<   2009年 10月 ( 13 )   > この月の画像一覧

ネットを徘徊していたら

 「公衆への観覧」というものを発見しました。たとえば、次のようなものです。

1-1 入館者数
【上映会年間入館者数等(延べ数)】
■420作品・369プログラム・291日間・761回上映・1回平均入館者数164人
■入館者数 124,775人
一般58.74% シニア25.39% 学生6.07% 小人0.04% 無料9.76%
【展覧会年間入館者数等】
■291日間・1日平均入館者数32人
■入館者数 9,294人
238 シナリオ作家 新藤兼人 入館者総数 22,018 人
239 《京橋映画小劇場No.1》映画の教室2006 入館者総数 3,270 人
240 NFC 所蔵外国映画選集 フランス古典映画への誘い
入館者総数 11,348 人
241 ロシア文化フェスティバル2006 IN JAPAN ロシア・ソビエト映画祭
入館者総数 9,538 人
242 《京橋映画小劇場 No.2》アンコール特集:2005 年度上映作品より
入館者総数 2,173 人
243 日本映画史横断① 日活アクション映画の世界 入館者総数 13,250 人
244 《京橋映画小劇場 No.3》生誕100 周年記念 美術監督 水谷浩作品選集
入館者総数 2,109 人
245 日豪交流年2006 オーストラリア映画祭 入館者総数 5,287 人
246 《京橋映画小劇場 No.4》シネマの冒険 闇と音楽2006
入館者総数 1,398 人
247 没後50 年 溝口健二再発見 入館者総数 22,089 人
248 第7 回東京フィルメックス 特集上映 岡本喜八 日本映画のダンディズム
入館者総数 3,300 人
249 日本映画史横断② 歌謡・ミュージカル映画名作選
入館者総数 9,937 人
250 シリーズ・日本の撮影監督(2) 入館者総数 17,239 人
251 《京橋映画小劇場 No.5》CHANBARA ① 市川右太衛門
入館者総数 1,819 人

1-1-2 展覧会(展示室)
16 生誕100周年記念 美術監督 水谷浩の仕事 入館者総数 4,969人
(併設:展覧会 映画遺産─東京国立近代美術館フィルムセンター・コレクションより)
17 生誕110周年記念 衣笠貞之助の世界 入館者総数 4,325人
(併設:展覧会 映画遺産─東京国立近代美術館フィルムセンター・コレクションより)

うーん、これ、公開している資料なのか(笑)。しかし、われわれフィルムセンターに通うものは「公衆」という、あまり聞きなれない名前で呼ばれているのか(笑)。別なページには、上映回数、平均客数などのデータもあり。展示で、一日平均客数二十人、って、あれだけの施設で。ううむ。
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by mukashinoeiga | 2009-10-29 01:09 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

佐々木康「征戦愛馬譜 暁に祈る」

 京橋にて。「生誕百年 映画女優 田中絹代」大特集。40年、松竹大船。
 戦意高揚映画なのに、佐々木お得意の歌謡映画でもある(音楽万城目正)。
 戦闘シーンは、松竹らしからぬ迫力大掛かりさ。「陸軍省 指導」(冒頭クレジット、あとに、内務省後援・文部省推薦、と続く)の実写戦地映像とドラマ部分をうまく融合している。応援の撮影部、演出部が多数クレジットされているのは戦前映画としては珍しいが、この大動員で撮った実写映像も実に貴重。どこかの入城式(南京じゃないよ、忘れた)も、いかにも日本軍らしき整然さで、儀式めいている。
 大量の馬が荒地を砂塵舞い上げて疾走するシーンの迫力、これは黒沢に撮らせたかったなあ、と。
 ただし、牧場出身・騎兵隊小隊長の夏川大二郎の馬上姿だけは違和感。多分、馬に乗れなかったのね大ちゃんメタボ系。陸軍省指導を受けつつ、ここら辺のイージーさが松竹。
 映画はこの軍展開と、絹代たち銃後の内地が半々で進行する。内地部分は、もちろんいつもの戦前松竹メロ。親の反対を押し切って徳大寺に嫁に行った絹代を勘当する厳母は、もちろん葛城文子。この勘当を解いてくれるよう、葛城を説得に来るのが徳大寺の父・河村黎吉。葛城文子VS河村黎吉、もちろん河村が貫禄負けするのは言うまでもない。
 多数の兵隊さんエキストラの中に、一瞬殿山泰司らしき顔が見えたが、錯覚か(歌う兵隊さんシーン)。
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by mukashinoeiga | 2009-10-25 08:01 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

渋谷実「南風」

 京橋にて。「生誕百年 映画女優 田中絹代」大特集。39年、松竹大船。
 戦後は迷走気味の渋谷も、このころは典型的松竹メロを堅実にこなす。
 冒頭クレジット、最初に主演者三人の名が連記される。
   田中絹代
   徳大寺伸
   佐分利信
 これを見ただけで、戦前松竹映画ファンは、
「ああ、ヒロイン・絹代嬢は最初の男・徳大寺伸にてひどく裏切られ(ないしは、死別し)、無条件絶対的に誠実な男・佐分利信に救われる、典型的戦前松竹メロなのだなあ」
と、わかってしまう。そして、その推測どおりにことは運ぶ。純情可憐なヒロイン・絹代嬢、ちょっと冷酷で浮薄な近代派モダンボーイ・徳大寺、近代的知性を持ちつつ決してモダンボーイではない、心優しい朴訥「現実派」の佐分利信。まあ佐分利の役は、近代的知性を持ちつつ決してモダンボーイではない、心優しい朴訥「理想派」の上原なら、どんぴしゃりなのだが、佐分利も悪くない。どころか大いによろしい。もっとも音大の学生役ゆえ、前半は詰襟学生服の佐分利が、妙におかしい。
 戦前松竹メロの、おなじみの人物たちが、おなじみのキャラで、おなじみのメロドラマを構築する、その安定感。そうして、息子が絹代嬢と結婚する、という知らせを聞いて田舎から上京する佐分利の母に、出ました、葛城文子。いやあ、可憐なヒロインに、姑が葛城文子は「壁」っすよ。
 しかも絹代嬢は徳大寺との赤ん坊を産んだばかり。「まず、あたしがお母さまに気に入られるかどうかもわからないのに、その上赤ちゃんがいるとわかったら・・・・」とりあえず赤ちゃんを産婆さんに預けて隠し通そう、という絹代嬢。「いや、うちの母親は固い人だけど、話がわかるとこもあるんだ。やっぱり包み隠さず話そう」と、例の調子でのほほんな佐分利。かくて話の中心は、賢母・葛城文子に移っていくのです。
 なお、徳大寺を「浮薄な男だ」と評する、絹代の兄・笠智衆が後に、これまた浮薄な様を露呈する。小悪を演じて実に魅力的な笠智衆、名演技だ。小娘の絹代に図星を指されて狼狽する河村黎吉も例の調子。

◎追記◎
南風 (1939年) - 澁谷 實 / Southerly - Minoru Shibuya


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by mukashinoeiga | 2009-10-25 08:00 | 傑作・快作の森 | Trackback | Comments(2)

「日本の母」現代版リメイク・キャストを考える

 戦前松竹ファン以外の人には★原研吉「日本の母」★キャストのすごさがわからないと思うので、現代版を考えてみよう。たとえば、の、暫定版で。

母     八千草薫<葛城文子
父     船越英二<武田春郎(元外交官・遺影のみ)
長男    阿部寛<佐分利信(北大農学部教官)
長男の妻 夏川結衣<三宅邦子
二男    本木雅弘<上原謙(都内医学部研究者)
二男の妻 仲間由紀絵<小暮実千代
三男    堺雅人<佐野周二(独身・軍パイロット)
長女    広末涼子<田中絹代
長女の夫 浅野忠信<斎藤達雄(絹代に愛想をつかされて別居中)
次女    宮崎あおい<高峰三枝子
次女の  玉木宏<徳大寺伸(見合い相手)
叔父さん 片岡鶴太郎<河村黎吉
 その妻 余貴美子<吉川満子
 その娘 上野樹里<水戸光子
料亭主人 柳葉敏郎<坂本武(元・外交官武田春郎専属コック)
 その妻  室井滋<飯田蝶子(元・武田&葛城家の女中頭)
その息子 小栗旬<原保美(出征する)
二男の   品川徹<藤野秀夫(直属教授)
二男同僚 田口浩正<近衛敏明
長女仲人 斎藤由貴<岡村文子
長女友人 天海祐希<川崎弘子
徳大寺の 池脇千鶴<三浦光子(友人の夫人)
二男論敵 香川照之<ヒモリン

●追記●大事な人を忘れていました。
斎藤友人 役所広司<笠智衆

 八千草薫では実年齢が上過ぎるかもしれませんが、なんてったって「ディア・ドクター」では、井川遥の母親でしたからね。阿部寛<佐分利信や浅野忠信<斎藤達雄は、キャラが正反対かも知れませんが、なんとなく逆なりに、合いそうな感じ。天海祐希<川崎弘子も、正反対ですが、そもそも「田中絹代が就職の相談に行く、職業婦人」の役に川崎弘子を当てること自体が間違っているのだ! どう見ても、桑野通子でしょう、これは。まあ、クワミチには小さすぎる役ですが。
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by mukashinoeiga | 2009-10-23 00:34 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

原研吉「日本の母」

 京橋にて。「生誕百年 映画女優 田中絹代」大特集。42年、松竹大船。
 戦前松竹大船映画オールスタア出演のホームドラマ。とにかく出て来る顔かおがみな、松竹ファンにはおなじみで、毎度のことながらうれしくなる。
 オールスタア映画だから、必然的に大家族になるのだが、「日本の母」役は、当然この人、この時期の松竹映画で良家の母親を演じることの出来る女優は、もうキャスティング選考の余地なく、この葛城文子! おそらく現代に至る日本映画史全体を通じて、最良の母親役女優というべきだろう。
 先の「晴曇」の上映後、heroさんと飲んだ際、「もう、どの映画見ても、学生服の江川宇礼雄が、出てくるんですよ」とぼやいていたが、いや、それ以上に葛城文子と河村黎吉をどの映画でも見ている気分で。葛城文子は当然母親役オンリーで、河村黎吉は自分か他人のおじさんで。
 では、記憶が鮮明なうちに、そのキャストを書いてみよう。

母     葛城文子
父     武田春郎(元外交官・遺影のみ)
長男    佐分利信(北大農学部教官)
長男の妻 三宅邦子
二男    上原謙(都内医学部研究者)
二男の妻 小暮実千代
三男    佐野周二(独身・軍パイロット)
長女    田中絹代
長女の夫 斎藤達雄(絹代に愛想をつかされて別居中)
次女    高峰三枝子
次女の  徳大寺伸(見合い相手)
叔父さん 河村黎吉
 その妻 吉川満子
 その娘 水戸光子
料亭主人 坂本武(元・外交官武田春郎専属コック)
 その妻  飯田蝶子(元・武田&葛城家の女中頭)
その息子 原保美(出征する)
二男の   藤野秀夫(直属教授)
二男同僚 近衛敏明
長女仲人 岡村文子
長女友人 川崎弘子
徳大寺の 三浦光子(友人の夫人)
二男論敵  ヒモリン

●追記●大事な人を忘れていました。
斎藤友人 笠智衆

 知っている人が見れば、松竹三羽烏揃い踏みをはじめなんと言うオールスタア・キャスト、ため息が出るくらい。欠けているのは、毎度のことながら、桑野通子くらいか。こういうオールスタアのホームドラマには、「戸田家の兄妹」あたりをのぞいて、なぜかお呼びがかからない。「戸田家」でも小さな役だったし。しかし、佐分利・上原・佐野がそろって兄弟役というのは珍しいのではないか。これに田中絹代・高峰三枝子が姉妹となる。当時最強ではないですか。
このキャストにため息をつき、これだけでどういう物語が展開するか、だいたいわかってしまう人は、全国に一万人いるかどうか(笑)。ネットでは千人いないだろう。
 なお、ヒモリンのみは、やや悪役の役柄で、クレジットにも乗っていない気がしたが。あと、川崎弘子のところで田中絹代と会話しているところに、書類を届けに来た女性、数秒で消えてもちろんせりふなし、高杉早早苗と見えたが????
 監督は原研吉なので、締まりはないが、とにかく役者たちの柄で見せきってしまう。
 超まじめな役の佐分利の「大人はいいんだ」に場内大爆笑。超善人の上原が相変わらずかっこいい。佐野もさわやかでいいなあ。ただ、この三人が絹代を囲んで説教するところは、ちょっと「戸田家」どうよう後味が悪い。佐分利も「男はいいんだ」とばかりに妹・高峰三枝子を説教するシーンに、家父長制の力みを感じる。ただ、それは現代の視点からなのだが。「子供じみてるな。よし、やろう」の佐分利もいい。
 田中絹代が、散々悪口を言う別居中の夫、やっと出てきたら斎藤達雄。あ、こりゃ納得(笑)。いかにも怪しげな貿易商、こんなのとヨリを戻せ、と三兄弟の説得、ぜんぜんおかしいて。あと、徳大寺と友人の妻・三浦光子も怪しいで。説得力なさ過ぎ。徳大寺なら、やるだろう。

★「日本の母」現代版リメイク・キャストを考える★という、おまけ」も、考えて見ました(笑)。
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by mukashinoeiga | 2009-10-23 00:32 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

野村芳亭「晴曇」

 京橋にて。「生誕百年 映画女優 田中絹代」大特集。33年、松竹蒲田、無声、20ftp。
 今夜の上映は、沢登翠弁士、柳下美恵ピアニストによる、活弁上映。ちゃんと眠れず見れました。
 学生岡譲二と令嬢栗島すみ子、学生大日向伝と、下宿屋の娘絹代嬢。この二組のカップルが、栗島と大日向の<邪恋>によって、入れ替わってしまうスワッピング映画。
 ラストに出るエンドマークは、「青春篇 終」。後編が期待されていたらしいが、ついに作られなかったのか。察するに、大スタア・栗島すみ子が、思っているより悪役に描かれていたため、本人、取り巻き、ファンともに激怒したのではなかろうか。取り巻きといえば、絹代嬢の母役が葛城文子、途中から出てこなくなり、唐突に、この間亡くなった、と絹代嬢の口から語られる。母が死ぬころは大日向もまだ母には体面を保っていた、と語られるが、その前から相当おかしかったので。 なんか、日数的に合わないけど。栗島のおばである葛城も、姪に「あなた、ひどい悪役扱いよ」と意見したのだろうか。
 すみ子から絹代に、アイドル新旧交代の図。
 約八十年前の映画なのに、登場人物は、みんな見知った顔ばかり。ちらりとしか出てこないヒモリン、坂本武は、沢登さんも紹介すらしてくれないけど。沢登さんも、こういうしっとりとしたメロドラマだと、快調。
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by mukashinoeiga | 2009-10-18 10:33 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

野村浩将「応援団長の恋」

 京橋にて。「生誕百年 映画女優 田中絹代」大特集。33年、松竹蒲田。
 野村浩将トーキー第一作とのこと。かなりうまいトーキーの本作が33年、前に感想を書いた島津のトーキー直前実験作「お小夜恋姿」が34年。組ごとにトーキー進捗度合いが違ったのだろうか。この時期、全国の映画館にトーキー設備が普及していなかったころだろうから、映画会社がトーキーもサイレントもサウンド版も、それぞれ作る必要はあったのだろう。最後までサイレントだったのが小津の組だ。
 いかにも応援団長なバンカラのヒゲ面、しかしそのヒゲの裏には二枚目の顔(岡譲二)が隠されている。そのバンカラな彼が、親友江川宇礼雄の西洋屋敷に招かれて、美女の前でおけさ節を踊る羽目になる。小津の「淑女と髭」木下の「お嬢さん乾杯」、松竹お得意のくすぐりですね(原作・脚本野田高梧)。
 彼の恋する美女が、この時期最高の美しさの逢初夢子。その西洋風の美女と対するのが、下宿屋の娘、終始着物姿の絹代嬢。この和風と洋風の対比がいかにもこの時代らしい。
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by mukashinoeiga | 2009-10-18 10:32 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

柳瀬観「北国の街」

 神保町にて。「思ひ出は列車に乗って 川本三郎編 鉄道映画紀行」特集。65年・日活。
 本特集でやはり今週上映中の、村山新治「故郷は緑なりき」61年、ニュー東映東京(未見)のリメイク。
 舟木一夫、和泉雅子、山内賢主演の日活青春モノで、どうせたいした映画ではなかろう、と鼻でふふんと見に行ったら、恐れ入りました、傑作でした。
 ニュープリントの、美しいカラー・シネスコ画面が、大スクリーンに映されていて、そのロケーション効果にため息。新潟・長野間の飯山線沿線の、雪景色がたっぷりとロケされていて、抜群の効果を挙げている。「北国の街」その冬から雪解けの春までを描き、雪はきれいなものだけではない、ぐじゃぐじゃの土混じり泥交じりの半解けの雪まで、丁寧なロケーション。高校生役には、いずれもトウの立った三人だが、みんな素晴らしい。まさか富島健夫原作、倉本聰脚本の青春モノで泣かされるとは思いもしなかったなあ。いや、ぼくが泣いたのは、そのロケーションの美しさゆえ、と思いたい(笑)。舟木の歌が舟木の歩く絵にかかる、というのではなくて、舟木の歌が山内賢の歩く後姿にかぶる美しさ。へへっと笑う山内。微笑む和泉。
 ところで、シアターで配っているスタッフ&キャスト表には、舟木の父の友人の娘・岡田可愛が載っていない。代わりに「加藤敬子(信子の母)」というのがあるが、肝心の「信子」役が表にない。「信子」が岡田可愛だろうか。また、刑事役二人と守衛役が載っているが、映画にそのような人物は出てこなかった? 刑事が出るとしたら、せりふだけで語られる、山内賢の<通行人の女性が不逞の輩に暴行されているのを助けた事件>くらいだろうか。カットされたものかもしれない。女性を助けたのに、校長は山内の武力行使を非難する。日教組か(笑)。和泉雅子の母に東恵美子、顔が似てる母娘のキャスティング、ベスト親子賞ね。
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by mukashinoeiga | 2009-10-11 22:04 | 傑作・快作の森 | Trackback | Comments(0)

島津保次郎「愛よ人類と共にあれ」

 京橋にて。「生誕百年 映画女優 田中絹代」大特集。31年、松竹蒲田、無声、24ftp。
 サイレント映画で181分よ。
 拷問か。
 昔は弁士・楽団付きの無声を、いま完全サイレントで見る苦痛。せめて、休憩入れろよ、フィルムセンター。といいつつ、フリスク・ブラックミント味やら、無糖コーヒーの缶ボトルなど持参で、しかも直前には喫茶店でエスプレッソ飲んで、備えはばっちりだ。二三度、気を失いつつ、でもすぐに回復して、きっちり見れたのは、やはり、映画が面白いからだ。
 大ハッタリの大仰なタイトル、でも中身は父と息子の相克と、恋愛模様を織り込んだ、戦前松竹メロそのもの。ただ、ハリウッドから帰還した上山草人の松竹入社記念作なので、いつものヒロイン中心というわけではない。そのなかでも、鈴木伝明と恋仲の田中絹代が、もちろんヒロインだ。ふっくらした若々しい顔の絹代嬢、タバコを吸ったりの蓮っ葉な、ダンスホールのナンヴァーワン・ダンサー。そして、一箇所だけだが、胸の谷間を見せるドレスを着る。田中絹代でぼくが記憶しているかぎり初めて見る。戦前の日本映画でも珍しいのではないか。いや、1931年当時の、世界のアイドル女優の中でも、きわめて珍しいのではないだろうか。何度も言うが、やれば、できるのね。
 いや、めったに見ないが、父・上山草人、息子・鈴木伝明のマスクを見ているだけで楽しい。特に上山のマスクは、見事な造形に惚れ惚れする。伝明、なんかノーメイクのまま、そのままフランケンシュタイン役をやれそうだ(笑)。ラスト、こう来るか、という意外などんでん返し?(ここで草人、伝明を使った意味が、ほんとに、生きてくる)の、上山草人が、年をとったという設定で、見事にあごがしゃくれた老人顔になる。それまであごのしゃくれなんてなかったのに、さすが役者か、と感心しきり。役者はあごまで演技するのか、と。まあ、それまでは撮影角度と照明で工夫していたのかもしれないが。
 岡田時彦(だけ、は、しどころのない役かもしれないが)、河村黎吉、ちょっと若い役の吉川満子、奈良真養、藤野秀夫、などなど、いつもの戦前松竹常連の楽しさ。デコちゃんは男の子の役で、かわいさ倍増。ヒモリンは、ダンスホール・マネージャー、宝石店店員と一人二役か? ダンスホールのほうは髭で、ちと確認が難しいが。
 そして、樺太の木材伐採工場の風景が延々映し出され、そこはドキュメンタリー・タッチなのだが、ここが本当に樺太でロケされているなら(北海道の可能性も高い)、戦前の樺太を映し出した貴重な映像なのだが。
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by mukashinoeiga | 2009-10-09 21:26 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

島津保次郎「お小夜恋姿」

 京橋にて。「生誕百年 映画女優 田中絹代」大特集。34年、松竹蒲田、サウンド版。
 う~ん、実に奇妙な映画で。いわば、漸進的横滑り映画(笑)。
 斬新といえば斬新、珍妙といえば珍妙、いい加減といえばいい加減。
 まず、内容もフシギだが、それ以前にサウンド形式が、超・奇妙。フィルム上のオープニング・タイトルには「お小夜恋姿」の上に小さく「小唄映画」と角書きがある。つまり、サイレントとトーキーのあいだに、比較的短く流行した、せりふはトーキーではないが、主題歌はちゃんと録音されているという、サウンド版小唄映画(浪曲映画と、いうものもあった)のひとつなのだ。
 ところが、この映画、正確には、サウンド版・一部トーキー/サイレントというべきもので、なんとサウンド版にもかかわらず、せりふもちゃんと録音されているのだ。温泉宿が舞台の映画なのだが、たとえば主役たちの部屋は完全サイレント・スポークンタイトル付き、なのに隣室の脇役たちの声はちゃんとトーキー。うわさをする村人の声、とか、山内光や坪内美子、高杉早苗の内心の声ナレーションとか、要するにオフ・スクリーンの声はトーキー。と、思えば、結城一郎運転手と、その車に同乗する河村黎吉の会話は、ちょっと技術的に幼いけれど、ちゃんとリップ・シンクロしている完全トーキー。つまり、オールトーキーになる前の実験をいろいろしている映画なのだ。いかにも実験作品だなあ、というのは、後のトーキー映画では実に達者なマシンガン・トークすらする、斎藤達雄の声がなんとも、自信無げに聞こえたりする、そういう過渡期の生な感じが、稚拙な録音のなかにかいま聞こえる点だろう。
 この映画の主要登場人物たちはたいてい、一言二言「しゃべって」いる。ただし、当時は超かわいいアイドル女優だった主演・田中絹代のみが、完全無声。日本初の完全トーキー「マダムと女房」のヒロインとなる絹代も、この時点では<アイドル女優にふさわしくない、ドンくさい声質>と、見られて、いや、聞こえて、いたのだろうか。
 さて、お次は内容だ(笑)。
 新進画家が、ヌードモデル坪内美子を妊娠させてしまう。当時の考えでは、妊娠させたら即結婚、でも画家の母上様は葛城文子!!! 実人生では蒲田大スタア栗島すみ子の叔母であり、蒲田・大船映画の定番的「お母さま」女優。謹厳実直道徳堅固な<賢母>をやらせたら、おそらく日本映画最高の大適役。いや実に味のある女優さんで、彼女に比べれば、同じく松竹マザー女優、ということはこれまた日本映画最高のマザー女優たちということだが、の吉川満子、岡村文子、飯田蝶子などすら、チンピラ女優に見えちゃうくらいで(笑)。そんなマングースマザーににらまれた、ヌードモデル坪内美子、風前の灯!状態。なのに、肝心の画家青年は、温泉やどの看板娘・花恥らう絹代嬢にもいい顔しちゃうのであります。どうなるこの三角関係。という結末は、まあネタバレ禁止(笑)ですが、なんと驚くことに(笑)この物語、唐突に原稿用紙に書かれる小説と。なって、しまう。
 なんと、これまでの三角関係悲恋物語は、この宿に長逗留する三流小説家・斎藤達雄が、宿の看板娘お小夜(絹代嬢)をモデルに描いた小説だった、とさ。がっくりストーリーの代表格、夢落ちならぬ小説落ち。ひどい(笑)。ひどすぎる。
 で、映画中盤はこの三流小説家斎藤と、宿の番頭河村黎吉の、滞納している宿賃を払え払えないの、どたばたコメディーと、化すのですね。それまでの、三角関係悲恋物は、まるきり無視ですか。温泉の湯船に浸かっている斎藤を、これまた裸になって宿賃督促の河村黎吉のおかしさ。
 で、悲恋ものの前半、ドタバタの中盤、そして後半はふたたびみたび、変調する。なんと、コミカルな朴訥ものの河村黎吉番頭が、突如キャラ豹変、絹代嬢に真剣に愛の告白! 十数年前から、お小夜こと絹代嬢を恋していた! お前は清水宏か、ロリコンか。

 いや、思うに、これ、お話はどうでもよかったのよ。将来の完全トーキー実現に向けて、いろいろなサウンド実験をしようじゃ、ないか、と。じゃ、ここに「お小夜恋姿」という、流行歌のレコードがある。ひとつ、これを利用して実験的にいろいろトーキー試しましょう、と。これは温泉やどの話らしいし、しかもひなびた温泉街なら、閑静でトーキー実験にはいいんじゃない、と。
 でこの小唄は悲恋物だから、悲恋な話を作っていったら、いや、あまりにつまらない話でさ、絹代嬢の言うとおり「薄情で浮気な画家」の話なんで、もうどうしようもない、撮影と同時進行の脚本に詰まった島津は、助監督に蒲田へ電報を打たせる。「サイトウタツオ シキュウヨコセ」。ちょうど空いていた斎藤達雄を小説家に仕立て、それまでの小唄向き悲恋ものを小説として、ごまかす算段。
 しかし、次の映画がすでに決まっていた斎藤達雄は、すぐに送り返さなきゃいけない。なのに、斎藤パートをもってしても、予定の90分の尺は埋まらない。しょうがない、斎藤の穴は、もともと最初からいた、河村黎吉で埋めよう、ええい、キャラ、変えちまえ、という、ことでは、ないか、と。こうして、ドタバタでゴマかしていた映画も、悲恋モノの小唄映画に、戻れるぞ、と。
 松竹のゼネラル・プロデューサー城戸四郎と小津の、有名なやり取りを思い出す。
「温泉やどに、しばらく保養に行ってきたまえ」
喜ぶ小津に、
「ついては、ついでに一本撮ってこい」
それでは保養にならない、とぼやく小津。
 温泉映画好きの清水「簪」「按摩と女」も含めて、蒲田では、企画に詰まったら、とりあえず温泉行って、一本撮ってこい、が半ばギャグ化して在ったのかなあ、という牧歌的想像を起こさせるのだ。で、本作においては、音重視、蒲田の巨匠・島津といえど、とりあえずサウンドの実験作だから、温泉やどに放り込んで作っちゃえ、と。なんとこの映画、夜間屋外撮影は照明一切なし、ヒロイン絹代嬢の顔はおろか、姿かたちさえまったく見えないショットが多々あるのだ。必要最小限のスタッフしか連れて行かなかったのではないか、と、推測される。いや、この当時は、もちろん電力事情が今とは比べ物にならないので、屋外に臨時の電力を確保できないというのは、わかる。割と、屋外真っ暗、というのはこれまでも見てきた。ひなびた温泉街で、電力が、そもそも確保できない、というのも無理はない。しかし、それにしても、真っ暗だ。
 奇妙で、貴重で、絹代嬢も超かわいい(それは、とても、短い一時期)この、珍妙な<実験作>、本特集で見ることが出来るのは、あと2回。戦前松竹メロ・ファンなら必見!?
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by mukashinoeiga | 2009-10-08 00:54 | 珍品・怪作の谷 | Trackback | Comments(0)