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加藤泰「みな殺しの霊歌」

 京橋にて。「生誕100年 映画監督 加藤泰」特集。68年、松竹大船。
 再見作。うーん、何度見ても、見心地が悪い(笑)。確かに、フィルムセンター言うところの加藤泰最大のモンダイ作と、言うに、ふさわしい(笑)。
 そのココロは(笑)。以下、完全ネタバレ。

e0178641_7335284.jpg32 みな殺しの霊歌(90分・35mm・白黒) (フィルムセンターHPより)
1968(松竹大船)(監)加藤泰(脚)三村晴彦(撮)丸山恵司(美)森田郷平(音)鏑木創(出)佐藤允、倍賞千恵子、中原早苗、應蘭芳、菅井きん、沢淑子、河村有紀、松村達雄、明石潮、渡辺篤、大泉滉、須賀不二男、石井均、角梨枝子、吉田義夫、太宰久雄、穂高稔、藤田憲子、ザ・クーガーズ
時効目前の殺人犯(佐藤)がある事件を契機に連続強姦殺人をおこしていくが、純粋な娘(倍賞)に出会い心惹かれ…。衝撃的な殺人場面と、アウトローと山田洋次の協力を得て造形した松竹的ヒロインとの二人の心の交流が、ロー・ポジションの陰影に富んだ白黒映像による緊張感に満ちた語りで描かれる。どんな理由でも人殺しは「罪」かを主題とした作品で、加藤泰最大の問題作と評される。

Clip みな殺しの霊歌 (加藤泰)

 
 おそらく中学卒業後、集団就職で北海道の田舎から出てきた16歳の少年は、残された愛聴盤が、橋幸夫&吉永小百合「いつでも夢を」だし、まだまだ都会の風に染まらない純情少年だったのだろう。そんな彼を中原早苗、應蘭芳、菅井きん、沢淑子、河村有紀のおばさん軍団が「輪姦」ないし集団暴行した。
 ショックだろう。まだまだ「花とゆめ」の田舎の純情少年が、いきなり大量の「珍味」を食わされたようなものだ。特に菅井きんは、ないだろう(笑)。
 そこは、何歩か譲って、良しとしよう。
 そして思い詰めて、飛び降り自殺をしたと、いうのも、まあ良しとしよう。

 しかし、この少年の顔見知りの、佐藤允が、「義憤に駆られて」この五人の女たちを、次々レイプ・拷問・殺害する意味が、分からない(笑)。
 「俺はあいつと何の関係もない、名前すら知らないんだ」というが、少なくとも一緒に映画を見に行ったり、凌辱されたことを打ち明けられる程度には、親しいわけだろう。
 なんだか変だ。

 佐藤允は、新婚の妻を殺して、逃亡中の身だ。新妻が実はほかの男と関係があり、許せなかったのだ、と推測される。しかしそれから十数年、もうすぐ時効の身だ。もう酸いも甘いも、のおっちゃんになったのだから、知り合いの少年が汚されたからといって、五人もの女を殺すか。
 レイプするか。おかしいだろ。復讐のため、拷問レイプするのは、本末転倒だろう。
 清いものが汚された、それへの怒り。
 少年が自殺したのは、ある意味少年の勝手で、あろう。その復讐を女たちにするならば、せいぜいレイプ程度?で、すます?べきだろう。歯には歯を、という論理でいうならば、殺すのは、明らかに過剰だろう?
 百歩譲って、レイプ抜きの拷問のみで、殺すべきだろう。
 いや、わからないじゃないよ、60年代後半ともなると、エロティック映画がかなり幅を利かせ、おそらく松竹の作品依頼は、ほどほどのエロ描写を利かせたサスペンス、ということで、ほどほどにエロを出してくださいよ、加藤さん、ということでしょう。だから、サスペンスでエロと言ったら、レイプ殺人だろう、ということになる。
 でもお公家さん集団の松竹では、そういうエロが苦手な監督ばかり、だからわざわざ他社から監督起用するんですよ、加藤さん、暑い演出、頼みますよ、というわけで。

 しかし、明らかに、混迷の結果と、なる。あまりに、レアケースを扱う結果になる。ふつうなら、倍賞千恵子クラスの清純な乙女が、男たちに凌辱され、自死。その復讐、という段取りだろう。
 しかし、松竹の清純派女優には、そういう輪姦描写は、なじまない。倍賞千恵子、論外。じゃ、少年じゃ、どうか、と。そういう企画の流れか、と。よく、わからんが。
 ムーヴィーウォーカーには、(広見ただしの原案を、「ハナ肇の一発大冒険」の山田洋次と、「懲役十八年」の加藤泰が共同で構成にあたり、三村晴彦がシナリオを執筆した。監督には加藤泰があたったスリラー)とあるが、本映画のクレジットには、広見ただしのクレジットが、ない。いかにもペンネームっぽい名前だが、当時、そういう少年の輪姦事件というものがあって、そのレポートを原案にしたのか。

 しかしなぜ佐藤允なのか。
 佐藤允が、本作の主演というのが、おそらく、本作最大の欠点だろう。
 佐藤允は、典型的な映画スタアである。小林信彦が、小林旭を言ったように、無意識過剰な、その顔を見ても、何を考えているのかわからない、というより、何も考えていない、圧倒的な空虚を、体現している無意識過剰な映画俳優の、典型かと。

 本作では、佐藤允は、女たちを殺しまくるが、それは個人的怨恨ではない、金銭目的ではない、性的葛藤でもない(現在の視点からいえば、佐藤が少年に愛をいだいている、という仮説も可能だろうが、そういう兆候は一切排除されていると、思う)。
 では、なにゆえの犯罪なのか。
 かつて自分が新妻に裏切られたように、少年の無垢が汚されたゆえの、犯罪か。という風にしか読み取れないが、15年も逃亡生活を続けるおっさんが、そんな少年じみた「汚れちまった悲しみ」に、まだ拘泥し続けるとも、思えないが。
 佐藤允の、少年みたいな笑顔、に、加藤泰は、賭けたのか。
 しかし、そういう、「思想犯」を演じるには、佐藤允の顔は、徹底して、空虚であり、無意識過剰でありすぎる。
 佐藤允は「思想犯」を演じるような顔をしていないし、そういう演技も、一切出来ない真の映画俳優なんですね。
 これが、加藤泰映画がらみでいえば、安藤昇であれば、あるいは、高倉健であれば、あるいは、説得力を持ったかもしれない。佐藤允では、義憤の説得力に、全く欠けるのである。
 義憤を体現するような、知的/感情レヴェルに、佐藤允の顔は、全く無縁、なのだ。
 たぶん、佐藤允は、小林旭以上に、無意識過剰な役者なので、よりによってそんな佐藤に「ある意味思想犯」を演じさせた加藤泰は、なんちゅう無謀(笑)。

 かつて鈴木清順は、「映画のつじつまが合わないのは、俳優が下手なせい」(大意)と、一種の暴言を吐いたが、おそらく本作が、消化不良を観客に感じさせるのは、佐藤允がミスキャストなせいなのだ。倍賞千恵子程度の「深み」すら感じさせない、鉄面皮な、真の映画俳優、佐藤允を、なぜ、よりにもよって起用したのか、加藤泰。
 
 倍賞千恵子。ほくろの多いすっぴんの顔で、演じた。家族に迷惑をかけるやくざの兄を、思い余って、殺した女。ウラさくらか。構成山田洋次の、ダークサイドなのか(笑)。仕事も、大衆食堂で、さくらとの共通点多し。
 山田洋次にとって、加藤泰とは、何なのか。加藤泰の裏が、あるいは表が、山田洋次なのか。
 山田洋次「霧の旗」と並ぶ、二大言いがかり映画に、ともに倍賞が出ている不思議?

 本作では、珍しく大泉滉が、まぢめな役(笑)。まあ、多少軽みはあるが、所轄警官を、それなりにまじめに演じて、こんな大泉滉メヅラシイなあ。
 警察は、ぼんくらばかりで、失敗だらけ。うーん。
 ということで余談だ(笑)。以下、話は、どんどん細かくなってくる(笑)。

余談1 殺され順でいうと、應蘭芳、中原早苗、沢淑子、菅井きん、河村有紀だが、最初の應蘭芳こそ、エロティック映画らしく?ヌードも多いが、菅井きんのみは、遺体写真のみ。
 なぜ菅井きんの暴行場面を描かない、加藤泰。エロでもなく観客ドン引きだろうが、そこを「平等」「等価」に描いてこそ、じゃないのか、加藤泰(笑)。
 いや、菅井きんをレイプする佐藤允を見たいわけじゃないが(笑)、まあ、それなりにエロい女たちをレイプしてばかりでは、佐藤允、自分の趣味でやってるんじゃないか(笑)と、誤解されちゃうでしょ。菅井きんをレイプしてこそ、佐藤允のまじめな?犯罪ぶりが、逆に証明されるんじゃないの(笑)。
 士道不覚悟(笑)。なんのこっちゃ。

余談2 上記ユーチューブ画像でも垣間見れるが、最初の被害者が殺されるときに、回想シーン的にダブって、五人の女のマージャンシーンが、出てくる。手っ取り早い人物紹介なのかもしれないが、事件当日はマージャンをしていた、という偽り証言を観客の頭に刷り込ませるミスリードの典型で。
 ミステリとしては、完全に失格。まあ、事件当夜ではない、別の夜に確かにマージャンをしていた、という言い訳も成り立つが、それでも、失格気味。まあ、加藤泰映画に、厳密なミステリ基準を求めるのもセンないことでは、ある。

余談3 警察は最初の時点で残り四人の氏名、住所を把握している。事情聴取、あるいは囲い込みで、連続殺人は、少なくとも、二人目で阻止できたはずだ。そういう事情聴取を五人目の河村有紀で、やっとするとは、なんというお粗末。
 最初の監察による手書きメモ発見を、人物紹介の手っ取り早いうまい手だ、という脚本の思惑が、逆にこの映画の傷になった。

余談4 例によっておバカなフィルムセンターの解説(字数制限を守るため、日本語として、そもそもメロメロなのだが)いわく「どんな理由でも人殺しは「罪」かを主題とした作品」とあるが、本件のような「動機なき」(と、法令上は、解釈される可能性が高い)「不条理大量殺人」こそ、もっとも「罪が重い」はずで「あるべき」であろう。
 「どんな理由でも人殺しは「罪」かを主題とした作品」で、あるならば、本作の事例は、まったく不適当。それとも「お花畑による犯罪」は、「許されるべき」というサヨク脳的発想なのだろうか。
 法律解釈上はあるいは、本件は極めてビミョーな扱いなのだろうが、というのも動機重視主義の日本の刑法(という、法律無知のぼくの印象)では「動機が薄い」(と、解釈をせざるを得ないだろう)と、なぜか刑が軽くなるような印象なので。
 こういう「ある種の思想犯」が、訳が分からないので法律上の判断は保留、という理由で「刑罰が軽くなる」ほうこそ、まさしく「不条理」だろう。

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by mukashinoeiga | 2016-08-28 07:34 | 加藤泰突入せよ炎のごとく | Trackback | Comments(6)

加藤泰「緋牡丹博徒 お命戴きます」藤純子

 京橋にて。「生誕100年 映画監督 加藤泰」特集。71年、東映京都。
e0178641_22395354.jpg 何度も書くが、藤純子という女優はまことに不思議な女優で、いわゆる正統派美人というわけでは、ない。ぎりぎりファニーフェイスを逃れているというか、片足突っ込んでいるというか。
 しかし、若さに似合わない不思議な色気、オーラが、ある。東映仁侠映画の水にあって、えも言われぬ情緒纏綿なのだ。
 そして本作のように鶴田浩二の幼い子供と絡むと、年齢的には、お姉さん、という感じであるべきを、完全に母性の豊かさを感じさせる。
 ただただ不思議な女優さんであり、ただただありがたい女優さんだ。
 ぼくにとって、山口百恵は菩薩ではないが、藤純子は、菩薩で、ある。
 ただし、おばあちゃんとなって、富司純子として女優活動を再開すると、かつてのオーラは消え失せ、ただのおばあちゃん女優になってしまったのは、不思議なところで。マキノあたりが、奇跡的に存命で、その演出を受けたら、どうなのか、という興味もあるにはあるが。
 その娘も女優になったが、演技派としてのすごみは感じられるものの、オーラは、ない。不思議なことだ。
 この種の奇跡は、やはり一代限り、しかもいっときの夢なのか。

35 緋牡丹博徒 お命戴きます(93分・35mm・カラー) (フィルムセンターHPより)
1971(東映京都)(監・脚)加藤泰(脚)大和久守正、鈴木則文(撮)わし尾元也(美)吉村晟(音)木下忠司(出)藤純子、鶴田浩二、若山富三郎、大木実、待田京介、河津清三郎、嵐寛寿郎、石山健二郎、汐路章、上岡紀美子、内田朝雄、諸角啓二郎
シリーズ第7作。日露戦争直前の上州の村で、農民たちは軍需工場が排出する汚染水に苦しんでいた。結城一家の二代目(鶴田)は、彼らを救おうと尽力していたが…。ワイドスクリーンの横幅と奥行きを最大限に活用する加藤演出は、製作当時の社会問題を取り込んだ物語に、激しい情念を行き渡らせる。

緋牡丹博徒 お命戴きます(予告編)


 しかし、本作の白眉は、藤純子では、ない(笑)。ツルコウでもない。
 陸軍大臣閣下を、終始ふんどし一丁で怪演する、メーター振り切りきったたつるっぱげ石山健二郎!
 素晴らしい!
 これには、怪演で鳴らすワカトミも、ここは俺の出番ではないな、石山健二郎の見せ場だな、とおとなしく脇に回る。グッド!
 かつて渋谷では、渋いオジサマ特集として、山村總やサプリンの特集を組んだが、ゲスさ爆発おじさま特集を組んでは、どうか。山茶花究や石山健二郎なんか、どうだす(笑)。
 笑える元祖舛添、鳥越なんてのは、どう(笑)。あのね、おっさん、わしゃかなわんよ的な。
 特集タイトルは「ゲスの極み オヤジ」では、ちと、古いか。

 そしてやはり、加藤泰は、スタア映画の座付き作者として、その技量を最高度に発揮する。あんまり、自分の作りたい映画を作りたいように作っては、ダメなタイプか、と。
 藤純子を、正面から、右から左から、唇の接写で、と、女優に奉仕する映像を撮ってこそ、なんぼの監督なんだと思う。
 その意味で、本作は、藤純子スタア映画として、輝いている。
 ツルコウは、炭鉱の親方も似合わんが、ラルフ・ネーダーも、似合わんね。

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by mukashinoeiga | 2016-08-20 22:41 | Trackback | Comments(6)

日本のいちばん長い日 俳優名鑑大百科

日本のいちばん長い日 俳優名鑑大百科

日本のいちばん長い日(1967年 岡本喜八監督)のキャスト紹介。88人+ノンクレジット俳優46人の全134人で、全て静止画です。その他の作品はこちら mylist/8035754

 うーん。どうなのかな大村仙吉(笑)。 
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by mukashinoeiga | 2016-08-15 21:43 | うわごと | Trackback | Comments(0)

数秒ごとの美女図鑑~欽どこ 美女100人

欽どこ 美女100人


 数秒ごとの美女図鑑。
 ぼくみたいな老人には、頭の体操にもなる(笑)。
 夏目雅子には、心配。闘病中か。
 浜木綿子の東大入学のお子さんは香川照之か。 

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by mukashinoeiga | 2016-08-15 00:09 | うわごと | Trackback | Comments(0)

加藤泰「男の顔は履歴書」安藤昇

 京橋にて。「生誕100年 映画監督 加藤泰」特集。66年、松竹大船。
 うーむ。本作は、二つの意味で、恐るべき問題作である。
 日本の大メディア(報道及び芸能)には、あまり登場しない話題がいくつかあり、タヴー視されているジャンルが、いくつかある。
 その一つが在日の存在の問題というか、問題の存在というか。普通ならポシゃる企画を、おそらく安藤昇という特異な主演者の起用という「一点」で、切り抜けた、と思われる。
 だが、この話は、長くなるので、まずはもう一つの問題、伊丹十三問題(笑)から、片付けよう。

e0178641_751064.jpg28 男の顔は履歴書(89分・35mm・カラー) (フィルムセンターHPより)
1966(松竹大船)(監・脚)加藤泰(脚)星川清司(撮)高羽哲夫(美)梅田千代夫(音)鏑木創(出)安藤昇、中原早苗、中谷一郎、内田良平、真理明美、伊丹一三、菅原文太、田中春男、浜田寅彦、角梨枝子、沢淑子、石井富子、三島雅夫、香山美子、嵐寛寿郎
加藤が松竹大船撮影所に呼ばれ、安藤昇を主演に初めて撮った野心作。戦場体験をもつ医師の主人公の元に急患が運ばれ処置する現在と、昭和23年の闇市での騒動が並行して語られる。加藤は本作で初めて戦後を題材にし、日本人と朝鮮人(劇中での呼称は「三国人」)の憎しみと暴力の連鎖を徹底して描いた。親交がある野村芳太郎と山田洋次の協力を得て撮影され、スタッフの多くも山田組である。

 伊丹十三、むろん当時は伊丹一三名義の時代だが、加藤泰ならではの性急さで、後半いきなり登場するや、在日朝鮮人たちに半殺しの目にあい、川に投げ込まれる田中春男を、救出する学生、実は主人公、安藤昇の実弟と、わかる。
 この伊丹一三が、強い強い。単独で在日グループに喧嘩を吹っ掛け、あるいは集団殴り込みの先頭に立って、バシバシ在日たちを、ぶん投げる。
 まるでアクションスタアかの、強さ。信じられない。
 むろん、本当に強いわけではなく、殺陣の段取り芝居なのだろうが、しかし、なぜ彼がこんなに「強い男」の役で、キャスティングされたのか。
 ふつう「強い男」の役で、伊丹一三はキャスティングしないだろう。
 特に後年は、見ている間はそこそこ面白いが、後に何にも残らない空虚なヒット作を連発する映画監督時代になると、いやその前の軽妙洒脱なエッセイスト時代も、文科系おしゃれ男子というか、文科系草食?の、イメージとなったわけだが。
 しかし意外にガタイはよく、顔はむしろ怖い顔系なので、若いころは、その怖い顔つながりで、安藤昇の弟役というのも、納得できるかもしれない。
 特に本作の役は、安藤昇の弟役というよりも、学生崩れのインテリやくざという安藤イメージの、比喩として登場させる以上、伊丹は、適役に近いものがあったのか。

 本駄文の一個前「鈴木清順は、かっぱえびせんか」でも、謎の「松竹アクションスタア」というものがあったが、むしろそういうものが払底しているからこその、伊丹起用というものかもしれない。

 さて、在日問題だが、戦後のどさくさに、全国各地の駅前の一等地をかっぱらい、駅前にパチンコばかり建てた、在日朝鮮人たちが、同様に、闇市マーケット(具体的地名は語られなかったが、少なくとも東京の大学から帰省する弟、というからには、東京ではない)の、乗っ取りを、図る。これも、当時全国で「よくあった話」なのかもしれない。
 受け継いだ地主の権利を持つ安藤に、攻めかかる。
 こういう闇の勢力としての在日に、正面切った描写をする映画というのも、珍しい。
 というのも「良心的左翼映画」では、在日は、被害者の役回りで登場することが多く、その暴力性は、隠されることが多いからだ。
 加藤泰の弟子、ないしは後輩の山田洋次からしてそうだ。むろん「馬鹿シリーズ」の、暴力粗野男たちの大半は、在日であろう、という含みは、残しつつ。

 極端な暴力性と、極端な被害者意識。
 本作のチンピラ菅原文太の火病ぶりも、サマになっていて、これでは、お公家様松竹の枠からはみ出して、松竹専属脇役から、東映に、引き抜かれるも無理は、ない。
 そのチンピラ菅原文太から、内田良平親分まで、在日暴力団は、立派な犯罪者なのに、なぜかルサンチマンの被害者気取りの側面を、持つ。
 彼ら民族に固有なのか、プロ加害者なのに、同時にプロ被害者。
 プロフェッショナルなまでの、被害者アピールの天才たちで。
 単なるむちゃくちゃ暴力なのに、「日本人への復讐」で正当化。
 これは現代もまったく同様で、進歩の気配すらない。
 マーケット簒奪も、日本人の「植民地化」への復讐。
 田中春男の娘・藤田弓子への強姦殺害も、日本人の「植民地化」への復讐。
 単に、そういうエクスキューズで、自らの犯罪性を糊塗しているだけのように、思える。
 自分たちは「上書き修正」しているだけかもしれないが、その下は、実はブランクなんだよね。
 実際にあった被害だけでなく、時には、いや、たいてい、なかった被害まで捏造、でっち上げて、最初はでっち上げの大ウソだったものを、二度目三度目に「声闘」する際には、捏造した本人も、もはや「事実」と思い込んじゃう、そういう民族性。
 それをまた、世界一お人よしの日本人は、実際自分がしなかったことまで「事実」と思い込み、謝っちゃう、という民族性。

 閑話休題。映画に戻す。
 安藤昇の演技は、本作が一番安定している。実は、多く演じてきたやくざ役よりは、こういう非やくざ役のほうが合うのかもしれない。
 その愛人の看護婦に、中原早苗。その暑苦しい演技は、いかにも加藤泰好みだが、演劇以上の演劇的せりふ回しの熱情こそ、彼女の真骨頂か。当初は町弘子が予定されていたらしい。こちらのほうも見たかった。
 今回お得意のローアングルは、あまり印象になく、ほとんどなかったのでは、ないか。見る人が見れば、あるのかもしれないが、少なくとも、こちらの意識には、上ってこなかった。安藤昇に遠慮したのかな。
 なお、冒頭の欺瞞性に満ちた、解説(互いに信じあえる関係に、将来なれるよう信じたい~大意)、まるで憲法前文のパクリみたいな安易な文章は、この映画を興行に乗せるためのエクスキューズだろうが、この欺瞞性を松竹も加藤泰も、ひそかに、恥じるべきであろう。

侘助 ‏@cx03377 8月12日 東京 荒川区
安藤昇が「子供は外へ」と言うと、中原早苗が「いいえ、この子にも見せてやります、自分の父親が命と闘っているところを」と応え、キャメラを真っ直ぐに見据えた安藤が「よーし」と気合いを込めて声に出すところに「完」の文字が出るラストは、何度観ても背筋に感銘が走る見事なエンディングです。(以上引用終わり)

 加藤泰は、こんなしゃれたエンディングを、やっちゃあいけない(笑)。

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by mukashinoeiga | 2016-08-14 07:05 | 加藤泰突入せよ炎のごとく | Trackback | Comments(0)

鈴木清順は、かっぱえびせんか

 ネットをうろついていたら鈴木清順botというのがあるのを知った。
 「鈴木清順かんとく自身の文章や発言を引用し三時間毎ツイートします。自動返信(ランダム・リプライ)兼備。何か御指摘などある方は@rigyaku迄。」というもの。
 で、これを、読みだすと、やめられない止まらない(笑)。一例。

鈴木清順bot ‏@seijun_bot 8月5日
和泉雅子が誰を恋人にするか、別の興味がある。恋人に決まった野郎のとこに俺は殴り込みをかける。そん時は雨は降らさねえぞ。そん時は、桜の花の満開の日にきまってらあ……。

 →「別の興味」の「別」とは、どういう意味だ? よく、わからんが、仮に和泉雅子の「恋人」が「南極」だったら、南極に殴り込みか。ただ、南極には、桜は咲くマイ。しかし、こんな発言、現在だったら、中年監督が若い女優にしたら、立派なセクハラ、ストーカー行為で逮捕では(笑)。

鈴木清順bot ‏@seijun_bot 8月4日
日活のスターと違って全然動けない。アクションがてんで駄目だ。(松竹系アクション俳優について)

 →しかし「松竹系アクション俳優」って具体的に誰のことか、さっぱりわからんが(笑)。

鈴木清順bot ‏@seijun_bot 8月4日
おさまらないのは映画にとりつかれた若い人たちで、才能の見せ場がほとんどない。「暗くなるまで待てない」という青春映画を自力でつくったO君という若い監督は、もとをとるのに血へどを吐いたくせに、例の医科大学裏口入学からがぜん勢いづき、次の映画づくりに虎視たんたんである。

 →O君、例の医科大学裏口入学って(笑)。 

鈴木清順bot ‏@seijun_bot 8月3日
私は明治維新が大嫌いだ。明治も嫌いだ。明治、大正、昭和と並べると、大正が一番いい。それは私の生れた時代だからだ。何より天皇が英邁だったからだ。

 →んー、ぼくも大正がいいな(笑)。

鈴木清順bot ‏@seijun_bot 8月2日
女房は、女房が働いている間僕が何もしないで家でごろごろしてたと今でも言い張るんだよ。だけどね、僕だって酒を飲むくらいの働きはしてたんだ。主な仕事は女房の迎えだったけどね。

 →これは、最初読んだとき、酒を飲むのが「仕事」、っていう意味かと思ったが、ご飯を食べる稼ぎはないが、酒を飲む程度は稼いでいた、という意味かと。でも、どっちにしても、ダブルミーニングで、面白い。

鈴木清順bot ‏@seijun_bot 8月2日
「可哀そうなは惚れたってことよ」という科白を言わせたとき、彼女の返し言葉が「腹が空いたはお昼ってことよ」だ。監督は腹具合など考えないで仕事をするが、役者やスタッフはそうじゃない。雲呑ってアダ名を僕につけたのも彼女なんだ。おきゃんで茶目っ気たっぷりの下町っ子だったね。

 →なんだ、和泉雅子が好きだったんじゃないか(笑)。キスはこうやるんだ、という「演技指導」を和泉雅子にしようとして未遂に終わった、という逸話は、本当だったんだな(笑)。黒沢明男性エキストラキス事件と好一対(笑)。しかしワンタンなんてあだ名、あまりにビミョーすぎて、馬鹿にしている気配はあるものの、対応に困るネーミング。

鈴木清順bot ‏@seijun_bot 7月29日
だからよく(藤田)敏八さんが言ったよ、「鈴木さんはズルい。どこにいるか分からないのに芝居させて繋ぎ合わせる。位置関係の説明をしない」と。でも映画はそれでいいんですよ。説明しなくたってね。それよりもこころ掛けなければならないもの。ショッキングなショット。ショットのサスペンス。

鈴木清順bot ‏@seijun_bot 7月28日
改名したのは、大部屋の俳優さんたちとお互い芽が出ないからって占師にみてもらいに行ったら、この名前を付けてくれた。ところが、相変わらずぱっとしない。十年たたなきゃ駄目だって言う。それが十年目に会社をクビですからね。うまくできてますよ。


◎おまけ◎和泉雅子、年経るごとに、だんだんオーヴァーアクト過剰になって、山内賢もドン引き(笑)。
 ベンチャーズの軽快な曲に、チャラいともいえる歌詞を乗せた永六輔の、才能よ。
日活映画「二人の銀座」 和泉雅子 山内賢(追悼投稿)


『二人の銀座』 和泉雅子 山内賢


二人の銀座


二人の銀座 山内 賢&和泉雅子 2005 32 UPH‐0081


山内賢さん、和泉雅子「東京ナイト」


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by mukashinoeiga | 2016-08-11 23:43 | 清順の光と影すべって狂ってる | Trackback | Comments(0)

「シン・ゴジラ」史上最クールな傑作!

 庵野秀明総監督、樋口真嗣監督「シン・ゴジラ」16年、東宝。
 いやあ、面白い! これほど知的興奮に満ちたエンターティンメントが、あろうか!
 かつて怪獣プロレスと揶揄され、お子様向き映画であったゴジラを、大人向けエンタメに奪還した、これは異様かつクールな、傑作ではないか。
 「ブロゴス」という、ブログまとめサイトに、ある方が、本作の感想を寄せられた。その内容はともかく、「公開したばかりなのに、ネタバレすんなよー」というレスが2件もついていた。一行目にネタバレあり、と、書いてあったのに(笑)。
 そんなにネタバレが嫌なら、ネタバレあり、なんて感想を読むなや、と(笑)。
 というわけで、当感想駄文も、当然ネタバレあり、ですので未見の方は、読まないように(笑)。
 というところで、では、この最クールな映画の、まずはホットな部分を、いくつか、指摘するところから、始めよう。以下、ネタバレあり、ですよ。

『シン・ゴジラ』予告

Godzilla Resurgence(Fan Made Trailer)Music by Akira Ifukube 「シン・ゴジラ」予告篇


 これがアメリカとか、EUとかに、ゴジラが上陸して、街を破壊するなら、問答無用、即応して米軍なりNATO軍が出動するであろう。しかし、わが自衛隊には、憲法上の縛りがあり、このような国家的危機にすら、即応することが、できない。
 鳥越や福島瑞穂や岡田や志位なら、「自衛隊などもってのほか、甘んじてゴジラに踏みつぶされよう」というかもしれないが、そんな左翼お花畑が跋扈するから、自衛隊を出すのにも、いちいち政府は会議を繰り返さなければならない。
 かつて湾岸署・青島刑事は「事件は会議室で起きているんじゃない、現場で起きているんだ!」と、名言を吐いたが、本映画では、延々と会議、閣議が続けられる。
 現状の日本では、一発の銃弾、ミサイルを撃つにも、会議が必要だからだ。
 その会議の間に、どんどん東京が、鎌倉が、破壊されていく。
 首尾よく?破壊される東京や鎌倉の街を見て、共産党や社民党や民進党の支持者は、ムネアツで感動するのだろうか(笑)。

 というところで、自衛隊が前面で戦うには、いささか不備な日本が、では、どうするか。
 民生品で戦うのだ(笑)。
 二台の新幹線車両が、並走して、ゴジラに、突っ込む。無人運転で、全車両に爆弾を積んで、自走して、自爆するのだ。
 さらにすごいのは、東京駅に、鎮座(エネルギーがなくなり、スリープ状態)のゴジラに、在来線の山手線と京浜東北線が、線路を並走して、自動運転の上自爆するのだ。
 新幹線ならともかく?在来線がですよ。ケナゲじゃあないですか(笑)。
 神風特別攻撃隊の血か。無人なんですが。
 しかし、在日米軍の無人爆撃機には、興奮しないが、こちらの山手線、京浜東北線には、感情移入できる(笑)。
 山手線といえば、初代ゴジラで、ゴジラに甚大な被害を浴びせられた。約70年たって、山手線もゴジラに、一矢報いたのだ(笑)。これが泣かずにいられようか(笑)。

 そして高層ビルだ。これまで、散々ビルを破壊してきたゴジラだが、今回は、ゴジラがビルに倒されるのだ!
 スリープ状態のゴジラの周囲のビルに、爆弾を仕掛け、次々と倒壊させ、ゴジラをビルの下敷きにするのだ。
 ゴジラに散々倒されてきたビルが、ゴジラを倒す。高層ビルも、また、ゴジラに、一矢報いたのだ。やるなあ。

 かつて初代ゴジラは、原爆の、あるいは米軍による無差別空襲の、象徴というか隠喩というか直喩だった。 
 それが、ニューヨーク貿易センタービルへのテロ、東北大震災、最近の世界各地で頻発する無差別テロの象徴として、どんどん肥大化している。
 街を破壊するものすべての表徴として、ゴジラは、進化?肥大化?している。だから、本作でも何段階もの進化を遂げて、より力を増しているのだ。

 そして、日本の化学産業が総力を結集して、ゴジラの血液凝固剤を生産する。米軍が、軍隊オンリーで当たるところを、日本は民生品で総力戦を挑むところに、なんだか日本らしいな、と(笑)。
 めちゃくちゃ数多いキャストの中では、数少ない女性キャスト、セクシー石原さとみ、市川実日子、余貴美子、片桐はいり(笑)などが、印象的。しかし犬童一心、緒方明、原一男、藤木孝、前田敦子、原知佐子らは、いったいどこに出ていたんだ(笑)。

 あと、音楽については、伊福部に、頼りすぎ(笑)。確かに伊福部にしては、ゴジラ音楽は、シンプルな傑作なんだけどねー。
組曲『シンゴジラ』弦楽四重奏_Shin-Godzilla Suite String quartet


ゴジラから紫の光が…!映画『シン・ゴジラ』新予告

『シン・ゴジラ』ZIP独占取材!庵野監督のこだわり演出・歩き方・肌色・質感…初代に近づけたい!

このTVに使用されているフッテージは、実際には、本編では、見ていないものが、多いような????
海外のゴジラファンが激増している!2018年「ゴジラ,.GODZILLA」

 モスラ、キングギドラも、出てくるのか(笑)。アメリカらしく、メタボすぎないか、ゴジラ(笑)。

★Movie Walker★に、タイトル検索で詳細な作品情報あり。簡単な作品解説、あらすじ紹介(企画書レヴェルの初期情報の孫引きゆえ、しばしば実際とは違うが)。

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by mukashinoeiga | 2016-08-10 23:46 | 新・今そこにある映画2 | Trackback | Comments(5)

なんだかいいなあ芦川いづみ轟夕起子

 ネットで拾った話題。
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 いや、もちろん関西なので参加は出来ないけれど、なんとなくほのぼの。いいなあ。

 すでに終わっている神保町シアターの芦川いづみ特集の、チラシ表紙の没デザイン。だけど、こっちのほうが芦川いづみらしくて、さわやかで、よかったなあ。なんで、没になったんだろう。
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by mukashinoeiga | 2016-08-09 23:05 | うわごと | Trackback | Comments(0)

吉永小百合、なんてことするんだ(怒)

 ある人のツイッターを覗いていたら、別の人のツイートがあって、

 新文芸坐、本日の吉永小百合さんトークショーの整理券配布が8時からだったのが、路上の列がものすごいことになり、7時からの配布に変更したとのこと。シニア層に混じって僕はなんとか買えたものの、告知していた時間より1時間早く開けて、本来の時間前に配布終了って…こ、これはアカンやつや…。
 吉永小百合さんトークショー。整理券が気持ち少ないようだなぁと思ってたら、中に入ってびっくり。座席の4分の1くらいが関係者席となっていましたとさ…。しょうがないのかもだけど、整理券もらえなかった観客を思うとちょっと、なんだかなぁ。(以上引用終わり)

 たかが一女優(と、あえて、言わせてもらうが)の関係者席が、百人弱とは、何事か。スポンサー筋か、左翼市民団体筋か。
 たぶん推測するに、戦争映画特集の一環だから、アラ小百合さんトーク、聞きたいわー、という左翼市民平和団体関係かと、思われる。
 左翼は、これだからなー。一般ファンをしり目に、整理券を求めた長蛇の列を無視して、横入り。自称市民は、一般国民より、優先されるんだねー。

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by mukashinoeiga | 2016-08-07 23:24 | うわごと | Trackback | Comments(0)

加藤泰「剣・縄張(しま)」「虱は怖い」

 京橋にて。「生誕100年 映画監督 加藤泰」特集。67年、C.A.L=NTV。デジタル上映。
 加藤泰唯一のTVドラマとのこと。
 本作の製作体制に不満で、二度とTVドラマは作らん、と思ったのか、加藤泰。
 いや、TVドラマなのに、本編並みにやりたい放題の加藤を、TV局、ないしドラマ制作会社が、拒否ったのか。
 それとも単なる偶然、単なる行き違いか。
 うーん。
 出来を見てみると、加藤、TV局、ドラマ制作会社が、それぞれ少しずつ、拒否った結果か、と推測される。三方一両損というやつか。いわゆる、ケミカルが合わない、というもんですかね。
 加藤にしてみれば、ホンペンこそが本妻であり、ちょっとTVに浮気してみたが、やはりホンペンほどは具合がよろしくない。
 加藤が、まるでインバイを見るように?TVを見ているように感じたTV側は、「今更映画が王様なんて旧弊な差別意識丸出しのロートルは、使えねー。同じ映画監督でも、TVに積極的に取り組む深作など、俊英はいっぱいいるんだ。TVに協力的な映画監督は、掃いて捨てるほどいるんだ。戦時中からの、たかが三流監督の、ご道楽になんて、付き合っちゃいられねえ。野良犬一匹撮るのに、地べたに穴掘って、俯瞰撮影なんて、ふざけやがって。借りたオープンセットだから、また穴を埋め戻さなきゃならないんだ。穴を掘ったり埋めたりする若手からは、たかが犬一匹撮るのに、なんでこんな苦労しなきゃいけないんだ、あのくそ爺、という怨嗟の声も上がっている。単にキャリアが長いだけで、さして有名でもない二流監督に、もう、そういうご道楽を許すなんて、現代的じゃないぜ、もっとスピーディに、もっと軽く、やっていくのが、ナウな60年代の俺たちTVマンだぜ」(無根拠な当ブログの推定)
 
 確かに、本作は、素晴らしい。加藤泰的傑作と、言っていい。
 しかし、それがそのまま、一般的な傑作として、見られるかどうか。
 現在のぼくたち映画ファンが絶賛するファクターが、そのまま、当時のナウでヤングな(笑)TV局にとっては、否定的に見られたのも、あるいは、仕方ないことかもしれない。

剣 縄張しま(50分・HDCAM・白黒) (フィルムセンターHPより)
1967(C. A. L)(監)加藤泰(脚)野上龍雄(撮)宮西良太郎(美)服部展宏(音)小森昭宏(出)緒形拳、河村有紀、ジェリー藤尾、沢淑子、菅井きん、宮本信子、小林昭二、土方弘、関口銀三、南佑輔、安達俊枝、阿美本昌子、中村てるみ(解)小沢栄太郎
加藤が唯一テレビ演出を行った作品。「剣」はのちに「水戸黄門」シリーズなどで知られるC.A.Lが最初に制作した一話完結型のシリーズで、全46話が日本テレビ系列で放映された。第28話の本作では、やくざの幸吉(緒形)と彼を堅気に戻そうとする妻いち(河村)のすれ違いが描かれる。

 この「剣」シリーズ、小国英雄、菊島隆三、橋本忍、井手雅人などそうそうたるメンツが企画に名を連ね、「黒澤映画を支えた4人の脚本家が企画、豪華スタッフにより映画なみの制作費をかけて作った、伝説の時代劇のテレビシリーズ」(テレビドラマデータベースより)とのこと。全46話。他のも、見てみたい。
 しかし、ずばずば人が斬れる、名剣だか邪剣だかが、次から次へと人の手を渡る一話完結なんて、よっぽどすっとぼけた落ちでない限り、基本的に、ハッピーエンドは、作りえないだろう。パターンを、かなり限定してしまう設定だ。
 これを全46話やるのも、信じがたい。そういう意味でも、残りのシリーズを見てみたい。
 
 ちなみに、剣の声としてクレジットされる、小沢栄太郎だが、今回の上映素材には、出てこないが、shimomovさんアップの、
テレビドラマ『剣』(1967) オープニングタイトル


 と、長々書いてきて、やっと本題?に、入れる。本作の感想駄文だ。
 いちいちのローアングル徹底にこだわった、まさに加藤泰的快作。
 本作は、根拠不明の自信過剰やくざ・緒形拳が、たった一人で、50人からの中規模やくざの組に、たった一本の剣を頼りに、その制圧を期する、いわばドンキホーテ。
 その根拠不明な自信は、さながら緒形の脳内お花畑か。
 しかし異形のフェミニスト・加藤泰が、この男の横暴を、許さない(笑)。
 あいまい宿?の、沢淑子は、緒形をけしかけるが、妻・河村有紀は、夫婦二人の幸せにこだわり、緒形の暴挙に徹底的に、抗う。
 つつましい幸せを築こう、血なまぐさい暴挙はやめて、それが高じるあまりに、ついには、緒形愛用の邪剣の機構を破壊、女の執念が、男のマチズモの象徴たる剣の、戦闘中の中折れを、もたらす。
 なんたる、異形のフェミニズム。

 しかし、これは、おそらく60年代においては、反時代的な反動と、映った可能性がある。 圧倒的な体制に、一人挑む緒形は、さながら全学連か。それを阻止しようとする妻・河村有紀は、生ぬるい日常の幸福を墨守しようとして「現体制」を結果的に延命させる反動か。
 全学連においては、反体制でありつつ一般女子学生は、立てこもりの炊き出し要員、世話係、性的欲望の対象として、扱いがちだったという(根拠不明の、後発世代からの、推測)。
 また、大島渚「絞死刑」(本作翌年の1968年)では、在日朝鮮人のアイデンティティ確立のためには、日本人女性をレイプ殺害しても、何の問題もないんだ、というお話で、反体制であっても、女性の人権など歯牙にもかけなかった時代で(それを今でも露呈しているのが、お花畑左翼の鳥越)、そういう意味でも、反体制を拒否しつつ異形のフェミニストである加藤は、ナウでヤングなTVマンに、拒否されたのだろうか。うーん。
 とはいえ、本作は、妻・河村有紀と愛人・沢淑子が、緒形を争う女の戦いという側面もあるのだが、この二人の加藤組常連脇役が、はっきり言って、二人ともブス。しかも、華が、ない。画面を見ていても、ちっとも楽しくないのね(笑)。
 フェミニスト加藤泰の行き着く先は、華のない女優の演技合戦て、それ、映画的に、あるいはTVドラマ的に、どうなのよ、と。
 ブスなのはともかくとして、華がない役者を見ているほど味気ないことは、ない。しかも沢淑子の妹分として出てくる若い女優が、宮本信子で、これまた華っ気なし女優。
 加藤泰、徹底的に、枯れてるなあ(笑)。商業ベースも、全く無視で。
 これが東映映画であったら、河村有紀の役は、華のある町弘子だったろう。それなら、納得。しかし、加藤映画のミューズ、桜町も、東映の中では、色気のない部類で、それを愛用する加藤、あんまり女に関心がないのかも?

 なお、同時上映されたのが、
虱は怖い(14分・Blu-ray・白黒・日本語字幕なし)可怕的虱子 (フィルムセンターHPより)
1944(満洲映画協会)(監)加藤泰通(脚)今井新(撮)吉田貞次(音)金城聖巻(アニメーション)笹谷岩男、森川信英
加藤が満映で撮った文化映画。実写部分のさまざまな映画技法や水準の高いアニメーションの駆使によって、興味深い作品になっている。なお、満映時代のもう1本の作品『軍官学校』(1944)は現存が確認されていない。

 なる「教育」映画。特にいうべきこともないが、すべての登場人物たちが、走る走る。締りのある短編となった。ただ、当然のことながら、ローアングルは無し(笑)。

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by mukashinoeiga | 2016-08-07 20:48 | 加藤泰突入せよ炎のごとく | Trackback | Comments(0)