<   2010年 12月 ( 15 )   > この月の画像一覧

瑞穂春海「殺陣師段平」

 京橋にて。「生誕百年・映画監督 黒澤明」特集。62年、大映京都。
 「殺陣師段平」三度目のリメイク。脚本は全て黒沢明。
 一度目のマキノ版(市川段平に月形龍之介、沢田正二郎に市川右太衛門、お春に山田五十鈴、おきくに月丘千秋)、二度目のマキノ版(「人生とんぼ返り」に改題、段平に森繁、沢正に河津清三郎、お春に五十鈴、おきくに左幸子)も見ているはずだが、検索してみたら(笑)当ブログがヒットせず、書いてなかったのね。どちらかは書いているはずなのだが。う~ん、おかしい。検索がか、ぼくの記憶がか(笑)。
 今回は、段平に中村鴈治郎、沢正に市川雷蔵、お春に田中絹代、おきくに高田美和。段平は、かつて歌舞伎役者で、かの名優・中村鴈治郎と共演したことが自慢の種で、繰り返し「わいはあの中村鴈治郎と・・・・」というのがひとつ話。
 このせりふは元もとの黒沢脚本にあったのか、それとも二世中村鴈治郎がこの役をやることからつけくわられた、一種の楽屋落ちなのか。
 というのも。
 フィルムセンターのチラシによると、マキノ版は黒沢の脚本を大幅に手直ししたという。
 そうだろう。理詰めの話は黒沢は得意かもしれないが、情味に欠ける、というのが、おそらくマキノの不満。
 黒沢から見てマキノは大先輩の監督で、マキノの脚本直しは有名だから、マキノの脚本大はば手直しは、まあ、いい。しかし、瑞穂春海は格下だし、大映も「羅生門」でグランプリ、黒沢には恩がある。というわけで、じかに黒沢オリジナル脚本を読んでいないまま、勝手に推測すると、この大映版は、黒沢脚本に、ほぼ/まったく忠実。
 というわけで、ぼくが気付いた、マキノ版、大映版の物語の差異は、次の一点。ほかは大体同じように思う。

●本作大映版のクライマックス
 沢正は久しぶりに大阪で「国定忠治」を興行する。ところが新たに付け加えられた一幕の殺陣に悩む。
 こんなときに段平がいれば。
 段平も、その沢正の悩みを察し、ひそかに病床から抜け出し、沢正の演技を見る。しかし死の病の段平は、客席で気絶。
 運びこまれた自室に、沢正らが見舞う。そこで、段平は、沢正に殺陣を伝授。わかった、とうなづく沢正に見守られて、絶命。

●マキノ版の改変
 沢正は久しぶりに大阪で「国定忠治」を興行する。ところが新たに付け加えられた一幕の殺陣に悩む。
 こんなときに段平がいれば。
 段平も、その沢正の悩みを察し、極めつけの殺陣を考案する。そして、絶命。
 段平とお春の養女・おきく(実は、段平の婚外子)が、芝居小屋の沢正を訪ね、段平直伝の殺陣を、沢正に伝える。

 大映版は、狭い下宿の臨終であり、殺陣師としては、アクションと人情味に欠ける、直裁さ。ニュアンスに欠ける。ふふ、黒沢、まだまだ若いな、と、マキノは、つぶやいたはずだ。おそらく(笑)。
 段平が直接沢正に殺陣を伝授する。曲がないやね。これじゃ、映画にならねえ、とマキノは、ぼやいたはずだ。おそらく(笑)。
 では、間接的に伝えるのは。段平の養女にして、実は実の娘、養女として暮らしていながら、実の父娘と名乗りあえない、そのつらさ。そのおきくが、段平の殺陣を、死後に伝授する。
 芸の相伝に、血の相伝を重ねあわせる。思わず、涙ぐむような設定だ。きわめてマキノ的な泣かせだ。
 たしかに、マキノ版(黒沢脚本改変版)は、泣ける。瑞穂春海版(黒沢脚本そのまま版)は、泣けない。
 しかし、マキノ版2作も鉄板ではない。決定的な欠陥がある。 
 芸を中継する娘おきくを演じる若手女優の、月丘千秋、左幸子が、当然ながら、残念ながら、芸的に未熟で、その伝える芸がちっとも、すごく見えないのね。マキノ的人情話として、血の相伝では泣けるのだが、芸の相伝には、なっていない。そこが、弱いところ。
 で、三人の若手女優のなかで、一番、芸の相伝が表現できそうなのが、本作の高田美和。高田浩吉の娘だよ。その高田美和を、黒沢脚本に忠実になるあまり、マキノ的改変を外すなんて。まーもったいない。
 鴈治郎の段平は、常に華やかで精力的、なんか落ち目の老残役者の感が出ない。雷蔵もイマイチ。
 しかし、大正の時代を再現したセット、大オープンセットの見事なこと! さすが、大映美術陣。ため息が出る。 これには、マキノ版も完敗。
 冒頭クレジットに、舞台指導・上田吉二郎と出るのも、マキノ版と同じ。上田は出演も。なお、同じクレジットに、小沢栄とも出たが、これは読みきれず。資料提供か、なにかか。
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by mukashinoeiga | 2010-12-31 01:04 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

三村明「消えた中隊」

 京橋にて。「生誕百年・映画監督 黒澤明」特集。55年、日活。
 きわめてアメリカ映画的な快作である。
 黒沢明・菊島隆三の脚本を、ハリウッド帰りの撮影監督・三村明が、初監督したという。黒沢自身も、もともとアメリカ映画のファンであった。
 原作は、井手雅人の直木賞候補「地の塩」。井手自身も映画脚本で鳴らした男。映画的なストーリーでも、あったのだろうか。
 当時の日活らしく、新国劇の辰巳柳太郎が堂々の主演で素晴らしく、島田正吾はじめ、新国劇の役者たちがユニット出演。戦時中の軍人たちを、渋く好演している。
 花を添える慰安婦役・島崎雪子も、愛らしい。
 アムール川を境にして、ソ連軍と対峙する、最前線の駐屯軍の、反乱とその結果。
 明快にして、きびきびとした映画の流れ。
 石山健二郎(出番は少ないながら、例によって印象強い)参謀らは、ちいさな出来事(ソ連側からの一発の銃弾など)を誘発させて、開戦にもって行きたい。最前線部隊の隊長・辰巳も巻き込んで、画策するのだが、最前線部隊の副隊長以下が、きわめて楽天的なヒューマニズムを発揮して、その陰謀をくじいてしまう。
 この陰謀派と、現場の部隊の、齟齬というか、ずれというか、見ているこちらも、わくわくするようなつくり。 それぞれの軍人たちを演じる、今では無名の新国劇の実力派役者たちが、まったくもって素晴らしい。


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by mukashinoeiga | 2010-12-30 09:25 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

稲垣浩「戦国無頼」

 京橋にて。「生誕百年・映画監督 黒澤明」特集。52年、東宝。
 本特集では、50本が上映されている。うち30本が黒沢監督作、残りが黒沢明が脚本に関係している作品、ということになる。
 本作は、黒沢と稲垣が、共同脚本としてクレジットされている。原作は井上靖。
 織田信長に滅ぼされた、浅井長政軍勢の三人(三船敏郎、三国連太郎、市川段四郎)の、その後の流転・戦場人生を追う。
 浅井軍から、武田信玄の軍へ、流転しつつ、豪快な活躍の三船。
 武田軍を責める信長軍に、乗り換える三国。どんな卑怯な手を使っても、成り上がりたい小心者が、今回の三国。ダメな小者感を三国が好演。三船の恋人(浅茅しのぶ、宝塚とクレジット)に、横恋慕。
 市川は、琵琶湖周辺で荒らしまわる野盗の親分に。といっても、映画では、なぜか気弱に、別勢力の盗賊・東野英治郎の娘・山口淑子に、恋心。
 その山口淑子は、三船に恋狂い。逃げた三船を追い求めて、戦場から戦場へ。でも三船には会えず、どうでもいい三国にばかり出会う。
「会いたい男には会えず、会いたくもない男ばかりに、会ってしまう」この山口のせりふが、可笑しい。
 黒沢が脚本にかんでいるのに、本作では、男三人と同格に、山口淑子もフィーチャー。この山口の、大きな瞳の野性味が、いい。女嫌いの黒沢とは思えない活躍だ。
 とはいえ、稲垣・黒沢の共同ぶりは不明だし、第一黒沢の脚本参加作品は、小遣い稼ぎのアルバイトと思しく、娯楽作品を流し書きしている印象が強い。自分自身の監督作と、明らかに力の入れ方が違う。まあ、稲垣浩先輩も、力のこもった脚本など渡されても、困るだろうが。
 三船が市川を「いいヤツ」といい、市川も三船を、いい男ぶりとほめる。豪快男同士の、こうした純情ぶりこそ、本領か。時々現われ、浅茅しのぶを預かったり、三国をさとす老刀鍛冶・志村喬の、志村喬ぶりにも、にんまり。
 三船も、浅茅しのぶに慕われ、山口淑子に恋慕されても、なすすべもない、豪快男、とぴったり柄にはまり。三国や市川のように、くよくよ悩まない男。
 最後は三船に加勢して、思う山口をあきらめる市川は、<表返った>「隠し砦の三悪人」藤田進を思わせる。
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by mukashinoeiga | 2010-12-21 07:57 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

本多猪四郎「マタンゴ」円谷英二特撮

 池袋にて。「没後40年 特技監督・円谷英二の世界」特集。63年、東宝。
 「ガス人間第一号」の同時上映ゆえの再見。再々見か。
 「ガス人間」同様、<ゴジラのような巨大怪獣を出さずによりリアルな?特撮映画を>というコンセプトだと思う。大人向けの特撮映画、ということか。あるいは、ゴジラ映画より、より低予算で円谷特撮チームを活用できないか、つまり、「ゴジラ」シリーズほどの予算をかけずに、そこそこの映画が出来ないか、大作怪獣映画だけなら、特撮チームを遊ばせることになる、ということか。
 そこで恋愛要素、文芸映画要素を加え「ガス人間」、青春・冒険映画要素を加え「マタンゴ」。
 しかし「ガス人間」も大人向けに徹しきれず(?)、身についてしまったお子様ティスト、残念でしたね。もう、ちょっと、だったのに。でも、こっから、TV「ウルトラQ」へ、いけたのだ。
「原水爆に被爆して、巨大化したゴジラ。そろそろマンネリだ。次の企画を考えろ」
「原爆といえば、きのこ雲ですよね」
「そうだな」
「じゃ、きのこの怪獣ってのは、どうです?」
「おっ新発想だね(笑)。植物の怪獣ってのも、新機軸じゃないか」
「じゃ、巨大化したきのこ怪獣が、町を襲うと」
「いや、今回の予算では、ミニチュアはそうそう組めんよ」
「じゃ?」
「だからぁ、等身大よ等身大」
 てな、感じか(笑)。
 小泉博・久保明・土屋嘉男、水野久美、などの二線級で固め、矢代美紀なる新人もなかなかいい。
 きのこを食ったら、きのこになる、コンセプトが、いい。
 無人島モノとしても大駄作「東京島」のスタッフ・キャストに、見てから、作って欲しかった。「東京島」が、まるで民主党政権並みに、こんなミスしたらあかんやろ、というミスを数限りなく犯した、そのミスを、「マタンゴ」は、ほぼ、回避していく。
 もっとも、民主党も「東京島」も、はたから見ればミステークなのに、当人たちはしれっとして、むしろ功績と思っているフシもあり、ああ、鈍感な人はどこまで鈍感なのか、と自分を棚に上げて、思う。
 きのこを食って、丸々超え太って、肌の艶も美しい、水野久美の、ベスト・イメージ。
 飢餓の中の、妄想的飽食の幸福。やっぱり、きのこ、だよね(笑)、妄想のキモは。
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by mukashinoeiga | 2010-12-18 00:02 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

千石規子・黒沢・小津

 先月は、大島渚「帰って来たヨッパライ」が、当ブログでは一番検索でヒットした。
 今月にはいると、なぜか「真空地帯」祭り。
 一時は検索ベストテンの過半数が「真空地帯」、山本薩夫、関連で。いったいなんなんでしょ。
 確か今年は、ヤマサツ生誕100年に当たるので、TVででも、やったのだろうか。その方面には疎いので。
 数は少ないが、先月、千石規子の「裸」「色気」というのも、ありました。
 千石規子といえば、垂れ目の、いつもぐちぐち小さい愚痴をつぶやく、いささか陰気なおばさん、というのが、パブリック・イメージだろう。あまりに「小口」すぎて、かえって笑ってしまうというか、陰気な中にもユーモアがあり、貴重な性格女優で。
 しかし、彼女にも若いころがあり、といっても、たぶん新劇系の女優さんなので、映画出演は、そんなに早くない。若くても、老け顔だし。
 しかし、そういうイメージの彼女を、セクシーガール?として、演じさせた奴ら(笑)がいる。
 黒沢明「醜聞スキャンダル」で、画家・三船敏郎の、ヌード・モデル。もちろん、当時の映画だから、ちらりとも肌を見せないが、「最近、あたしをちっとも描かないわね。もう、あたしの裸に興味ないの」と、三船を責める。あるいは、三船に、愚痴る。
 黒沢明「静かなる決闘」では、医師・三船に思いを寄せる看護婦。
 黒沢は、ずうっと、「女を描けない」と、批判されてきた。ぼくは、「描けない」のではなくて、「女に関心がない」んだと思う。あるいは「性的存在」としての女に関心がないというべきか。黒沢が唯一撮った女性ヌードが、何度も言うが「八月の狂詩曲」の、村瀬幸子のおばあちゃんヌードだった。
 これは、男性映画監督としては、極めて異様というか、異質というか。あるいは、もともと画家であるのに、そうなのであれば、かなり<異質>といっていいのではないだろうか。
 その黒沢が、若い女の生々しさを描く場合に、千石規子を起用する。
 黒沢の女優描写は、きわめて限られている。
 理想を体現する女として「わが生涯に悔なし」原節子、健康美少女として「酔いどれ天使」久我美子、一応、営業対策や物語上の要請として女優を出さなきゃいけないから出すんだけど、あんまり個性発揮して、オレの映画を邪魔しないでね要員女優として「天国と地獄」「悪い奴ほどよく眠る」「まあだだよ」香川京子、怖いおばさんとして「蜘蛛之巣城」「用心棒」山田五十鈴、などなと。
 黒沢、どう見ても、<男目線>で、女優を、見ていないよね。
 晩年の「乱」だか「影武者」で、エキストラ武者の若い男性に、リハーサル中、公然とキスしただとか、舌入れただとか(笑)、くだんねーゴシップが一時あったけれど、アレはどうなったのか(笑)。
 一方、小津は「女を描けない」とは、言われなかった。女優王国・松竹の、後年は「ホームドラマ」専門作家だから、女を描けなかったら、商売にならない。しかし、戦前は、モダンガアルも描いた小津も、戦後は、原節子など<聖女>か、三宅邦子など<家庭婦人>か、杉村春子など<おばさん>か、東山千栄子など<おばあちゃん>か、岡田茉莉子など<おきゃん娘>か、なんだ、結構、パターンあるか(笑)。
 少なくとも黒沢より、女を描いているな(笑)。
 そうは言いつつ、戦後は、あまり<セクシーガール>を、描いていない。
 唯一の例外が「早春」岸恵子と「宗方姉妹」の、千石規子。
 五反田あたりの、場末の飲み屋の女。常連の藤原釜足あたりを、例によって、ぶちぶち文句を言って、いびっている。でも、なんというか、くたびれた、場末感ある、女の色気が、そこはかなく、あるんだよね(笑)。女のナマっぽさを感じさせる、数少ない小津映画の女性だろう。
 この映画の、つんと澄ました、田中絹代・高峰秀子の美人姉妹の喫茶店には行きたいとは思わないけれど、この場末の飲み屋で、たそがれた千石規子に、藤原釜足とともに、ぶちぶち言葉いじめされたいとは思う(笑)。
 こういう<下世話な色気>ある女が、小津の映画に出てくるとは。正確には女の<ナマっぽさ>。
 いや「秋刀魚の味」の、笠智衆が通いつめる、トリスバーの岸田今日子も、捨てがたいが、色気というよりは、カエルの妖気めいているからなあ岸田今日子は。
 岸田今日子と岸田森は、爬虫類めいて、とても哺乳類とは思えんよなあ。
  生身の女を描かない、黒沢と小津が、たまにそういうナマ感ある女を描くときに必ず出てくるのが、そう、千石規子。
 ある意味、というかどの意味でも、黒沢・小津映画の最高のミューズといえる原節の対極にある人だよね。


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by mukashinoeiga | 2010-12-12 08:29 | 黒沢明 黒い沢ほどよく明か | Trackback | Comments(0)

本多猪四郎「ガス人間第一号」円谷英二特撮

 池袋にて。「没後40年 特技監督・円谷英二の世界」特集。60年、東宝。
 あー、この、ラストの芸のなさは何なの。
 いきなりネタバレだが。あまりに、何にも考えていない落ちに呆然。
 土屋嘉男は、マッド・サイエンティストの実験が失敗し、ガス人間に。気体になって銀行を襲い、大金を次々奪う。
 このガス人間、もう殺すしかない、ということで、土屋の心の恋人・八千草薫(相変わらず美しい)の踊りの公演が大ホールで行われるのを気化として、もとい、奇貨として、大ホールから観客排除、八千草、その爺・左ト全、土屋のみを残し、<無味無臭のガス>をホール内に充満、これを爆発せしめて、ガス人間を焼殺しようという腹積もり。
 田島義文警部が「では、私の責任において、スイッチを入れます」。で(結果はいろいろあって)ドカーン!
 あのー、これって、警察による、計画的放火、計画的殺人、じゃないの。何の罪もない八千草、左、それに八千草の踊りに合わせて照明や音楽が変わるから、この当時、コンピューター自動制御は、確か(笑)なかったはずだから、最低一名の技師を、警察が殺戮したことになる。
 ガス人間だって、ガスだけど、人間なんだし。四人も、警察、殺してるぞ。
 しかも会場となる民間のホールを含むビルは大炎上。最初から多数の消防車を並べているんだから、この民間会社が、自社ビルの炎上を許可するわけもないだろう。
 田島義文、重々しくスイッチをオンするが、当然死刑にすべき犯罪じゃないの、これ。
 そもそもガス人間を爆発させるなら、被害最小の、銀行金庫室で、ちゃちゃっと、爆発させれば、何の問題もないんじゃないの、まだしも。いや、ガス人間のガス自体は爆発性はないんだったら、ボンベ程度で吹きかけて、マッチをするだけで、いいんじゃないの。たぶん。
 人間サイズの怪物を出して、しかもヒロインとの恋愛を絡まそうとして、発想としてはいいんだけど、まー、不発、でしたな。気体、いや、期待はずれ。
 三橋達也警部補のガールフレンド、婦人記者に、新人・佐多契子。なかなかかわいい。その後活躍すべきように思えるが。
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by mukashinoeiga | 2010-12-08 10:23 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

岩間鶴夫「愛の濃淡」

 阿佐ヶ谷にて。「松竹大船・メロドラマの薫り」特集。59年、松竹大船。
 好青年サラリーマン・大木実は、銀座の洋品店オーナー・水戸光子の弟。水戸の弟子のデザイナー・鳳八千代は、大木に思いを寄せている。ところが、そこに、街娼・岡田茉莉子が、割り込み。
 岡田と大木がデキている、と「誤解」した鳳が、よよよよ、と泣きくずれるところで、場内に失笑が。
 かつての戦前松竹メロドラマは、やはり面白かった。清水宏、島津保次郎、今から見ても先端の才能がそろっていた。しかし、その同じ手法を、劣化した映画作家たちが、これぞ松竹の伝統芸とばかり、パターンとして繰り返す。戦後日本の政治と同じ、先送りのぬるま湯。
 岩間鶴夫の専属助監督・鈴木清順はじめ、有意の人材が日活に流れたのも、惜しいことだったか。いわゆる松竹ヌーヴェルヴァーグの連中も、松竹を離れたが、大島渚を除いては、まあ、どうでもいい。ただ、あの三人は、プロデュースの才能はあったのだから、奥山ジュニアなんかより、よっほどヒット作を出すプロデューサーだったろう。
 というわけで岩間鶴夫。てんで、物語を語るテクがない。
 大木実が、家でくつろいで、ウィスキーを飲んでいる。アパートで。ホテルで。そこへノック。
岡田茉莉子が訪ねてくる。鳳八千代が訪ねてくる。そんな芸のない、話の繰り返し。
 岡田茉莉子は、もっとも美しいころ。もったいない。
 鳳八千代は、ふけ顔で、よろめきマダムが似合いそうな顔。なのに、男を知らず、男におびえる、生娘の役。
 その鳳の貞操を狙う<悪役>は、とても気持ち悪い宮城千賀子・高野真二の母子。
 岡田の友人に、男らしい丸山明宏。彼らしいユニークな快演。
 最後も、パターンどおり、男と女が寄り添って、夜の銀座に消えていく。しかし、そこに、情感は、感じられない。
●追記●しかし、この映画、撮影は素晴らしく、美しい。TV放映用に焼いたのか、美しい、カラー・シネスコのニュープリントで。撮影・小林正雄。いちいちが、美しい。
伊豆の海岸、波寄せる浜辺で、大木と鳳が、メロドラマ展開。その波が、あまりに美しい撮影。前景の俳優どけて、波だけ見せてくれよと(笑)。
大映の職人監督だと、素晴らしいスタッフワークを、らくらく使い倒しているんだけどね。



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by mukashinoeiga | 2010-12-06 22:16 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

大島渚「帰って来たヨッパライ」・再考

★この駄文の前文★ 

なぜ、「帰って来たヨッパライ」の検索が、比較的、多かったのか。
 新文芸坐の大島特集は、10月上旬だしね。
 なにかのきっかけか、本作を見た人たちが、
1 複雑奇怪な映画の構造に、疑問
2 映画が描く、今とまったく違う社会状況に、疑問
 んで。答えを求めてネット検索。たぶん、そゆことじゃないか。
 1については、アート系映画を見慣れた人たちの場合は、おお、同じ話を繰り返す、そう来たか、そのハッタリのお手並み拝見、となる。まあ、大島の場合は、ハッタリはよかったんだけどねー、という残念な結果になったのだが。
 しかし映画を見慣れていない人たち、たとえば、なくなった加藤和彦ファンあたりが、追悼の意味で、本作をDVD鑑賞したら、そらまあ、フツーの映画とは違うので、とまどうよなあ。
 大島の発想はなんだったのだろう。
 基本的な話をシナリオにしていったら、話が、持たない、というところじゃないか。
共同脚本は、田村、佐々木、大島、足立の四人がかり、相当苦労したとおぼしい?
 その結果、ええい、めんどくさい、話の真ん中で、38度線を引いちまえ。分断しちまえ、ということだったかも(笑)。いえいえ、ただの根拠なき推測ですがね。
 一度目は悲劇として、二度目は喜劇として。
 あと知恵の印象だが、二度目には、若干の喜劇味が強まっているように思う。成功はしていないが。ドタバタ度は、いっそう強化されている印象。
 あとは、「帰って来た」とは、何か。一度目があってこそ、二度目たる「帰って来た」が、利くのではないか、という発想か。

 2については、今は、まったく見られない、韓国人の密入国、成りすまし、紛れ込み、それに対する地域社会の標語(不審者を見かけたら、警察に通報、見たいな)の異様さ。
 戦後世代は、日教組の教育が行き届きすぎて、「えー、韓国人って、強制連行で日本に来させられたんじゃないの」と、この映画を見て、疑問が湧いたのかもしれない。
 お若い方々、強制連行じゃなくて、自分から進んで、密入国したんですよ、皆さんは。
 日本生まれの韓国人少年は、自分たちがなぜ日本にいるのか、疑問を持つだろう。その疑問を、親に聞く。親は、話に詰まるよなあ。まさか、自分が、国法を犯して、密入国したなんて、いえないもの。子供の手前、示しが、つかない。
 子供は、ぱっと顔を輝かせ、
「お父ちゃん、ぼく、日教組の先生に、学校で、習ったんだよ。日本人て悪いヤツで、強制連行されたんでしょ」
 渡に舟だ「そ、そ、その通り。まったく日本人てヤツは、極悪非道なやつらさ」
 社会びん乱を目標とする、文系お坊ちゃん革命家・大島は、社会をかく乱させる、韓国人の密入国、成りすまし、紛れ込みをも、歓迎する。国と国の境目、いわんや38度線なんかは、まったくもって、許しがたいものだから。
 密入国者の人権、犯罪権を、絶対的に擁護する。
 ニセ街頭インタヴューのシーン。
「あなたは日本人ですか?」と聞くと、
「いいえ、私は韓国人です」という言葉ばかり返ってくる。
 まるで、日本には、日本人と韓国人しかいないという。唯韓国人史観か。
「いいえ、国民党政府の白色テロから逃げてきた、台湾人です」
「いいえ、韓国人兵士にレイプされて、逃げてきたヴェトナム人です」
 そういう一言、二言があれば(笑)より、「リアル」なんだけどねー。
 天国から、「お前、出て行けー」と現世に返された、ヨッパライ。
 祖国から、「この国には未来がねぇー」と日本に密入国した、韓国人。
 まるきり違うものを、あえて、一緒にしちゃった。そりゃあ、もともと、無理すじ、だわな。

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by mukashinoeiga | 2010-12-05 08:36 | 大島の渚に寄せる新波かな | Trackback | Comments(0)

牧口雄二「玉割り人ゆき」

 阿佐ヶ谷にて。「エロ・グロ・純情 東映カルトプリンス 牧口雄二の世界」特集レイト。75年、東映京都。
 劇画の原作。昭和戦前の京都・島原遊郭が舞台。
 これから、女郎デヴューする若い娘たちに、性の奥義を教える女が、玉割り人とのこと。まあ、奥義を教えるといっても、映画では、娘たちの裸を舐め舐めするようなシーンしか、映さないが。
 この玉割り人のゆきなる<女を捨てて、非情に徹した女>は、足抜け女郎とその相手の男を、裁くことも業務のうちであり、相手の男・川谷拓三の、ちんちんを切り取るような、文字通りの、玉割り仕事もする。
 このゆきになる潤ますみ、細い顔、細いからだなのに、かなりの巨乳。それなりに美人。演技もいい。
 なんだけど、顔に妙な険があり、負のオーラが漂う。見ていて、楽しくはない。
 もっとも、拓ぼんのちん切りをするような女が、左翼テロリスト青年(当時はアナボルと呼ばれておりましたな)と、純愛セックスしても、まあ、幸せには、ならない。
 「でかい花火を上げたいな」その花火とは、ダイナマイトによる爆破テロ、当時は、そういう左翼諸君(あこがれの国はもちろんソビエト・ロシア)の、悲痛な思いというものが、青年の純情と同一視されておりまして。革命というあまやかなロマンティシズム。
 ここで言う当時というのは、もちろん本作製作時のこと。 
 純真に革命(国家転覆)を夢見る男と、その彼に思いを寄せる純情チン斬り女。
 ああ、不幸な純愛。
 茶化すわけではありませんが、この映画みたいに、ああ女郎の不幸な生活、ああ女に生まれた不運を、描きつつ、でも、セックスシーンの数々では、観客の劣情を誘うべく、女体を舐めるように映す。
 こういう、二律背反というもおこがましい映画は、見ていてだんだん、低体温になるのは、致し方ない。
 東映という企業が要請する劣情エロ、でも、ぼくは左翼映画人だから、エロだけじゃあ、納得できないんだよねー。という態度がありありで。
 劣情なる観客のぼくには、エロを見せるなら、エクスキューズなしに見せんかい、と。
 しかし本作がデヴューという牧口雄二、昭和初期その雰囲気作りもいいし、川谷拓三ひとりをのぞいては、今から見てまったく無名の俳優諸君(おそらく東映専属の大部屋俳優たち)を使って、それなりに見ごたえはある。
 ただ、昭和初期が舞台なのに、女郎諸君全員が、脇の下がすべすべなのは(笑)。
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by mukashinoeiga | 2010-12-04 01:56 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

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 アクセス数が減ったのは、まあ、あまりページをくるほど、面白くないということでしょうか。
 先月、初めて3回あった1日100アクセス越えは、今月、ありませんでした。

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2位 聖獣学園 21
3位 帰って来たヨッパライ 映画 15
4位 真空地帯 14
5位 午前中の時間割り 10
6位 温泉スッポン芸者 9
7位 石田民三 9
8位 若尾文子 9
9位 若尾文子 映画 7
10位 美しさと哀しみと 7

 なぜか、酔っ払い、強し。つい先ごろ、新文芸坐で、大島渚特集があったせいか? よく、わかりません。これについては、忍者解析でも、すごいことに。


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●最近若干ランクが上がってきまして(笑)、20~30位前後を行ったりきたり
 ほんの一時、右の小窓でも垣間見れるようにしたら、50位まで落ちたので、やめました(笑)。

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●ベストテンの3~7位前後を行ったりきたり
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by mukashinoeiga | 2010-12-01 09:58 | 業務連絡 | Trackback | Comments(0)