カテゴリ:島耕二と行くメロドラ航路( 18 )

島耕二「末は博士か大臣か」

 楽しい佳作。63年、大映東京。阿佐ヶ谷にて「稀代のエンターティナー! フランキー太陽傳」特集。
e0178641_71252.jpg プログラムピクチャアの範囲内で、だからホームランは打たないが、こつこつヒットを飛ばすイチロータイプ? 島耕二は、もっと評価されていい。
 知っている人は知っている島耕二。映画監督としては、8、9割?の高打率
 本作もたいへん楽しい。

 そして島耕二映画のお楽しみは、あの二人を、どう使うか、というおまけの楽しみがありまして。
 二度目の実の妻・轟夕起子は、きっと聡明で明朗な、ある種理想的な婦人だろう。
 実の息子・片山明彦は、頭はいいが、やや根が暗く、そういう意味で主人公と対比される役柄だろう。
 本作も、まさにその通りの楽しさで。

 フランキー境が、菊池寛にふんし、学友・船越英二や、芥川龍之介(ちょっと色悪めいているが、ほぼほぼジャストフィットな?仲谷昇)との友情物語が泣かせる。あるいは、大いに笑わせる。
 大映初代社長の伝記映画を大映が作る。文芸春秋を創設し、友人芥川の名を冠した文学賞を作る山っ気。
 この頃は、寄る年波か、あるいは劣化したゆえの涙目状態なので、チョットしたことで泪目(泪は、おそらく和製漢字なのだろうが、まさにドンピシャ)になる。本作でも、たいしたことない場面でも、泪目状態。
 そう、たいしたことない場面で、本領を発揮するのが、プログラムピクチャアの魅力なのだ。
 新妻・藤村志保と、戯曲「父帰る」の、読み合わせをする場面の楽しさ。
 やや、舞台調を模した画面に突如変化し、最初はたどたどしいセリフの志保(一応素人の役だから)が、だんだん女優のせりふ回しになっていく。
 シーンの要請によって、適切に歌舞いていく、つつましいが、やるときにはやるよ、という島耕二の楽しさ。

 ただ、執筆当時は「新しい芝居」らしい「父帰る」も、現在の視点からみると、相当古色蒼然たる紋切型で。
 これはある意味仕方がない。その後多数の模倣者が出れば出るほど、「原点」は陳腐化していく。「最初の開拓者」は、常にそのフォロワーたちによって、上書きされ、「原点の栄光」など摩滅していく。
 「父帰る」は陳腐化したが、本作は、今でも、楽しい。

 なお冒頭旧制とはいえ、中学生を演じるフランキーと船越は、相当無理やり(笑)。これを見たら、鈴木清順「けんかえれじい」の旧制中学生高橋英樹が、ナチュラルに見えるほど(笑)。

●島耕二・片山明彦の代表作
【KSM】風の又三郎 原作 宮沢賢治 監督 島 耕二 1940年(昭和15年)日活多摩川作品 著作権消滅 編集 KSM WORLD

●こんなところにも菊池寛が。しかし新人オーディションの拍付けとしては、なんという豪華なメンバー!
【KSM】坊っちゃん 原作 夏目漱石 1935年 宇留木浩 著作権解除作品 P. C. L映画製作所


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by mukashinoeiga | 2016-09-26 07:01 | 島耕二と行くメロドラ航路 | Trackback | Comments(2)

島耕二「総会屋錦城 勝負師とその娘」

 京橋にて。「アンコール特集:2015年度上映作品より」特集。59年、大映東京。
 大快作
 大映東京美術陣と島耕二の、安定感ある絶対のコラボの一本。ナイス。
 絶対の相性がある大映で撮って、主人公・志村喬の後妻に、島の実際の妻・轟夕起子、志村の弟子に島の前妻の子・片山明彦、という島ファミリーで参加、これでは傑作を作らざるを得まい(笑)。

e0178641_0265658.jpg総会屋錦城 勝負師とその娘(110分・35mm, 白黒)(フィルムセンターHPより)
1959(大映東京)役名:総会屋・内藤錦城(監)島耕二(原)城山三郎(脚)井手雅人(撮)小原譲治(美)仲美喜雄(音)大森盛太郎(出)志村喬、轟夕起子、叶順子、片山明彦、山本礼三郎、柳永二郎
城山三郎が前年に直木賞を受けた経済小説が原作。大企業の運命さえ操れる大物総会屋に志村が扮し、ライバル総会屋の銀行乗っ取りに対抗する中で、初めて一人娘への愛情に目覚める。

映画上のクレジットは、


叶 順子
川崎敬三
      志村喬
と、志村が三番目だが、実質志村主演、叶も、特に川崎も出番は、少ない。若手重視の宣伝は、しかし、営業上、やむを得ないか。
 大映男性脇役陣総動員の集団経済ドラマゆえ、ヤマサツ別ヴァージョンも見たかった気も、激しく、するが、メロドラマ志向の島版の本作も、十分楽しい。
 特に、カラーでも白黒でも、ほとんど真っ黒シーンの美しさ。
 本作は白黒だが、ほかの家族が花火に打ち興じている料亭の、別室で、轟と義娘・叶が、花火の明るさも隣室の明るさも無縁に、真っ暗の中、暗い話をしている。島=大映恒例の、真っ暗ショットのエクスタシー。
 そして、絶妙の雨降らし。
 石ころの地面に、はじめぽつぽつと降り始め、やがて土砂降りになる、その雨のグラデーションの見事さは、まさに職人芸。
 ラストの「一つ」、片山明彦が二階のバルコニー(昔の大きな日本家屋でよくある、物干し場、日本映画ではしばしば登場して、重要な男女の語らいの場となる)で、号泣する(それには様々な意味がある)ショットで、その背景のミニチュア、眼下の街並み、ネオンサイン各種、電車の通行など、その、あまりに見事なミニチュア背景に、片山の演技より、背景鑑賞に目を奪われるほどだ(笑)。
 そして、ちょっと卑怯(笑)な落ちまで、言うことなし。
 ただし、本作唯一の瑕瑾は、やはりラストの「一つ」、総会屋引退興行として、志村が浪曲をうなるシーンで、声が吹き替え。
 マキノ正博「鴛鴦歌合戦」黒沢明「生きる」などで聞かせた志村本人の喉で、下手でも聞かせてもらいたかった。多少下手でも、志村節の味で、やってもらいたかった。

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by mukashinoeiga | 2016-05-27 00:28 | 島耕二と行くメロドラ航路 | Trackback | Comments(0)

三枝源次郎「特急三百哩」

 阿佐ヶ谷にて。「映画探偵の映画たち 失われ探し当てられた名作・怪作・珍作」特集モーニング。28年、日活。
 昨年末の平日に見に行ったが、ガラガラ。一応、年末年始なんだから、もっと明るく楽しい特集をやればいいと思うのだが、こういうマニアックな特集は、お正月には、ふさわしくないのに。
 ま、もっとも自分自身を見ても、世間を垣間見ても、日本の正月風景というのは、ハレの要素はなくなり、すっかりケだらけと成り果て、結構ケだらけ、ネコはいだらけ、な、有様ではアルのだが。
 たとえば女優特集で鳴らした阿佐ヶ谷モーニングなんだから、オールスタア女優大集合映画大会というのでも、よかったのでは、ないかい。
 豪華女優おせち三昧(笑)。
 一方、それに対抗して、神保町シアターでは、豪華男優おせち三昧(笑)。来年の正月番組に、どうだす(笑)。

 というわけで、正月興行としては、しょぼんとマニアックな特集ではあるが、映画は、面白かった。

e0178641_12432685.jpg特急三百哩 <ラピュタ阿佐ヶ谷HPより>
1928年(S3)/日活大将軍/白黒/サイレント/62分
『特急三百哩』写真提供:プラネット映画資料図書館
■監督:三枝源次郎/原作・脚本:木村千疋男/撮影:気賀靖吾
■出演:島耕二、山本嘉一、瀧花久子、三桝豊、三田實、吉井康
鉄道マンによる鉄道のための鉄道賛歌。八六二〇、C五一、C五三など、昭和初期に活躍した機関車が次々登場する、鉄道ファン必見の一本。序盤の汽車同士のチェイスシーンは、手に汗握る緊迫感だ。後に「風の又三郎」(40)で映画史に名を残すことになる、島耕二監督が若手スターだった時代の貴重な主演作品という点でも見逃せない。

 主演が島耕二&瀧花久子
 戦後大映プログラム・ピクチャアを初めとして、コンスタントに快作を量産した名監督の島。俳優廃業、監督専念は、吉と出た。
 演技的には、約90年前とはおもえない、現代でも通用するナチュラル演技。サイレント期といえば、主に時代劇で、メンタマむき出しの「劇画調」顔技が主流だが、現代劇では、意外にも、現代につうじるナチュラルさも、数多くあり、愛嬌ある島の演技は、時代を超えている。
 ただし、若さとガラと(当時としては)ガタイのよさで主役を張ってはいるが(本作には当時の国鉄マンが多数エキストラ出演しているが、一般日本人の顔の貧相と、ガタイのなさは、否めず)、年をとるとスタアオーラもないので、俳優としては、味のある脇役を目指さざるをえず、そしてまた戦後日本映画は、味のある脇役は多士済々。
 監督業になって、正解でした。

 瀧花久子。
 ぼくたちは、戦後日本映画で、この人が、気のいい、あるいは気の弱った、あるいは少々意地悪な、おばあちゃん、母親役を演じるのを、何十本も見てきたので、本作で、番茶も出花の若いころの彼女を見ても、ついつい、顔のアップで、おばあちゃんの面影を、探してしまうのだ(笑)。
 これが、若いころからおなじみになった若手女優が、年をとったとしたら、そのオバちゃん顔に、若いころの面影を探してしまうのと、好一対?で。
 悲しいサガだが、よくよく見てみれば、角度によっては(笑)、かなりの美人顔に見えなくもない彼女にも、ついつい老醜の痕跡を、ありえない話だが可逆的に、捜し求めてしまう。
 いかんなあ。まだまだ映画を映画として、見切れていない(笑)。
瀧花久子、当時の水準的なヒロイン像を、可も不可もなく演じ、年をとれば、地味な脇役に退いて行く。まさに番茶も出花。

e0178641_12435461.png さて映画の内容だが。まさに鉄ちゃん垂涎の鉄シーンがごっそり(笑)。
 若手運転手・島が、運転席窓から顔を出したまま、トンネルに突入するのを、正面から、撮っていて、すすだらけにならないのか、心配したり、4車線?の鉄路を上下に行き来する複数車両をひとつのショットにタイミングよく納めたり、圧巻の、カーチェイスならぬ、トレイン・チェイス。
 当時としては通常か、5・6両編成の特急が、行く。その後ろを暴走機関車(単車だから、通常編成の特急よりスピードあるという設定か)が追突寸前。そのさらに、後ろに、暴走機関車を止めようとする島運転手の機関車(単車)が追尾。
 つまり編成車両列車のあとを、二台の機関車のみが追っていく、という、それをワンショットで撮るという、今の安全第一主義のJRでは、とても出来ない、離れ業。さすが「御後援 鐵道省」だけのことはある。

 後半、鉄道とは離れ、単なる三角関係メロドラマになっていくのは、やや残念だが、クライマックス、夜行列車を出発させる島運転手に、子供が、今、島運転手の新妻(滝花)が、悪漢に手篭めにされている、と通報。苦悩する島田が、いったん発車した夜行列車を止める権限は、自分にはない。
 運転あるのみ、その運行がいかに止まるか、というサスペンスの解決方法が、ちょっと、面白く、立派に鉄道賛歌になっているところが、脚本の勝利。

 なお、本作については、★[復元報告]特急三百哩 よみがえった幻の鉄道映画|映画保存協会(FPS)★

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 本作はありません。致し方ないことだが、戦前作はほぼフォローなし。まあ、当たり前だ。

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by mukashinoeiga | 2016-01-03 12:56 | 島耕二と行くメロドラ航路 | Trackback | Comments(0)

島耕二「誘惑からの脱出」

 神保町にて。「にっぽん男優列伝~大映篇 キラリと光る優男たち」特集。57年、大映東京。
 神保町シアターが、珍しく、柄にもなく?レアモノを4本も、しかも同じ週に上映。とうとう1本は、見逃した。

お兄哥さんとお姐さん<神保町シアターHPより>  ←見逃した
S36('61)/大映京都/白黒/シネスコ/1時間24分
■監督:黒田義之■原作:川口松太郎■脚本:辻久一■撮影:本多平三■音楽:小川寛興■美術:内藤昭■出演:勝新太郎、万里昌代、田宮二郎、小林勝彦、小桜純子、志村喬、稲葉義男、毛利郁子
上州で謀略を巡らす熊の沢一家と争う、昔気質の玉村一家のために、渡世人・三次郎(勝)が立ちあがる。『悪名』でブレイク直後、絶好調の勝新の威勢の良さに胸がすく股旅時代劇。大映時代の田宮には珍しい時代物出演で、勝との息の合った共演は貴重。

 で、本作。

誘惑からの脱出 <神保町シアターHPより>
S32('57)/大映東京/カラー/ヴィスタ/1時間31分
■監督:島耕二■原案:原田光夫■脚本:須崎勝弥、島耕ニ■撮影:高橋通夫■音楽:大森盛太郎■美術:高橋康一■出演:根上淳、川口浩、若尾文子、角梨枝子、高松英郎、月田昌也、苅田とよみ、花布辰男
拳銃の名手の兄(根上)が刑期を終え出所し、弟(川口)と共に暮らすうち、弟が悪の道に誘い込まれていく…。知的でクールな二枚目として人気を博した根上淳が、命を賭して弟を守る兄を熱演する。弟の恋人役の若尾文子が健気な愛らしさで花を添える。

 で、50年代の大映の(別に大映に限らないのだが)文芸モノ寄り(ないしメロドラマ寄り)犯罪モノの、しまりのなさ、ゆるさから、本作も、逃れられていない。
 しまりのないモト犯罪者・根上淳は、ホントにトーシローと区別がつかない描写だし、悪の親分の、これまたしまりのない、チカラ弱い高松英郎。まるで宝塚みたいな、お子様感があふれている。歌劇の宝塚なら、何の問題もないのだが。
 愛らしい若尾文子も、何のしどころもない役で。かわいそう。
 ただ前半は、夜はキャバレーづとめの同僚に忠告していた彼女が、生活苦からその同僚の紹介で、キャバレーに。清純派と妖艶派と、二つの顔を持つあややの、変遷を一本の映画に凝縮して、その将来を予告するかのよう。
 も、相変わらずのやんちゃ感(若いときの彼にしか出せないアジ)川口浩の、楽しさではあるが、これまた、何のしどころもない役。
 ぬるい、いい加減な脚本、しまりのない演出。
 なんだけど、例によって、大映美術陣の、しまりも緩みもない、セット、情景が絶美(笑)。

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◎おまけ◎Anchin to Kiyohime 1960 [retro-trailer]

 最後に、ちょこっとだけ島耕二監督の後姿が。ホントの少し。

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by mukashinoeiga | 2014-08-15 06:22 | 島耕二と行くメロドラ航路 | Trackback | Comments(4)

島耕二「都会という港」

 阿佐ヶ谷にて。「千客万来にっぽん暖簾物語」特集。58年、大映東京。
 ナイス。まあ、そこそこ凡庸なコメディから出発しているのだが、お邪魔ビンラディンさん言うところの、大映そこそこコメディの素晴らしさ。
 大坂の船場の綿布問屋の長女・山本富士子の、老舗再建を描きつつ、その瓜二つの妹(山本富士子当然の二役)の、駆け落ち問題も、扱う。
 大輪の花のように華やか、かつゴージャスな美貌、そして天然コメディエンヌの生まれ持った、愛くるしいおかしみ、山本富士子の絶品。山本富士子が歩く大阪の街、その背後に「富士フイルム」のネオンサインさえ、ほほえましい(ただし、本作は絶美な大映アグファカラー)。
 有り勝ちなドラマを軽々と展開、その楽しさ。そして、ある意味予想の範囲内とはいえ、<驚きの結末>が、ドラマの<オンナ前>を、さらにアップ。そのオドロキを体現する興信所の探偵・菅原謙二も、図々しさゼッコーチョー。いいなあ。
 山本富士子の「ちんまりとした父」小川虎之助も、いつもながら楽しい。出てくるだけで、ニコニコ。
 のちのTVドラマで、近衛十四郎の相方として爆発的人気のコメディ演技とは真逆の、<暗い二枚目>時代の品川隆二。まるで監督島耕二の役者時代の木村荘十二「純情の都」 (感想駄文済み)で、自身が演じた色悪を髣髴とさせ、面白い。

 島耕二演出もゼッコーチョー。
1 山本妹の家出を菅原謙二に語る、山本姉と虎之助父の回想シーンが、世界回想シーン史上?でも、一二を争う?POPさ。タランティーノなんてメじゃないってーの。しかも、本当は山本姉の回想なハズなのに、父・虎之助に主に語らせる、という、どこまでもの、トリッキーぶり。
2 菅原の、ちんけな雑居ビルのちんけな興信所事務所、山本妹のアパートなど、別の島耕二大映映画でも特徴的だった、ほの暗いシーン、時には人物も真っ黒、顔も表情もわからないような暗さ、その演出の確かさ、華やかさ。
 そう、真っ黒なシーンでも、島演出、華やかなのだ。大映美術陣の重厚かつ華やかな美術、アグファフィルムの重厚かつ華やかな艶めいた発色。真っ黒な暗色のシーンでも、格段な華やかさは演出できるのだ。素晴らしい。
 アグファカラーのすばらしさは、小津だけじゃないぞ。大映、なかんずく島耕二のすばらしさは、どうだ。
(といいつつ、ご本家ドイツ映画のアグファカラーをほとんど見ていないのが、残念)
 ちなみにこの興信所事務所の雰囲気、何とはなしに「純情の都」の、チバサチのオフィスと、なんとなく似ているのが、にやり。

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by mukashinoeiga | 2013-12-30 23:52 | 島耕二と行くメロドラ航路 | Trackback | Comments(3)

木村荘十二「純情の都」

 京橋にて。「よみがえる日本映画-映画保存のための特別事業費によるvol.6東宝篇」特集。33年、P・C・L。
 P・C・L(写真科学研究所時代のP・C・Lとして)自主製作開始第2作、という、まさに、うぶな、初期初期な東宝映画。
 同じ監督の同年のP・C・L第1作木村荘十二「ほろよひ人生」に、比べると、だいぶ複雑?な物語と、なった。
 朝のアパートの一室から、映画は始まる。
 モダンガアル竹久千恵子は、ベッドの中でパジャマ姿。タバコをスバスバのんだり、新聞を読んだり、のんびり。
 いっぽう、割烹着姿でかいがいしく朝食を作る千葉早智子。
 特に性的関係ではないようだが、女性二人のルームメイト。かっきりと、擬似性的役割は出来ているようだ。
 なんだか、気分は新婚夫婦。
 世慣れた、経験豊富なモガの竹久、純情なチバサチ。竹久は、チバサチを「ぼくの奥さん」?と、呼ぶ。
 この時代ですでに、自分を「ぼく」と呼ぶ女性がいるのも、面白い。
 ここに、ふたりの友人たち、いわゆる愉快な仲間たちの、藤原釜足(まだまだやんちゃ青年期の釜足なのが、新鮮!)、戦前東宝アンパンマンこと堤真佐子、おなじみデブのコメディアン岸井明が朝食に乱入。
 快調なコメディーの始まり始まり・・・・というのには、全体に演出が、もっさり。
 以下、チバサチは会社に出勤、ルームメイトであるだけでなく、会社の同僚タイピストでもある竹久は、会社をサボり、釜足、堤、岸井のお気楽トリオと、遊びまくる、並行描写が、きわめて、もっさりしているのが、残念。
 しかし、彼らモダンガアルたちが遊びほうける「スポーツランド」(浅草松屋の屋上遊園地)が、シンプルかつ面白そうな電動遊戯の数々で、いかにも昭和初期の、都市型屋内レジャーランドの好趣を伝えていて、楽しい。
 さて、純情チバサチは、同僚の色悪・島耕二、社長のスケベオヤジ・徳川無声の毒牙に、迫られ、散々。セクハラ、パワハラが、あまりに全開過ぎて、逆に、可笑しすぎる。
 以下、後半は、チバサチを、ひそかに思う好青年・大川平八郎(明治製菓専属?の広告図案家)や、振付師・釜足、ダンサーのアンパン真佐子が、携わる明治製菓の、ショー喫茶?のオープンショーと、チバサチが、色悪・島耕二にロウラクされる描写が、これまた並行描写されるが、またまたもっさりしているのが、ちょっとつらい。
 しかも、いやいや車に、半強制的に乗せられたチバサチ、車を降りたとたん、なぜか多幸感にみちた笑顔全開の郊外散策デート、相思相愛のカップルのような描写が、まったく違和感、つながっていないぞ。
 そして、アパートに戻り、これまた仲のよいカップルのように、嬉々として部屋に島耕二を迎い入れるチバサチ。
 その結果、島に、無理やり犯され?涙にくれるメソメソ振り。
 この二転、三転する描写が、不可解。下手なだけか。しかも、犯し犯される描写が、戦前映画ゆえ、まったく、ないので、余計、不思議な気分となる。
 まあ、映画作品としては、まったく力不足だが、当時の時代風俗、気分、風景の楽しさは、やはり、面白い。
 しかし、純情可憐なヒロインが、あっさり色悪に陵辱される、身もフタもない結末が、娯楽映画としては、異色。原作の「恋愛都市東京」が、ムーランルージュ新宿座の演劇(いわば、当時としては、今で言う小劇場的な異色作といった理解でいいのか?)だったゆえの、「東宝映画」としては、大暴走か。
 「明るく楽しい」「娯楽映画」東宝の、まだ、慣れない?ゆえの初期不良?

 竹久千恵子は、当時時代の最先端モダンガアルを柄に合って、演じているのだが、主役オーラは、ない。最先端であるがゆえに?、あるいは、柄だけで演じているがゆえに、逆に古びてしまったような。なんだか、華が、ない。
 チバサチは、いつの時代でも愛される純情可憐娘ぶりが、かわいい。
 青年・釜足も、楽しい。ショートヘアの堤真佐子も、一見お気楽なダンサー役だが、島耕二と、かつていろいろあったらしく、という陰影を一瞬の演技であらわしていて、ナイスでキュート。
 そして、特筆すべきは、まだ若かろうに、ヒヒオヤジを嬉々として演じた無声、後に映画監督となる島耕二の俳優振りが、たっぷり見られる点か。
 監督作島耕二「麗春花」(感想駄文済み)でも、中年の父親役を好演した島が、まだ若く精力ギンギンの、容赦ない色魔を、演じる。なかなか俳優としても、素晴らしい。その、いかにも酷薄そうなマスクも、いい。
 その彼がなぜ俳優をやめ?監督業に専念するようになったのか。もっと、俳優兼業で活躍してもよかったはずなのに。
 推測するに、戦前としては、あまりにリアルで酷薄な悪役専門にならざるを得ないマスク・演技だったために、しゃれにならず、需要?がなかったというところだろうか。他に理由があったのかもしれないが。
 細面で、あまり贅肉がない顔つきは、実子・片山明彦の面影もあるが、父はワイルド肉食系、片山は草食系という。親子でも、キャラは違うのね。

★東京昭和八年。丸の内の海上ビルの明治製菓売店と東和商事。 - 日 用 帳★
 本作、本作ロケ地、その他本作回りについての、楽しい記事。なお、このブログ掲載の場面写真は、かなり暗いが、実際に映写された映像は、もっとクリア。しかし、このブログのほか記事も、楽しそう。

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by mukashinoeiga | 2013-11-30 01:37 | 島耕二と行くメロドラ航路 | Trackback | Comments(2)

島耕二「渇き」

 神保町にて。「監督と女優とエロスの風景」特集。58年、大映東京。
 このところ、すっかりご無沙汰、久しぶりの神保町シアター。だって、このところ、ぼくにとっては既見作ばかりだったもので。
 結婚6年目、倦怠期の夫婦、佐分利信と山本富士子、って・・・・、おい!
 本作は58年、6月公開とのこと。ところが、なんと小津安二郎「彼岸花」では、友人・有馬稲子の父・佐分利信を、だます娘世代の山本富士子。「彼岸花」は、「渇き」三ヵ月後、同年9月公開とのことだ。
 まあ、いろいろな役を演じる、それが役者といってしまえばそれまでだが、ちょいと極端だあね。
 「彼岸花」では、父親世代として余裕の眼を、娘世代の山本に向けていた佐分利も、本作では、酔っ払って、妻・山本富士子に、ねっとりと欲望の目を向ける。でも、「あなた、およしになって。女には、準備というものがありますもの」と、これも久しぶりでまんざらでもない山本富士子、別室でその準備を、うきうき整えて戻ると、当のサブリンは、待ちくたびれて高いびき。

 あるいは、他社では、とっくに人妻女優の山本富士子を、行き遅れではあるが、いまだきゃぴきゃぴの娘として扱う、小津の、女優感覚といいますか。これは小津の後輩、しかも小津「東京物語」リメイクを画策している山田洋次「男はつらいよ」シリーズが、言っちゃ悪いが、常に、他社のお古女優(失礼)を、ようやくマドンナに迎えるという、時代感覚に引き継がれている、松竹の伝統芸なのかしらん。妄言多謝。

 「彼岸花」では、ちょいと嫁に行き遅れの、しかし娘。本作では、倦怠期の、佐分利信の妻。若い大学生・川崎敬三にメロメロとなり、ついには婚外妊娠。
 こういう、佐分利・山本・川崎の三角関係メロドラマには、まったくどうでもいいのだが、まあ、水準的なメロドロマ(ドロドロな関係のメロドラマは、当ブログでは、メロドロマと呼んでいる、って、本当かい)というしかないが、なんと、本作は「彼岸花」どうよう、とても美しいアグファ・カラー! しかも「彼岸花」のスタンダードに対し、本作はシネスコ・サイズ。
 ああ、やっぱりカラーはアグファに限るなあ、とため息。撮影・小原譲治の美しい映像。
 そして、島耕二は、ほの暗い照明を多用して、人物を真っ暗に映すのが、やはりスキなんだねえ。ほとんど真っ黒なシルエットに、一部顔が、光を浴びて、輝く。山本富士子の美貌と、黒は黒ではっきり写るアグファ・カラーの素晴らしきコラボ。そして、そのアグファで最高に映える、大映美術も、グッド。
 男女が密会する、ほの暗い喫茶店が多用されるのも、色事の雰囲気作りもあるだろうが、アグファカラーの、くっきりとした黒を出すためではないか。
 川崎敬三の友人大学生に、まだ柴田吾郎時代の田宮二郎。さわやかな川崎もいいが、どうせメロドロマなら、ねっとり田宮で、見たかった。
◎追記◎小津は、確か、大映から山本富士子を借りるに当たって、やはり山本の華やかさはカラーでこそ、と自身初のカラー映画「彼岸花」を撮った、ということのようだ。ということは、山本富士子こそ、ザ・アグファカラー女優というべきか。冨士フィルムは、お呼びでなかったのね(笑)。「あたしにも、写せます」でも、「あたしを撮るのは、十年早いわよ」というところか。
◎追記◎サブリンが宴席に行くと、上座に座るは、大山健二。もちろん戦前松竹で、何十回も共演したふたり。大山健二は、この頃、大映専属の脇役、いい年のオヤジふたりのツーショットに、こっそりうれしがるのは、戦前松竹ファンのみの特権?(笑)か。

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by mukashinoeiga | 2012-03-05 00:09 | 島耕二と行くメロドラ航路 | Trackback | Comments(0)

島耕二「女めくら物語」

 阿佐ヶ谷にて。「現代文学栄華館-昭和の流行作家たち」特集。65年、大映東京。
 若尾文子独特の、つややかなあでやかさが楽しめる、女性メロドラマの佳作。1月10日まで上映中。
 つややかも、あでやかも、漢字にすると同じ「艶やか」「艶やか」。これこそ、若尾文子。映画全体が、若尾にスポットを当てて、若尾に奉仕しているかのような。そういう大映プログラム・ピクチャア。
 ヒロインは、十六の年に、にわかめくらとなる。修行して、あんまとなり、中村鴈治郎・倉田マユミ夫婦経営の熊田マッサージ院に、住み込み。このマッサージ院が、花柳街に近いもので、料亭の酔客が中心になる。ということで、美しいあんまである若尾はセクハラの嵐に。

 そういう中で、一服の清涼剤とも言える、青年実業家・宇津井健と、運命の出会い。この宇津井が、いかにもさわやか若社長。若尾はたちまち一目ぼれ、いや、目が見えないので、一目ぼれとは、違うか。と、ベタなボケでした。
 結局一年くらいのあいだに、たった三回しか出会えない、若尾は、一回目で恋に落ち、二回目で、一緒に死ねるなら本望といい、三回目で、自分の全財産30万円を、男にあげて、これで再起を図って欲しいという。一途に、わき目もふらずに、男を恋い慕う、おんな。いや、わき目も、ないか。
 ところが、この、宇津井健が(笑)。チョー好青年社長。さわやか。明朗。やさしい。
 ところが。自分のほうから「電話するよ」「6時に迎えに行くよ」といいながら、そのつど何ヶ月もなしのつぶて。確信を持って自分から、若尾に約束するのに。
 誠実でさわやかな男が、つぶらな瞳で、自分からした約束を、決定的に、果たさない。しかも、何度も。
 それをいじらしく、待つおんな。
 まあ、古典的っちゃ、古典的だが、まず、ケータイなどが発達した現代ではありえない、すれ違いメロであり、いや、ケータイがない時代でも、たとえば戦争とか、そういう巨大な<言い訳>でないと、通用しないメロドラマだろう。
 いささか時代後れな、バカ・メロドラマ(と、いってもいいレヴェル)。まあ、原作が舟橋聖一だからねー。
 だが、盲目であるがゆえの(文字通り)引け目から、全てにおいて、積極的に宇津井に迫れない、若尾のいじらしさ。そして、いうまでもない、若尾の美しさ艶やかさ、この二つが、かろうじて、このメロドラマが、バカバカしさに落ちいるのを、すくっている。
 そう、若尾は、宇津井に、一目会いたい、恋焦がれる。しかし、盲目であるがゆえに、その「一目」を、最初から、決定的に、封じられているのだ。おそらく堅実な演出の島耕二ではなく、この時期の大映なら、せめて三隅なら、この<反時代的なメロドラマ>を、全うしえただろうに。
 そして、若尾文子の素晴らしさとともに、宇津井健の絶対的スタア演技を賞賛したい。誠実な青年の、かなり不誠実な行為を、イヤミにならず演じられるのは、むしろ彼が不誠実な行為をすればするほど、その美質が光り輝く。
 この当時がおそらく最後だろう、今ではもちろん反時代的な、小林信彦言うところの<無意識過剰>ゆえのスタアの輝き。

 盲目(実際にも、恋にも)の若尾に対比されるように表れるのが、渚まゆみ。目明きなのに、あんまとなり、その若さと美貌を生かして、やりたい放題。人の金は平気で盗むわ、色目を使って、中村鴈治郎から、金をせびり取るわ。この渚まゆみのあばずれぶりが、超キュート。これじゃ、男はみんな、カノジョの言いなりだわ。奥さんが倉田マユミなら、このキュートな渚まゆみに、くら替えする鴈治郎、無理はないなあ、許す。
 この映画の鴈治郎が、ぼくが見た中では、やや衰えた顔で、ちょっとショック。衰えたゆえか、演出がアレだからか、この喜劇的人物から、喜劇性を一切剥奪したのは、鴈治郎ファンとして、解せない。

 これ以外にも、特記すべきなのが、大映美術。白黒映画では、絶対の堅実な美を示す大映美術陣が、カラーで、町全体を再現するとなると、店みせ、路地、坂道の階段など、何かしら、はなやいだ感じになるのが、面白い。こういう町の細部、全部を、大セットに再現するのは、まるで巨大なプラモデルを作るようで、楽しいだろう。そういう華やかさが伝わってくるかのよう。

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by mukashinoeiga | 2012-01-08 09:24 | 島耕二と行くメロドラ航路 | Trackback | Comments(0)

島耕二「東京のヒロイン」森雅之轟夕起子香川京子

 京橋にて。「映画女優 香川京子」特集。50年、新東宝。
e0178641_218497.jpg 香川京子デヴュー作「窓から飛び出せ」、「君と行くアメリカ航路」の同年作。監督は島耕二、美術は河野鷹思は同じ、製作が野口久光、野口も映画ポスターで鳴らしたデザイナー、やはり戦前松竹の映画ポスター・デザインの河野を美術に起用とは、面白い。
 「窓から飛び出せ」で四人の子持ちを演じた、轟夕起子が、本作では、まだまだオールドミスには間がある独身娘、というのは、ちと、きつい(笑)。さらに、カノジョは、かなりデブっていて、劇中でも、森雅之が書くカリカチュアは、かなりのおでぶちゃん。でも、そのハンデを乗り越えて?その、エンタティナーぶりは、素晴らしい。
 つられて相手役、森雅之も、かなり無理して?ショーアップしてのはしゃぎぶり。ちょと無理がありつつ(笑)、三枚目路線のアウェイで(笑)、健闘しております。いや、よく、やっておる(笑)。

e0178641_2185223.jpg そして、のちには文芸路線一筋の島耕二も、ジョン・ランディスか、というくらいのおバカ路線を邁進。
「君と行くアメリカ航路」でも、チンピラ役で出演の、潮万次郎が、本作では、ジョン・ベルーシ並みの珍演・暴演。のちの、渋い大映専属脇役ぶりからは、信じられない暴発ぶりで(笑)。
 勘違いから、轟・森がそろって吸い寄せられていく、バー「ランボー」。アルチュール・ランボー好きゆえに命名された、伊達里子がマダムのバー。しかし、伊達マダムは、アル中。常連の笑い上戸・潮万次郎もアル中。アル中乱暴。ダジャレか。
 潮万次郎、モリマとトドロキが、いい雰囲気になるたびに、ことごとく邪魔をする。「君と行くアメリカ航路」に続く、斎藤達雄の珍演も、お上品に見えるほどの、暴走ぶり。
 港の水辺で浮かれる潮万次郎、そうなると、当然、お約束で、水にはまってしまうのだが。
ふつう「助けてー! おぼれるー!」
 と、言うところ、で・・・・。


「助けてー! 酔いがさめちまうー!」
 アル中の鑑や(笑)。 

 「窓から飛び出せ」「君と行くアメリカ航路」どうよう、ちいさな人形を使った、ほのぼのギャグも、健在。香川京子も、可愛らしい。トドロキとのガーリーな姉妹シーンの親和性、愛らしさ。このセンスは、このトリオのセンスは大林宣彦「時をかける少女」に、受け継がれるものか。あの映画でも、ちいさな人形のクローズアップがありました。
この三本、島耕二・香川京子・河野鷹思トリオの三部作と、呼びたい。
 この日の次の回、成瀬巳喜男「銀座化粧」も、美術・河野鷹思、気になりつつ、何回も見ているので、パス。
 なお、この特集、始まったばかりということもあってか、平日昼の回は、満席に近い。土日のレアもの・人気作は、ことによったら、札止めもありか。
●追記●たいへんな間違いを犯してしまいました(笑)。
 上記・潮万次郎は、すべて、「潮万太郎」の誤りでした。こんなこと、間違えるなんて。ボケもそうとう進行しておるな。
 たぶん、このミスの経緯は、きわめて簡単です。文中、ジョン・ランディス、ジョン・ベルーシと、ジョンを連呼していたため、潮・万・万・・・・、という脳内検索のときに、ふと、ジョン万次郎の名が、飛び込んできたのです! かくして、潮万次郎。ああ、お粗末。すべての潮万太郎ファン、ならびに弓恵子ファンの皆様に、お詫び申し上げます。
●再追記●上記「伊達里子がマダムのバー。しかし、伊達マダムは、アル中。」の、バーのマダムは、入江たか子の間違いでしたね。上映中は、あ、入江たか子だ、とわかってはいたのですが、駄文を書く頃になると、ころっと、忘れてしまう(笑)。かつての可憐な美人女優も、アルコールが入った躁状態を珍演するも、痛々しさが、先に立つ、不徹底ぶり。
 ちなみに、この際、書きもらしたことを、付け加えると、香川京子、かわいいんだけど、そして本作では、通常以上に、異常に、可愛いんだけれど、お鼻が、やや、大きい。そして轟夕起子は、ガタイも、ひとみも大きいが、お鼻も大きいのね、森雅之が、おふたりは姉妹と、最初からわかりましたよ、というもむべなるかな。
 映画におけるベスト・シスターの一組。
●再々追記●ぴくちゃあ氏の「ぴくちゃあ通信」を勝手に引用すれば、

>神保町シアターにて『東京のヒロイン』(新東宝1950:島耕二)を見る。「男優・森雅之」特集の1本。1200円。
 轟夕起子が雑誌編集者に扮して、東京の街を颯爽と闊歩するお話。しかし、もうかなり太ってしまった彼女をヒロインとするにはちょいと苦しい。妹役の香川京子のほうが適役である。
 森雅之との典型的なボーイミーツガール映画ではあるが、話の展開がモタモタしている。オリジナル94分から30分もカットされた63分という短縮版にもかかわらずである。
 おもしろいなと思ったのが、酔っぱらいに扮した潮万太郎。笑い上戸でその笑いがわざとらしく感じられた。しかし、何度も登場し、森雅之と轟夕起子との喧嘩シーンまでつきまとう徹底ぶりを見せられては、大笑いするほかない。
 潮万太郎の快演ぶりと、島耕二のラブコメディ演出手腕に拍手!(「ぴくちゃあ通信」2009年、引用終わり)
 
 うーん、太宰治の遺作を原作にした島耕二「グッドバイ」を、短縮版「女性操縦法」としてしか残していない、ずさんな新東宝である。平気で30分短縮したヴァージョンを、作ってしまう。しかし、オリジナル版を楽しんだぼくも、これが30分短縮された版を想像することが出来ない。 それでも、面白いのか、それは、すばらしいことだろう。見比べてみたい。


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by mukashinoeiga | 2011-11-11 23:38 | 島耕二と行くメロドラ航路 | Trackback | Comments(0)

島耕二「君と行くアメリカ航路」香川京子灰田勝彦斎藤達雄

 京橋にて。「映画女優 香川京子」特集。50年、新東宝。
 斎藤達雄絶品。三十年ぶりにアメリカから帰国した、キザでフレンドリーな絵描き紳士。会話に英語を混ぜて、大げさな身振りは、お約束。
e0178641_1983537.jpg 昔住んでいた横浜の洋館、そこをたずねれば、斎藤達雄子供時代の屋根裏のおもちゃ部屋、そこに間借りしているのが、風見章子?(いや、このひと、イマイチ、あいまいで、確信持てず、乞うご指摘)、香川京子の姉妹。香川はデザイナーの卵、そのデザインを、師匠の伊達里子?沢蘭子?に、盗まれる。
 香川の姉は、香川がミシンでお針子をしている洋品店の、地下のバーで雇われマネージャー。このバーのバーテンが<灰田勝彦似の男>、リクエストされて灰田勝彦のヒットを何曲か歌う。もちろん、演じているのは灰田勝彦本人だ。

 この映画、一種のヴァラエティー・ショーの部分もあって、実はパートカラー。灰田の何曲かの歌唱、暁テル子(当時のヒット曲「ミネソタの卵売り」歌手)の、これまた何曲かの歌唱は、そのつど、カラー映像として、挿入されていたらしい。らしいというのは、現存しているのは、プリントの白黒部分のみなので、カラーの場面になると、画面は、とたんに黒味のみ、白味のみになり、歌声だけが聞こえる仕組みの上映だ。
 当時は貴重な、最先端のカラー、いわば目玉映像が、失われていて、ラジオ状態となる。先端の技術は、先端であるがゆえに?、その実験映像は後世に残らない、かえってローテクのほうが後世に残り易い、ということか。日本としては当時先端だったカラー映像が、かえって、先祖がえりして、更なるローテクである、ラジオ状態で、音だけしかわれわれは提供されない、というのも、わかり易い歴史の皮肉である。
 特に暁テル子歌唱パートは、水着ファッション・コンテストの余興で歌われるものであり、合間合間に、1930年代からの水着をモデルさんが着ている、ショー形式。戦前の女性水着は、まあ、ドレスみたいなもので、戦前の水着は、白黒で撮られているから、今回の上映プリントでも、残っている。
 ところが、戦後の肌の露出が増えてくるカラー映像が、残っていない!
なんとも惜しいことに<1960年の水着>も、カラーだから、白味のみ! だってあなた、1950年の時点で、考えられた<1960年の水着>の、ファッションですよ。見たいじゃないですか(笑)。
 しかも美術が島耕二「窓から飛び出せ」と同じで、河野鷹思! 戦前からのモダニスト、河野の発想する(たぶん)10年後のファッション、相当モダンなはずで。うー、実に惜しい。
 たぶん河野が主導したデザインと思うのだが、「窓から飛び出せ」、本作、そして、このあとに書く島耕二「東京のヒロイン」の、実写の合成、前景と背景の合成センスの、素晴らしさ! 前景のごちゃごちゃした繁華街、あるいは駅前などと、後景の月夜の夜空の、合成センス。あるいは、本作での、水着ショーのプールの前景と、後景の青空の中の高層ホテル(青空といっても、白黒だけど)の、ほどのよいセンス。
 戦前からの名グラフィック・デザイナー河野のセンスに、にやにやするばかり。
 河野鷹思の映画美術仕事など、多分余技で、あんまり本数はないと思うが、それでも、相性抜群かと思われる島耕二の何本かが、あるのは、幸せ。それだけに、<1960年の水着>。見たかった(笑)。
 香川の姉のバー、そこにたいへん大きなポスター。島、河野、製作野口久光!のトリオの同年作「東京のヒロイン」の、巨大ポスターだ。さらに巨大な横長看板が、繁華街のガード下にもあり、島耕二「君と行くアメリカ航路」の中で、数ヵ月後公開の島耕二「東京のヒロイン」が、バンバン宣伝されている。監督・島耕二、主演・轟夕起子と。豪快ですらある、自己宣伝しかもギャグでもある。
 水着ショーで、司会者は「では、暁テル子さんに続きまして、この映画の主題歌を、灰田勝彦さんに歌っていただきましょう」とアナウンス、メタフィクションか(笑)。灰田勝彦が登場して歌う、それを観客席で見る<灰田勝彦似の男>の、腐りっぷり、という落ち。
 なんだか、現代の三谷幸喜「ステキな隠し撮り」より、60年前の島耕二の、アメリカン・ジョークのほうが、うまいセンスだなあ。現代の三谷幸喜のほうが、ローテクで。(なお「ステキな隠し撮り」は★今、そこにある映画★に感想駄文あり、とこちらも、宣伝で)

 灰田勝彦がキャッチ・ボールするシーンに、さりげなく彼のヒット曲「野球小僧」のメロディーが低く流れる、その音の小さい、センスの良さ。そのあとに展開される、コミック調のアクションもいい。今回の香川特集で見た島耕二=河野鷹思の3本、ちょっとしたアクションのセンス、ギャグのセンス、ともによく、うれしい。このあと、いわゆる文芸映画のほうにシフトしてしまう島耕二の、モダンさ、センスの良さが光る。   
 香川京子について言えば、まあ、可愛らしい。特に、夜起きだしてデッサン画を描く香川の顔が、初々しい美少女ぶりで。新鮮な美貌。


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by mukashinoeiga | 2011-11-11 06:07 | 島耕二と行くメロドラ航路 | Trackback | Comments(2)