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神代辰巳「離婚しない女」倍賞千恵子・美津子ショーケン

 池袋にて。「没後15年 映画ファンに愛されつづける 鬼才・神代辰巳」特集。86年・松竹。
e0178641_1936334.jpg 成金船主・夏八木勲の後妻、釧路の女、倍賞千恵子。
 堅実サラリーマン・伊武雅刀の妻、根室の女・倍賞美津子。
 えーと、ぼくはテッチャンではないので、根室線なのか釧路線なのかはわかりませんが、この地方線の始発と終着駅に、位置する女たち。ふたりの女と、ショーケンは、この地方線を行き来して、肌を重ねる。二都物語。 
 このふたりを、それぞれの機会を利用して、ものにするショーケン。って、発想が、まず、えぐいよね。
e0178641_0475296.jpg ふたりの女は、まったく接点がない役の設定。なのだが、映画を見ているこっちは、二人が実の姉妹だと、知っている。ショーケン、姉妹丼。二人姉妹とするときにゃ、姉から、せにゃならぬ。
ということで、まず、千恵子と合体。次に美津子。うーん、ドラマ設定としては、一応、別人どおしなのに、なに、この気持ち悪さは。いや、実の姉妹が姉妹役として、一人の男を挟む、というのは、まあ、わかるのだが。姉妹なのに、姉妹じゃない役、というのが、気持ち悪い。って、ぼくの偏見か(笑)。
 伊武はまじめなサラリーマン、しかしその七三にくっきりくっきり分けた髪が、かっちりしすぎているぞ(笑)。
 夏八木は、こんな複雑なキャラを演じきるには、明らかに、体育会系ワンパタで、ニュアンスがなさ過ぎ(笑)。例によって、ガハハハ、とゴーカイに笑っているだけで、全然綾がない。曲がない。これじゃ、だめだろ。
 夏八木の娘・神保美喜は、何とか父の後妻を追い出したい、嫉妬に狂いつつ、キャラとしては実に地味な扱いしかされない。神代映画では、年頃の娘より、その母のほうがクローズ・アップされるのは、いつもの通り。
 ショーケンとのベッド・シーンでは、意外や、千恵子のほうは、乳首も乳もさらすが(倍賞千恵子唯一のヌードかな)、美津子はブラに守らせ。意外にも、この姉妹のイメージとは真逆に、実は千恵子のほうが、美津子より、その方面は発展型だったりして。
 では、あるのだが、セクシー・イメージのない千恵子のベッド・シーンは、見ていて、痛々しい。色気、まるで、ないんだもの。倍賞千恵子の乳を見ても、全然お得感がないのよ(泣)。暗い。暗すぎる。千恵子の乳。
 貧しさの中に、輝くのが、神代映画。その象徴が、貧乳・芹明香の輝き。しかし、倍賞千恵子の乳は、芹明香以上に大きいのだが、輝かない。倍賞千恵子の乳には、人を感動させるバック・グラウンドが、ないのだ。
e0178641_19374028.jpg その芹明香は、重ね重ねの覚醒剤逮捕の後、本作にちらりと後姿を見せる。しかしあまりにチラッと、過ぎて、最後のクレジットを見ないと、わからないほど。これ以後、芹明香はスクリーンから、消えていく。
 本作も、日活ロマンポルノで、芹明香と宮下順子で、見てみたかった。で、あるならば、傑作になったであろう。
 「恋文」同様、つまらないメロドラマ風の、うるさいBGMが、感興を、そぐ。ショーケンの、つぶやきめいた歌だけが、救いで。
 かっきりしたメロドラマを求められる松竹が、(当時の、だめだめな)東宝よりも、神代の体質に合わなかったのが、見ていて、はっきり、わかる。
 くっきり・はっきりのメロは、やはり、神代の体質では、ないのだった。
 なお、美津子の根室のライヴハウスでやる、小劇場風演劇の出演者に、まだアイドル?女優風の室井滋と、近藤芳正。このつまんねー小芝居の、作者クレジットが秋元康。まあ、芝居作者としては、大成しなかったのがわかる不出来さ。

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by mukashinoeiga | 2010-06-28 22:21 | 神代辰巳猥歌 揺れた俗情 | Trackback | Comments(0)

神代辰巳「恋文」

 池袋にて。「没後15年 映画ファンに愛されつづける 鬼才・神代辰巳」特集。85年・松竹。
 妻子ある身でありながら、かつての恋人が余命半年と知るや、仕事も家庭もなげうって、元恋人に、献身的に看病する。
 ついには、妻とも離婚し、元カノと結婚式。その数日後に・・・・。
 夫にショーケン。妻・倍賞美津子。元カノに、高橋恵子。ある意味、男のロマン?を実行してしまう夫。当然割り切れない感を残しつつ、結局はその夫を、元カノの元に送り出す妻(「半年間だけ。あの人が死ぬまでだよね。そうしたら、戻ってきてくれるんでしょう?」)。当時最高の美貌の高橋恵子。見事なトライアングル。
 倍賞と結婚して10年、夫婦としては苦渋の決断?を実行するショーケンは、絶えず妻に向かって、顔をゆがませて、泣き笑いの表情。
 ああ、ショーケンお得意の、泣き笑い顔、なんだけど、こういうのが「可愛い!」って、通用するのは、子供か若いうちだけなんだよね。何の汚れもない、つるつるお肌で、天然に、泣き笑いするから、許されるので、いい年こいてエントロピーありまくりの顔で、「天然」な泣き笑い顔されてもねー。天然には、もう見えないつう。
 しかも二三度程度なら、まあ、ご愛嬌だが、あまりにしつこく何度も何度も、繰り返されると、ショーケンよ、決め技は、数少ないほど効果的なんだよ、といいたくなるぞ。若い頃は天然顔だったけれど、もう、お手の物のキメ技扱い、手練手管(略して、テク)に随した、天然、なんて。
 ああ、こうして、ショーケン(昇・健)は、シモケン(下・健)に、なっていくんだなー。あ、シモケンさん、ごめん。
 石井輝男監督をドキュメントする映画に、証言者として、出てもいい高倉健さんは出ず、健さんの名代でシモケンさんは、出るということらしい。やるなあ、健さんの名代、なんて。
 閑話休題。
ショーケン「(子供の頃の)俺のかーさんと、そっくりな顔になってる」
倍賞「あたし、あんたの母親じゃ、ないわよ」
 泣き笑いの子供めいたショーケンと、野太い声の倍賞は、確かに母・子関係を擬態せざるをえない。しかし、女の部分を見せて、倍賞は、それに抵抗する。ショーケン代わり?に利用される、間男ならぬ、お間抜け男に、小林薫。
 一見、夫と妻の<大人の関係>を、描くと見せて、きわめて日本的な、擬似母子関係に収斂してしまう、そこに、とっちゃんぼうやなショーケンの、泣き笑い顔、ということか。
 結局、男は、どっしり妻にも、きっぱり元カノ/現カノにも、勝てませんや、ってことか。
 ロマンポルノ時代の神代を決定付けた、姫田真佐久撮影の、流れるような、のたくるような、全自動的蠕動映像が見られないのが、つまらない。まあ、ないものねだりか。ただ、いかにも通俗的なメロドラマメロドラマした、うるさいだけのBGMには、違和感を覚えるだけ。
●追記●ショーケンが留められる、留置場に、どすの利いた、凄みのあるおっさんが、いて、これが、なんと、工藤栄一。うーん、脇役役者としても、さまになってるぞ。
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by mukashinoeiga | 2010-06-27 08:17 | 神代辰巳猥歌 揺れた俗情 | Trackback | Comments(0)

谷口千吉「黒帯三国志」

 阿佐ヶ谷にて。「東宝娯楽アクションの雄 谷口千吉監督の仕事」特集。56年、東宝。
 富田常雄「姿三四郎」の、ばったモノみたいな原作(下村明)を得て、きわめて、通俗的なパターンと快を、まるで通俗娯楽の教科書みたいな展開を見せる。
 時は明治末。頑固な柔道道場主・佐分利信、その娘の純情娘・香川京子。その道場に幼い頃から引き取られ、柔道と学問を佐分利の元で学ぶ書生・三船敏郎。当然、三船は親子を思い、佐分利・香川父娘は、三船を思う。 
 明治期の青年らしく、立身出世を目指す三船は、上京し、海外留学生試験合格を帰す。愛する三船を送り出す香川は、手紙は、試験合格まで出さないという三船の意思を了とする。何年も連絡もなく互いを待ち続ける二人、いまどきのケータイとメール世代には信じられないだろうねー。かつて、そういう、ロマンティシズムが、ありました。
 このあといろいろ紆余曲折がありまして、悪徳口入屋・田中春夫にだまされて、三船が北海道の鉱山・タコ部屋に送り込まれたり、佐分利が、平田明彦のキックで失明に追い込まれたり。
 そう、平田明彦! 琉球唐手の使い手にして、結核でごほごほ咳き込み、喀血する、長髪のダーク・ヒーローを快演する。
まあ、黒沢明「姿三四郎」の、月形竜之介の役回り。どこまでも、黒沢の下回りを演じるタニセンなので。
 しかし、この平田明彦が意外といい! どちらかというと、文科系の役が多い平田が、なんとアクション・マスター! ハイ・キックと、喀血と、不敵さが見事にマッチ。無骨三船に、引けを取らない。
 小堀明男ふんする、潜入捜査刑事が、ここは危機だぞ、というところにすかさず現われ、三船を助ける、娯楽の定番。ずぶずぶの娯楽映画を、タニセンはそつなく、まとめる。スーパーでは、ない。定食屋の安定感。
 佐分利信ファンとしては、頑固な道場主を、無骨かつ繊細に演じる佐分利に満足。


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by mukashinoeiga | 2010-06-26 22:48 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

谷口千吉「吹けよ春風」

 阿佐ヶ谷にて。「東宝娯楽アクションの雄 谷口千吉監督の仕事」特集。53年、東宝。
 長い。特集タイトルが長すぎる。タニセンが、いまでは、一般にはさほど知られていないゆえ、解説調で長くなるのだろうが、なら、いっそ、
 「東宝B級娯楽アクションの雄・世界の巨匠黒沢明の盟友・水木洋子/若山セツ子/八千草薫の 谷口千吉監督の仕事」特集、と、すべきだったかも。ま、それは、ともかく。
 日曜に見たら、狭いラピュタが超満員。
 これは、めったに上映されないレアもの/フィルムセンター所蔵プリント使用のため、上映回数が普段の半分初日で日曜脚本が黒沢明&タニセン・・・・要は、黒沢人気だったのね。
 フイルムセンター所蔵プリントを使うということは、戦後メジャー作品に関して言うと、元の会社(この場合は東宝)が、自社プリントを、わざわざ焼いて、保管するに及ばず、と判断したためだろう。興行価値も作品価値も、ない、と判断されたのだ。
 タニセンよりもっとひどいのは、8月の新文芸坐「巨匠・内田吐夢の全貌」特集だ。全17本中9本が、フィルムセンター所蔵プリント。今は忘れられた、かつての人気監督、内田吐夢への、まあ、資本の論理からいえば、避けられない、東映の不遇扱い。しかし、フィルムセンターも、事業仕分けを意識しているのか?、名画座へのプリント提供自体は、とても、好ましいことで。
 枕が長くなった。やっと、映画自体の感想だ。
 好漢・三船敏郎が、人情厚いタクシー・ドライヴァー。時には、まあ、映画ではそういうエピソードばかり出てくるのだが、だから、映画としては、いつも、三船運転手は、稼ぎ度外視で、乗客のそれぞれのドラマに、付き合うのだ。こんな客でもないような客なんて、ほっといて、次の客を拾えば、タクシー・ドライヴァーとしての稼ぎは、増えるのに。
 しかし家出少女・青山京子、息子を亡くした老夫婦・小川虎之助と三好栄子、ムショ帰りの山村總と山根寿子夫婦、ほかに印象に残るのは、おねえ言葉のタクシー強盗・三国連太郎、ああ気色悪い(笑)。車の窓から出て、屋根を乗り越え、反対側の窓から再乗車する酔漢・小林桂樹、さらには三船と「黄色いリボン」の替え歌を歌う越路吹雪。
 三船の好漢ぶりが、とことん微笑ましい、一篇。ああ、三船は、いいなあ。三船の唄いっぷりも、いいなあ。
 冒頭、小泉博と、タクシー後部座席で濡れ場を見せる、岡田茉莉子。若い女優にあっては、清純派全盛の中で、こういう、軽い、お色気要員扱いの、岡田茉莉子。まあ、東宝から松竹に移るわけだよねー。
 重厚・黒沢が脚本にかかわりつつ、あくまで、明るく、軽い、タニセン人情コメディーなのであった。見ている間は楽しいが、ま、印象には、残らないわね。
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by mukashinoeiga | 2010-06-23 23:47 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

浦山桐郎「非行少女」

e0178641_045447.jpg 阿佐ヶ谷にて。「昭和の銀幕に輝くヒロイン54・和泉雅子」モーニング特集。63年・日活。
 監督のしごき演出に耐え切れず、「ウラ公を殺して、オレも死ぬ」と、和泉雅子が思いつめたという、伝説の映画。
 やっぱり、<ウラ公>としては、会社から与えられた主演女優が、あまりにアイドルアイドルした、可愛い女優だったので、こんな美人じゃ<オレの非行少女>にならない、と、いささか理不尽にしごきにしごいて、たぶん、その可愛い和泉雅子の顔を、心底、ゆがませたかったのだと思う。
 不幸の釣瓶落とし、転落人生の<オレの非行少女>が、和泉雅子クラスの可愛い娘だったら、みんなにちやほやされて、非行には、走らないだろう、という<ウラ公>なりのリアリズム。一方、日活は、やはり主役は、可愛い美人のアイドルでなきゃあね、と。リアリズム映画を撮りたい<ウラ公>と、商売だいいちの会社側との、妥協点が、この可愛らしいアイドル女優・和泉雅子、というわけで。
 うん、やっぱり、こんな可愛い娘は、ふつう、みんなから、ボロクソの扱いは、されないよね、というわけで、いつもよりは、やはり、1.5倍比で顔をゆがませるものの(当社比)、もともとそれなりにうまい和泉雅子としては、そんなに演技の質が変わるわけではない。だいいち相手役の浜田光夫も、通常運転の演技。その他、浜田の旧友・杉山俊夫、兄・小池朝雄、和泉の父(ダメなオヤジといえば、この人・浜村純)、学校用務員・小沢昭一と、脇役の方たちも、ご同様。しごきにしごいて、この有様、<ウラ公>のしごき、意味がなかったね。
 やはり役者を追い詰めることのある、溝口、成瀬には、及ばないということか。まあ、小娘を思いつめさせる効果程度ということか。
 ラスト、金沢駅で、とりあえず、大阪でひとりでがんばって人生を切り開こうとするヒロインに、あまりにうざく邪魔立てする浜田が、うっとうしくて、腹が立つが、その浜田の心理を、ピントボケボケの情景描写で表現。
 ま、いまいち。きれいなモノクロ・シネスコ・サイズでは、あるが。
 駅での別れ、列車が隔てる運命、というときに、この当時の、列者の乗降口に、ドアがない、だから走り出した列車にも、初動スタート時徐行運転中には、若者なら、らくらくと飛び乗れる、このアクションの格好よさ、安全第一で、ドアをつけてしまった、現在からは想像できない、映画的な趣向。やはり、ため息。まあ、オジンには、ドア、やっぱり必要ですが(笑)。
 冒頭クレジットに<方言指導>佐々木守。なお、佐々木守は、同年の大島渚「小さな冒険旅行」では、<幼児指導>クレジット。よほど指導好きの佐々木守なのであります。 
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by mukashinoeiga | 2010-06-22 22:06 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(2)

スタア女優・池内淳子

 たぶん、昨年放映のフジTVのドラマ「任侠ヘルパー」の、1・2話を、DVDにて。
 ひいきの女優が二人も出ている、夏川結衣と仲里依紗、ということで見たのだが、こちらの話は、別ブログ「今、そこにある映画」に。
 草なぎ・黒木メイサら、やくざたちが、親分の命令で、老人ホームのヘルパーにチャレンジする社会派?コメディー。
 一話完結らしく、第1話のゲストが、池内淳子。2話目が、津川雅彦。
 ふたりとも、おばあちゃんおじいちゃんで、ボケていたり、からだが自由に動かなかったり、老化の悲哀を演じる・…のだが、何せ映画黄金期のスタアだから、老いても、なお華やかなんだよね。
 特に、池内淳子。天性の華やかさ、明るさで、かなりのお年のはずなのに、4・50代でも、通るんじゃないの。うまくて、明るくて、可愛い、やはりスタア女優なんですね。
 TVドラマとしては、老人問題を扱いつつ、でも、暗くしてはならない、というところで、地味な脇役専門俳優を使うよりは、往年のスタアの華やかさで、ということだろう。
 まあ、津川雅彦も、やんちゃ坊主の明るさ、だよね。例によって、あんまりうまくなくて、浮いているけれども。
 夏川結衣の子供(子役の子供店長か、うまいよね)が、いじめられっ子で、TVモニターでやくざ映画を見て、心慰めている、という、渋い子供なのだが、彼のヒーローが高倉健で。その、舎弟役を多く演じた津川が、年老いた男を演じる。にくいね。 


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by mukashinoeiga | 2010-06-18 21:15 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

山本薩夫「にっぽん泥棒物語」

 神保町にて。「喜劇映画パラダイス」特集。65年・東映東京。
 破蔵師、つまり土蔵破りの泥棒集団を束ねる、三国連太郎。当時のことだから、米俵やら、着物やらを盗みまくる。その三国が、土蔵破りに失敗した、その深夜、漆黒の闇の鉄道線路を歩いていく九人の男たちを目撃する。 
 そして、翌未明、列車が脱線、死者がでる。線路の軌道レールが剥がされていて、脱線したのだ。当時流行りの国鉄テロ。しかし、逮捕されたのは三人の小柄な男たちと、連動する組合員たち(相も変わらず、ザ・良心派リベラル野郎に鈴木瑞穂ら)。もっと大柄な九人の、訛りのない非・地元民だから、この三人と、その仲間たちは、冤罪だ、と、三国には、わかる。しかし、それを公にくちにすると、同時に土蔵破りの悪事がばれて、やっと手に入れた、いまは平和な、佐久間良子とその子との家庭が崩壊してしまう。佐久間良子は、やっぱり、めちゃくちゃ可愛いので、この気持ちは、当然ね。 
 しかし、盗人にも五分の良心、三国は、真実を裁判の場で弁護側証人として明らかにする。加藤嘉、千葉真一!ら、良心派弁護士、室田日出男!ら、良心派新聞記者に、詰め寄られた結果だ。
 たいへん面白いが、はたしてこれは喜劇か。堅苦しい裁判の場で、ざっくばらんな、あけすけな、本音の証言をすることで、場内(映画の中での裁判所でも、映画の外でのわれわれ観客も)の笑いを誘う。卑怯ちゃ卑怯だし、さすがヤマサツ、とも思う。三国、快調。
 スーパー扇情監督ヤマサツの、イージー・リスニングな小快作。
 深刻な社会問題を扱って、骨太なエンターティンメントにしてしまう、ヤマサツ・メソッドは、その後の日本映画、世界映画には、現われていないということ。
 共産党左翼のヤマサツなのに、左翼、または左翼シンパの連中を描くと、とたんに、うすっぺらい人物ばかり、というところも相変わらず。まあ、左翼の皆さんは、本当に、ぺらい方々ばかりなので、これは、まあ、リアリズムなんでしょうが。
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by mukashinoeiga | 2010-06-11 23:21 | 山本薩夫傷だらけの左傾山河 | Trackback | Comments(0)

市川崑「ラッキーさん」

 神保町にて。「喜劇映画パラダイス」特集。52年・東宝。
 膨大な量の、定食プログラム・ピクチャア東宝サラリーマン喜劇の原点である「三等重役」、そのまた先駆けであるのが、本作。
 原作は源氏鶏太「ホープさん」「三等重役」。原作が同じなので、映画版「三等重役」と重なるエピソードも多い。
e0178641_2292631.jpg 主演は社長秘書に抜擢された「ラッキーさん」こと小林桂樹。秘書同僚に島崎雪子。
 社長は、もちろん、河村黎吉。戦前松竹の映画を見ると、見る映画、見る映画に、ほとんど必ず、出ているレイキチ。
 その、独特の、間合いといいますか、ふつうなら、そこで区切らないだろう、と言うところで、せりふを区切って、しゃべる。ある意味、とつとつとしたクサいしゃべりかたで、間合いも、ゆっくりなのだが、なおかつ早口である江戸弁とマッチした、絶妙な話法。戦後の森繁節に匹敵する、絶にして妙なるレイキチ節なのだ。
 ところが、本作では、その個性的な間合いを封じて、滑らかなしゃべり、あまつさえ、各登場シーン(秘書の桂樹にドアをノックされたときなど)必ず、声が裏返る、新手を繰り出す。見たことも、聞いたこともない、河村黎吉で。おそらく、役者にはすべからく早口を要求して、従来のもっさりした日本映画のイメージを刷新したかった市川崑の要求に従った、新機軸の河村黎吉演技かと。まあ、戦前の黎吉節になじんだ当方としては、この東宝の振る舞いには、異議申し立てをしたいくらいだが。
 いっぽう小林桂樹、その後輩の小泉博の演技は、後の定食番組における、自身のパターン化された演技に比べれば、はるかに生硬で、生々しく、リアル。この映画が、定食でないことを如実に示す。美しい。
 まだ、アイドル女優だった頃の、杉葉子が、桂樹を誘惑して、島崎雪子をはらはらさせるマリッジ・ブルー娘を好演する。その父の、パージされた元社長は、この人でなけりゃあ、の小川虎之助。
 笑えるのは、定年間近の平社員、なのに、やけにカンロクがある、ということで、冠婚葬祭の社長名代で、河村黎吉の代わりに駆けずり回るのが、斎藤達雄。黎吉に劣らぬ、戦前松竹の名物脇役で。この二人、社用の命を伝える桂樹を介しているだけなので、直接共演のシーンがないのが、なにやらかなしく、おかしい。
 最後も、桂樹と島崎雪子がハッピーエンドというわけでもなく、ビミョーに終わる、低温体質。これが後々、河村黎吉戦後系というべき、森繁社長、桂樹秘書室長の「社長」シリーズに変化するというのだから、面白い。
 市川崑映画ならでは。伊藤雄之助が、一応二枚目役。河村黎吉・沢村貞子の両親に勧められて、杉葉子の美容室で、きついパーマをかけられる。昔ながらのパーマ用のおかまをかぶせられて、珍妙な伊藤雄之助。
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by mukashinoeiga | 2010-06-10 23:25 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

古沢憲吾「西の王将 東の大将」

 神保町にて。「喜劇映画パラダイス」特集。64年・東宝。
 西の王将・藤田まこと、 東の大将・谷啓が、同じ企業に新入社員として入社して、たがいに権を競い合う東宝サラリーマン喜劇。
 このふたり、一ヶ月ずつ、研修、転勤、出向を繰り返して、大阪本社、東京支社、名古屋支社と、渡り歩く。
 それぞれの地には、浜美枝、新珠三千代、司葉子などの美女がいて、ふたりは仕事だけでなく、恋でも、競争を繰り返す。振られたり、だまされたり、利用されたり、の藤田と谷。
 代表作「無責任男」シリーズで知られる古沢演出は、とにかく一にも二にもハイ・テンション。例の植木等の「ブァーっと、行ってみよう!」、笑うのも「ぶぁっはっはっ」のC調スタイル、これは植木等だからさまになるので、どちらかというと、ローテンション体質の谷啓とか、藤田まこととかでは、やはり珍妙で。で、藤田は、やっぱり、テキトーに流して、というのも、なんとなく二のセンを維持してしまう。
 恐るべきは谷啓で、むりでも何でもハイテンション・キープ、躁状態を続けるのだが、普段のお目目しばしばも封印?して、目玉も見開きっぱなし、谷啓がこれをやり、その横に藤田がいると、なにか腹話術の人形めいてきて、だんだんこの世のものとは思えなくなってくる(笑)。
 しかし、この映画では、谷啓よりさらにハイ・テンションなのがアラタマだ。普段はしっとりした和服美女を得意とする彼女が、古沢演出のハイテンぶりに、やけくそで、異常なまでの明るさと、躁状態で。スクリーンのアラタマを見て、そのあまりの狂態にボーゼン。まるで何物かが憑依しているかのよう。はっきり言って、エクソシストか憑き物落としを、呼ぶべきレヴェル。
 あまりに真面目に?古沢メソッドに染まりきったアラタマに比べ、クールな司葉子や浜美枝は、通常をキープ。
 そして、物語は、これまた古沢メソッドに従い、たった三ヶ月の新入社員の主人公たちは、社長に認められ、係長心得に、早速の出世。この社長役が、曾我廼家明蝶。これまたハイ・テンションを常時維持するが、さすがは明蝶、軽く、サマになっておりますな。そして、社長秘書の園まりにクラクラのふたりは、彼女を追って、明るく街に消えていく。
 まあ、ハイテンションだからって、映画が面白くなるわけではないので。そこそこ、見られるプログラム・ピクチャア程度に、落ち着いてしまう。
 やはり植木等の偉大さ、古沢とのマッチングのよさ、に思い至る。
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by mukashinoeiga | 2010-06-08 06:59 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

感想を「傑作・快作」と「珍品・怪作」に分割しました


 「旧作日本映画感想文」というカテゴリ(右の柱の比較的上にあります)も、本数が多くなったので、計3コに、分割してみました。

1 傑作・快作の森

2 珍品・怪作の谷

3 旧作日本映画感想文
 

 1は、3の中から、文字通り、傑作と快作を抜き出したもの。ただ、いわゆる傑作と快作の間には、ある程度の巾があると思いますが、そこまで分けるのは、メンドーなので(笑)区別は、やめました。

 2は、駄作という意味ではありません。いわゆる常識やぶり、横紙破りの意味で、同時に傑作であったり、快作であったり、珍品としか言いようがない、へんてこな映画で、ある場合もあります。ご覧のとおり、めったに、ありません。

 3は、いわゆる残り物ですが、次の、巾広いレヴェルの作品群の感想です。

   快作に限りなく近い、水準以上の良作・水準作・通常作・凡作・駄作

 最初の区分けと、最後の区分けでは、天と地ほどの、開きがあるのですが、ゴーインにまとめました(笑)。
 最初の意気込みとしては、旧作映画の鑑賞の手引きになるかと、意気込んだのですが、まあ、これでは、まるきり、役には立ちませんね(笑)。

 なお、抜き出し中に発見した、放置状態の成瀬「夫婦」、黒沢「一番美しく」は、それぞれカテゴリの成瀬組、黒沢組に、収納しました。
 もちろん、個別カテゴリ収納の小津、成瀬、黒沢、大島、篠田にも、傑作快作珍品怪作はあるのですが、そちらはそのままにしてあります。
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by mukashinoeiga | 2010-06-06 21:57 | 業務連絡 | Trackback | Comments(0)