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弓削太郎「今夜は踊ろう」

 阿佐ヶ谷にて。「歌謡曲♪ 黄金時代1960's」特集。67年・大映東京。
e0178641_2372833.jpg 結果的に、この映画が、ぼくの今年のシネ納めになった。なんともしょぼんな映画で。
 銀座の隠れ家的バーのマスターが田宮二郎。これがなぜ隠れ家的バーかというと、漫才師獅子てんや・瀬戸わんやのご両人がすしを握るすし屋があって、その店内階段をすすっーと上がると、二階が洋風のバー。つまり、すし屋店内を経由しないと入れないバー。で、このマスター田宮が、銀座のホステスに大人気の、頼れる男。知り合いのバーのママが、パトロンに店の権利書を取り上げられてしまう。それを取り返してあげてよ、という、映画的にもまったくつまらないが、それに輪をかけて話自体もあまりにしょぼい。
 いかにも、大映プログラム・ピクチャア特有の、ゆるい大人の事情の、しょぼい経済案件で、一本でっち上げようという、まるで一時間モノの連続TVドラマの一編だが、これが面白いならともかく、まったく生彩を欠いている。田宮の男前も何割かは下がりがちに。
 このしょぼさにさらに輪をかけているのが、田宮の弟分格になる荒木一郎。しょぼい顔で、しょぼい歌を何曲も何曲も歌う。しかも、この歌が、まったくドラマに絡まない。この荒木の歌ゆえに、本特集にかけられているわけだが、とてもヒットしたとも思われない。第一、聞き覚えがちらともない。本当にヒットしたのか。それに聞きほれる梓英子も、かわいいんだけど、なんというか、華がないよなあ。しょぼんな若手コンビを、まるで寅さんのように温かく見守る田宮も、男前下がりまくり。
 どんよりとしたフンイキで映画館を出て、いつも阿佐ヶ谷に来るたびに気になっているパンダ珈琲店は当然、やはり寄らず。
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by mukashinoeiga | 2009-12-31 22:10 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

田中重雄「東京おにぎり娘」

 阿佐ヶ谷にて。「昭和の銀幕に輝くヒロイン51・若尾文子」モーニング特集。61年・大映東京。
 ふふふん、と鼻で笑って見に行ったら、これは傑作でした。恐れ入りました。
 昔かたぎすぎて、客がさっぱり来ない頑固親父の洋服屋・中村雁治郎の娘・若尾文子を中心とした、繊細なホームドラマ。やっぱり大映プログラム・ピクチャアは侮れない。
 若尾文子、川口浩、ジェリー藤尾、川崎敬三、伊藤雄之助、八波むとし、それに雁治郎、藤間紫、沢村貞子、村田千栄子の、思惑が、一人一人少しずつ、ずれている。それを目線の交差するメロドラマとして、きっかりまとめ上げている。ぼくが見た、田中重雄の最高傑作。
 この時期の若尾文子、悶える若奥様を演じてよし、嫁入り前の清楚な娘を演じてよし、濃厚な女くささを維持しつつ、しかし嫁入り前の清楚も忘れない、という絶妙さ。まさしく、化け物のごとき女、いや、女優そのものだ。
 彼女に拮抗するのが、大阪弁の江戸っ子!中村雁治郎。もう座っているだけでよい。赤鉛筆と競馬新聞を手に新橋駅前をうろついているだけでもよい。茫然自失して座っているだけでもよい。娘を嫁にやる父親として、呆然としている様は、一連の小津映画の笠智衆など、問題にならない呆然さ。実の娘・中村玉緒を、問題児勝新の嫁にやるとき、荒れ狂ったとされるが、その経験を生かして?呆然たる父親を演じて、それだけで笑わせる。ううむ、たいしたものだ。とてつもない量の涙も流す大サーヴィス。
 美しいニュープリントの、いかにも大映な、超絶に美しい映像で捕らえられる、当時の新橋、新宿のロケーション撮影の、ため息が出るような美。リアル昭和30年代の新橋駅裏を、楚々とした和服姿で歩く、憂いを含んだ若尾文子。洋服屋の娘なのに、こんなにも和服が似合う、あでやかな若尾。奇跡の一語しか思い浮かばない。でも、あまり見とれていると、若尾のナイトを気取るジェリー藤尾に、酔っ払いの守田学並みに、ドつきまわされるかもしれない。気をつけなくっちゃ。この時期最高潮の演技と美貌の若尾、雁治郎、その一挙手一投足を、見ているだけで、目の快楽だ。なんという映画的快楽か。
 若尾の妹役としては、これ以上ないくらいの適役、叶順子も、出てるでよ。
 なお、「不信のとき」で、静岡でおにぎり屋、回転資金があと300万足りない、という若尾ぼったくりの件。今回見ても、そりゃフシギ感あり。
●追記●阿佐ヶ谷で年末年始休映をはさんで、1/9(土)まで上映中。
シネ納め、シネ初めにぴったりの映画だと思う。いや、ぼくの見方はあてになりませんけどね。まあ、唯一の欠点は、年末年始の休みが長すぎて、シネ納めシネ初めにはふさわしくない点かなあ。

◎追記◎昨日今日、急激にアクセスアップ。おそらくTVでやったのでしょう(2014年11月)。ということで、おまけ。
 二つの好対照な感想ブログをご紹介。どちらも本作には高評価ながら、
★【映画】東京おにぎり娘 - いくらおにぎりブログ★は、本作を、通常のラヴコメから逸脱したダークな側面があるという。
 いっぽう★昔懐かし邦画巡礼:東京おにぎり娘 - livedoor Blog(ブログ)★は、その「ダークな側面」を、了解可能なものとして、評価。
 つまり通常のラヴコメというのは、最初の人物紹介の時点で、結末が丸わかり、というのがパターンであり、美点なのたが。
 つまり、本作においては、幼なじみの若尾と川口が、冒頭においては反発しあうものの、その反発描写が、かえってふたりのイチャイチャ振りを補強しつつ、ラストにふたりはゴールインするのだろうなあ、という観客の「期待」が、あるわけです。
 その観客の期待、ラヴコメの定型を外してしまうため、いくらおにぎりさんは、ダークだといい、その裏切りは予想の範囲内だということで、のろさんは評価。
 男のいくらさん、女ののろさんの、それぞれの性の違いによる評価か。あややが好きなのろさんの評価ゆえか、一本の映画を見ての、好対照な意見が、面白い。
 まあ、シニカルなぼくとしては、若尾、川口、叶、川崎の大映若手スタアを配した、お気楽娯楽ラヴコメとしては、カップリングとしては、これが唯一の「正答」かとも、思うが、それはあまりに不純すぎるか(笑)。
 川口に失恋し、ヨヨヨと乱れる、というよりは、怒髪天をつく若尾。酔い乱れる、そういうあややも見れるのだから、こちらのほうが正解かと。

★Movie Walker★に、タイトル検索で詳細な作品情報あり。簡単な作品解説、あらすじ紹介(企画書レヴェルの初期情報の孫引きゆえ、しばしば実際とは違うが)。

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by mukashinoeiga | 2009-12-27 22:49 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

増村保造「パンドラの匣」

 川島版、木下版、成瀬版、清順版に続いて、ますますムラムラな「パンドラの匣」を妄想する。
 その登場人物を一覧すれば、

●ひばりの同室患者
ひばり    20歳男子。結核としては軽いほう、ちゃんと養生すれば半年後退院予定。
越後獅子  なにやら大物らしい、年配患者
つくし    まじめな妻子持ち・・・・しかし後にマア坊にラヴレター 
かっぽれ  美男子にして激情家のアンちゃん 何かと感激、興奮、泣いたり怒ったり
固パン    助手たちに人気の学生 
●助手・他
マア坊    18歳の看護婦。くるくる変わる気分屋。ひばりは、いいように振り回される。
竹さん    20台半ばの看護婦。美人で気立てのよい働きもの。実はひばりに・・・・
くじゃく   やたらと厚化粧ゆえこのあだ名の助手
キントト   他に助手として、うるめ、ハイチャイ、となかい、こおろぎ、カクラン、など    
場  長   この健康道場を独自の治療法で運営する院長
ひばり友   ひばりの文通相手。道場にひばりを見舞う好青年
ひばり父
ひばり母
越後~娘  越後獅子を頻繁に見舞いに来る
隣室患者  ひばりたちと、対抗する、にぎやかし集団

 で、増村版キャスティングは、
●ひばりの同室患者
ひばり    川口浩      
越後獅子  井伏鱒二    
つくし     船越英二   
かっぽれ  三島由紀夫    
固パン    大江健三郎       
●助手・他
マア坊    野添ひとみ     
竹さん    若尾文子    
くじゃく    江波杏子    
キントト    目黒幸子          
場  長    高松英郎   
ひばり友   安部公房    
ひばり父   伊東光一  
ひばり母   岸輝子  
越後~娘   小川真由美      
隣室患者   伊丹一三 
        安部譲二 丸山明宏 森田必勝 (子役)      

【当時のゴシップ】今度の大映、増村保造監督の新作は、なかなかの話題作「パンドラの匣」(仮題)だ。 なんといっても「からっ風野郎」のやくざ役に続き、人気作家の三島由紀夫が、執筆多忙のなか、ふただび演技に挑む。今回は三島先生も、生前親交があり、一目置いている太宰治原作だけに力が入るわけだ。
 増村監督も、「今度の役は、二枚目の義侠心あふれる青年の役だからね、なにしろ君にぴったりの役柄だよ」とおだてれば、たちまち出演オーケーの三島先生だ。苦しむのは、人気作家の原稿待ちに列を成す出版社の編集者たちばかり。人気作家のご道楽に泣く泣くの有様だという。
 さて、難航したのは三島先生の役を導く、なにやら大物風の人物、通称越後獅子だ。
 生半可の役者を持ってきても三島先生を指導は出来ない、とばかりさすがの俊英・増村監督も悩みに悩んだ。ここはいっそ、とやけくそで、生前の太宰と因縁浅からぬ、文壇の大御所・井伏鱒二大先生の出演依頼をダメ元でしてみたら、なんと意外にあっさりオーケーの返事。かえって、増村監督も出演依頼に同行した三島先生も、この大御所をどう”演技指導”したらよいのか、混乱しているともっぱらのうわさ。
 なぜ、井伏巨匠が映画などに出演する気になったのか、目下文壇雀の最大の関心事とかで、寄ると触るとこの話題に持ちきりの由。
 それに比べれば、人気者のインテリ学生役に出演オーケーの大江健三郎君の事情ははっきり判明している。この役が「アメリカ進駐軍に異様なコンプレックスを持つインテリ学生」の役と言うことで、監督に内緒で、冗談半分の三島先生の「君も出ないか」という出演依頼に即断でオーケーして、かえって三島先生をあわてさせたという。いまさら冗談でした、とは生真面目な大江先生には言い出しかねた。増村監督も大江君の小説を「偽大学生」で映画化している手前、いや、それは、と言い出せなかった、という。当ゴシップ子も苦衷察するに余りあるわけだ。
 推測するに、万事目立ちたがりの大江先生、義理の兄弟で昨今売出し中の伊丹一三君同様、芸能界デビューを夢見ているものらしい。伊丹君も「演技指導はぼくが引き受けた。付きっ切りで大江を一人前の演技者にしてみせますよ」と自信満々。何しろ将来はご父君の伊丹万作監督同様、いやそれ以上の映画監督になることを目標に夢見ている青年俳優なのだ。三島、大江の演技合戦を期待したい。
 というわけで、文士劇ならぬ、文士映画となりそうなこの映画、先生方の演技が多少固くても、若尾文子くん、野添ひとみら大映映画の名花たちも出演する。話題の一助に如何。(着た切り雀)

 【当時のゴシップ】では、安部公房についてはまったく触れられてはいないが、当時無名のせいか、あとから急きょ決まったからなのか。もちろん安部譲二、森田必勝はまったくの無名なので、クレジットもされていない。しかしこれが縁になったのか、安部がモデルの三島小説が、後に大映で映画化されることになる。田宮二郎「複雑な彼氏」だ。
 まあ、阿部公房が、好青年の役を演じることにはまったく無理があるのだが、川口、若尾のごく自然な映画演技のなかで、神経症的小芝居が浮いているのは当然のことだ。三島演技については「空っ風野郎」から<数段向上している>、というほかはない。重鎮井伏鱒二は・・・・そもそも原作では結構せりふが多い役なのに、映画では、うむ、とか、ああ、とか、いかん、とか、言葉が少ない・・・・重鎮な・・・・演技ともいえない演技で・・・・。
 そういう文士連中の、ガチャガチャ演技の中で、さすが、大映演技陣は、ちゃんと自分の芝居を保っている。特に、若尾は例によって絶品。
 なお【当時のゴシップ】では、太宰と三島に親交があった、と書いているが、最近石原慎太郎のエッセイに、
 (大意)<三島は太宰の会合にわざわざ出かけて、太宰に言ったという。「あなたの会に僕が今日来たのは、あなたが好きなためじゃない、ということをいいたいためだ」。すると太宰は「ふふふ、わざわざ会いに来るというのは、本当はぼくのことが好きなんじゃないか」>(本当に記憶に頼った大意)。
 ふたりの自意識過剰男の応酬は、読んでいるだけで面白い。したがって、なぜ三島が太宰原作の映画に出たかは不明だが、「今度の役は、二枚目の義侠心あふれる青年の役だからね、なにしろ君にぴったりの役柄だよ」に、敏感に反応したゆえだろう。三島のフシギなコンプレックスは、いつ見ても、ほほえましい。異様だけどね。
 で、大江チェンチェイの演技だが、増村はじめスタッフが頭を抱えているようすが目に浮かぶ。声が、明らかに伊丹十三の吹き替えだからだ。吹き替えざるを得ない、激マズ演技だったのだろう。これが本当のチェンジリング、取り替えっ声、か。
 映画は、川口、若尾、野添の、いつもの増村映画の快感と、へたへたの文士劇の、フシギな、あわいともいえないあわいが、まあ、珍で。なおタイトルは 「悶える病い」と、変更されている。


◎こんなのも、あります(笑)◎
★鈴木清順「パンドラの匣」★
★成瀬巳喜男「パンドラの匣」★
★木下恵介「パンドラの匣」★
★川島雄三「パンドラの匣」★
◎本当の映画化作品◎
★吉村廉「看護婦の日記」★
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by mukashinoeiga | 2009-12-27 00:50 | 架空映画妄想キャスティング | Trackback | Comments(0)

野村芳太郎「黄色いさくらんぼ」

 阿佐ヶ谷にて。「歌謡曲♪ 黄金時代1960's」特集。60年・松竹。
 いまや歴史の、大井武蔵野館お宝レイトで絶対見てるはずだが、まるきり記憶にないので、再見。
 野村芳太郎が、当時有能な助監督と脚本をコラボしたシリーズ? 本作は山田洋次。なお、年明け京橋で特集される大島渚特集、野村の「どんと行こうぜ」も参考上映されるが、共同脚本は大島渚。こちらも大井のお宝レイトで見たが、松竹貸与のプリントが全編ペナペナで、かなり面白い映画なのに、全てのシーンでピントがぼけていて、実はよく見えなかったものだ。フィルムセンター所蔵のプリントはそれなりに良好のはず、やっとちゃんと「どんと行こうぜ」を見ることが出来る。
 「張り込み」「砂の器」「鬼畜」など、シリアスな映画で評判をとった野村芳太郎だが、実は軽いコメディーも面白いのだ。日本ではコメディー映画はとことん軽視される。悲しいことだ。
 ヒロイン吉村真理がドライな現代娘、彼女はれっきとした彼氏がいながら、バーでホステスをして金を稼ぐ。パパと呼ぶ会社重役と熱海の旅館に旅行に行ったりするが(金に執着なお宮と恋人・貫一の、イメージで、熱海か)、きわどいところをきわどく切り抜ける連続が笑わせどころ。って、いかにも時代だよね。パパパパ連呼しながら、キスさえしない。ぬるい時代のぬるいセックス・コメディーでは、こんなずさんなことが堂々まかりとおる。むしろ、いかに切り抜けるかが、コメディー作家の腕の見せ所、っていう倒錯した時代。
 しかも吉村真理がパパと呼ぶ会社重役は、吉村の大学の同級生・九条映子の父親なのだ。九条は自分の父親が同級生と温泉旅行もノーマンタイ、むしろ突然現われて小遣いせびってやろう、という現実派。ちなみに、きわめてキュートなアイドル女優(大成はしなかった)九条映子は、後に寺山修司と結婚し、寺山をプロデュースした。
 吉村、九条、国景子(彼女もなかなかかわいい)の三人娘はウォーター(!)女学院の学生。そのひとり吉村が水商売のアルバイトをしているせいか。だから、みんな海関係の名前。吉村は渚だし、ホタテとか、そういう名前の登場人物ばかり。吉村の彼氏は睦五郎(ヒロインの彼なのだから主役で。珍しく穂積隆信、唯一の主演作か)。吉村の渚は、ドライな現代娘ということで、多分山田洋次が嫌いそうな大島渚に引っ掛けたに決まっておりますな。この、ヒロインが渚という名前で、コメディーリリーフとしてちらりと出てくるミッキー安川のみ、記憶にある、再見のしるし。あとは初見?として楽しめる。いやあ、ナイスな記憶力だ。
 なお、冒頭クレジットにヒット曲「黄色いさくらんぼ」作曲・浜口倉之助がコミカルに数十秒出演。出たがりやなあ。

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by mukashinoeiga | 2009-12-24 00:27 | 大島の渚に寄せる新波かな | Trackback | Comments(0)

鈴木清順「パンドラの匣」

 川島版、木下版、成瀬版に続いて、清順版「パンドラの匣」を妄想する。
 その登場人物を一覧すれば、

●ひばりの同室患者
ひばり   20歳男子。結核としては軽いほう、ちゃんと養生すれば半年後退院予定。
越後獅子  なにやら大物らしい、年配患者
つくし   まじめな妻子持ち・・・・しかし後にマア坊にラヴレター 
かっぽれ  美男子にして激情家のアンちゃん 何かと感激、興奮、泣いたり怒ったり
固パン   助手たちに人気の学生 
●助手・他
マア坊   18歳の看護婦。くるくる変わる気分屋。ひばりは、いいように振り回される。
竹さん   20台半ばの看護婦。美人で気立てのよい働きもの。実はひばりに・・・・
くじゃく  やたらと厚化粧ゆえこのあだ名の助手
キントト  他に助手として、うるめ、ハイチャイ、となかい、こおろぎ、カクラン、など    
場  長  この健康道場を独自の治療法で運営する院長
ひばり友  ひばりの文通相手。道場にひばりを見舞う好青年
ひばり父
ひばり母
越後~娘  越後獅子を頻繁に見舞いに来る
隣室患者  ひばりたちと、対抗する、にぎやかし集団

 で、清順版キャスティングは、
●ひばりの同室患者
ひばり    山内賢  
越後獅子  玉川伊佐夫  
つくし    宍戸錠
かっぽれ  野呂圭介  
固パン   高橋英樹    
●助手・他
マア坊   和泉雅子  
竹さん   野川由美子 
くじゃく   松原智恵子  
キントト   初井言栄      
場  長   緑川宏  
ひばり友  和田浩二  
ひばり父  芦田伸介
ひばり母  高峰三枝子
越後~娘  伊藤弘子 
隣室患者  桑山正一
       江角英明

【当時の評】木下、成瀬など名匠の映画に、日活アクションの娯楽監督が挑戦した。面白い試みだ。しかしこれはなんとしたことか。何の工夫もない、日活お得意のバンカラ青春ものに終始した。結核患者なのに病院内を大騒ぎなのは、川島監督作以上。誰一人として病人に見えないのは、あまりに情けない。これをごまかすため、下手な隈取などして、これで病人に見せようというのだから、なんとも図々しい。
 だいいち、全員が歌い踊る、ミュージカルもどきが、この映画に必要なのか。あまりに志が低すぎる。
 川島版「喜劇 駅前入院」で浪花千栄子、木下版「パンドラ園の乙女」で東山千栄子、成瀬版「飛行機雲」で中北千枝子、など代々?名女優が演じている孔雀役を、若い松原智恵子に演じさせるのも、不見識。彼女にもかわいそうである。

 当時の清順評としては、一部マニア誌を除いて、こんなもんであろう。
 だが、これは恐るべき傑作である。
 特に、白黒シネスコ画面いっぱいに展開する、キムタケ美術が見事。見事に狂っている。だいいち、昼間のシーン夜のシーンで、同じ病室のはずが、まるきりセットを変えているのだ。いくつかベッドの配置を変えているどころではなく、本当に別のセットとしか思われない。まあ、基本ベッドしか要らない簡素の病室では、あまり予算はかからなかっただろうが、しかもメインのセットは二階までちゃんと作っていて、それを清順演出は縦横無尽に使い倒している。特に夜のシーンの圧倒的素晴らしさ、時に繊細な、時に光量マックスの月光の、なんという。それなりに繊細の光の動きを見せるスピルバーグも、市橋容疑者のように裸足で逃げかねないすさまじさ。 
 奇怪な厚化粧の孔雀・松原智恵子も素晴らしい。「悪太郎」シリーズに続いての、主役三人も、いい。
 これも形相が変わっているので、一応?つきの緑川宏。清順映画にいくつか出ている日活大部屋俳優。代表作は、なんといってもこの一本、清順「けんかえれじい」の北一輝役。北村一輝じゃありませんよ。この彼が、場長として、ほとんどせりふはないものの、繰り返し病院内の窓辺や、柱の影にたたずむ。清順「河内カルメン」破戒僧や、清順の助監督経験がある監督(名前度忘れ)の「少女地獄」校長で印象的な、桑山正一隣室患者も徘徊し、奇っ怪感を増している。
 なお、タイトルは「パンドラ娘と野郎ども」に変更されている。

●追記● 【当時の評】で、不必要とされたミュージカルもどきには、次のナンバー。
♪高橋英樹と日活男声ボーカル「入院心得数え歌」
♪和泉雅子「洗面所で会いましょう」
♪山内賢&和泉雅子「二人の健康道場」
♪通りすがりのギターを抱いた牧童(カメオ出演の小林旭)「南北東西あとにして」
 ぼくにsongsf4s.exblog.jpなみのパソコンテクがあったら、この歌の数々も貼り付けられるのだが、まったく残念だ。これだけの歌をぶち込んで、青春の哀歓に訴え、なおかつ奇ッ怪なモダンホラーでありうるのが、すごいやね。
 なお、清順は東京出身ながら、旧制弘前高校に行く。太宰や川島とは逆の体験ながら、緑川宏?に、結婚と称して拉致される野川由美子が、ぱっくりと院内に出来た恐山に逃げ込むや、
♪野川由美子&初井言栄「私は恐山の女」を歌う。桜吹雪が舞い、腐りかけの林檎の実が乱舞する。ここに、その青森体験が生きたというべきか(馬鹿)。

◎こんなのも、あります(笑)◎
★成瀬巳喜男「パンドラの匣」★
★木下恵介「パンドラの匣」★
★川島雄三「パンドラの匣」★
★増村保造「パンドラの匣」★
◎本当の映画化作品◎
★吉村廉「看護婦の日記」★
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by mukashinoeiga | 2009-12-20 09:11 | 架空映画妄想キャスティング | Trackback | Comments(0)

望月優子「海を渡る友情」

 朝鮮人の北朝鮮帰還事業が、50周年ということで、回顧報道が各メディアをにぎわしている。そこで思い出すのが本作。60年、東映教育映画。北帰還事業の映画というと必ず「キューポラのある町」が引き合いに出されるが、あれよりも本作の方が重要、かつ見ごたえがあるのだが、ほとんど知られていないので、紹介するしだい。
 望月優子は、多くの映画に出演した女優。ぼくも、この人が出てくるだけでうれしくなる。必ず楽しませてくれる名女優だ。後に、社会党から国会議員に当選してもいる。つまり、これは当時の左翼の見解をうかがい知るには絶好のテキストなのであろう。
 製作が東映教育映画からもわかるように、これは朝鮮人少年と日本人少年の間の友情の物語であるが、彼らが北に帰還する描写にも多く費やされ、しかも当時のドラマでそういうものが少ないだけに貴重なのだ。もちろん当時の習いとして、北帰還は肯定されるべく描かれている。しかし、かすかにほころびが覗くのが、リアル。
 在日・西村晃は同胞に来た帰還を勧める役割。はっきりと語られてはいないが、おそらく朝鮮総連の人間か。まるで保険の勧誘員のように、北帰還を勧めてまわる。
 主人公の朝鮮人少年の父親が、ふと不安を漏らす。「でも、本当に北には差別はないのか。地上の楽園なのか」と。西村晃は色をなして、激怒。「お前、俺を信用しないのか!」そういう西村も北の事情を体験しているわけでもなく、同胞に勧めて回っている割には、自分も帰るという描写はない。
 西村晃は映画では、せこい詐欺師、小悪党といったタイプの役柄を得意とした。だからこの映画でも、どう見ても同胞をだましにかかる詐欺師にしか見えないのが、おかしい。
 新人監督・望月優子は実にしっかりした叙情を表現する。他の子がいない無人の校庭で、朝鮮と日本の少年が鉄棒をしながら語り合うシーンの繊細さ。女優出身の監督といえば、田中絹代よりセンスがあった。教育映画だから、おそらく小学校講堂あたりで上映されることを目的に作られていたのであろうが、それだけに一般上映されなかった可能性が高い。その内容と、繊細なセンスゆえ、多くの人に見てほしい映画だ。
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by mukashinoeiga | 2009-12-15 00:21 | 傑作・快作の森 | Trackback | Comments(0)

【追加】小津安二郎映画の正体

 当ブログの特集・小津安二郎映画の正体<カテゴリ参照>に、以下を追加いたしました。

11-1 <番外編>ミュリエル・バルベリ「優雅なハリネズミ」
   フランス版「本屋大賞」ベストセラー小説。小津映画ファンの住むパリの
   アパルトマンに、日本人紳士オヅさんがやってきた。

11-2 少女漫画としての『宗方姉妹』
   日本的な少女趣味のバルベリの視点から、『宗方姉妹』を再見すると・・・・

12-1 『青春の夢いまいづこ』

13-1 小津漬の味ディープ・笠智衆の巻

 特に11で、紹介したフランス人著者による小説は、今年本国で映画化もされた、なかなか傑作の少女小説にして、大人の味わいの小説で、小津映画のファンの住むアパルトマンに、小津安二郎の親戚に当たるオヅさんがやってくる、という日本の小津ファンも必読の珍品でもあります。オススメ。
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by mukashinoeiga | 2009-12-13 00:01 | 業務連絡 | Trackback | Comments(0)

井上梅次「私を深く埋めて」

 神保町にて。「目力対決・田宮二郎と天知茂」特集。63年・大映東京。
 珍しく早川ミステリから、ハロルド・Q・マスル原作の翻案もの。弁護士・田宮が旅から帰ると、アパートの部屋に見知らぬセクシー美女がいて、勝手に酒を飲んでいる・・・・。二枚目半の田宮が楽しい。お気楽な快作ミステリ・・・・と、いっても事件が解決に向かうと、面白さは半減する。魅力的な出だしのミステリは、つまらない解決なら、しないほうがいいのだ(笑)。
 出ずっぱりの田宮よりも、例によって若尾文子のほうが序列トップ。若尾の役はそんなに重要でもないように見え、中盤までは出番も多くない。それなのに主役扱い、というのは、ミステリとしても致命的でしょう。これじゃあ、誰が犯人か言ってるも同じでしょう。
 刑事コンビに、村上不二夫と、中条静雄、こんな似たもの役者にコンビ組ませるなんて、絶対意図的だって。地味な役者たちだが、大映の脇役って、何をするわけでもなく、飛びぬけた個性があるわけでもなく、でもホントにいい味わいの親父たちなんだよなあ。
●追記●この直前に見た「勝負は夜つけろ」の刑事は、須賀不二男。須賀不二男も、なんとなく、村上不二夫や中条静雄に似たキャラ。子供なら見分けがつかないだろ。でも、味わいあるんだよなこの三人。
 さらにいいのが、悪役のやくざの親分・安倍徹。悪役の癖に、病弱。田宮や、警察に突っ込まれると、病人メイクで「俺はもうすぐくたばるんだ。だからあんまりいじめないでくれ」と泣きを入れる始末、もう出て来るだけで笑いをとる。
 ただし、究極の大人顔女優、江波杏子が、いくら若いからって、あどけなくぶりっ子するのは、ぜんぜん似合わず、むしろおぞましい(笑)。ホラーだよ。
 出ずっぱりの「不信のとき」も本作も、役自体としては脇の若尾が序列トップ。日活で、とうとう裕次郎よりランクが下だった小林旭みたいに、最初からのスタアさんと、子飼いの大部屋上がりの成り上がりスタアの落差、お前は俺たち映画会社が育てた、お前が今日あるは俺たちのおかげ、という目線が、大映脇役陣に甘んじるには飛びぬけた個性がありすぎた田宮は、耐えられなかったのかなあ。
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by mukashinoeiga | 2009-12-12 22:06 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

井上昭「勝負は夜つけろ」

 神保町にて。「目力対決・田宮二郎と天知茂」特集。64年・大映京都。
 開映5分前に飛び込んだら、86番目チケット。定席99だから、ほぼ満席か。平日にしては珍しい。比較的若めの人も多く、これはやはりチラシの<「大映のゴダール」井上昭の日本映画離れしたスタイリッシュな映像の連打に魅了される>が影響したものか。嘘でも張ったりでもいいから、こういうキャッチーなコピーは、効くなあ。フィルムセンターの官僚的なチラシも、少しは爪の垢を煎じたらいい。
 まあ、スタリリッシュな映像、編集。絵として、面白い。
 だけど、それはあくまで部分的であり、お定まりの退屈な絵も多い。何よりもお話がイマイチ。ある程度、若い監督ならば、旧来のお決まりの撮影所映画の話法に抵抗して、これなりのことはやり勝ち、というレヴェル。同じ撮影所の先輩・三隅研次のほうがはるかに素晴らしく、新しい。
 あまり注目されない女優だが、ヒロイン・久保菜穂子がいい。
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by mukashinoeiga | 2009-12-11 22:21 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

日活好きなsongsf4s.exblog.jp

 というわけで、日活ファンとしては、時々覗いているブログをご推薦。このブログ、もともとは超マニアックな音楽ブログ。でも、ぼくは生来の音痴ということもあって、音楽にはまったく無学。だから、このブログの音楽パート(それがメイン)は、ぼくにとってまったく宝の持ち腐れ。
 で、時たま長文の映画の記事がある。これがやはり超マニアックにして、面白い。洋画も載るが、日本映画はぼくが知る限り日活映画が中心。なぜ日活がメインとなるのかは、ブログを読めば納得。今まで読んだのは「嵐を呼ぶ男」「霧笛が俺を呼んでいる」「乳母車」「狂った果実」「東京流れ者」など。
 古い建築物に興味があり、横浜・横須賀が庭同然の経歴もあり、映画のロケ地同定・ロケ地めぐりも豊富な写真で検証され、なおかつ当然のことのように映画音楽も鋭く追及し(ここで日活の他の邦画各社とも違う音楽志向、しかも世界のあらゆる撮影所映画ともまったく隔絶した音楽志向が明らかにされる)、ぼくのド素人ブログとまったく「ラベルが違う」面白さ。
 記事によれば、清順映画の全作制覇批評!をもくろんでいるらしい。上記の映画の面子を見れば、キムタケ美術が多いことからも、意欲は充分ですね。ぜひ、この方のキムタケ論を聞きたい。
 なお、「東京流れ者」追加訂正の項を見て、まったくぼくと同じ。キムタケのインタヴュー本「映画美術 木村威夫」の編者の功績は、「東京流れ者」に、清順が、かなり意図的に<赤坂のTBSタワー>を映して、<東京タワー>と誤認させた詐欺師っぷりを40年の歳月を閲した後に、暴露した点にある。赤白に塗られたタワーを映したら(しかも冒頭クレジットにははっきりと東京タワーが映っている)、誰だって、それは東京タワーと思うよね。映画にも東京の二字が冠されている訳だし。それが真っ赤な偽り、今はなき赤坂TBSタワーだという。全景を映されればぼくだってわかる。ただのTV塔なんだから、当然展望台とかはない。それを赤白塗りの三分の一程度の先っぽだけ映して、ぼくたち田舎者はまんまと東京タワーと誤認。
 映画の詐欺師清順、してやったりだよね。キムタケはきょとんとして、「TBSタワーはTBSタワーだよ。東京タワーとはまったく別物だよ」というが。ああ、天然だよ、キムタケ。清順に比べれば、はるかに人が良すぎる。人が良すぎるのは、映画監督には向かない。だからかキムタケ、美術監督としては超一流だが、映画監督としては凡庸きわまる、そのわけがわかった(笑)。
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by mukashinoeiga | 2009-12-11 22:20 | 業務連絡 | Trackback | Comments(0)