<   2011年 05月 ( 17 )   > この月の画像一覧

1948年日本映画ベストテン

  FJMOVIE年度別ベストテンを、再利用して、歴代ベストテンを、続けます。
詳しいことについては最初の【~1945年以前・戦前編】を参照ください。では。

1位 「手をつなぐ子ら」 稲垣 浩 笠智衆 初山たかし 香川良介 杉村春子
 面白い。【補足】何だ、このコメントは(笑)。覚えて言ってないだろ、自分。でも「この手」の映画(孤児系学園モノ)って、みんな同じティストなんだよね。判別不可能なくらい。

1位 「酔いどれ天使」 黒澤 明 三船敏郎 志村喬 山本礼三郎 久我美子
 「酔いどれ天使」とは、一体誰のことか。三船か。志村か。謎だ。
 いくら丸顔の女優が好きだからといって、これ以上丸顔なのはない久我美子に病人の役を振るとは、どこがリアリズムなんだか。【補足】当時は名目・主演のシムタカなのだろうが、よ~く考えると、三船にも、当てはまるし。超丸顔のときの久我美子を、病人役に。黒沢は、もちろん、リアリストちゃいますやん。

3位 「破戒」 木下恵介 池部良 桂木洋子 宇野重吉 菅井一郎
 たとえ、世間のみんなが君に後ろ指を指そうと、ぼくだけは、君の味方なんだ、といい年こいた男同士が、町中を公然と手をつないで歩く。
 それって、自らの出自を堂々とカミング・アウトするこの映画(それはそれで、現代から見れば、違う気もするが)に別の色合いを与える。別のことをカミング・アウトする映画じゃないのか(笑)。W市川映画版「破戒」には 泣けたが、こちらはただ呆然とするばかりだ。
 部落差別問題にはなんの関心もない木下が、オトコどおしの道行きを描きたかっただけではないのか。
【補足】思わずホンネが。問うに落ちず語るに落ちる、とはこのことか。

4位 「わが生涯のかゞやける日」 吉村公三郎 森雅之 山口淑子 滝沢修 宇野重吉
 超かっこいい森雅之が、クスリが切れたとたんにへなへなへな~と、情けないモリマにヘンボウする。一粒で二度おいしいモリマが味わえる。
【補足】戦前のあらまほしき日本と、戦後の情けない日本を、スタイリッシュにつなぐ快作。ということは、モリマは日本そのものか(笑)。 いやいや。 

  「蜂の巣の子供たち」 清水 宏 島村修作 夏木雅子 御庄正一
【補足】ね、ほらね。でも、どうしたら、こんなカッタンかつPOPな映画が。

  「風の中の牝鶏」 小津安二郎 田中絹代 佐野周二 村田知英子 笠智衆
【補足】小津も、隣の芝生は青かったのかねー。成瀬や溝口、やりたかったのかなー。緊張感はありつつ、残念な小津。
  「夜の女たち」 溝口健二 田中絹代 高杉早苗 角田富江 永田光男
【補足】特に印象なし。
  「誘惑」 吉村公三郎 原節子 佐分利信 山内明 杉村春子
【補足】いるはずのない少年が写っていたシーンがあった気がした。
  「女」 木下恵介 水戸光子 小沢栄太郎
【補足】詰まんない映画だよね。何で評価が残っているのか、まったくわからなかった。木下ゲイ介が、女にまるで興味がないのは、わかった。
  「山猫令嬢」 森 一生 三益愛子 三條美紀 小林桂樹 高田稔
【補足】ぼく的には、まったく面白からず。ただの、プログラム・ピクチャア。

 なお、この年には、上記以外にも、
「肖像」【補足】脚本黒沢明、監督木下恵介、Wブリッ子、黒沢・木下コンビ作。当然、ぶりっ子度もダブルダブル。

「生きている画像」【補足】千葉泰樹の大快作。画家・大河内伝次郎(オレの女房は、この一升瓶だ、という酒豪)、やってきた弟子・笠智衆に「おお、来たか、まずは、飲め」と声をかけると、笠智衆「もう、飲んでます」! いや、こんな快作が、上位に来ないなんて。おかしいよ(笑)。酒飲みにとって、至福の映画。

監督賞   黒澤 明(「酔いどれ天使」)
脚本賞   八田尚之(「生きている画像」) 
主演男優賞 森雅之(「わが生涯のかゞやける日」)
主演女優賞 原節子(「わが生涯のかゞやける日」)
助演男優賞 三船敏郎(「酔いどれ天使」)
助演女優賞 
●追記●もちろん、ハラセツは「わが生涯」には、出ておらず。コピペのミスでした。うーん、この年の主演女優は、思い浮かばず。とりあえず、ブランクで。

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by mukashinoeiga | 2011-05-29 07:17 | ベストテン | Trackback | Comments(0)

1947年日本映画ベストテン

  FJMOVIE年度別ベストテンを、再利用して、歴代ベストテンを。詳しいことについては最初の【~1945年以前・戦前編】を参照ください。では。

1位 「安城家の舞踏會」 吉村公三郎 原節子 滝沢修 森雅之 逢初夢子
 まあそれなりに。【補足】これこそ、今では意味不明な1行コメント。森雅之の出世作、そのパブリック・イメージを強烈に決定付けた。原節子も同様。このふたりのスーパーぶりに比べて、映画は、そんなにたいしたことないよ、ということをいいたかったのかな? 60年後に見ても、スタイリッシュかつ初々しいのは、奇跡。ただし、下克上男が神田隆なのは、明らかにミスキャストだと思う。

2位 「今ひとたびの」 五所平之助 高峰三枝子 龍崎一郎 田中春男 北沢彪
 話はどうでも良い。面白くもなんともないが。
その圧倒的な、ヴィジュアルのスケール感が凄い。【補足】今にして思えば、この作品あたりが、戦前の<素晴らしき松竹メロ>と<戦後のダメな松竹メロ>の境界線だったのかもしれない。 いや、きびしい?

3位 「銀嶺の果て」 谷口千吉 三船敏郎 志村喬 若山セツコ 河野秋武
 谷口千吉だから、せいぜい良くても、可もなく不可もなく。
新人・三船敏郎のみ、輝いている。
ちなみに若山セツコは出ているけどいまいち。それはないだろ千ちゃん。【補足】いや、ホント、この映画が、何で評価されてるのか、わからない。ただの水準作じゃないの。

4位 「すばらしき日曜日」 黒澤 明 沼崎勲 中北千枝子 渡辺篤 中村是好
 いいところがまるでない映画というのはもちろん存在する。たとえばこれだ。【補足】今、考えると(笑)いいところもあるのだが、全体では、あまりに珍作過ぎる。そのいいところだって、あまりにイタすぎない?

5位 「長屋紳士録」 小津安二郎 飯田蝶子 青木放屁 小沢栄太郎 吉川満子
 小津史上最低映画。ということのほどもないか。【補足】小津映画には2種類ある。何十回と見たい映画と、2度と見たくない映画と。

 以下には、順位・コメントともになし。

「四つの恋の物語」 豊田四郎 成瀬巳喜男 山本嘉次郎 衣笠貞之助 池部良 久我美子 小暮実千代 沼崎勲
榎本健一 若山セツコ 浜田百合子 河野秋武
【補足】ウェルメイドなオムニバス小品。巨匠が連なるが、特に云々するデキでも。

「女優須磨子の恋」 溝口健二 田中絹代 山村聡 東野英治郎 千田是也
【補足】ミゾケンと絹代は、映画的相性悪いと思うが。

「象を喰った連中」 吉村公三郎 笠智衆 原保美 日守新一 安部徹
【補足】いまだ未見。

「素浪人罷通る」 伊藤大輔 阪東妻三郎 平井岐代子 沢村マサヒコ 片山明彦
【補足】バンツマのひとり語りは、なみだ涙。スタアの快楽。沢村マサヒコは、津川雅彦のことね。

「戦争と平和」 山本薩夫 亀井文夫 池部良 岸旗江 伊豆肇 菅井一郎
【補足】ドキュメンタルな当時の情景撮影には、貴重なものがあるが、まあ、メロドラマだよね。ヤマサツの師匠・成瀬は<ふたりの女がひとりの男を争う>パターンを終生貫いたが、ヤマサツは、<ふたりの男がひとりの女を争う>パターン。いや、映画を知り尽くした、成瀬のクリアさが、わかるなあ。

監督賞   伊藤大輔(「素浪人罷通る」)
脚本賞
主演男優賞 阪東妻三郎(「素浪人罷通る」)
主演女優賞 原節子(「安城家の舞踏會」)
助演男優賞 森雅之(「安城家の舞踏會」)
助演女優賞
 
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by mukashinoeiga | 2011-05-27 00:56 | ベストテン | Trackback | Comments(0)

FJMOVIE年度別ベストテン【1946年】

戦前編より続き、これからは、単年度別。
 ただし、この年は、新作公開本数も極端に少なく、百本弱。で、順位・コメントありの映画は、2本のみ。

1位 「わが青春に悔なし」 黒澤 明 原節子 藤田進 大河内伝次郎 杉村春子
 あっと驚く珍品映画。戦後の<新思想>を描く映画が、なんと1910・20年代かと見まがう、無声映画のテクを全面採用。当時としても、これは映像的に古い映画だったのではないか。
 そしてほほえましい点もないではなく、原節子の夫のシーン(デートから逮捕に至る)は、これぞヒッチコック映画。実にお手本的なまでに見事なマクガフィン効果こそ、黒沢がヒッチコック的真の映画作家ともいうべきであろーか。
【補足】黒沢とヒッチコックは、その立ち位置が、すごく、似ている。
1 ともに娯楽映画でその才を発揮し、<ジャンル映画中興の祖>として、素晴らしい。
2 その映画テクは、だれにでも、コピペ応用可能な、映画テクとして、残っている。職人のきわみ。逆に言えば、<真のオリジナルな芸術>は、だれも真似しようが、ない。まねをしたら、あ、それはベートーベンだ、ピカソだ、小津だ、清順だ、谷崎だ、何だ、物まねだね、そうなってしまう。黒沢とヒッチコックが<開発した>映画テクは、だれにでも応用可能な<ジャンル映画の文法>として定着した。黒沢もヒッチコックも、だから、職人である。ゲージツ家では、ない。詳しくは、特集「黒沢映画の正体」にて。
 なお、無声映画のような素朴なつくりなのは、敗戦直後の、録音事情の粗末さを、何とかそう見えないようにしようという、黒沢の、緊急策なのかもしれない。電力事情の悪化を逆手にとった、意図的先祖がえりとすれば、素晴らしい。これぞ危機管理能力の鏡か。

2位 「大曾根家の朝」 木下恵介 杉村春子 長尾敏之助 徳大寺伸 小沢栄太郎
 単純につまらない。【補足】いかにも、敗戦後の<時代と寝る>促成左翼・木下らしい、やっつけ仕事か。

 以下は、コメント・順位ともになく、まあ、FJ会員でも、見ている人自体が少ない年か。

  「ある夜の殿様」 衣笠貞之助 長谷川一夫 藤田進 大河内伝次郎 山田五十鈴
【補足】いわゆるグランドホテル形式のハリウッド的小喜劇。平常心なのか、アメリカさんに、こびたのか。

  「歌麿をめぐる五人の女」 溝口健二 坂東簑助 田中絹代 坂東好太郎 川崎弘子
【補足】いっぽう、ミゾケンは、時代にも、アメリカにも、こびない、反時代的な映画を作る。すばらしい。個人的には、傑作「月夜烏」の飯塚敏子が、好み。

  「女性の勝利」 溝口健二 田中絹代 桑野通子 高橋豊子 内村栄子
【補足】ミゾケンの、女を描く、その一点が、時代の変化を無化する。男と違って、女の(時代による)変化は、「流行」の違いのみ。戦前の大日本帝国主義、戦後のアメリカ式民主主義、その大変化の一切が、ミゾケン的女の描き方において、無効とされる。ミゾケンは、その時代時代の風俗を描きつつ、しかし、時代の違いを、作風には、一切反映しない。<時代と寝る>木下ゲイ介との、なんという違い。ただ、個人的には、田中絹代(弁護士)とクワミチ(被害者)の、キャラは、ギャクじゃん、とも思わないではない。

  「わが恋せし乙女」 木下恵介 原保美 井川邦子 東山千栄子 勝見庸太郎
【補足】なんという、思い切りのいい、アメリカ映画っプリ。さすが木下。時代と寝まくる寝まくる。まあ、そういう木下の甘さも、きらいじゃないよ。

  「ニコニコ大会 追ひつ追はれつ」 川島雄三 森川信 空あけみ 山茶花究 幾野道子 日守新一
【補足】戦前作慰問映画コメディを、松竹もタマがないので、しれっと出した。馬鹿馬鹿しいのが、よい。

  「煉瓦女工」 千葉泰樹 矢口陽子 三島雅夫 三好久子 小高たかし
【補足】これも戦前作だが、妙なきまじめさがあり、黒沢明「一番美しく」の主演女優、兼、後の黒沢明夫人である、矢口陽子の真の代表作。ただ快匠・千葉泰樹としては、生硬に過ぎたか。

  「民衆の敵」 今井 正 藤田進 河野秋武 花柳小菊 江川宇礼雄
【補足】これは、今でも未見。

  「明日を創る人々」 山本嘉次郎 黒澤 明 関川秀雄  藤田進 高峰秀子 薄田研二 森雅之
【補足】黒沢「素晴らしき日曜日」と並ぶ、数少ない中北千枝子主演作、ただし内容は平凡。三人の監督がかかわったが、内容的には見るべきものもない、組合映画、つまり御用映画。黒沢が、そのフィルモグラフィーから抹消したのもむべなるかな。
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by mukashinoeiga | 2011-05-25 23:27 | Trackback | Comments(0)

FJMOVIE年度別ベストテン【~1945年以前・戦前編】 

 ネットを徘徊していたら、まあ、前にも見ていたので、発見というわけではないが、日本映画街フォーラムの、年度別ベストテンに「再会」した。
 日本映画街フォーラムとは、昔なつかしのニフティの映画フォーラムのひとつで、主宰者のO氏が、たまたま古い友人でもあったので、ぼくもスタッフの一員でもあったもの。
 その日本映画街フォーラムが、年度別ベストテンを作った。
 一応、このブログにもベストテンのくくりで、過去を系統的に振りかえろうとして、数年分で挫折しているが、これはいい物を見つけた。この日本映画街フォーラムの年度別ベストテンを、適当にコピペすれば、割合簡単に、各年別に振り返られるのでは。ということで、スタートする。まずは戦前編から。

●以下のベストテン順位は、日本映画街フォーラムに参加したフォーラム会員による投票を集計したもの。したがって、ぼくのベストテンというわけでは、ありません。
●タイトル・監督・出演についての表記は、日本映画街フォーラムによるものをお借りしました。
ただし、たとえば3位「斎藤達雄」が「斎藤達男」と誤記されています。わかる部分のみ訂正します。
●戦後については、年度別に集計しているが、戦前編については、一まとめにしています。
●各作品にある駄文は、当時(~2000年)のぼくのもの(ぼく個人の感想なので、あまり当てには、なりません)。ほかの方の感想については「日本映画街フォーラム」ホームページの年度別ベストテンを検索してもらえば、読めます。特に氷室浩次さんの感想は、読んで楽しいものばかり。時々Heroさんも、参加しています。
●なお、ぼくのブログを見てもらえれば、わかると思いますが、ぼくの駄文は長文傾向にあり、むしろ短くまとめることが苦手。したがって、1行批評にも意味不明のものがありますが、ご容赦。なかには、もはや本人でえ、なにを言っているかわからないものも(笑)。適時、補足を、入れます。では。

【~1945年以前・戦前編】
 
1位 「丹下左膳余話・百萬両の壺」 ('35) 山中貞雄 大河内伝次郎 喜代三 沢村国太郎
 たった3作しかない、山中の残存作の中では一番いい。セルフ・パロディを演じる、というのは意外と日本のスタアさんではないんだけど、伝次郎、ほぼ理想的。「鴛鴦歌合戦」で唯一の<歌わない女>深水藤子が、ここでも喜代三の歌を聴いている。

2位 「鴛鴦歌合戦」 ('39) マキノ正博 片岡千恵蔵 香川良介 志村喬
 60年後にも、サラ金(死語か)のTVCMに受け継がれる、時代劇オペレッタの至福。100パーセントの、のほほん映画。お春ちゃん=市川春代、お富ちゃん=服部富子、そして峰沢丹波守=ディック・ミネ、さらに、 <武士は武士でも鰹節ではござらぬぞ>の志村老人=志村喬たちの、歌声こそ、めでたきかな。

3位 「大人の見る絵本 生まれてはみたけれど」 ('32) 小津安二郎 斎藤達雄 吉川満子 菅原秀雄 突貫小僧
 うまいんだけど、きらいな方の小津なのね。

4位 「妻よ薔薇のやうに」 ('35) 成瀬巳喜男 千葉早智子 丸山定夫 英百合子
 1度目に見たときはあんまり良くなかったけど、2度目に見たら楽しい楽しい。タイトルで言う「妻」はあんまりたいした比重ではないのね。【補足】千葉早智子が絶品のモダンガアル。

5位 「無法松の一生」 ('43) 稲垣 浩 阪東妻三郎 月形龍之介 園井恵子 沢村アキヲ
 とくにたいしたものでは。水準作。【補足】もちろん沢村アキヲとは、つい最近亡くなった長門裕之のこと。

6位 「歌行燈」 ('43) 成瀬巳喜男 花柳章太郎 柳永二郎 山田五十鈴
 涙なしには見られない。

7位 「鶴八鶴次郎」 ('38) 成瀬巳喜男 長谷川一夫 山田五十鈴 藤原釜足
 確か、どぶ川のようなところを、チラシが流れるようなシーンがあったと思うが、世評高い山中貞雄「人情紙風船」よりもよっぽどいいと思う。長谷川一夫がしみじみいい、というのも奇跡みたいなもんだ。  

8位 「雄呂血」 ('25) 二川文太郎 阪東妻三郎 関操 環歌子 春路謙作
 (コメントなし)【補足】コメントがないというのは、当時見ていないか、ベスト作として評価していなかったか、今と、なっては、本人にも、わからず。本作に関しては、見ても、大半寝てしまった、という可能性も。

9位 「マダムと女房」 ('31) 五所平之助 渡辺篤 田中絹代 伊達里子
 日本映画初のトーキーなのだが、全く気負わない小品コメディの快作。
その日本的モダニズムが、かわいい。

10位 「姿三四郎」 ('43) 黒澤 明 藤田進 大河内伝次郎 月形龍之介 轟夕起子
 残念ながら、古びた。抒情の点は棄てがたいが。

 11位以下のランキングについては、コメントなし。しなかったのか、できなかったのかは、今となっては不明。パソコン通信のログを、ホームページに再掲載するに当たって、省略した可能性もある。 
(順位なしは集計外の作品です。)とあるが、一人のみ、しかも1点のみの投票ということだろうか。
 戦前編というくくりで、数十年分のエッセンスが、特に1930年代という、第一次日本映画黄金期が含まれているので、傑作快作注目作の、お宝の山で。ぼく自身は、たぶん「何が彼女をさうさせたか」「小島の春」以外は全部、見ている。「愛怨峡」「忠次旅日記」は、寝ちゃったけれど、そのほかは、全て、オススメです。
 
11位 「有りがたうさん」      19位 「出来ごころ」
11位 「按摩と女」       22位 「祇園の姉妹」
13位 「隣の八重ちゃん」    22位 「戸田家の兄妹」
13位 「残菊物語」       24位 「阿片戦争」
15位 「暖流」         24位 「生きてゐる孫六」
15位 「花咲く港」        24位 「はたらく一家」
17位 「秀子の車掌さん」    24位 「還って来た男」
18位 「人情紙風船」       24位 「浪華悲歌」
19位 「ハワイ・マレー沖海戦」 24位 「折鶴お千」
19位 「昨日消えた男」    24位 「愛染かつら」

31位 「父ありき」          40位 「河内屋宗俊」
31位 「綴方教室」          40位 「一人息子」
31位 「エノケンのちゃっきり金太」      「腰弁頑張れ」
31位 「風の中の子供」              「決闘(血煙)高田の馬場」
31位 「滝の白糸」                「淑女は何を忘れたか」
36位 「恋の花咲く 伊豆の踊り子」      「恋も忘れて」
36位 「陸軍」                  「兄とその妹」
38位 「愛怨峡」                 「男性対女性」
39位 「一番美しく」               「花籠の歌」
40位 「赤西蠣太」              「浮草物語」
 
  「東京ラプソディ」              「元禄忠臣蔵 前篇・後篇」
  「簪(かんざし)」          「若い人」
  「歌女おぼえ書」           「泣虫小僧」
  「東京の合唱<こおらす>」     「何が彼女をさうさせたか」
  「家族会議」               「浅草の灯」
  「待って居た男」                「阿部一族」
  「限りなき前進」                「忠次旅日記」
  「巨人伝」                  「噂の娘」
  「風の又三郎」                 「非常線の女」
  「小太刀を使ふ女」             「小島の春」
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by mukashinoeiga | 2011-05-25 21:28 | ベストテン | Trackback | Comments(0)

松田定次「にっぽんGメン 第二話 難船崎の血闘」

 京橋にて。「よみがえる日本映画vol.2 東映篇-映画保存のための特別事業費による」特集。50年、東横映画。
 東映お得意のチャンバラ時代劇がGHQにより、禁じられていた時代なので、東映時代劇スタアが、大挙の現代劇出演。海上保安庁VS日本海方面の密輸団の、対決を描く。第一話なしの、第二話のみの上映だが、一話完結だから、何の支障もなし。
 時代的制約があるので、密輸団は、ほぼ日本人ばかりという設定。<三国人>を悪役としては、まったく出せなかった、情報統制の時代。しかし、それは、今でも、色濃く残ってはいるが。
 市川右太衛門が、海上保安官。いつもの、朗々とした時代劇口調を捨てて、現代劇でもいける、淡々とした演技。好感度大。
 正体不明の謎の男、悪の側に出入りする(絵に描いたような)風来坊が、片岡千恵蔵。でも、これもいつもの片岡千恵蔵だから、実は覆面捜査官なのは、バレバレ。片足を上げて、その下をくぐらせた拳銃からの、トリッキーなガンファイト(笑)も、体型が体型だから、シャープには見えず、笑いを誘う。時代劇とも見まがうべらんめえ口調。まじめな右太衛門に比べ、お笑い担当か。
 悪い密輸団には、大友柳太郎、月形龍之介、進藤英太郎の豪華キャスト。冷酷な大友のワルぶり、オーヴァーアクトの進藤もいいが、月形の登場シーンに爆笑。すっごく、マンガみたいに、にらみつける顔のどアップ。まるで手塚治虫が書いた悪役キャラの顔そのまんま。それを実写でやるなんて、なんてお茶目な月形か。
 滋味あふれる月形、古武士そのままの謹厳な月形、憎憎しげな悪役の月形、はよく見るが、漫画キャラそのままの月形も、もっと見たかったなあ。登場するたび、いちいち、面白すぎる。
 戦前松竹組の徳大寺伸、日守新一、斎藤達雄のチョイ役も、場を和ませる。徳大寺は、以後東映でもたびたび見かけるが、日守、斎藤の東映映画(東横だけど)は、珍しいかな。
 はじめは事件に巻き込まれる被害者、実は悪の女に、なんと、東宝出身の市川春代。市川春代の悪女は珍しいし、しかも歌手という設定で(笑)キャバレーで歌うシーンも。ちょっとふつうにうまいんで、吹き替えか、しかし割りと違和感がないので、本人の声か、判別がつかない(笑)。ま、マジメな歌唱(笑)なので、たぶん吹き替えなんだろうけど。
 この、悪女の、市川春代が、新鮮で、いいのだ。
 市川春代のキャリアというのは不思議で、かなりの年まで、甘ったるい娘役なのだが、若妻の役でもむすめむすめしていて、で、ある日突然、メロドラマなどで、ヒロインなんかの母親役で出てくる(ように見える)。
 ふつうの女優は、若々しい娘役から、ややおとなびた娘役になり、新婚役など経て、幼児のいる母、学生の子の母、とある程度段階をへていくのだが、市川春代は途中の段階を吹っ飛ばして、娘役から、突然、メロドラマの男女主人公の母親役へと、シフトした感じで、その中間が、ないように思えるのだ。
 本作は、その市川春代の、ミッシング・リンクというか、悪女の、というか、ふつうの大人の女の色香を漂わせた、珍しい例で。あのコメディでその才を発揮するエロキューションも封じた、リアルな女の役。これが、なかなか新鮮で、いい。

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by mukashinoeiga | 2011-05-25 21:03 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

西河克己東京の人・前後篇」

 神保町にて。「可憐な娘たち 守ってあげたい芦川いづみ」特集。56年、日活。
 かったるいメロドラマ。126分の総集編なので、かったるさも、倍増。
 芦川いづみは、登場の頃の数シークエンスは、お得意の<特殊児童>演技、ちょっと頭が足りない感じ。なのに、それ以降は、ごくふつうの娘のよう。何らかの軌道修正をしたような。
 妻と死別した滝沢修は、娘・芦川いづみを連れて、月丘夢路と再婚。
 月丘にも、左幸子・柴恭二の子が、ある。最初の夫は、戦死。
 月丘は、義理の娘・芦川と、べったり仲のよい母娘。大きくなったいまも、毎晩、お風呂も一緒に入る仲。
 実の娘・左は、当然自分の母親を独占する義理の妹が、気に入らない。女優になり、家には寄り付かず、劇団の役者・金子信雄と同棲する。妊娠する。堕胎する。捨てられる。
 柴恭二は、義理の妹・芦川に発情していて、何かと、絡んでくる。潔癖な芦川は、「お兄さん、きらいよ」。
 滝沢修は雑誌社経営が行き詰って、会社と家庭の両方から失踪して、ホームレスに。元・秘書のアラタマは、ホームレスになっても、好きな人、と滝沢一途の愛。
 夫が行方不明の月丘は、年下の医者・葉山良二と、愛欲にふけるが、葉山の兄・芦田伸介は、「弟・葉山の嫁さんには、ぜひ芦川を」と、話は、どんどん複雑に、メロ化していく。
 登場人物が入り乱れ、話はだんだん複雑になり、メロドラマの要素は満点なのだが、この種のメロドラマにありがちなように、登場人物は、みなうじうじ悩むばかり。話は、全然、すっきり、しない。先へ、進まない。
 もう、かったるくて、かったるくて、しょうがない。
 やっぱり、日活にメロは、向かないよ。メロの本場・松竹の助監だった西河にも、どうしようもない。
 ただ月丘夢路のセクシーさ、芦川いづみの可憐さのみ、いい。

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by mukashinoeiga | 2011-05-21 00:02 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

舛田利雄「やくざの詩」

 神保町にて。「可憐な娘たち 守ってあげたい芦川いづみ」特集。60年、日活。
 小林旭の魅力全開。シリーズものではそんなに出てこないナマの魅力が、ホントに素晴らしい。いや、シリーズものでも、小林旭は、スタアの魅力出ているんだが、シリーズものの、お約束の連続とはまた違う、さわやかなヒーローぶり。
 しかし、小林旭、有能な元外科医にして、プロのピアニスト、しかも日本ではマレなスーパーガンマン、って、ドンだけヒーローなんだ(笑)。この旭が、医者を辞めて、恋人を殺した殺し屋を求めてさまよう。
 だから、どんなに魅力的な芦川いづみが現われても、恋には、落ちない。この、あらかじめ封じられたラヴ・ストーリーのクールさこそ、日活。
 <特殊児童>というキャラを<得意技>とした芦川が(「特殊児童」キャラ芦川が、ある意味「特殊児童」川島雄三の映画と相性がよかったのもむべなるかな)、ある程度年をいって、二十代後半になったとき、もう<特殊児童>キャラは無理。そこで壁にぶつかって、結局は、若くして引退ということだろうか。この映画でも、十代の頃のオーラは消え、この特集でも出てくる「東京マダムと大阪夫人」「あいつと私」「あじさいの歌」「若い川の流れ」「あじさいの歌」「堂々たる人生」「乳母車」、それに今回上映されなかった川島「風船」のような、絶対の魅力は、もはや、ない。
 酔いどれ医者(金子信雄が快演)の父、いこぢな旭に、優しくきつく対応するお姉さん・芦川いづみ。
 でも、どんなシリアスな場面でも、芦川は、笑顔のアイドルのように口角が上がっていて、無表情なのに、笑っているかのよう。あまりに不自然な顔。いや、もともとふつうにしても口角が上がってしまう顔なのかもしれないが、あまりにドラマのフンイキをぶち壊す、口角の上がり方。これ、まずいだろ。
 「キネマ洋装店」掲示板で、本作に触れたゲストが、「深江章喜と南田洋子」のサブキャラ・カップルを絶賛していたが、これは、ぼくなどもよくやる勘違い。深江章喜は、この映画には、出てこない(たぶん)。出てくるのは、絶賛に値する名演の垂水悟郎。たしかに深江と垂水のマスクは似ている。勘違いするのも無理はない。そのマスク、その演技、本作の垂水は素晴らしい。ベスト・パフォーマンス。

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by mukashinoeiga | 2011-05-19 00:41 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(2)

西河克己「しあわせはどこに」

 神保町にて。「可憐な娘たち 守ってあげたい芦川いづみ」特集。56年、日活。
 ついこの間、ここに、こう書いた。
>ぼくも未見「やくざの詩」「東京の人」「しあわせはどこに」を見たい。
 で、この3本を見に行きました。けっきょく「東京の人」「しあわせはどこに」は、既見作で(泣)。ぼくの記憶力はどこに(泣)。
 2/3は、いわゆるふつうのメロドラマ。芦川いづみが、親なしっ子なので、会社の就職に不利になる。いまは、たぶん、ないとは思うけれど、そういう時代が、ありました。親の力が評価されていた。いまは、両親そろっていても、ふたりともバカ親だったら、かえっていないほうが良いくらい? その芦川に好意をいだく葉山良二と、芦川を欲望のままに狙う宍戸錠との、三角関係、芦川のかわいさもあって、好感触。
 ところが、ラストはアクションもの(場末の倉庫での乱闘)になるという、日活お得意の展開。メロとアクションの混合は、なにげに珍しい。
 知り合った人たちが、みな、なにかの縁で繋がっているという、メロドラマのお約束も好ましい佳作。
 芦川いづみのさわやかさもさることながら、葉山良二の好漢ぶり、二本柳寛のさりげない大人の魅力、皆々素晴らしい。母・山根寿子もいい。色悪というか、宍戸錠の、酷薄なる不気味さもいい。
 メロドラマとしては、そこは慣れない日活のこと、いろいろ不思議の違和感はあるが、絶対の魅力、芦川、葉山、二本柳、山根の素晴らしさに、なんとも。
 宍戸錠、細身の顔に、しゃれにならない酷薄さ。本当に、悪い奴に、見える。
 当時としては珍しい整形をして、ほおにふくらみを持たせて、コミカルにしたのは正解で。そうしなければ、相当陰惨な役柄しか、与えられなかったに違いない。本作には、陰惨な、整形前の、色悪が見れる。これでは、スタアには、なれない。そう自覚しての、整形だろうか。
 西河克巳の手堅い演出も光る。
 かつて、ぼくが若い頃、西河克巳なんてものは、ぬるいアイドル映画(吉永小百合から山口百恵、その他の有象無象)専門監督と馬鹿にしていたのだが、何の何の、最近幾つかの映画を見るにいたって、捨てたモンではない、と再注目しているのだ。

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by mukashinoeiga | 2011-05-17 00:36 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

千葉泰樹「悪の愉しさ」

 京橋にて。「よみがえる日本映画vol.2 東映篇-映画保存のための特別事業費による」特集。54年、東映東京。
 本作の東映カンパニー・ロゴは、大理石?風の石壁に、東映の△マークと社名が刻印されたもの。会社の玄関辺りにありそうな感じ。同じ日に、次に見た千葉泰樹「女給」は翌年の作ながら、後に定着した、波間に漂う東映△マーク。
 冒頭クレジットには、<森雅之 久我美子 伊藤久哉>と、主役人三人が、出るが、モリマは、油ギッシュなやり手ブローカー役の、脇役。実質主演は、伊藤久哉。ただ、伊藤にはネームヴァリューがないので、モリマが名前を貸した、というところか。
 いっしゅのサギなのだが、小ずるく人をだます男の映画だから、まあ、この程度はやむをえまい(笑)。
 伊藤久哉。東映で初主演して、でも藤本プロに拾われて、後に東宝系の脇役陣に、ということか。数々の東宝系映画で、怪しげなキャバレーのマネージャーとか、殺し屋とか、ちょこまか、出てくる。ほんとに、よく出てくる。やはり、主役としては、オーラなく、華もなく、主役失格だったのね。
 伊藤久哉は、同僚の久我美子をだまし、伊豆肇をだまし、伊豆肇の細君・千石規子をだまし、大家の未亡人・東郷晴子をだまし、とにかく久我美子はともかく、千石規子まで、コマしてしまう。理由は、もったいないから(笑)。東郷晴子も、家を追い出されないために、モノにする。
 でも、これ、悪、って言うより、悪ぶっているというか、せいぜい小悪だよね。楽しそうにも見えない。
 話はそこそこ面白いのだが、伊藤が人をだますサマを見ていても、面白くもなんともない。比較が極端だが、これが、モリシゲとか、鴈治郎とか、浪花千栄子が人をだます様子は、見ていて楽しいよね。いや、こんな重量級と比べること自体が、間違いだが。
 東映出張の東宝系女優たちを見て、びっくり。久我美子が、むしろこちらのほうが悪ぶった魅力満開。セクシーで、いい女。こんな役、東宝でも、松竹でも、絶対出さしてもらえなかった、久我美子のセクシーさ。
 同じく杉葉子。しどけないシュミーズ姿で、夫・伊藤に見せる、開きなおった、ふてぶてしさ。清純さをかなぐり捨てた、捨てがたいセクシーさ。
 ま、東郷晴子は、せっかくいつもの東宝映画らしからぬ、悶える未亡人の役を振られても、ワンパターンの演技力だけれども。
 千石規子、何か、着物の着こなしがヘン。で、これまた、何かパターン演技に終始して、はじけない。
 久我も杉も、もう少し東映に出演すれば、もっと違った展開があったのかも。いやいや、東映は女優をたいせつにしないからなあ。やはり、千葉泰樹の演出のゆえか。もう一回上映があるので、久我美子や、杉葉子の素晴らしさだけで、必見。
 モリマは(笑)。脇役ならではの、主役では決して見せない、いささかのクサさを堪能(笑)。いや、でも、脇役でも、うまいよね(笑)。
 千葉泰樹演出のさりげない厚みを体感しました。ま、映画自体は、それほどの面白さではないにしろ。でも、見た直後より、いまのほうが、より鮮明に、久我、杉のよさが、濃くなっている。

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by mukashinoeiga | 2011-05-15 23:08 | 千葉泰樹 ヤスキ節の愉しさ | Trackback | Comments(2)

内田吐夢「千両獅子」

 京橋にて。「よみがえる日本映画vol.2 東映篇-映画保存のための特別事業費による」特集。58年、東映京都。
 非常に繊細でセンシティヴな(同じか)快作、といっていいのか、どうなのか。
しかし、きわめて印象的。
 実は将軍の御落胤、旗本の殿様の、市川右太衛門が、浪人姿で、江戸を徘徊し、庶民とよしみを通じて、悪を正す。原作・山手樹一郎の通俗きわまる娯楽時代小説の映画化。これぞ、東映通俗時代劇のきわみ。
 しかも、スタア右太衛門の一人二役という、東映時代劇ずぶずぶのお約束もあり(スタアを一本の映画で二度楽しめる)ザ・東映時代劇、ザ・スタア映画そのもの。
 そういう映画と思わせて、しかしきわめて、緊張感がある画面が連打される。白黒シネマスコープを生かした、横長の映像の、きっちり端正な、さりげなくただならぬ映像たち。キャメラのパンニングのたしかさ。
 そして、ラストは、東映チャンバラらしからぬアンチ・クライマックス、最後の大立ち回りはなく、きわめて耽美的?なラストが用意されている。
 この特集でも、もう一回上映があるので、一応、以下、ネタバレだ。その前に、吐夢トム吐ー夢、とは。

 内田吐夢と言えば、1980年頃に「ぴくちゃあ通信」氏が同人誌でやったOLD映画人気投票でもそうだったが、OLD映画ファンにとっての人気監督のひとりで、ぴくちゃあ氏らの監督人気投票でも、ベストテン内に入っていた。
 ところがその頃から、OLD映画にはまりだしたぼくなどは、内田吐夢、だれそれ状態。名画座でも上映されないし、てか、たんにぼくの目の中に入っていなかっただけなのか。
 いや、それだけでも。内田吐夢の映画を何本か見ていえるのは、もちろん重要な作品を見逃しているのかも、というなかでいえるのは、内田吐夢はしっかりした作劇の中に、時々ハッタリや、ケレンを、挟む。しっかりかつハッタリ、で評価されていたのか、と。
 しかし。
 微温的なハッタリ。ケレンなのに、熱がない。当時はそれなりに評価されていたゆえの、人気監督ベストテン入りなのだろうが、ハッタリもケレンも、いかにも紋切り型に見えてしまう。微温かつビミョー。
 そつのないハッタリ。そつのないケレン。
 ぼくには、そう思えるのだが。
 というわけで、以下ネタバレで、結末に触れます。

 スタア右太衛門の一人二役。
 ひとりは、将軍家御落胤の旗本。通俗時代劇のお約束に従って、浪人に身をやつし、市中を徘徊。悪を憎み、強きをくじき、弱きを助ける。仮にBとする。
 いまひとりは、やはり御落胤を名乗る「葵太郎」、大勢の配下を連れ、豪商、将軍家に、押し込み強盗の、盗賊頭領。金も盗めば、人も殺す。仮にAとする。
 ところが、このふたりは、同じ顔、同じ体型の一人二役だけあって、実は、兄弟。
 ある武士夫婦が、長男Aをもうける。そののち、その妻が、好色な将軍の目に留まり、側室に。夫は、忌避に触れ、排除される。
 妻が、将軍とのあいだに御落胤Bを産む。Bは旗本に。このBを慕うのが、老中の娘の姫・大川恵子。
 長男Aは、だから、御落胤では、ない。しかし御落胤の「葵太郎」を名乗り、次々盗みを働く。姫・大川恵子も、かどわかす。
 弟Bは、当然兄Aに似ているし、しかも、おせっかいな性格から、いつも「葵太郎」の盗賊現場に、いる。
 南町奉行所奉行・山形勲は、当然弟Bを捕縛する。そして、現代では絶対に理解されない、奇妙な論理に従い、その老母(将軍の元側室なのに)をも、捕縛。
 母子をそれぞれ乗せた駕籠を、大勢の役人たちが囲み、山形勲を先頭に、奉行所に向かう、真っ暗闇の江戸の街。橋に差し掛かると、葵太郎が、現われる。
 「葵太郎」は、将軍家から盗んだ五万両の千両箱を、支度金だという。何の支度金か。
 ここで、行われるのは、エスピオナージュ物の定番、橋の上での互いの捕虜交換と、なる。
 兄Aの「葵太郎」は、五万両と姫を差し出す。
 弟Bは老母を差し出す。
 兄Aは、将軍に母を取られて、これまでずっと母の愛を知らなかった。これから、親孝行したいという。
 老母も、長らく会うことすらかなわなかった子と、余生を暮らしたいと瞬時に判断する。
 弟Bも、それを理解して、母を送り出す。
 兄と弟の間で、母の委託が一瞬の了解のもとに、行われる。
 それは、それでいい。あるいは、なみだなみだの感動モノの名場面になりうるかもしれないのだが。
 しかし。
 母は交換されるのだ。弟Bの、いいなづけと。かわいい大川恵子と。老母・松浦築枝が。
 なんとも言いようもない、何がしかの倒錯性が、匂うのだ。母の愛を知らない兄に母を譲り渡す、作りようによっては、感動ドラマにもなりようものなのに、かすかな倒錯のにおいが。これが職人に納まりきれない、吐夢の意匠か。
 時代劇のお約束の、ラスト大立ち回りを省いても、こういう結末になることこそが。
 もちろん橋の上で、山形勲の南町奉行所の捕り方たち、旗本・右太衛門と老母、対する盗賊団「葵太郎」と手下たち、その人質の大川恵子姫、大勢が入り乱れているのだから、お約束の乱闘になるのは、きわめてたやすいことなのだ。それなのに。
 しかし、そのあえやかな倒錯性は、微なるがゆえに、緊張感はあるが、あいさつに困る。感応できなければ、ただの、単なるクライマックス抜き、なんだから。アンチ・クライマックスに、クライマックスを感じ得れば、いいのだが・・・・。しかし、その倒錯の匂いは、吐夢が、意図したものなのか、どうかは、ヨクワカラナイ。
●追記●つまり、母親と花嫁が等価に<捕虜交換>されるわけなのだが、いや、そのはずなのだが。
 兄Aも弟Bも、実は、かわいい大川恵子のことなど、眼中には、ないのだ。
 兄弟がひたすら目を注ぐ<欲望の対象>は、年老いた、上品そうな松浦築枝なのだ。いや、もちろん<欲望の対象>といっても、性的なそれではなく、孝行の愛なのではあるが、ここで重要なのは、本来等価に<捕虜交換>されるべき二人のうち、花嫁が無視される結果、老母こそが、この映画のクライマックスでは、<嫁ぎ行く花嫁>の光芒、<花嫁>のエロスを帯びてしまうことだ。 
 弟・右太衛門、奉行・山形勲のいる木橋の中央から、静々と老母を帯同する形の、兄・右太衛門が、花嫁に付き添う花婿に見えてしまうのは、やむをえない。ただの盗品の五万両の返還に対し、盗賊の兄は<支度金>という。母親という<花嫁>を、弟の前から、永遠に連れ去ってしまうための<支度金>。
 <お約束>の<爽快なクライマックスの大チャンバラ>がないだけに、倒錯性だけが残る。それが内田吐夢の、内なる吐夢なのだろうか。 
 
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by mukashinoeiga | 2011-05-15 00:11 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)