カテゴリ:大映京都学校 森一生佐( 18 )

森一生「螢(蛍)の光」

 京橋にて。「日本の初期カラー映画」特集。55年、大映東京。
 まだまだ高校生役の若尾文子主演メロドラマ。ただし俳優序列は、船越英二、菅原謙二に次ぐ三番目。
 高3で退学して家業を継ぐが、下記紹介で能装束となっているが、実際に映画で作っているのは、女性向けの振袖。
 おそらく、原作の能装束では一般的にはなじみがないということで、振袖に変更されたものと思われる。
 実際、若尾文子が着る和服の絶美に、ため息のカラー映画

 内容は、はっきり言ってお粗末。

螢の光 (76分・35mm・カラー) <フィルムセンターHPより>
戦後初の百万部雑誌となった「平凡」連載の川口松太郎の小説を映画化。両親に死に別れ、妹の為に学校を退いて縫箔ぬいはく(刺繍と金銀の箔を併用した能装束)の仕事を継いだ玲子(若尾)だが、実母の出現、自動車事故、親友との三角関係などの難事に次々と巻きこまれ…。
'55(大映東京)(監)森一生(原)川口松太郎(脚)笠原良三(撮)長井信一(美)髙橋康一(音)伊福部昭(出)菅原謙二、市川和子、若尾文子、船越英二、矢島ひろ子、八潮悠子、東山千榮子、三宅邦子、滝花久子、潮万太郎、直木明、丸山修
◆イーストマンカラー
米イーストマン・コダック社は、1935年に世界初の多層式カラーフィルム「コダクローム」(外型反転)を発表。主に8mmや16mm映画で用いられた。1950年には35mm映画用で内型ネガ・ポジ方式の「イーストマンカラー」を発表し、以後テクニカラーに取って代わりカラー映画市場の中心を占めていく。日本では大映が意欲的に研究・採用し、これに合わせて東洋現像所(現IMAGICA)が1953年、イーストマンカラーの現像処理工場を完成させる。

 高3の姉が退学して、高2妹を養う、って、年齢差が近すぎないか(笑)。せめて、二、三歳は離さないと、リアルじゃなかろう。
 また、生みの母(三宅邦子)にいきなり再会して動揺するあまり、駆け出して、交通事故。
 接触した車の加害者男と、被害者女の出会いと結びつきの成瀬巳喜男的メロドラマな展開。なんだが、この交通事故メロドラマの「要諦」とは、文字通り、事故が運命的出会いとイコールにある、という点だ。出会ってはいけないフタリが、不意の事故で、不可避的に出会ってしまう、という。このあたりについては、当ブログ「成瀬巳喜男映画の正体」を参照されたい(笑)。
 ところが、本作の場合は、もともと中途半端な出会いをした菅原謙二との遭遇再会であり、事故車はタクシー、菅原は「ぼくはたまたま、タクシーに乗りあわせた客なんだし」と、責任回避。イヤ、そりゃ、当たり前だよね、単なるタクシー客では、出会いがしらの衝突的いきなりの出会いの責任なんて、取りようもないだろうし。
 若尾の親友が、菅原と親どおしが決めたいいなずけで、若尾は身を、引く、といっても、この親友自体が、菅原を好きでもなんでもない、というのが、メロドラマのセオリーに、反しているし。
 菅原の母・東山千栄子や、三宅の存在も中途半端。
 父の弟子・潮万太郎のコミカル演技と、若尾文子の可憐さを楽しむ映画。
 なお、若尾が菅原から逃げるように家出して、いきなり稽古場で集団ダンスの、唐突(笑)。しかも、若尾と集団は別撮りか? さらに、他のみんなはへそ出しセパレーツの稽古着なのに、若尾のみ、へそも隠す、ぴっちり衣装。
 さすが、アイドル女優のへそ出しはNGということでの、別撮り対応か。イヤ、別に若いあややのへそ出しルックが、特に見たかったわけでもないが(笑)。

★新・今、そこにある映画★日本映画・外国映画の、新作感想兄弟ブログ。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

★人気ブログランキング・日本映画★
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
★にほんブログ村・名作なつかし映画★
[PR]

by mukashinoeiga | 2014-05-04 09:35 | 大映京都学校 森一生佐 | Trackback(1) | Comments(0)

森一生「ほんだら捕物帖」

 池袋にて。「犬塚弘ワンマンショー」特集。66年、大映京都。
 同時上映野村芳太郎「素敵な今晩わ」 (感想駄文済み)どうようニュープリント。2本立てのどちらもニュープリントというのは、珍しい。
 まあ、それだけ犬塚弘主演作が省みられることがなかったということでもあり、その意味で新文芸坐の特集は、素晴らしい。
 浪人・犬塚弘、新人十手持ち・ハナ肇のダブル主演。でも、犬塚が、一応二の線ということで、一応こちらがホントウの主役。でも出番は、ほぼ同等。
 時代劇コメディー第2作。前作森一生「ほんだら剣法」は、前日に上映されているが、こちらは未見。残念。
 時代劇なのに、アリバイとかコンサルタントとか007とか青少年教育とか、やたらと外来語・現代語が多発される、まあお気楽コメディー。
 犬塚、ハナ以外にも、ハナの下っ引き・桜井センリ、太鼓持ち・谷啓、若旦那・石橋エータロー、同心・安田伸と、助演で、植木以外はフル出演だ。
 もちろん、東宝・植木等映画のように、ハッチャケた、はじけたコメディーでは、ない。しかし、大映京都の大人な映画作りと、大きな華はないが、ほのかなハナがある犬塚弘の組み合わせは、グッド。
 あまりに相性がよいので、とてもお上品なコメディー佳作となった。幸運な組み合わせ。なんていうんだろう、はじけない代わり、さらりと面白い、清冽といったらほめすぎか、ある意味、とても「美しい」。
 そして、この大映の大人っぽい良さに、ハナ、桜井、谷、石橋、安田も影響され、たいへん好ましい。彼ら本来の品のよさ、というか洒落っ気が、ほのかに出ていて、美しいコメディーとなったようだ。
 助演の藤田まこと(桜吹雪ならぬ、馬鹿面の馬の刺青の南町奉行)、藤岡琢也(権勢を誇る悪徳茶坊主)も、どんなに馬鹿演技をしても、決して崩れない品のよさも、大映ならでは。
 重厚な大映美術も、背景のホリゾントを単純化、単色化したり、犬塚の衣装のカラフルさ、高札や灯りを黄色に統一したり、子供たちの座るござもカラフルにしたり、美術は例によって凝りまくり、美しい。
 美しいカラー映像を、さらにカラフルに彩る。素晴らしい。
 偽座頭・島田竜三、ハナの女房・藤村志保、犬塚が二度助ける姿美千子も、グッド。
 新文芸坐のチラシによれば、森一生は犬塚をたいへん気に入り、「養子にならないか」とまで、いったという。十代の高峰秀子も、その愛らしさと、家庭環境の問題で、大勢の人に、養女にならないか、といわれたらしいが、三十男の犬塚に、養子話、って凄過ぎないか(笑)。
 森一生に特殊な趣味があるのか(笑)、あるいは森夫妻には子供がなかったのか。
 いずれにせよ、大映という映画会社、その大映を代表するひとりの森一生、彼らと犬塚弘の相性がバツグンということだったのだろう。
 なんという幸運な組み合わせか。脚本は、いつも何気にいい笠原良三。グッド。 

★ほんだら捕物帖 | Movie Walker★

★新・今、そこにある映画★日本映画・外国映画の、新作感想兄弟ブログ。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

★人気ブログランキング・日本映画★
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
★にほんブログ村・名作なつかし映画★
[PR]

by mukashinoeiga | 2013-11-12 10:35 | 大映京都学校 森一生佐 | Trackback | Comments(4)

森一生「関東おんな悪名」他

 神保町での飯田蝶子特集は、既見作ばかりで、一度も行かず。阿佐ヶ谷での西村晃特集は、既見作は、傑作快作ぞろい。で、未見作をひろっていったら、これが、とほほな映画ばかりで。

◎春原政久「月は地球を廻ってる」
 阿佐ヶ谷にて。「世紀の大怪優2 西村晃MAGIC」特集。59年、日活。
 商店街の二階にある、木造弱小広告会社。会社の一角に、放送ブースが仕切られていて、そこで中村万寿子が、商店街の案内放送。時代だなあ。で、若い彼女の恋人は、この会社の営業マン・岡田真澄。彼が主役の46分の添え物中編。
 この岡田の無茶ぶりの営業活動が笑いをサソウ・・・・はずなのだが、不発。西村は、その上司、かるみのある演技も、演出・脚本の不発により、中編なのに、長すぎる。
 デパートの宣伝部長・小沢昭一が、卑怯な笑いを取る。

◎渡辺祐介「喜劇 爬虫類」
 阿佐ヶ谷にて。「世紀の大怪優2 西村晃MAGIC」特集。68年、松竹。
 渥美清、大坂志郎、西村らが、アメリカの金髪おねえちゃんを、にわかストリッパーに仕立てて、ドサ周り旅。
 しけた話に、しけたギャグ。喜劇と銘打ちながら、笑えないほうへ、笑えないほうへと、自虐していく、松竹ダメコメディ。天才・渥美を使いながら、これほどにも笑えない。
 ゆいいつ、笑いを取っていたのは、アチャラカに徹した、<芸に恋しているインテリ役者>小沢昭一。<なぜか、睡眠薬が効かない男>を珍演。この人が、アチャラカに徹すると、川島雄三映画(「貸間あり」「しとやかな獣」「雁の寺」「州崎パラダイス 赤信号」などなど)だけではなく、ホントに、笑える。卑怯な笑いの天才か。おいしいとこで、でてきて、渥美を尻目に、かっさらう。渥美より、笑える。というか、この映画の唯一の笑いどころ提供者。

◎深作欣二「脅迫(おどし)」
 阿佐ヶ谷にて。「世紀の大怪優2 西村晃MAGIC」特集。66年、東映東京。
 すでに、単独で感想駄文あり。

◎松林宗恵「太平洋の翼」
 阿佐ヶ谷にて。「世紀の大怪優2 西村晃MAGIC」特集。63年、東宝。
 大戦末期、もはや、片道燃料のみの神風アタックしかないという時期に、世界中の戦場から、精鋭パイロットを集めて、日本本土防衛に活路を見出す作戦を、海軍中佐・三船敏郎は立てる。かくして、加山雄三隊、夏木陽介隊、佐藤允隊が、参集される。
 明日、特攻する神風特攻隊のパイロットに罵倒されつつ、兵力を温存するために、待機待機待機の毎日。
 しかし、いかに精鋭を集めようと、膨大な戦闘機のアメリカ空軍を前にしては、もう、一戦闘の勝敗は、全体の勝利には、関係しない。
 今、よく言われる、「部分最適は、全体最適には、繋がらない」、ちんけな局地戦の動向は、全体の国の勝敗とは、全く、関係が、ない。
 明朗な東宝スタアたち、負け戦なのに、やたら、明るい。いや、それは、それでありなのだろうが、そんな映画を作る、戦略的な意味は?(笑) 
 西村は、夏木隊の軍曹格。

◎森一生「関東おんな悪名」
 阿佐ヶ谷にて。「世紀の大怪優2 西村晃MAGIC」特集。69年、大映京都。
 安田道代が、しっとり清楚な和服姿。でも、やるときゃやるよの、おんな任侠アクション。
 安田の当時の愛人・勝新はともかく、いつもはニヒルでクールな露口茂が、ちょい間抜け感は、偏見か。西村は親分役だが、どうでもいい映画なので、ホントにどうでもいい存在感。

◎小林恒夫「怪談 片目の男」
 阿佐ヶ谷にて。「世紀の大怪優2 西村晃MAGIC」特集。65年、東映東京。
 最初に、いきなり、一枚看板の主演・西村晃の水死体が上がる。実は、生きている、というのが、丸わかりな展開。
しかも、トリックは、実は西村には、双子の兄弟がいた、という安易なもの。まじめなだけに残念な、バカ・ミステリ。
 とは言いつつ、丸い黒めがねの、牧師さんスタイルの西村のスタイリッシュぶりは、いい。
 大きな西洋風のお屋敷、庭の一部に海辺あり崖あり、霊廟あり、その霊廟のなかを探査する怪奇趣味。

◎中島貞夫「くノ一化粧」
 阿佐ヶ谷にて。「世紀の大怪優2 西村晃MAGIC」特集。64年、東映京都。
 徳川方男忍者グループ(西村、小沢昭一ら、リーダーはクールさがなんとなくお間抜けな露口茂)VS豊臣側女忍者軍団の戦い。
 セットをこったり、シンプルかつ抽象的な、セットなんだけど、安作り、時代劇なんだけどレヴューふう、なんとなく、鈴木清順の、できそこないという感じ
 才能のない監督が、かっとんだ映画を作ると、どうなるか。
 詰まんない映画に、なるんです。才能のない監督が作ると、小沢昭一でさえ、はじけない。
 スパイシーを身上とするアート映画を、お子様が作ってみました、のお子様カレーか。

 なお、ぼく的既見作で、今回見なかった、吉村「越前竹人形」今村「果てしなき欲望」野村「東京湾」家代「雲ながるる果てに」工藤「十三人の刺客」」「十一人の侍」鈴木英夫「悪の階段」今村「赤い殺意」蔵原「ある脅迫」は、みんな、いいのだが。
 いずれにしても、見れば駄作凡作であっても、こういうレアものを多く公開してくれる、阿佐ヶ谷、グッド。 

★新・今、そこにある映画★日本映画・外国映画の、新作感想兄弟ブログ。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

★人気ブログランキング・日本映画★
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
★にほんブログ村・名作なつかし映画★
[PR]

by mukashinoeiga | 2012-07-30 00:18 | 大映京都学校 森一生佐 | Trackback | Comments(0)

大映京都学校・森一生佐

 今回、フィルムセンターの「生誕百年 映画監督・森一生」特集を、何本か見て、つたない感想を、まとめてみました。
 タイトルの<大映京都学校>は、森一生も監督した市川雷蔵主演「陸軍中野学校」シリーズ(「陸軍中野学校 雲一号指令」(1966) なかなかの快作)に由来するものですが、語感がぜんぜん違うので、まあ、駄洒落としても、わからないでしょうね。無理やりです。苦しまぎれ。すいません。
 今回の特集も、すでに見ている、代表作「薄桜記」などは、スルー。もっとも、「薄桜記」も素晴らしい快作ですが、若干ほめられすぎな感じも(笑)。耽美なのに、少女趣味。それ、方向、違うでしょ、という。
 結局、森一生は、大映スクール(流派)を、もっとも忠実に体現した、プログラム・ピクチャア職人なのでしょう。突出した傑作もなく、きちんきちんと楽しませてくれる娯楽番組を量産した大映職人。
 もっとも、百数十本以上を量産した職人監督の、実は一割強しか見ていないのだから、何をいわんや、全て見るのは無理一生、隠れた傑作も、あるかもしれません。
 一生かけても、森一生(もりかずお)の全作品は見れないのですから、何をかいわんや、ですな。
 ということで、以下の作品の感想を駄文しています。

「ある殺し屋」67年、大映京都
「怪談 蚊喰鳥」61年、大映京都
「あばれ鳶」56年、大映京都
「狙われた女」48年、大映京都
「次郎長富士」59年、大映京都
「若き日の信長」59年、大映京都
「朱雀門」57年、大映京都
「わたしの名は情婦」49年、大映京都
「大阪町人」42年、大映京都
「祐天吉松[不完全]」37年、新興キネマ京都
「旅籠屋騒動[『お伊勢詣り』改題]」39年、新興キネマ京都
「槍おどり五十三次」特集。46年、大映京都
「鉄砲伝来記」68年、大映京都


 これから森一生の作品を見るごとに、随時追加していく予定です。


人気ブログランキング・日本映画

にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村・名作なつかし映画

●近日公開予定●
川島あり川島雄三映画の正体
おゲイさん乾杯木下恵介映画の正体
愛と清順の駄目出し鈴木清順映画の正体
彼と彼女と取りマキ~ノたちマキノ雅弘映画の正体
大魔剣三隅研次映画の正体
危険な英夫鈴木英夫映画の正体
ますますムラムラの悶獣増村保造映画の正体
妄想の器橋本忍映画の正体
Vシネの花道90年代最強伝説三池崇史映画の正体
しぃみず学園清水宏映画の正体
溝口賛歌(けんじぃ)溝口健二映画の正体
[PR]

by mukashinoeiga | 2011-07-22 22:42 | 大映京都学校 森一生佐 | Trackback | Comments(0)

森一生「ある殺し屋」

 京橋にて。「生誕百年 映画監督・森一生」特集。67年、大映京都。
 森一生の三大傑作の一本。といっても、森一生自体、プログラム・ピクチャアの職人なので、せいぜい、<よく出来たプログラム・ピクチャアの快作>に<過ぎない>のだが、で、こういう快作は、大映にも、日活にも新東宝にも東映、東宝にも、あった。
 本作ももう、何度見たかわからないが、ついでに、見て、やっぱり面白い。
 <よくある、一定水準以上の達成>なのだが、これが、代表作になる、という職人技こそ、森一生。そこのところをわきまえつつ、しかし、これは、やはり快作ですね。
 どういうところが快作というと、主演・市川雷蔵の魅力全開。クールで、ニヒルでスタイリッシュ、ストイックな、殺し屋。
 その雷蔵を<よく見せる>にはどうしたらいいのか、と<スタア映画>の要諦に忠実にのっとった、プログラム・ピクチャア。時代劇の雷蔵もいいのだが、現代劇の雷蔵もいい、しかし現代劇の雷蔵は、地味であればあるほどよい、ということで、街場の居酒屋のオヤジ、という地味なことこの上もない<世を忍ぶ仮の姿>を用意。
 そこには、十代半ばの、地味で薄幸そうな少女・小林幸子が、ひとり小女(こおんな)としているような、そっけない居酒屋で。いかにも愛想のなさそうな雷蔵店主と、これまた、娘としても、固さバリバリの、地味少女・小林幸子。ああ、こういう居酒屋もいいなあ(笑)。
 この、ある意味、酒飲みにとっては、地味なジミーな楽園に、ヒモ・仙波丈太郎から逃れた、フーテン娘・野川由美子が紛れ込み・・・・この野川が、やっぱり、いいんだわ。
 脚本が増村保造&石松愛弘。男たちのハードボイルド・サスペンスに、妙に野川をからませる、その増村の手際が、屈折していればいるほど、おかしい。
 そして、アノ野太い声、一切動じない態度の、成田三樹夫、アノ野太い声、アノでかい態度で、雷蔵の<弟分>として絶妙にアシスト。妙に、弟分らしい演技なのが、おかしい。
 やくざの親分・小池朝雄も、迫力あり。その小池と対抗する政商(今でいう孫正義見たいなもんか)の、若い愛人、渚まゆみも、台詞が少ない分、きれいきれいで。



人気ブログランキング・日本映画

にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村・名作なつかし映画
[PR]

by mukashinoeiga | 2011-07-18 23:34 | 大映京都学校 森一生佐 | Trackback | Comments(0)

森一生「怪談 蚊喰鳥」

 京橋にて。「生誕百年 映画監督・森一生」特集。61年、大映京都。
 森一生の、隠れた傑作。再見しても、その面白さ素晴らしさは、まったく色あせない。
 フィルムセンターのスケジュール表に、森の傑作は「吐く嘔気」もとい「薄桜記」「不知火検校」「ある殺し屋」の3本とあるが、実にこれも、あなどれない。かの3本と同等か、それ以上?
e0178641_247312.jpg 「怪談 蚊喰鳥」などというと、「蚊喰鳥」なる怪鳥が活躍するホラーかと思うが、出てくるのは人間だけ。だいいち蚊を食う鳥なら、人間にとっては、益鳥?だろう。「蚊喰鳥」とは、どうやら、こうもりのことらしいが、でも、そのこうもりも、映画には出てこない。出てくるのは、人間だけ。
 色と欲に絡めとられた人間たちばかり。
 江戸時代。常盤津の師匠・中田康子、それに群がる(笑)按摩兄弟(船越英二・二役)、ボンボンの遊び人(小林勝彦)。男たちが蚊で、群がる男たちを食いまくる、中田康子が、蚊喰い鳥なのか。
 とにかく、やっぱり、船越英二が絶品。中田康子に恋焦がれるあまり死んじまった兄按摩、そのきまじめさ、兄を言い訳に中田に近づく、図太い弟按摩、この弟が、すごんだあとは、へらへら誤りに来る多重キャラ野郎、しかもきまじめなあまり、ユウレイになった兄も演じわけ、まさにオールザット船越、凄み、愛嬌、傲慢、低姿勢、あらゆる人間の業を演じ、まあまあ、目の快楽。船越、すごすぎる。絶品、以外の賛辞が、思い浮かばない。
 それを受ける中田康子。東宝ではイマイチだったが、大映に移って、この快演。色っぽくて、あだっぽくて、はなやか。裏でいろいろ考えている、悪女。この中田が、季節は夏とて、蚊帳を吊って、うとうとお昼寝の図。
 その蚊帳の中に、男たちを、次々、連れ込む。白黒シネマスコープの画面に、蚊帳、その蚊帳に男をくわえ込む中田の色っぽさ。この絵も素晴らしい。
 このふたりがとにかく素晴らしく、しかも、怪談独特のけれんみの演出も素晴らしい。怪談ホラーの頂点とも言うべき描写。とにかく、弟船越が映るたびに爆笑、兄船越が映るたびに、ぞぞぞーッ。きちっと怖がらせて、背筋を寒くする、素朴だが、理屈抜きの怖さ。やっぱり、ホラーに白黒は、似合ってるわ。
 そして限定された、小寺の裏の墓地、そこにしつらえられた古井戸、そのさらにうにらに当たる、常盤津の師匠の、家。このセットも素晴らしい(美術・西岡善信)。
 やはり怪談ホラー、怪談ユーモアの頂点とも言うべき、傑作。
 そして78分のタイム・コスト・パフォーマンス。これもいかにも大映。短くても、濃密。無駄に長くて、まったく怖くないどこぞの「怪談」なんて、問題外。森一生と、大映のよさ、船越の素晴らしさが、渾然一体となった。


人気ブログランキング・日本映画

にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村・名作なつかし映画
[PR]

by mukashinoeiga | 2011-07-17 22:36 | 大映京都学校 森一生佐 | Trackback | Comments(0)

森一生「あばれ鳶」

 京橋にて。「生誕百年 映画監督・森一生」特集。56年、大映京都。
 江戸の町火消し「は組」の小頭・源太に市川雷蔵。この雷蔵に岡惚れの芸者・小染に、嵯峨三智子。雷蔵を思慕する「は組」頭領の一人娘。
 そのサガミチに、横恋慕の、旗本・伊沢一郎。しかし、岡惚れ、とか、横恋慕とか、いい言葉だなあ。この旗本のボンボン・伊沢は、伊達三郎ら浪人たちの鬼面組なる不良集団とつるむ。鬼面組は、弱い庶民をいじめる、暴力団。
 ここに「は組」VS「鬼面組」抗争が勃発するわけだが、時代でもあり、大映でもあり、後の東映任侠/やくざ映画には、及びもつかない、低迫力。
 なによりも、静謐で低温な雷蔵には、<粋でいなせな江戸っ子火消し>が似合わない。このての、天然の
<粋でいなせな江戸っ子火消し>には、高倉健の素晴らしさに、はるかに及ばず。といいつつ、高倉健は、実は、江戸の火消しをあんまり、演じていないのだ。もったいない。
 で、喧嘩の果てに、「は組」の頭領に勘当された雷蔵、そして火事を知らせる半鐘連打、火消しの現場に行きたいのに行けないハンパな、立場、その描写は、ついこの間、同じフィルムセンターで見たマキノ雅弘「千石纏」50年と、クリソツ。この6年のあいだに、リッパにクリシェとなりおおせた(なりはてた)か。まぢめにマキノを再現する、森一生演出の、映画的きまじめさ。
 ラスト、火事場の屋根に、まといを抱き寄せつつ、すっくと立つ、ザンバラ髪のサガミチ、その芸者姿の粋さ。まさに絵に書いたよう。錦絵か。映画の、<絵>であることを、かすかに、露呈する、毎度の森一生。その集大成は、彼の代表作「薄桜記」となるわけだが。決定的なイメージのほのかさ。


人気ブログランキング・日本映画

にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村・名作なつかし映画
[PR]

by mukashinoeiga | 2011-07-17 00:18 | 大映京都学校 森一生佐 | Trackback | Comments(0)

森一生「狙われた女」

 京橋にて。「生誕百年 映画監督・森一生」特集。48年、大映京都。
 老舗の料理屋の大広間で開催される町内お楽しみ会。
 各種演芸が繰り広げられるが、目玉は、その料理屋の女将・沢村貞子の踊り。その舞踏の小道具の鎌が本物と摩り替えられ、それで切られた沢村は、大怪我。
 さて、犯人は?の時代劇ミステリ。
 たまたま、客として招待されていた、自称伝説の目明し・居眠り金兵衛(柳家金語楼)は、「あっしは引退しました身で、あとを継いだ婿の文七を、お呼びになってくださいまし」。
 文七(アラカンこと嵐寛壽郎)も、音に聞く目明しの親分。早速呼ぶと、文七不在につき、若い頃は捕物小町と呼ばれ、自身も二三の事件を解決したことのある文七の恋女房お光(金兵衛の娘・花柳小菊)が、しゃしゃり出てくる。
 いろいろ事件を捜査しているうちに、料理屋の小粋な一室で、芸者と「密会」中の、文七親分を発見し、恋女房、嫉妬の炎という一幕も。
 さてお光、いろいろ捜査の後、大広間に関係者一同を集め、名推理を披露。天晴れ名推理の果てに、容疑者をお縄に。まさに典型的<探偵はみんな集めてさてと言い>だ。その、定型の気持ちよさ。
 それを、黙ってきいていた、金語楼「そうかいそうかい、で、文七親分は、どう思いなさる」。ここで、アラカンが、別の視点と証拠から、別の真犯人を暴いていく・・・・。
 二段構えの名推理を、おそらく自身も大のミステリ好きの、小国英雄脚本(マキノ「昨日消えた男」)を得て、しょっちゅう居眠りの金語楼、利発で嫉妬深い花柳小菊、文七のアラカン一家の掛け合いも、絶品で。
 花柳小菊の愛らしさ、男前のアラカンも絶品で。まるで町内お楽しみ会のように、お気楽に楽しめる娯楽映画の一編で。同時開催中だった、神保町<美女と探偵>にも、引けを取らない快作ミステリ。
 「狙われた女」沢村貞子の、<だれからも嫌われる女>ぶりも凄絶で、まだ女の生臭い色気を抱えた悪女ぶりも、素晴らしい。女ッ気の抜け切った、50年代以降の、サバサバおばさんの、名脇役ぶりとも違う、生々しさ、荒々しさが、いい。


人気ブログランキング・日本映画
●昨日今日は10位にランクイン!

にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村・名作なつかし映画
●IN順、OUT順とも、ベストテンの3位前後を行ったりきたり
[PR]

by mukashinoeiga | 2011-07-10 23:06 | 大映京都学校 森一生佐 | Trackback | Comments(0)

森一生「次郎長富士」

 京橋にて。「生誕百年 映画監督・森一生」特集。59年、大映京都。
 大映オールスタア映画。清水次郎長に長谷川一夫。吉良仁吉夫妻に、市川雷蔵・若尾(先に感想書いた萩原遼「乱れ星荒神山」で、市川右太衛門&山田五十鈴の役どころ)。ほかに京マチ、山本富士子、中村玉緒、勝新、根上淳、本郷功次郎、船越、滝沢修などなど。
 はなやか。でも、鑑賞後、十日たった現在、何も残っていない(笑)。んー、どんな映画だったっけ、といって、その輪郭は、はや、おぼろげ。まあ、ぼくの記憶力がないのが、一番の原因だけれど、交通整理に終始したオールスタア映画の、<実のなさ>ですかね。
 ああ、書いているうちに思い出した。勝新が、森の石松、船の中で、石松をなかなか思い出さず、思い出したとたん、「寿し喰いねえ」といわれるのが、船越だった。
 ああ、勝新が、石松。ワンパターンというか、これしか、ないというか。
 見てて思ったのは、勝新、森の石松、そら、芸ないやろと。いっそ、船越が石松で、勝新が寿しおごられるヤツ、でも、ふたりのスタアヴァリューからいえば、勝新が石松やろなあ。
 吉良仁吉夫婦の若さは、長谷川・山田より、こっちなんだけど。でも、一種のオムニバスだから、何から何まで、コクがない。
 まぢめな人だけに、オールスタアの交通整理に徹した、というか、何とかそこそこにまとめるしか、頭がない、A型凡庸な演出家の、何とか、まとめました、の凡作か。
 結局、こういう華やかなオールスタアのヴァラエティー感も、大映は不得意だし、ヴァラエティーを超えた、本格ドラマを、オールスタア映画で実現するのも、ダメと。うーん、マキノか。あるいは、ほとんどパーフェクトな、三隅か。マキノなら、この紋切り型で、何の新鮮味のない話を、マイナーチェンジにマイナーチェンジを繰り返し、ほとんど同工異曲にするだろう。
 全盛期の三隅なら、堂々と、紋切り型を繰り出しつつ、爆笑コメディに仕立てただろう。鴈治郎と、浪花千栄子は、必須で。
 まあ、主役が長谷川一夫というだけで、ほとんどだめな気もするが。オールスタア映画というのも、地味地味大映には、あわないか。例外は、三隅研次ね。いや、三隅かマキノなら、やってくれた気がするよ。

にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村 名作・なつかし映画


人気ブログランキング・日本映画
[PR]

by mukashinoeiga | 2011-07-08 00:20 | 大映京都学校 森一生佐 | Trackback | Comments(0)

森一生「若き日の信長」

 京橋にて。「生誕百年 映画監督・森一生」特集。59年、大映京都。
 うーん(笑)。端正な森一生演出、端正な雷蔵演技、端正な大映ティストは、豪放磊落、時に狂人と言われた、織田信長と、全然、合わない(笑)。
 お行儀のいい雷蔵信長。お品のいい雷蔵信長。まあ、そこそこ突っ張った演技もないわけではないが、とても<信長の狂>を、その一端でも、描ききれたとは、思えない。
 おんなの<狂>は描き得ても、男の<狂>は、とうとう描けない。それが、大映の限界か。
 東宝女優の青山京子が、信長の側近でありつつ、信長に復讐を果たさんとする、娘を好演。東宝では、あんまり、しどころのない役が多かった、B級アイドル女優が、微妙な感情をシャープに好演。
 なぜか東宝<ローテーション女優>は、東映、大映などに客演すると、美質を輝かせるなあ。
 大映プロパー・金田一敦子は、平凡。若き日の市川染五郎も、信長の若手側近を演じるが、まあ、いまいち。雷蔵も、50年代は、イマイチ多し、というところか。

にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村 名作・なつかし映画


人気ブログランキング・日本映画
[PR]

by mukashinoeiga | 2011-07-06 22:26 | 大映京都学校 森一生佐 | Trackback | Comments(0)