カテゴリ:ルビルビルビッチ淑女超特急( 4 )

エルンスト・ルビッチ「淑女超特急」

典型的ルビッチ流艶笑喜劇の一席。
 渋谷にて「ルビッチ・タッチⅡ」特集。41年、Ernst Lubitsch Productions Inc.=Sol Lesser Productions、配給ユナイテッドアーチスト。

e0178641_1839647.jpg『淑女超特急 That Uncertain Feeling(83分)』 (渋谷シネマヴェーラHPより)
公開:1941年 監督:エルンスト・ルビッチ
出演:マール・オベロン、メルヴィン・ダグラス、バージェス・メレディス、オリーヴ・ブレイクニー、ハリー・ダヴェンポート、シグ・ルーマン、イヴ・アーデン、リチャード・カール
原因不明のしゃっくりに悩まされ精神科医を訪ねたジルに、夫婦生活に原因ありとの診断が。夫に不満があるジルは、病院で知り合ったピアニストに惹かれ…。小津の『淑女は何を忘れたか』に影響を与えた『当世女大学』のルビッチ自身によるリメイク作。*デジタル上映

 原題のThat Uncertain Feeling、内容に合わせて超訳すれば「女心は秋の空」かな。現代風に申さば「不定愁訴」というところかしらん。
 いずれも秋の字があることが日本語の妙味?だがさておき、同時に極めて楽天的なアメリカンコメディゆえ秋の字は似合わん。
 かくて苦心の超訳が「淑女超特急」
 暴走爆走する女心コメディ。これを当時の日本の配給は、当時の最新流行語、未来の日本には夢の超特急が実現するんだ、という希望ワードに託したわけだ。のちにその新幹線は「のぞみ」と命名されたわけだが。

 いろいろ紆余曲折があって、だが曲折(その曲折こそがルビッチの真骨頂であるわけで)抜きでいえば、お金持ちの夫を持つ有閑マダムが、夫との退屈な日常を持て余し、若いピアニストと、ズコバコズコバコしつつも、結局元サヤの夫婦に戻るという。
 結局寛容な、おおらかな広い器で、アメリカだったら射殺してもおかしくない淫乱浮気妻を許しちゃう。ここら辺のところがどうも日本人の潔癖さ?に合わないのか、ぼくの見た回はそれなりに席が埋まっているのに、場内クスリともせず。
 金持ち喧嘩せずで、間男にバコバコされた浮気妻を、これまたバコバコし返して、取り戻す。ここら辺が陽気で明るいアメリカンコメディたるゆえんだが、潔癖で陰にこもった(笑)われら日本人感覚では、いささかヘヴィーというところかな。

 しかも間男となる若い男が、現代の日本人感覚でいえば、だれでもドン引きするような超変人、というかはっきり言って、単にアブない変質者。こういう輩に恋したり、さらに自宅に招き入れるなんて、日本人の感性では、問題外だろう。ここら辺が渋谷でさえも観客ドン引きの理由かも。
 こういう変質者が受け入れられるのも、スクリューボールコメディの闊達さだが、現在の日本ではドン引きか。
e0178641_1840769.jpg ちなみに、この間男を演じたのは、若き日のバージェス・メレディス!
 ぼくなんぞはおじいちゃんの彼を見慣れているので、最後のクレジットを見るまで気が付かなかった(笑)。
 結局若さが売りの主演男女優よりも、味のある脇役のほうが俳優として長生きということか。
 最も本作のメレディスは、全く若い男感がないので、そこも今の観客ドン引きの一因かな。
 ちなみにぼくが一番ウケたのは、主人公メルヴィン・ダグラスの取引先が寝具会社のユニバーサルとユナイテッドだという楽屋落ちで。しょうもない。言うまでもないが退屈で熟睡する映画の会社というギャグですな。

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by mukashinoeiga | 2017-04-24 18:42 | ルビルビルビッチ淑女超特急 | Trackback | Comments(0)

エルンスト・ルビッチ特集を新設

初の外国監督のカテゴリと、なります。
 いま渋谷シネマヴェーラにて、

e0178641_936276.jpgルビッチ・タッチⅡ 2017/04/22 ~ 2017/05/19 (渋谷シネマヴェーラHPより)
エルンスト・ルビッチ Ernst Lubitsch(1892-1947)
ベルリンの洋服屋の息子として生まれる。16歳で高校を中退して舞台俳優となり、その後映画俳優へと転身。1914年に『シャボン玉嬢』で監督デビューし、多くの短編映画で腕を磨いた後、長編映画に進出。『牡蠣の王女』などの傑作コメディの他、ポーラ・ネグリ、エミール・ヤニングスとの黄金トリオによる史劇大作を監督。これがアメリカで大ヒットし、1922年にメアリー・ピックフォードの招きで渡米。
ワーナー・ブラザーズ、パラマウント、MGMなどの製作会社で多くの傑作を送り出した後、1941年に独立。『あのアーミアン毛皮の貴婦人』の撮影に入って9日目だった1947年11月30日、心臓発作で帰らぬ人となった。
ビリー・ワイルダーが師と仰ぎ、フランソワ・トリュフォーがオマージュを捧げ、小津安二郎が影響を受けた作風は洒脱と洗練の極み。映画史に燦然と輝く傑作の数々は、今なお観る物を魅了せずにはいない。

 と、特集が始まったばかり。半数は見ていて、どれだけ通えるかは、休みの日の朝の気分次第ですが(笑)。とりあえずカテゴリタイトルの「淑女超特急」は、見てきました(笑)。
 さすが名前Lubitschにbitchが隠れているルビッチだけに、みだらでふしだらな女たちが、出て来る艶笑コメディでした。エロリスト・ルビッチ!ブラボー!

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by mukashinoeiga | 2017-04-24 09:38 | ルビルビルビッチ淑女超特急 | Trackback | Comments(0)

エルンスト・ルビッチ「ラヴ・パレイド」

 渋谷にて。「映画史上の名作7」特集。29年、アメリカ。16ミリ上映。
 ヨーロッパの、とある王国の女王(まだ、独身の若いプリンセスでもある)と、その臣民たる若い貴族(モーリス・シュバリエ)の、宮廷恋愛譚。会話が、いきなり歌になる、オペレッタ形式の快作ラヴコメ。
 ただ、<酸いも甘いも両立した、大人の恋愛コメディ>達人ルビッチにしては、ほのぼのと歌でストーリーを転がす<ミュージカルのお子様趣味>は、いささか、水と油だったか。
 大人らしい(卑怯卑劣な)ギャグと機知で、お話を転がしていくラヴコメ達人も、ほのぼのとした歌を多数挿入しなければならない、いささかの隔靴掻痒感もありあり。ま、面白いんですけどね。
 すれっからしルビッチに、お子様ランチは、にあわねーなー。ま、面白いんですけどね。
 せこい話を、大エキストラの軍隊で補強するギャグも、たいへん楽しい。

 でも、現代にはいささか合わないのんびりムード、なおかつスタッフがいるロビーには冷房利かせても、客席に冷房なんてエコに反するぜー、と観客に悪逆なノー冷房を強いる、渋谷シネマヴェーラの方針により、幾たびか、失神してしまいました。もっと、いい環境で見たかった。

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by mukashinoeiga | 2012-09-02 23:50 | ルビルビルビッチ淑女超特急 | Trackback | Comments(0)

ルビッチ「山の王者」

 渋谷にて。「映画史上の名作番外編 サイレント小特集3」特集。29年、アメリカ。
 <艶笑喜劇の帝王>エルンスト・ルビッチが、艶笑の部分を封印?した、悲恋もの。
 スイスの猟師ジョン・バリモア(ドリュー・バリモアの祖父ですな)は、牧師の姪カルミラ・ホルンと相思相愛。スイスを長らく占領していた駐留フランス軍が撤退したので、村を挙げてのお祭り。
 しこたまビールを飲みすぎたバリモアは、ホルン嬢に迫る。お堅いホルン嬢は、これを拒否。結婚前は貞節を守らなくちゃ。で、性欲の捌け口に悶々したあげく、前から、バリモア君にセマっていた積極娘モナ・リコ嬢とやってしまう。
 で、当時は、狭い村のこととて、やっちゃった以上は、相思相愛のホルン嬢をあきらめて、モナ・リコ嬢をメトらねばならぬ。
 かくて失恋の悲嘆にくれるホルン嬢も、前からのしつこい求婚者と、結婚せざるをえないハメに。
 ここに、相思相愛のふたりが生木を引き裂かれるように、狭い村で、お互い気に染まぬ相手と、結婚しているという。
 これが後年の、ルビッチ艶笑喜劇なら、二組のカップルをめぐる鞘当て、とてつもないゴージャスかつ軽快なセックス・コメディーとなるのだが、あいにくルビッチもまだ若い?、悲恋物となってしまう。
 しかも、原題は、エターナル・ラヴだよ、エターナル・ラヴ。艶笑喜劇のルビッチなら、ギャグ以外に使いようもない、このタイトルを、マジに表現。ルビッチオヤジも、まだ純情なりし頃か。 
 そしてルビッチといえば、ドア。どんなバカでも、ルビッチを見れば、ドアが、ドアが、と言及するので、こちとらも恥ずかしくて言いたくないのだが、ほんとに、ルビッチ、ドアが好きだよねえ。
 ふつうなら、ダサくてもっさりした、お決まりの描写が何十秒か続くところを、数秒間ドアを映しただけで、すっきり解決、とてつもなくおしゃれですっきりした展開になる。これが何回もあるのだから。
 ドアを、クローズ・アップしても楽しいんだから、ルビッチ、もうドアにもとまらない、ので。
 喜劇を封印したといっても、フランス駐留軍退却記念村祭りの描写の軽快さ、楽しさ、小粋さは、やはりさすが。
 この年代のサイレント映画は、たといハリウッドとといえども、主演女優はかなり微妙。今の基準から見れば、え、これが主演女優?てくらい魅力に欠けるのがありがちだが、ホルン嬢、リコ嬢ともに、今の基準で見てもオーケー。いけます。ただ、リコ嬢は、ハリウッド・サイレントの女優にありがち?な、顔を前に突き出した、いわゆる猫背タイプ。当時そういう姿態が当たり前だったのか、それとも恋敵キャラの<刻印された、紋切りパターン>だったのか。
 ジョン・バリモアも、かなりこゆいソース顔だが(ま、当たり前ですけど)、なかなかいい。
 あと、山の描写として、雪崩の表現が見事。ミニチュア(雪山に落下する大きな岩)>おそらく、本当の雪崩の実景(爆薬で仕掛けた作為だろう)>その実景と、主役スタアふたりの合成画面>実際に雪を上から降らせた上に、主役コンビにふんしたスタントマンたちが雪に埋まる実写。
 この連携が見事。当時の解像度が低い白黒フィルムに見合った、見事な特撮ぶり。クレジットには登場しない、名もなきスタッフたちのテクは、数十年後の日米の特撮スタッフを、はるかに超える実力で。
 やはり特撮は、白黒に限る。カラー以降、いま現在の特撮では、一目で、ああ、これは特撮だと、わかってしまう。解像度の低かった頃の白黒映像では、よくできた特撮は、そのあわいが判断できないくらいで。
 この特集で、あと数回の上映あり。オススメ。


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by mukashinoeiga | 2011-07-25 01:13 | ルビルビルビッチ淑女超特急 | Trackback | Comments(2)