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萩原遼「乱れ星荒神山」

 京橋にて。「よみがえる日本映画vol.2 東映篇-映画保存のための特別事業費による」特集。50年、東横映画。
 吉良の仁吉、という名前はよく出てくるし、知っていたが、こういう話だったのね。講談や浪曲でおなじみの話らしいが、ぼくの記憶にある♪吉良の仁吉は男でござる♪、浪曲出身の村田英雄の、遠い記憶の流行歌で。
 弟分・高田浩吉が、入牢している間に、高田のシマ・荒神山の宿場を、兄貴分の進藤英太郎に盗られてしまう。任侠の道にもとる、と加勢する吉良の仁吉(市川右太衛門)。その出入り。これだけなら、ローカルな揉め事なのだが、<たまたま、この地に来ている、清水次郎長一家グループ>も、義侠心から加勢しようとする。いや、これで、華やかになりました。
 モンダイは、仁吉の恋女房(という言葉が、昔はありましたな)山田五十鈴は、進藤英太郎の実の妹。
 兄と決着をつけるため、泣く泣く恋女房を離縁して、ことにのぞむ。
 納得できないのは五十鈴、争いはやめて、あたしはあなたの女房よ。
 仁侠映画の定番、義理と人情、その板ばさみですな。
 この争いに、講談師・杉狂児が、従軍記者。「いやあ、講談師見てきたような嘘をいい、といいまするが、実際にこの目で見て、リアルな話を語りたい」と。かくて講談「荒神山」の誕生とあいなる。
 もちろん、マキノ・山中に比べれば、はるかに凡匠な萩原遼だから、ストーリーをなぞるだけの凡作なのだが。これがマキノなら、涙腺崩壊になるべき題材で。
 特に山田五十鈴に、やくざの出入り、暴力沙汰を、しつこく批判させるのが、噴飯もの。日本映画に復讐暴力ものを禁じた、GHQの御意向そのままを忠実に映画化した、<おきゅ~・じゃぱん>(occupied JAPAN)そのもの。これを、マキノなら、いかに<回避>したのだろうか。
 最初と最後を締める、枯淡の古武士・月形龍之介の、いつもの味わい。
●追記●<義理の兄>と、出入りがある場合、<恋女房>の扱いは。
 これが現代であるならば、これこれこういう理不尽な、お前さんの実の兄と対決する。
 兄の側につく、もしくは中立の立場なら、離婚する。
 俺の側について、兄と決別するなら、夫婦の関係はこのまま。
 そういう風に持っていくだろう。ところが、昔の<あらまほしき人間関係>は、オール・オア・ナッシング。女房がどう思おうが、すっぱりさっぱりすっきりと、男伊達。いちいちゴタクなんぞ、抜かすない、というところか。男は、ゴタク=五択、じゃねえ、すっきりさっぱり、一択だぜえ、というところか。
 そこで、泣かすのが、マキノ。

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# by mukashinoeiga | 2011-06-14 21:36 | 旧作日本映画感想文 | Comments(0)

1952年日本映画ベストテン

  FJMOVIE年度別ベストテンを、再利用して、歴代ベストテンを、続けます。
詳しいことについては最初の【~1945年以前・戦前編】を参照ください。では。

1952年日本映画ベストテン_e0178641_1545242.jpg1位 「生きる」 黒澤 明 志村喬 日守新一 小田切みき 中村伸郎
 黒沢明宴会映画3部作の一本にして、唯一の爆笑編。
志村喬の通夜なのに、遺族の哀しみを完全に無視して展開される、オヤジ公務員たちの、自分勝手の酔態描写には、もー爆笑するしかありませんな。
 そして、その映画人生のすべてにおいて、ストーカー描写への偏愛を示す橋本忍脚本(共同)は、ストーカー描写全開。まず志村喬の、小田切みきへのストーカー行為。世間的了解のうちの<善意の映画>だとしたら、とうとう 彼女が通夜に来ない理由が説明がつかないではないか。彼女は、志村喬が気持ち悪くて仕方がなかったのだ。そして公園を作ることに難色を示していた同僚公務員に意見を変えて貰うために志村がしたことは、ただ、じっと同僚のそばに恨めしげに立っていることだけだったのだ。
 これをストーカー行為 と呼ばずしてなんと呼ぶのだ。こんな嫌がらせだけで、税金の使い道を変更するような公務員も最低だし、冬の雪降る深夜にブランコをこぐ老人を、どう見ても当然保護すべき警官がへらへらと見逃したのは、職務怠慢による未必の故意で、さらに言えばブランコに乗ったまま死んだ公務員志村は、そののちこの公園を使うだろう子供たちに対して、気持ち悪いトラウマと都市伝説を残したいやみな奴としかいえないだろう。
 おそらく、橋本忍脚本(共同)レヴェルでは、あるいは悪意の物語だったのかもしれず(本当か>笑)それを幼稚園児並みの善意の黒沢が、世間的にかろうじて<感動と涙の物語>に偽装したのだろうか?
 とにかくこの映画を、コメディとして見た者としては、なぜこの映画で泣けるのか、とくと説明して貰いたいものだ。
【補足】詳しくは、当ブログの特集<黒沢明映画の正体>にて。

1952年日本映画ベストテン_e0178641_1552291.jpg2位 「おかあさん」 成瀬巳喜男 田中絹代 香川京子 加東大介 岡田英次
 とにかく楽しくて、幸福で、いつまでもいつまでも見ていたい、まい・ふぇ いばりっと成瀬。楽しい嬉しい岡田英次というのも空前絶後かも。 助監督・石井輝男の「続おかあさん」も作って欲しかった(泣)
【補足】いかにこの映画がジェットコースター・ムーヴィーか、詳しくは、当ブログの特集<成瀬巳喜男映画の正体>にて。

3位 「西鶴一代女」 溝口健二 田中絹代 三船敏郎 宇野重吉 菅井一郎
 完璧な映画。ただし、溝口らしく、面白くもなんともない。

4位 「稲妻」 成瀬巳喜男 高峰秀子 三浦光子 浦辺粂子 村田知英子
【補足】FJのHPの「稲妻」ページが、開けず。管理人のミスか。たぶん、コメントしていたと思う。成瀬的傑作。

5位 「お茶漬の味」 小津安二郎 佐分利信 小暮実千代 鶴田浩二 笠智衆
 文字どうりお茶漬けサラサラと、かるーくかるーく楽しめる。
【補足】なんなの、この手抜き感想は(笑)。小津的快作。詳しくは、当ブログの・・・・

6位 「とんかつ大将」 川島雄三 佐野周二 美山悦子 長尾敏之助 津島恵子
 松竹時代川島のウェルメイドほのぼのコメディ。
主人公がとんかつ大好きというだけで、とんかつはあまり関係ない。本作で三次弘次、「こんな私じゃなかったに」で日守新一、「女優と名探偵」で河村黎吉、と戦前松竹名物脇役陣を上手く使っていて、とても嬉しい。

7位 「カルメン純情す」 木下恵介 高峰秀子 若原雅夫 淡島千景 小林トシ子
 ちっとも笑えないコメディ。
【補足】まず、体制批判が先にありきで、これを人気の前作の高峰キャラに合わせて、1本撮ろうとしたのだろうが。叙情派の社会批判は、やはり、お花畑ということか。コメディとしても不発。

7位 「お国と五平」 成瀬巳喜男 小暮実千代 大谷友右衛門 山村聡 田崎潤
 時代劇なのに、ただひとり現代人の山村聡が異色で、笑える。
【補足】当時はストーカーという言葉がなかったので、山村總のキャラは、おそらく理解不能のへんてこさだったのだろう。それをストーカーと認識できれば、答え一発のわかりやすさ。それまでのマジメな時代劇をくつがえす、山村總の突如の登場、いかにも成瀬なコメディーだった。

9位 「真空地帯」 山本薩夫 木村功 利根はる恵 神田隆 加藤嘉
【補足】この当時未見ゆえ、ノーコメント。最近見て、このブログに感想書きましたので、ごらんあれ。評価高すぎの、まあ左翼たちの仲間ぼめ、で左翼はマスコミの主流ゆえの、高評価か。ヤマサツ版「キャリー」。

10位 「あの手この手」 市川 崑 久我美子 森雅之 水戸光子 堀雄二
 まあまあ面白い。
【補足】小津「淑女は何を忘れたか」川島「女であること」と、同じ話。出演者もかぶる。

 なお、以下については、投票者がおそらくひとりとかで、順位・コメント 、残っておらず。
11位 「こんな私じゃなかったに」【補足】まあまあ、面白い川島。一部、爆笑。  
12位 「山びこ学校」【補足】これも評価高すぎのヘンな映画。この前感想書きました。 
13位 「虎の尾を踏む男たち」【補足】よく、聞き取れない。ッて、ここにあるということは、この年初公開か。  
14位 「三等重役」【補足】河村黎吉とモリシゲ、もっと見たかった。    
   「現代人」【補足】んー、いまいち、ほめられすぎだろ。通常作だろ。    
   「箱根風雲録」【補足】ヤマサツとしては、地味な凡作。
   「原爆の子」【補足】記憶に残っていない。
  「娘はかく抗議する」【補足】川島の、それなりのコメディ。この頃は、この手が多い。

 なお、この年のこれ以外の作では、
「本日休診」【補足】評価されすぎの、通常作。
「風流活殺剣」「魔像」【補足】たぶん、見ていると思うが(笑)。
「相惚れトコトン同士」「明日は月給日」【補足】ともに川島。後者は、かなりの快作。笑えます。
「息子の青春」【補足】小林正樹。デヴュー作としては、まあまあ。助監督の今村昌平が、この時期性病をわずらい「これがホントのムスコの青春だ」と言ったら、脚本・木下恵介の忌避に触れた、というエピソードも。

「若い人」「足にさわった女」【補足】この頃の市川崑は、やや不調。
「安宅家の人々」【補足】さすがの船越も、知障演技は微妙。吉屋信子原作らしい、田中絹代・乙羽信子のシスターフッドも。
「二人の瞳」【補足】ひばりと、マーガレット・オブライエン共演の東西アイドル映画。平凡。
「朝の波紋」【補足】池部良&高峰秀子の、ラブとコメなしのラブコメという。超ぶっきらぼうコンビだと、こうなるかと。
「離婚」【補足】マキノには珍しい現代もの。木暮・佐分利のコンビも重量級だ。このふたりだけで、まあ、面白い。
「慟哭」【補足】こちらの佐分利は監督。3.11大震災時に見ていたもの。感想書きました。木暮良い。
「殺人容疑者」「三太と千代の山」【補足】感想書きました。前者は、丹波哲郎デヴュー作の硬派ドラマなのだが、資料には(記録映画)と(笑)。ある意味、鈴木英夫としては、誇りとすべきか。

監督賞   成瀬巳喜男(「おかあさん」)
脚本賞   水木洋子、(削除)成瀬巳喜男(「おかあさん」)
主演男優賞 佐分利信(「お茶漬の味」「慟哭」「離婚」)
主演女優賞 小暮実千代(「お国と五平」「お茶漬の味」「慟哭」「離婚」)
助演男優賞 山村總(「お国と五平」)
助演女優賞 香川京子(「おかあさん」)
コラボ演技賞 日守新一らお通夜のオヤジたち(「生きる」)

 で、これは見たいなあ、というのが、
「あなたほんとに凄いわね」川島の脚本家・柳沢類寿監督作。
「春はキャメラに乗って」野村芳太郎監督。東西松竹オールスタア、ということは番宣の一種か。
「ラッキーさん」市川崑。見逃し続けている。
「金の卵」千葉泰樹監督。島崎雪子、岡田茉莉子、香川京子。豪華。
「花嫁花婿チャンバラ節」若尾文子だ。
「酔いどれ歌手」春原政久。主演が志村喬(笑)。歌うのか。
「明日は日曜日」佐伯幸三。「今日は会社の月給日」中川信夫。川島の「明日は会社の月給日」と、夢の?三本立て希望。
「東京のえくぼ」震災のせいで?見逃したもの。
「彼を殺すな」【補足】岩間鶴夫、原研吉の共同監督って。
「美女と盗賊」原作芥川、京マチ&モリマ主演て。「羅生門」のパクリか、木村恵吾。三船敏郎役?には、ぴったりの三国連太郎。
 これ以外には、この年やたらと本数の多い、市川春代主演の母物とか、鈴木英夫や中川信夫の何作かが、見たいぞ。

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# by mukashinoeiga | 2011-06-11 00:53 | ベストテン | Comments(0)

小沢一郎待望論って

 月刊文芸春秋の今月号で、「次期首相にだれがいいか」著名人にアンケートしている。
 1位に、小沢一郎、2位に、安倍晋三。
 何をいまさら小沢だか、この手の最近のアンケートでは、民主党にほかにタマがないせいか、やたらと小沢がのしている。
 今はまるきり報道されないが、小沢といえば、医者の勧めで、毎日2時間の昼寝を取っているという。逆に、「体調もよくなったので、昼寝しなくてもよくなりました」という報道はないから、今でも、毎日2時間、きちんきちんと昼寝しているんだろう。
 おそらく、クールビズ全盛のこんにちでも、きちんとスーツ、ネクタイ、一年ごとに向きを変える(笑)7・3わけ、一度決めたことは守り通す几帳面な性格と思われるので、きちんきちんと日課を守っているだろう。
 そういう、民主党に不利なことを、マスコミは一切報道しない。
 この昼寝の一件ひとつで、小沢は、総理には、なれない。なれるわけがない。
 新聞各紙に載る「首相動静」に、毎日毎日、載るんだぞ。

  1時13分、寝室へ。
  3時25分、寝室出た。

 書く記者も、書かれる本人も、読む読者も、毎日毎日これでは、やってらんないだろう。
 小沢一郎には、平時の総理も、務まらない。ましてや、非常時になど。

 小沢一郎は、地元・岩手での評判は、がた落ちだという。被災地には、地元なのに、たった一回、瞬殺で行って、県庁のみ訪問して、瞬殺で帰京したとか。
 小沢一郎・震災復興待望論というのが、少し前、あった。
 菅直人の復興遅滞ぶりを口で批判するくらいなら、いっそ、地元岩手に復興本部を立ち上げて、小沢が岩手復興本部長になって、復興の手本を見せる、というような。
 そんな、バカなこと、小沢に期待しても。
 みんなが、ガレキ撤去に汗を流しているときに、空調の利いたホテルで、昼寝してるヤツなんだぜ!
 総理になっても、自衛隊や消防や警察や原発決死隊に、しっかりやれ、死ぬ気でやれ、骨は俺が拾う、と命令しながら、自分は空調の利いたホテルで、毎日昼寝だぜ。

 かつて総理時の、安部を、下痢だ何だと、さんざんおちょくっていたマスコミが、この小沢の昼寝を、なぜ、見逃す。民主党政権を批判しても、いまいちネコパンチだからねー。
 その安倍晋三が、このアンケートの2位。少し前の「正論」アンケートでは、ダントツの1位だった。安倍は、治療が成功し、今現在は、人生で一番体調がいいそうだ。この数十年の総理たちのなかでは、これまたダントツな政策実行率を誇る総理だった。菅、鳩山など、論外で。
 あの、一見豪放そうな小泉でさえ、髪が真っ白になり、安倍も体調を崩す。そういう激務でも、菅、鳩山は、衰えの気配さえない。もともと、神経がぶっ壊れているせいか。

 とにかく、小沢一郎待望論なんて、論外だ。

# by mukashinoeiga | 2011-06-10 22:30 | うわごと | Comments(0)

「あきれた日常」

 京橋にて。「EUフィルムデーズ2011」特集。09年、ベルギー=オランダ。
 前に感想を書いた「雨夜 香港コンフィデンシャル」の、ついでに見た映画だが、思わぬ拾い物の快作。もう一回上映があるが、こちらはおすすめ。フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン監督。
 大人になった作家が、自分の少年時代の家族のエピソードを回顧するつくり。
 少年時代の主人公が可愛らしくて、ナイス。大人になって苦労を知ると、いささかぎすぎすしたタイプに成長するんだが。
 少年の家庭は、祖母、アル中の父、父の兄弟3人(少年にとっては叔父)。つまり、人生・結婚生活に失敗して、そろいもそろって実家に舞い戻った、むくつけき4人兄弟(ひとりコブ付き)を、世話しなきゃならんばあちゃんが、あまりにかわいそう。
 しかし、少年にとって、父含む4人の、むさくるしい男たちが、良くも悪くも最強の家族になるわけで。
 この4人のダメップリもハンパないが、映画としては、素晴らしい描写がさくさく進む。
 この町の酒場の店主が企画する、フルヌードで、フルチンのままの自転車レース(画面には十数人のチンコが)、ビール飲み大会、そして、少年の叔父が考えた、酒飲み版ツール・ド・フランスの、馬鹿馬鹿しさ。ぼくもお酒は結構飲むほうだが、こういう酒の飲み方では、もう、人生終わりよ(笑)。
 千葉泰樹「生きている画像」が酒飲み讃歌なら、本作は酒飲み惨禍。
 ヒュルーニンゲン監督の、人間を描くたしかさ。これぞヒュルーマニズムか。「雨夜」の監督に、爪の垢を煎じて飲ませたいほど。
 いや、実際、映画的緊張感もありつつ、人間の幸不幸、対人関係の幸不幸、その描写のたしかさ。
 4人兄弟の妹の、ダメンズ・ウォーカーぶり、その妹の4人の兄たちのさらなるダメンズぶり、不幸な妹に追い討ちをかける兄たちの小学生感覚。身近にいたら、この上なくいやだけど、映画で見る限りは・・・・やっぱり、嫌だけど(笑)。
 しかし、男兄弟4人だけでなく、無残な結婚生活(夫に殴られたアザと、もちろんコブつき)から逃げてきた娘まで、引き受ける、少年の祖母。つらいだろうが、ある意味最強だなあ。

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# by mukashinoeiga | 2011-06-10 06:15 | 旧作外国映画感想文 | Comments(0)

1951年日本映画ベストテン

  FJMOVIE年度別ベストテンを、再利用して、歴代ベストテンを、続けます。
詳しいことについては最初の【~1945年以前・戦前編】を参照ください。では。

1位 「麦秋」 小津安二郎 原節子 笠智衆 佐野周二 杉村春子
 原節子の気持ちが良く描けているとは思わないけれど、杉村春子が、とてもいい。のちに日活アクションで主に悪役を演じる、二木本柳が、おだやかなおだやかな男を演じているのも、いい。
【補足】詳しくは、当ブログの特集<小津安二郎映画の正体> を、ごらんあれ。

2位 「めし」 成瀬巳喜男 原節子 上原謙 島崎雪子 杉葉子
 東京大阪が逆だけれど、これも小津「淑女は何を忘れたか」市川「あの手この手」川島「女であること」に連なる、<突然の姪の来襲による夫婦のリフレッシュ>ものといえなくもない。成瀬らしくラブコメというには、シニカルだけれど。
【補足】何か、外国映画あたりに、元ネタがあるのかしらん。それとも「淑女は何を」の影響?

3位 「カルメン故郷に帰る」 木下恵介 高峰秀子 小林トシ子 井川邦子 佐野周二
 それなりに面白い田園コメディ。
 しかし、日本映画初のカラー映画の、主要登場人物のひとり佐野周二を、盲目とする木下恵介の<屈折>。
 そして男性教師同士のフォーク・ダンス(それはほとんどチーク・ダンス的ですらある)、女性ストリッパー同士のキス、という木下の<カラー>。

4位 「白痴」 黒澤 明 原節子 森雅之 三船敏郎 久我美子
 原節子・久我美子・東山千栄子の女優陣はいいのだが。こんな彼女たちをもっと見たかったと思わせるのだ。ただし、三船、モリマたち男優陣とお話の展開は全く駄目。論外。
【補足】黒沢が、アクション以外の視点で、男を描くととたんに、小学生じみてくるのは、なぜか。やんちゃ坊主の小学生三船と、白痴というより、いろいろな意味でおとなしめな小学生モリマ。

5位 「偽れる盛装」 吉村公三郎 京マチ子 藤田泰子 小林桂樹 菅井一郎
 まあ、ええんとちゃいますか。
【補足】堺雅人か。ウェルメイドだが、評価はされすぎだと思う。

6位 「適齢三人娘」 川島雄三 若原雅夫 吉川満子 幾野道子 津島恵子
 なんてことない定食コメディの楽しさ。
肩の力を抜いた川島は楽しい。手を抜いた川島はともかく。

7位 「愛妻物語」 新藤兼人 乙羽信子 宇野重吉 大河内伝次郎 滝沢修
【補足】ふつうの出来。評価のされすぎ。 

 なお、以下については、投票者がおそらくひとりとかで、順位・コメント 、残っておらず。
  「どっこい生きている」 今井 正 河原崎長十郎 中村翫右衛門 木村功 岸旗江
【補足】ふつうの出来。評価のされすぎ。 
  「天使も夢を見る」 川島雄三 鶴田浩二 佐田啓二 河村黎吉 津島恵子
【補足】まあ、そこそこ。
  「盗まれた恋」 市川 崑 久慈あさみ 加藤道子 森雅之 川喜多小六
【補足】まあ、そこそこ。

 なお、この年のこれ以外の作では、
「おぼろ駕籠」「大江戸五人男」バンツマの快楽
「善魔」三国連太郎のデヴュー作だが、いまいち、しまらない「少年期」ああ、なんという石浜朗少年、デヴュー作の、すがすがしさ。「海の花火」なんという木下的センチメント。
「我が家は楽し」まあ、ふつうのホームコメディ
松竹版「自由学校」佐分利がほのぼの 大映版「自由学校」は、この前、京橋で上映したが、見逃した。求む再上映。
「天使も夢を見る」「適齢三人娘」まあ、そこそこの川島、楽しい。
「舞姫」意外と面白い成瀬。もっと面白い「銀座化粧」。
「武蔵野夫人」溝口だが、あまりに情けないモリマに大爆笑。自殺未遂でなかなか死なずに(笑)まわりドン引きの告白を続ける田中絹代にも、小笑い。
「お遊様」溝口だが、セクシー奥様な田中絹代に小笑い。
「女賊と判官」マキノ、最近感想書きました。
「八つ墓村」松田定次・千恵蔵版だが、見たかどうかは?
「夜来香」「恋人」「盗まれた恋」この時期の市川崑は、記憶に残らず。

監督賞   小津安二郎(「麦秋」)
脚本賞   小津安二郎、野田高梧(「麦秋」)
主演男優賞 阪東妻三郎(「おぼろ駕籠」「大江戸五人男」)
主演女優賞 原節子(「麦秋」「めし」「白痴」)
助演男優賞 二本柳寛(「麦秋」「めし」)
助演女優賞 杉村春子(「麦秋」)
新人賞   石浜朗(「少年期」「海の花火」)

 これ以外は考えられない、最強の布陣。
 特にハラセツ、一年で、小津・黒沢・成瀬に主演してしまうという。まさに、ヴィンテージ・イヤー。  

 で、これは見たいなあ、というのが、
千葉泰樹「泣きぬれた人形」ひばり、岡田英次
佐分利信「ああ青春」「風雪二十年」ともに、主演も
久松静児「宮城広場」原作川口松太郎、脚本成沢茂昌、監督久松、と絶対?の布陣で、森雅之、乙羽信子、久我美子、どんな話だ。モリマと宮城広場といえば、この時期、新劇役者の中でもスバ抜けてブルジョワなモリマに、新劇といえばめったやたらと多かった共産党系演劇人が、「(共産党)革命がなった時には、森雅之は、宮城前広場で、公開処刑にするっ」と、恫喝したという。時代だなあ。
小林恒夫「花の進軍」東映なのに、高峰秀子・三枝子、原節子、木暮実千代とは、すごい
清水宏は、「その後の蜂の巣の子供達」は見ているが、「桃の花の咲く下で」監督清水、主演笠置シズ子は、ハゲシク見たい。
田中春夫「ひばりのアンコール娘」美空ひばり主演ものだが、カ、カントクが、田中春夫ーお? えー。出演もしているようなので「あの」田中春夫なんだろうが。まあ、詰まんないヴァラエティーなんだろうけど。ハゲシクなく見てみたい。
並木鏡太郎「平手造酒」にはミスマッチそうな山村總だよ。
「デコちゃんの千一夜」短編か。解説に徳川夢声。主演はもちろんデコちゃん。

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# by mukashinoeiga | 2011-06-08 00:47 | ベストテン | Comments(0)