしていなかろうが、日活にとっては、値千金映画だったかも(笑)。
 まあもっともそれに主演したのが業界の横紙破りの連太郎だが、そこはそれ、お前に連太郎ほどの腹はくくれるのか、と。
 上の写真でお分かりのように、この時代の男性スタアとしては髪はぼさぼさだが、役作りか、この頭で打ち合わせに現れて、これで行こうということか。
 結局はスタアになった連太郎に捨てられる乙羽信子だが、かわいいけど儚さが皆無な、どっこい生きている女優だけに、より堅実スタアになった山内明に、ちゃっかり乗り換え感が半端ないぞ(笑)。

 舞台となった新日本映画撮影所廻りは、あからさまに日活だが、東亜映画撮影所ロケは、どこかな。

★Movie Walker★に、タイトル検索で詳細な作品情報あり。簡単な作品解説、あらすじ紹介(企画書レヴェルの初期情報の孫引きゆえ、しばしば実際とは違うが)。
 なお本作のMovie Walkerキャストには、三国の母に北林谷栄がクレジットされてるが、下絛正巳が三国に「お母さんが上京してきた」と告げるシーンはあるが、頭がカッカしているので完全無視。カットされたのだろう。

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# by mukashinoeiga | 2017-08-30 02:43 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)