カテゴリ:珍品・怪作の谷( 23 )

ベスト・オブ珍品・怪作の谷ほんとうの怪作はなんだ

ベスト・オブ傑作・快作の森をこの前選んだが、今度は当ブログの特集(カテゴリ)珍品・怪作の谷からベストテンを選んでみよう。
 とは言っても、傑作・快作の森は99作あったが、珍品・怪作の谷は22作しかない。
 なまなかな低調作は単なる駄作凡作なのであり、よっぽどのクレイジーでない限り珍品・怪作は出来ない。
 つまり傑作・快作を作るより珍品・怪作を作る方が難しいということか(笑)。
 なおお断りしておくと、これは、わたくしメの、2009年~2017年3月までの、ごくごく個人的な、珍品・怪作で、いわゆるオールタイム的なものではございません。
 だから実はたいしたリストではないんですが(笑)。
 まずは候補作を。逆鑑賞順です。

佐藤純弥「ゴルゴ13」高倉健
[ 2016-07 -14 04:14 ]
堀内真直「海流」
[ 2016-06 -05 02:54 ]
佐伯清「砂漠を渡る太陽」鶴田高倉雄之助
[ 2016-05 -25 01:30 ]
舛田利雄「暁の挑戦」橋本忍脚本
[ 2015-12 -06 09:30 ]
豊田四郎「せきれいの曲」
[ 2015-04 -26 12:33 ]
佐々木康「踊る龍宮城」
[ 2015-03 -24 09:28 ]
中村登「わが闘争」
[ 2014-09 -01 19:22 ]
西河克己「白鳥」
[ 2014-07 -25 02:23 ]l
番匠義彰「浮気のすすめ 女の裏窓」超珍作!
[ 2014-06 -23 21:43 ]
谷口千吉「霧笛」「夜の終り」
[ 2013-12 -05 09:29 ]
西河克己「エデンの海」~「幻の湖」を超えた怪作!
[ 2012-12 -04 00:32 ]
G・プレイクストン「頓珍漢スパイ騒動」:日本ロケ斎藤達雄ら日本俳優出演アメリカ映画
[ 2012-08 -27 01:12 ]
阿部毅「性生活の知恵 第二部」
[ 2011-09 -25 03:01 ]
中島貞夫「ポルノの女王 にっぽんSEX旅行」
[ 2011-09 -21 21:06 ]
山村總「沙羅の花の峠」
[ 2011-03 -31 23:35 ]l
石井輝男「異常性愛記録 ハレンチ」
[ 2010-08 -31 22:11 ]
羽仁進「午前中の時間割り」
[ 2010-07 -26 00:19 ]
鈴木則文「聖獣学園」
[ 2010-05 -22 00:53 ]
斎藤光正「斜陽のおもかげ」
[ 2009-11 -14 01:27 ]
木下恵介「結婚」
[ 2009-11 -12 22:48 ]
島津保次郎「お小夜恋姿」
[ 2009-10 -08 00:54 ]
川島雄三「昨日と明日の間」
[ 2009-07 -12 21:27 ]

 ここから減らしていきます。

佐藤純弥「ゴルゴ13」高倉健★
堀内真直「海流」★
佐伯清「砂漠を渡る太陽」鶴田高倉雄之助★
舛田利雄「暁の挑戦」橋本忍脚本★
中村登「わが闘争」★
西河克己「白鳥」
番匠義彰「浮気のすすめ 女の裏窓」超珍作!
谷口千吉「霧笛」「夜の終り」★
西河克己「エデンの海」~「幻の湖」を超えた怪作!
G・プレイクストン「頓珍漢スパイ騒動」:日本ロケ斎藤達雄ら日本俳優出演アメリカ映画★
中島貞夫「ポルノの女王 にっぽんSEX旅行」★
山村總「沙羅の花の峠」
石井輝男「異常性愛記録 ハレンチ」
羽仁進「午前中の時間割り」★
斎藤光正「斜陽のおもかげ」
木下恵介「結婚」
島津保次郎「お小夜恋姿」
川島雄三「昨日と明日の間」

e0178641_732662.jpg うーん減らせない(笑)。
 考えてみれば、珍品・怪作というのは唯一無二の存在感ゆえに突出してしまった異形の作品であり、その優劣?を競う?ことなど全く二律背反なふるまいなのでしょう。反省。
 ちなみに上記★印をつけた作品は、在日を含む外国人出演、当時の沖縄を含む海外ロケ、なんちゃって海外舞台の映画。
 日本の映画屋さんが、ひいては日本人がいかに外国に弱いか例証みたいなもんだな(笑)。
 そこで思い出したが小栗康平「伽倻子のために」★は、珍品・怪作の谷に、加えていなかった。
 捨てがたい静謐さもあったが故だろうが、反省(笑)。
 日本映画の中でも、もっとも静謐な一本でしょう。でも映画のテーマが、静謐とはもっとも無縁の在日(笑)。珍品怪作のゆえんでしょうかね(笑)。
 西河克己「エデンの海」★は、日本を舞台にしているのに西洋幻想ゆえのタイトルですかね(笑)。
 また羽仁進「午前中の時間割り」★は、今突然、本当に今更ながら気づいたが、「午前中の時間割り」の「午前中」とは思春期の直喩だったのね(笑)。ではわたくしなど、まあまだ深夜とまでいかないまでも、報道ステーションかイレブンピーエム的なところといったところ(笑)。
 ちなみに最近の報ステが停滞しているらしいのは、下品低劣な久米宏、その後釜で名前が出てこない(笑)同じく下賤なオヤジの、ああやっと思い出した古館か、そういう下品なオヤジ枠の「時間割り」にさわやかなアナウンサーが不用意に出てきた失敗ではないのかな。

 ちなみにこの中からあえてベスト?怪作を選べば・・・うーん、選べない(笑)。
 さらにちなみに、ここで複数作に出ているのは、この後年選びに選んで駄作ばかりに出ているお似合いカップル健さんと小百合ちゃんでしょうか。
 こうなったら日本のアラン・スミシーは誰だ、というのも選びたくもなりました(笑)。

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by mukashinoeiga | 2017-04-16 11:13 | 珍品・怪作の谷 | Trackback | Comments(0)

佐藤純弥「ゴルゴ13」高倉健

 京橋にて。「生誕100年 木下忠司の映画音楽」特集。73年、東映東京。
 主演高倉健を除いて、全員外国人。ただし、山田康雄など声優が、全部吹き替え。だから、健さんも日本語で、押し通す。
 珍妙といえば、珍妙。原作劇画では、違和感がないが、映画にして生身の人間が演じたら、まさに珍味に、なった。

e0178641_413421.jpg54 ゴルゴ13(104分・35mm・カラー) (フィルムセンターHPより)
1973(東映東京)(音)木下忠司(監)佐藤純弥(原・脚)さいとう・たかを(脚)K・元美津(撮)飯村雅彦(美)藤田博(出)高倉健、モーセン・ソーラビイ、プリ・バナイ、ジャレ・サム、シーランダミ、ガダキチャン(声)山田康雄、平井道子、北浜晴子、森山周一郎、富田耕生
犯罪シンジケートのボスの暗殺を依頼され、ゴルゴ13はイランに飛ぶ。主演の高倉以外キャストは全員イラン人俳優(台詞は日本語吹替え)。当時のイラン政府(革命前)の協力を得て、テヘラン市街やイスファハンのモスク、ペルセポリスの遺跡などでロケが敢行され、音楽にも異国情緒が散りばめられている


 日本映画、ことに東映が外国ロケをすると、たいてい内弁慶を発揮?して、珍味になるのは、感想駄文済みの山下耕作「大陸流れ者」と、ご同様。
 しかし、数ある原作の中で、もっと映画化に適した話は、なかったのか。
 クライマックスで、炎熱地獄の荒れ野を、健さんが延々と歩くところが、スタッフの健さん心のツボだったのか(笑)。

 さて、原作ではおなじみの、どんな美女を抱いても、無表情でピストン運動のゴルゴ。射撃の名手は、あっちのほうでも早撃ちで、必死に耐えていたとかいないとか(笑)。
 それを、これまた寡黙が売りの健さんが演じると、また別の味わいが。
 ベッドシーンを演じることの少ない健さんが、イヤイヤやってる感満載で(笑)。
 また、相手役のイラン人女優が、ひじょーにビミョーで。まあ、さいとうたかを好みっちゃ好みの女優さんではあり(原作劇画に登場する女性は、さいとうタッチのせいもあり、ちっともエロくない)、70年代東映好みの、ズベが入ってる。
 なお、悪役俳優の面構えが、ことごとく、見事なまでの東映悪役ヅラ。悪役の顔は、世界共通か。
 しかも時代が時代なので、全員長髪(のぞくハゲ)、裾広のパンタロン。
 この統一感は、違う時代の現代から見ると、失笑モノだが、悪党もまた、似合わないトレンドにどっぷり、というのが、可笑しい。
 義理と人情の仁侠で売った健さんが、ゴルゴをおびき出すため、おとりとなった女性たちが、次々撃ち殺されるのを見殺しにして、その現場を離れ、クールな頭脳戦を展開するのに、おいおい、さすがにそれは、健さんがやっちゃ、あかんて、とひとり呟く観客のわたくし。
 ゴルゴと髪型が激似の、成田三樹夫が、やるならまだしも(笑)。
 原作ファンとしても、健さんファンとしても、不満の残る出来で。
 東映、佐藤純弥、やっぱり、海外、出たら、あかん(笑)。

ゴルゴ13(プレビュー)


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by mukashinoeiga | 2016-07-14 04:14 | 珍品・怪作の谷 | Trackback | Comments(3)

堀内真直「海流」

 京橋にて。「生誕100年 木下忠司の映画音楽」特集。59年、松竹大船。
 これはこれは。うーん(笑)。
 凡品である(笑)。凡品では、あるが、並大抵の凡品では、ない(笑)。いわば天下の凡品である(笑)。
 恐ろしく下手な作り手が、あらゆる局面で下手を打ちつつ作った。そういう意味では、怪作ではあるのだが、あまりに凡庸であるため、怪作というほどの突出性もなく。
 しかしこれを見れば、「可も不可もない凡品」や「何の情熱も才気もなく、ただただ機械的に作られた垂れ流し凡作」でさえ、「貴重」に、見えてくるほど。そういう意味では、全映画ファン必見の凡品なのだ(笑)。
 脚本、演出パートはグダグダながら、撮影、美術パートは、恐ろしく完璧な職人技の精華を見せる、岡田茉莉子、杉田弘子の両女優は、最盛期の美貌を誇る、この落差、このちぐはぐさこそ、見ものなのだ。

e0178641_2541977.jpg21 海流(93分・35mm・カラー) (フィルムセンターHPより)
1959(松竹大船)(音)木下忠司(監)堀内真直(原)新田次郎(脚)沢村勉、高橋治(撮)小原治夫(美)熊谷正雄(出)大木実、岡田茉莉子、杉田弘子、南原伸二、渡辺文雄
豊野(大木)は通信長として乗船していた貨物船が遭難、密輸船に救助される。密輸組織のボスに命を狙われて沖縄に逃れるが、そこにも追手が迫る。戦後初の本格沖縄ロケが行われた作品で、豊野と恋に落ちる節子役の岡田茉莉子は沖縄舞踏家という設定。

 本作は、いわば二部構成。前半は沖縄編、後半は東京編。原作がそうなのだろうが、これがまともな映画屋が作れば、後半部分は丸々カット、前半部分だけで映画化するだろう。
 それくらい前半と後半はちぐはぐなのだ。
 しかも前半はアクション主体のメロドラマ、後半は凡庸かつ無意味ながら、メロドラマ主体、かつてメロドラマ王国として鳴らした松竹としては、後半は、切れなかったりか。うーん。

 そして、沖縄部分も、中途半端。遭難(新田次郎お得意のテーマ)、密輸船に救出、しかし口封じに殺されかけ、泳いで沖縄まで。密輸一味に狙われつつ、沖縄で潜伏する。
 というドラマ部分と、岡田茉莉子と沖縄観光を楽しむ、の部分が全くちぐはぐ。
 かつて、誰かの受け売りで「メロドラマは観光映画でもある」とカッパしたわたくしだが、典型的な観光映画として、沖縄の名所、ひめゆり部隊の碑などを、次々「観光」する大木実&岡田茉莉子カップル。
 ドラマと、そういう観光案内映画が、きわめて気持ち悪く、並行して描かれ、確かにアメリカの統治下にはいった、一種の「外国」だから、貴重な沖縄ロケというのはわかるのだが、この観光ドキュメントが、ドラマをぶっ壊していく。
 シネマヴェリテと、凡庸なメロドラマとの、不幸な結合。
 大木の恋人・杉田弘子の、いかに脇役とはいえ、エモーションの流れを完全に無視した、いいかげんさ。こういう、脇役描写を、あいまいにすると、とたんに、メロドラマの底の浅さが露呈してしまう。

 美点もないわけではない。前述の、撮影・美術パートの充実。
 遭難シーン、若い二人がバイクで崖から転落していくショットの、エッジのきいたミニチュア撮影。でも、山下洵一郎(新人とクレジット)らバカップルを殺したのは、明らかに大木実の追い詰め方だろう(笑)。
 なお渡辺文雄は、沖縄タイムズの記者。現在の偏向反日クレイジーの沖縄タイムズと違って?きわめてバランスのとれた、まっとうな記者で(笑)。
 なお上記引用ポスターは、沖縄で本作が「発掘」リヴァイヴルされた時のポスターのようだ。大木実が、全然大木実に見えない(笑)。

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 なお、岡田茉莉子の父は、記載された十朱久雄では、ない。

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by mukashinoeiga | 2016-06-05 02:54 | 珍品・怪作の谷 | Trackback | Comments(2)

佐伯清「砂漠を渡る太陽」鶴田高倉雄之助

 阿佐ヶ谷にて。「OIZUMI 東映現代劇の潮流」特集。60年、東映東京。フィルムセンター所蔵プリント。
 大げさにいえば、天下の珍品で。
 その内容的珍品度はおいおい書くとして、なによりも、

<以下、ネタバレあり>
e0178641_1283773.jpg砂漠を渡る太陽 1960年8月24日公開 (Movie Walker HPより)
 斎木和夫の「砂漠都市」を「男対男」のコンビ池田一朗と小川英が脚色し、「第三の疑惑」の佐伯清が監督したもので、終戦間近い満州を舞台にしたドラマ。撮影は「警視庁物語 血液型の秘密 聞き込み」の三村明。鶴田浩二の東映入社第一回作品。
 昭和二十年七月、熱河砂漠の真只中にある平邑という街。ここにただ一人の日本人である曽田という青年医師が住んでいた。彼は阿片中毒の患者たちの治療に精根を傾けていた。ある日娼婦の馬華香を、奉天の有力者元井社長の協力によって救った。華香は看護婦として曽田の許に住みこむことになった。平邑に流れてきた旅人、露人ロスキーが発病した。彼を診察した曽田は、そこで石田と名のる日本人に対面した。石田とは、日本人馬賊石上静山であった。これを見破っていたのは、やはり馬賊の、日本人を増悪する黄だった。平邑に、突然伝染病が発生した。


 帝国日本軍侵攻下の中国において、日本人にも親しい、中国の一寒村の唯一のホテルの支配人に伊藤雄之助。彼が中国側のスパイで、日本軍・日本人の動向を、隠し持った無線機(ここが、いかにも、らしい設定)で中国馬賊(隊長が高倉健)に知らせ、その虐殺奪奪を図る。
 この伊藤雄之助が、凄すぎる(笑)。ほんとに、凄いのよ(笑)。
 まず、鶴田浩二と延々大格闘。互角のアクション。殴る蹴るぶん投げる、最後は砂漠の斜面をふたりでゴロゴロ。
 ほんとに五分と五分の格闘で、でも最後は、ヒーロー鶴田が、勝つんだけど。
 次に、特別出演格(クレジットの最後に一枚看板で出てくる、いわゆる止めの格なんだけど、ほんの数シークエンスにしか、出てこない)の高倉健と、雄之助が、これまた五分と五分との格闘。
 で、最後に、なんと、健さんに、雄之助が、勝ってしまう(笑)。
 雄之助にナイフを腹に刺されて、ぴくぴく息絶える健さん(笑)。
 いや、死んじゃう健さんは、若いころは珍しくはないが、ひ弱な中年男を演じることの多い雄之助が、ツルコウ健さんを相手に、大アクション演技(笑)。
 んー、これは、これは。
 おそらく、非常に含蓄ある演技を要求される役で、どうしても雄之助が必要。この演技部分ですでに、ナイス。でも、彼には似合わないアクションも、あるのだが、ええい、やっちまえ、ということか。
 おかげで雄之助演技史上、おまけに健さん演技史上、最高の珍対決が出来上がった、というわけで。うーむ。

 内容的にも(現時点から見ての)珍品度は、高い。
 鈴木清順「春婦伝」や、その元ネタのタニセン版同様、また喜八の中国戦線モノもそうだが、日本国内ロケで、広大な中国大陸の荒涼とした大地を再現。背景の特撮はめ込み部分も含めて、今の時点で見ても、グッド。
 これは、
1 当時は中国帰りの兵隊などが多く、観客の「郷愁」を誘う面があったのか。
2 特に喜八など、本当は西部劇をやりたい映画作家たちが、あるいは当時洋画で人気の西部劇を、なんとか日本で再現できないか、と考えていた映画会社が、もちろん日本国内のちまちました風土で、西部劇的風景を再現しても、無理がある(まあ、その無理を通したのは、日活無国籍アクションの、面白い試みといえば面白い試み、珍景といえば珍景であった)。そこで、そうだ、大戦中の中国大陸なら、やすやすと、西部劇的映画が、作れるでは、ないか、と。
3 そして、当時は、今と違って、まだまだ開発されていない、広大な砂漠、荒れ地、などがあって、なんちゃって中国のロケ地には、事欠かない、と。

 かくて、帝国日本軍は、騎兵隊の、中国馬賊はインディアンの、誠実な日本人医師ツルコウに恋する現地の娘・佐久間良子は、可憐なインディアン娘と、いったところか。
 最初のうちは、中国語が連発され、何を言っているのかわからないが、その後全員が、日本語をしゃべる。
 ラピュタ阿佐ヶ谷のHP解説によれば(昔みたいにコピペできない>泣)鶴田浩二東映第一回入社作品ということだが、実は完全主演作では、ない。いや、主演は主演なのだが、ほかの多数の人にも比重があり、群像劇となっている。
 特に、実は特務機関長・山形勲と、実は馬賊・山村總との山々対決は、実に見もので。
 その他一人一人のドラマもまた丁寧に描かれ、今の時点で見れば(笑)珍なれど、俳優陣は実に実に、充実の一語だ。
 実は特務機関の大村文武なども、実に味わい深い。と、実は実はの、連発なのだ(笑)。
 そして、珍品度をさらに高めるのは、帝国軍人たちは実に悪逆非道で、中国人たちは、きわめて良心的な抵抗者であった、という基調だが。今日では、第二次大戦下の日本軍君は、その劣悪な環境下にあっても、世界で最も規律正しい軍であり、一方中国軍は、現地民から略奪、レイプし放題だったと、判明している。
 もちろん、そうではなかった、という主張も、承知は、している。
 そういう、よく言えば良心的、悪く言えば自虐的な主張が、この種の映画の通低奏音のつねだ。

 とは、言いつつ、まだまだ若い主演ツルコウの、きわめて特異な点としては、どこまでもどこまでも、良心的ヒーローを演じて、涙が出るくらい、誠実さの塊のような青年医師を演じられる、その圧倒的なスタア性。
 まさに、ナチュラルボーンな主演スタア。ただただ、恐れ入るしか、ない。

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by mukashinoeiga | 2016-05-25 01:30 | 珍品・怪作の谷 | Trackback | Comments(2)

舛田利雄「暁の挑戦」橋本忍脚本

 渋谷にて。「日本映画の黄金期を担った脚本家 巨星・橋本忍」特集。フジテレビジョン=新国劇、配給・松竹映配、協力・日活芸能株式会社。
 理由は後述するが、必見! 世界犯罪映画史上まれに見る珍品と見た(笑)。
 あるいは右翼舛田が作った、左翼映画という、究極のハイブリット映画か(笑)。
 これまた理由は後述するが、これは、渡哲也ファン、日活ファン、松竹ファン、そして橋本忍ファン(笑)必見の、珍作だ(笑)。もちろん川崎市民もね。あと2回の上映。

 かつての日本メジャー系2社と、有力TV、有力劇団が絡んでいながら、下記赤字とは、何事か。
 各社が、絡みすぎたせいか(笑)。

e0178641_2113418.jpg『暁の挑戦(デジタル)(141分)』公開:1971年 <渋谷シネマヴェーラHPより>
監督:舛田利雄/脚本:橋本忍、国弘威雄、池田一朗
主演:中村錦之助、若林豪、渡哲也、倍賞美津子、尾崎奈々、財津一郎、仲代達矢、佐藤慶、辰巳柳太郎、島田正吾
川崎市の「大工業都市建設計画」でうまい汁を吸おうとする地元ヤクザの酒巻組に挑み、自ら土建業を立ち上げた正岡。その対立は市民を巻き込んで激しさを増し…。大正14年の「鶴見騒擾事件」を題材にした問題作。長く行方が知れなかったフィルムが発見され、昨年「川崎市90周年記念事業」として修復された幻の一本。

e0178641_21151111.jpg<以下、完全ネタバレあり>
 もっとも長く行方が知れなかったフィルムが発見とは、単に、誰の関心も呼ばずに、無視されて、倉庫に眠っていただけ、とも思われるが。それくらい、本作は、日本映画の「ゲームの規則」を逸脱しているのだ(笑)。
後述するが(笑)、最上級の(笑)珍品なんだからで。
 なお上記修復とは、単にネガフィルムをデジタル素材に転換しただけだと思うが、どうだろう。
 俳優序列は、中村錦之助がトップ。しかしこれは年功序列、スタアヴリューゆえで、実質は、新人・若林豪が主演で、錦之助はナンヴァー2の役回り。
 まあW主演というところか。
 ところが、このW主演が、まったく、いいところがない。とは、いいすぎだが、彼らの面白い場面は多々あるのだが、見せ場(笑)を、すべて渡哲也が、カッサラっていくのである(笑)。

 さて当時の川崎。
 坂巻組というヤクザが市を牛耳っている状態。売春も含めた歓楽街、土方を搾取した土木工事を取り仕切り、紡績工場の女工たちを、木刀片手に「管理」したり。しまいには町を破壊して、市民を恐怖に陥れたり、まさに中国化した暴力的実力社会であり、まるでイスラム国状態。
 市長(島田正吾)も、坂巻組組長に、恐る恐るお伺いを立てに、伺候するしまつ。もちろん寝たきりの組長は、島田正吾とセット(笑)の、辰巳柳太郎だ。
 で、諸事情あって、正岡(若林豪)と舟木(錦之助)は、正岡組を立ち上げ、坂巻組に対立するが、ことごとくの妨害を受け、死者も出す。

 で坂巻組だが。
 組長は、辰巳柳太郎。にらみを利かせるが、いかんせん寝たきり。実質組を仕切る若き代貸しに渡哲也。その右腕に青木義郎。その手下に、これも日活アクションでよく見たチンピラ役専門の小太りの役者、ううんお名前失念。
 なんと日活ニューアクションでは、善と悪の側に別れていた渡哲也と青木義郎が、兄弟分。
 そしてヒーロー役者・渡哲也が、悪の限りの悪いヤクザ者を、そう、まるで天津敏の役回りなのだが
 ところが渡哲也は、潔いことに(笑)一切の悪役演技を放棄。というか、演技的に、あまりに生硬ゆえに(笑)渡哲也は、ヒーロー演技しか出来ないのに、なぜ悪役(笑)。
 おそらく、年も食ってくるし、このあたりで演技の幅を広げたい、という渡の思惑。
 ロートルの錦ちゃんと、ド新人の若林、往年の華が消えうせた元スタアと、武骨一本やりの若手、それにまだまだ若い舛田から見りゃ、言っちゃ悪いが、新国劇の二人は、ヨイヨイ同然だ(笑)。
 ここは、何とか、ひとつ華がほしい。で、舛田利雄「紅の流れ星」などで、自分がスタアにした感がある渡を、唯一残った若頭役に、悪役だけど、押し込めちゃえ、と。
「渡ちゃん、悪い、悪役なんだけど、これからのことを考えると、演技の幅も広げるといいと思うんだ。今度の俺の映画、華がなくてさあ、何とか、頼むよ」(推定)
 で、渡は渡で、体育会系のノリで、
「えー、悪役っスカあ、俺、出来ねーよ、そんな高度な演技。でも、先輩に頼まれちゃあ、断れないしなあ」で、「やりますっ、任せてくださいっ」と、こう、推定するわけですね。

 ところが、渡は、やはり棒演技で、生硬な演技力でも勤まるヒーロー役はできても、悪役はムリ。
 で、世にも珍なれど、悪役をヒーロー演技そのままで、押し通す(笑)。
 悪役なんだけど、渡の演技を見ていると、まるで(ちょっとハードボイルドな)ヒーローにしか見えないんだな、演技が(笑)。
 かくて後半、ただただ待っているだけで、ほとんど動きがないW主演コンビを差し置いて、渡の悪役風ヒーロー演技が炸裂。見せ場をすべて、さらって行く。
 最後、ほとんど無言のまま、ただただデモするだけ(笑)のW主演に、対して、にやりと笑い、決め台詞をいうのも、渡だ。
「俺が負けたんじゃねえ、時代が変わったんだ」
 これ、悪役演技ちゃいますやろ、負け戦を負け戦として戦うヒーローそのものじゃあ、ありませんか(笑)。
◎追記◎シネマヴェーラが用意したキーヴィジュアルは、渡哲也ら悪役陣。普通ならありえないだろ(笑)。2枚目のコラージュも、渡重視。悪役なのに(笑)。

 舛田は脚本を改変したのか否か。改変していないなら、明らかに、脚本・橋本忍は、後期橋本の常として、「静かに」狂っている(笑)。
 最後は、無法中国・テロイスラム国そのままと化した酒巻組を、正岡組だけでなく、ついに立った川崎市民の大群衆、暴徒鎮圧のため出張ってきた帝国陸軍が、取り囲む。
 ノボリ旗を翻して、悪のヤクザ組織に詰め寄る一般市民群集、という図は、左翼映画そのものだが。
 それ(女子どもを含めての民衆蜂起)を見て戸惑う帝国陸軍近衛連隊。これも左翼映画そのものだが。
 取り囲まれた渡が、にやりと笑う。で、負け戦のヒーローみたいに、決め台詞(笑)。ここで、観客左翼諸君は、椅子からずっこけるのではないか(笑)。
 渡、カッケー。
 市民の敵のはずなのに、悪役なのに、渡、カッケー。
 悪いヤクザ組織(しかもウラで警察となあなあであり、市制も牛耳っている)を、取り囲む民衆蜂起の、左翼的高揚感を台無しにする渡哲也。うーん。

 特別出演の仲代達也。出て来て一分で、唐突に切腹。
 例によってメンタマひん剥き、息絶え絶えに末期のセリフをしゃべるしゃべる。まあ、出番数分で切腹して死ぬんだから、メーター振り切った演技もわからないではないが、あまりの唐突感と、クドイ演技に、場内及びぼくも失笑す。

 川崎市役所職員・財津一郎が絶品。普段はおとなしいが、酒を飲むと大虎と化し、あのコワモテ青木義郎にも平気で絡む。市役所の上司・加藤嘉の娘?姪?の、芸者に惚れられる、役回り。財津一郎の、もうけ役的代表作か。
 若林豪にダブルでほれるのが、妖艶・倍賞美津子と、清純・尾崎奈々の、松竹組。
 当エキサイトブログでは、一記事に張れるタグは、三つのみ。こういうオールスタア映画では、タグの枠に悩むんだよねー。

 なお、川崎警察署長の清水元。最近清水マリのインタヴュー記事を新聞で見て知ったのだが、この手塚治虫「鉄腕アトム」で、アトムの声を長年勤めた彼女が、清水元の娘で、彼の劇団の子役上がりと知って、びっくり。

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by mukashinoeiga | 2015-12-06 09:30 | 珍品・怪作の谷 | Trackback | Comments(0)

豊田四郎「せきれいの曲」

 渋谷・映画美学校試写室にて。「Kiss My Stella Dallas Vol.2」上映会。51年、東宝。
 日本映画写真データベースというサブタイトルを持つキネマ写真館★作品詳細「せきれいの曲」日本映画写真のキネマ写真館★には、多数の本作写真が掲載されている。
 同HPによれば「まだ宝塚歌劇団に在籍中だった有馬稲子の実質的な映画デビュー作(東宝専属は1953年から)。このとき彼女は17歳で、先に宝塚から映画界に転身し、大スタアになった轟夕起子との共演作となった」とある。
 下記HPによれば、「スクリーンデビュー間もない有馬稲子」と、ある。「実質的な」「デビュー間もない」と、いささか奥歯に物が挟まったような言い方だが、本作の前にちょい役的に顔を見せた映画があったのだろうか。
 Movie Walkerによれば、本作の四ヶ月前公開の小田基義「宝塚夫人」がデヴュー作のようだ。春日野八千代、月丘夢路、有馬稲子、八千草薫共演の同作も、また、見てみたいもの。

 なお、日本映画のスチール写真を多数展示しているキネマ写真館については、昔から気になっていたのだが、そのうちひまなときに、直接飛べるようにしたいと思っているが。まあ、今も、暇か(笑)。

 完成した大人顔美人の有馬稲子のこと、ついハタチ過ぎて女子高生の役か、と思っていたら、なんと現役(笑)17歳だったのね。彼女の明るい魅力炸裂の本作だが、実は本作には、彼女より、さらにさらに魅力的なヒロインが登場する。

『せきれいの曲』(1951年/東宝/白黒/スタンダード/99分) <映画美学校HPより>
※東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
監督:豊田四郎 脚本:水木洋子 撮影:三浦光雄 照明:石川緑郎 美術:北川恵司 音楽:大木正夫
出演:轟夕起子、有馬稲子、山村聡、立花満枝、斎藤達雄(C)TOHO CO.,LTD.
Kiss My Stella Dallas Vol.2 に登場するのは、今年に入ってからもラピュタ阿佐ヶ谷を拠点に『風ふたゝび』、『波影』でチケットをSOLD OUTさせてきた“グルーヴの鬼”こと豊田四郎!!!
1951年に発表された『せきれいの曲』は、水木洋子(Scenario)、三浦光雄(Camera)と錚々たるレジェンズを従えて放った爆走系プリミティブメロドラマ。見る者を震え上がらせる冒頭20分の暴力的な展開を経て、スクリーンデビュー間もない有馬稲子の躍動感と、それを威風堂々と受けて立つ轟夕起子のアルカイック顔面力が激しく火花を散らす!!! さらにクライマックスのコスミックなアンサンブルが映画の時空すらも歪めるとき、あなたは世紀を超えた“ロマンそのもの”に出会うこととなるだろう。
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 轟夕起子。素晴らしい。彼女の映画を見たなかで、最高の輝きを放つ。その表情のいちいちが、美しい。
 戦前の超ほっそり美少女顔から、戦後は急速におばさん顔でっぷりカンロク豪快ガハハの母系になった彼女の、美しさが、この映画を支配する。その圧倒的な表情の愛らしさ。

 そして、本作の肝は、上記でも触れられてはいる、王道的?な、あるいはプリミティブというか初期外道的(笑)な、あまりに荒々しすぎる音楽が、特に前半に集中して現れているところか。大木正夫という、音楽監督には詳しくないぼくにとっては、はじめて?聞く名前だが、新婚旅行中の轟夕起子、山村聡が比較的静かに諍うシーンに、過激な劇伴を流す。
 過剰に昂揚的なメロドロマチックな音楽であり、それは王道の過剰さでそうなったのか、王道の逸脱なのか。
 メロドラマ音楽の通俗の範囲内で、過剰にバロックに走ったのか、あるいは現代音楽に近づいたのか。
 ぼくには、音楽の素養がないので、なんとも言いようがないのだが、要するに通俗音楽の範囲内で、その過剰さのあまり、なんちゃって現代音楽に通底してしまった、というところだろうか。
 それを平然と流すトヨシロのメロドラマパワー。この過剰な音楽に力負けしていないところは、さすがで。

 轟夕起子演じるヒロインは、不器用な、あまりに不器用な芸術原理主義者。
 山村總との結婚に失敗し、女学校の音楽教師としても「時局」に乗れず、「歌唱勤労隊」としても、特高に目をつけられ、拘禁され、拷問を受ける。
 なお、関係ないが、今「特高」と書いたが、「特高」警察と、「特攻」神風とは、同じ「とっこう」だが、その後の評価は、真逆になった。非常に面白い。
 轟の、その原理主義者振りの「潔さ」は、いささかイラッと、来るものがある、民主党岡田の、あるいは鳩山の、あるいは菅の、あるいは枝野の、なんだか固陋な性格の悪さも、感じる(笑)。
 いや、戦時時局にやむを得ず「同期」「同調」する山村總を評価するのではないが(笑)戦時高揚歌を歌う轟に、酒を飲みながら「愛嬌がない」と批判する斎藤達雄らに、「(あたしは芸術家で)芸者じゃありません」と、公然と言い放つ轟。
 しかし、ぼくの理解では、アーティスト/パフォーマーは、「時には娼婦のよう」に、時には芸者のように、観客に「媚びる」というか「愛嬌を振りまく」のも、また、パフォーマンスの一部だと思う。
 孤高を貫く、というのは、立派だが、しかし、それは、少なくとも「人前に立つ」パフォーマーとしては、いささか、ずれているのでは、ないか。時局に媚びろ、というわけでは毛頭ないが、少なくとも「人前に立つ」パフォーマーとしては、孤高原理主義で、あっては、相矛盾するのでは、ないか。
 同じことは、民主党政治家に多く見られる原理主義者、及びイスラム原理主義者にも、言える。原理主義者は、「人前に立ってはいけない」というのが、ぼくの立場だ。
 洞窟か、閉鎖された密教空間に、とどまりなさい。アーミッシュのように。
 オウムもアーミッシュのようであれば、何の問題も、ないと考える。わかったかね、民主党諸君(笑)。閑話休題。

 話を映画に戻すと、その性格の固陋、芸術原理主義ゆえに、どんどん負のスパイラルに陥る轟。救いは、母に似ぬ、天真爛漫さで人生を泳いでいく娘の有馬。あまりに天真爛漫で、「自分を捨てた」父・山村にも、無邪気だ(実は、固陋な性格から、山村を「捨てた」のは、むしろ母の轟の趣きなのだが)

 冒頭卒業式で有馬稲子が歌う。やや口パク気味。
 そのあとの回想シーンで、轟が歌うと、完全にリップシンクロしているので、口パクでないとわかる。
 轟はその後ピアノを弾くが、自前とわかる。有馬のピアノは、手だけ別人の別撮りと、わかる。
 ここは、17歳の研究生の、限界か。
 なお、時局に乗って、轟を退職に導く新任音楽教師に、南美江。彼女もピアノを実際に弾きつつ、リップシンクロした歌声を披露。あまりに地味なオバサン顔で、その後歌と無縁な地味オバサン脇役に徹した南美江も、確か、少女歌劇の出身と聞く。
 歌う女を、歌わない女として起用し続ける日本映画の、非エンターティメント性は、批判されてしかるべきだろう。
 そういう目で見ると、地味なオバサン?地味なおじさん?たちに、堂々と歌わせた鈴木清順「オペレッタ狸御殿」の、反時代性、非時局迎合性に、改めて目が行く。鈴木清順の独自性。

 さて、あまりに強度の高いトヨシロのメロドラマ作劇。
 感想駄文済みの千葉泰樹「女の鬪ひ(闘い)」49年でも、そうだったが、新郎の元カノが、新婚旅行先のホテルに同宿して、ひと悶着を起こし、新婚夫婦を修復不能においこむ、というのは、何か、元カノもとい元ネタがあるのだろうか。
 無茶な設定なわりに、わりとメロドラマでは、ありがち?
 その後時代が下ると、新婚旅行帯同では、生ぬるい、とばかりに、結婚式場に押しかけ、みなの前で悶着を起こす、という形式?に変わる?メロドラマの流行? いや、よくは知りませんが(笑)。

 ふたたび、さて。
 轟が特高に拘引され、一日ぶりに帰宅すると、自宅は家宅捜査のあまり乱雑に乱れっぱなし。
 拷問にも合った轟は娘の有馬に、「螺鈿の箱を取って頂戴」という。
 美しい化粧箱を即座に枕元に持ってきた有馬は、開けて、父山村から、かつて母に送られた「せきれいの曲」の楽譜を取り出して、感激する。
 この曲を卒業式で有馬が歌い、父、母、娘の、想いは、完結する因縁の曲なのだか。
 オイ、ちょっと、待てぇー(笑)。

 簡単に取り出せる場所にある、美しい化粧箱。しかも、そのなかには時局に合わない、西洋に「媚びた」軟弱な曲の楽譜があり、山村と轟の昔からの因縁をも思わせる楽譜がある。
 こんなのが、なぜ警察の家宅捜査から、逃れられ、押収もされずに、手付かずで、残っているのか(笑)。
 父、母、娘をつなぐ絆となる、因縁の曲だから、むしろ警察の目を逃れたのだ、というメロドラマ主義(笑)。
 ご都合主義と、笑ってはいけぬ。
 映画のみに許される楽天主義、メロドラマ主義というべきだ。

 駄文は、まだまだ続く(笑)。われながら、しつこい(笑)。
 本作では、若き山村が轟に送った名曲「せきれいの曲」と、のちに戦時時局に作った「すめらみ(=天皇)の曲」?が登場する。
 後者を轟は「あなたらしくない、心がこもっていない、小手先だけの曲」と、批判する。
 のだか、しかし、どちらも、映画音楽家が、脚本設定の要請に応じて作った曲に変わりがないので、前者が格別いいとも、後者が格別につまらないとも、音楽音痴のぼくには、わからない(笑)。

 同様なことは、画家が主人公の映画でもいえて、劇中で傑作と称される絵も、凡作と称される絵も、出てきても、まったく判別が難しい(笑)。それもそのはずで、おそらく、傑作も駄作もどちらも、「そういう絵を、よろしく」と発注された、美術部が、描いた、「消えモノ」だからだ。
 傑作そうに見える絵・音楽を作ってね。
 凡作そうに見える絵・音楽を作ってね。
 どちらであっても、作り手のモチベーションは、駄々さがりになるような、制作依頼であろう。
 「本物」であっても、そうだ。
 感想駄文済みの千葉泰樹「裸の重役」で、東野英治郎社長から新築祝いに送られた「武者小路実篤の色紙」。映画キャメラに写された絵は、直筆か、模写模造印刷か、にわかには、判別しがたい。
 東野は「模写複製じゃないよ。直筆だよ」と「保証」するが、映写されたそれは、なんとも真贋判別しがたい(笑)。
 同様なことは、「絶世の美女」に配役された女優が、そう見えないのも、「醜い娘」に配役された女優も、また、そう見えないのも、同様で。
 映画は、メロドラマは、偽者の世界であり、フェイクの世界。
 「本物」は「偽者」と、区別が、つかない。「名曲」と「小手先の曲」の区別が、つかない。
 芹明香のように、どう見てもブスな女優が、美人女優に窯変する「偽りの世界」。
 「偽りの真実」こそが、むしろ「珍重」される映画にあって、偽者と、本物の違いなど、ナニほどのものか。
 それこそが、メロドラマの強度、ないし弱点というべきものだろう。

 なお、本上映チラシのイラストの山村總は、どうみても、山形勲にしか、見えない(笑)。おそらく映画美学校の若い生徒が描いたと思しきこのイラスト、山村と山形の違いなど、とんとご存知がないに違いない。
 これも、偽りの真実を希求するメロドラマ=映画のチラシとしては、やや(ほぼ)正解だったりして(笑)。

 さらに蛇足。
 公爵・斎藤達雄の、軽薄さ。ああ、愛らしい。
 帽子をクロークに渡され、「あ、違う」といったんは言いつつ、「あ、やっぱり僕のだ」という、小芝居はアドリブだろうか(笑)。
 自由な時代に描いた「傑作」と、戦時「時局に迎合した小手先の作曲」が、違いのわからない本作への皮肉だろうか。むろん、そんな事態では、なかったと思うが(笑)。

その家令に御橋公。主人とは正反対の慇懃さが、いかにも御橋公。
 音楽教師の轟をチクチクいぢめる校長に大山健二、慇懃教頭の石黒達也も、ベストコンビ。
 小芝居にかける脇役たちもグッド。

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by mukashinoeiga | 2015-04-26 12:33 | 珍品・怪作の谷 | Trackback | Comments(10)

佐々木康「踊る龍宮城」

 阿佐ヶ谷にて。「春爛漫 歌と踊りの銀幕祭典 Dancing,Singing!」特集。49年、松竹。3月28日(土)まで上映中。
 初代大辻司郎は、もともと気色悪い顔立ちだが、河童の悪大将として、さらに気色悪いメイク。クエックエッと台詞回しも気色悪く、子供が見たら、夢に出てきそうなレヴェル。素晴らしい
 その悪声は、息子の二代目そっくり。顔立ちはともかく、声まで親子でそっくり、というのは、珍しいかも。

踊る龍宮城 1949年(S24)/松竹大船/白黒/91分 ※16mm <ラピュタ阿佐ヶ谷HPより>
■監督:佐々木康/原作:穂積純太郎/脚本:津路嘉郎/撮影:生方敏夫、斎藤毅/美術:小島基司/音楽:万城目正、浅井挙曄、田代与志
■出演:川路龍子、並木路子、曙ゆり、小月冴子、奈良光枝、岸井明、森川信、日守新一
海底の龍宮城から舞い戻った浦島太郎。彼を待ち受けていたのはすっかり近代化した故郷だった──。歌と踊りが満載のファンタジー・オペレッタ!幼い美空ひばりがなんとも可愛らしい衣裳で「河童ブギウギ」を歌う。
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 この映画については、以下のキネ旬からの孫引きが、たいへん面白い。

<Movie WalkerHPより>
「桃色河童騒動」の改題で製作は「殺人鬼」につぐ久保光三。元ムーラン・ルージュのライター穂積純太郎の原作を「社長と女店員」「シミキンのスポーツ王」の津路嘉郎が脚色、「魔の口紅」「別れのタンゴ」の佐々木康が監督する。配役は「我輩は探偵でアル」につぐ岸井・森川の“のらくらコンビ”に「シミキンの忍術凸凹道中」につぐ奈良光枝、終戦直後大船が作った「グランドショウ1946年」以来の川路龍子「のど自慢狂時代」の並木路子を中心に、日守新一、小林十九二、大辻司郎 (父)、横尾泥海男、らが出演、松竹歌劇団から小月冴子、曙ゆり以下東京方全員が参加する。特出には霧島昇、池真理子らがあり、注目されたターキー、秋月惠美子、芦原千津子の出演は都合で中止になった。(引用終わり)

 普通、こういう出演しなかった俳優については記述しないものだが、ここは松竹プレスリリースにはない、キネ旬の独自取材か。超人気者ターキーは、この手のアチャラカ三流レビュー映画には、やはり、出なかったほうが賢明か(笑)。
 ということで、浦島太郎に川路龍子、外国航路の高級船員・カツ男に曙ゆり、スリの少年サヨリに小月冴子、と松竹歌劇団の男役スタアが出演。
 ここで、複雑怪奇なのは、浦島太郎とカツオは、女優が男装して演じる男性の役。サヨリはその名のとおり、もともとは少女だが、なぜか男装して、対外的には少年扱いされている役を、女優が男装して、演じている。
 おそらく、敗戦直後の街場で、小悪党一味のチンピラたちの仲間に入り、スリ稼業をするのには、女の子であるよりは、男の子であるほうが、ダンゼン都合がよかった。という現実の実例があっての、ことだろうか。
 川路と小月は、超細顔の男顔、女の顔としては異様で、オトコ役としてしか生きられなかったような顔。現代の宝塚基準とも、かけはなれている印象。
 ゆいいつ曙ゆりは、さわやかな笑顔で、さわやかに男役を好演。この女優だけは、現代の宝塚でも、立派に男役になれそう。なおかつ人気が出そう。

 いっぽう娘役は、乙姫さまに奈良光枝、カツオの恋人・アン子に並木路子、と既成歌手&女優。このへんの、知名度のある人気歌手登用、松竹歌劇団の娘役無視が、あるいはターキーたちが出演しなかった理由だろうか。
 ただし、奈良、並木とも、歌手としては美人(いわゆるジャンル美人)だろうが、女優としては、ちょっとイマイチ(現代の基準から見て)。

 なお、肝心のストーリーだが(笑)。浦島太郎が、助けた亀(モチロンでぶな岸井明)とタコ森川信に、つれられて、竜宮城から戻ってみれば、なんと昭和24年の浦島町、地元一番の歴史上有名人の「浦島太郎仮装コンテスト」の真っ最中。そのコンテストに、本物が紛れ込んで、日守新一町長、中村是好警察署長、小林十九二博覧会長らが、右往左往する、いかにもありがちな展開。
 のちに俳優化した森川信の、アチャラカ軽演劇時代。卑怯なギャグで笑いを取るのが、楽しい。

 というところで、前述の、ワル河童集団が出てくるところから、浦島太郎タイムスリップ?話は、どうでもよくなり、程度の低いアチャラカものになり、前述大辻司郎の独壇場と化す(笑)。この大辻の大怪演は、かの「カリガリ博士」を、超えたとか超えないとか(笑)。
 なお、1946年、映画「はたちの青春」で日本初のキスシーンということになってるが、その大坂志郎も出ている本作では、川路浦島と乙姫様のキスシーン。これば女優同士初のキスシーンだろうか?

 肝心のソング&ダンスだが、この当時は、バリバリのアメリカ志向。まだまだ日本人には難しいハードルを、少女歌劇というもうひとつの虚構・仮想で、乗り越えようとしたのだろうか。
 なお、のちに東映にトレードされて、お嬢ひばりの主演映画を量産する佐々木康も、本作では、ひばりを歌が歌える子役としか認識していなかっただろう、2シーンで「河童ブギ」を歌わせるが、どちらのシーンも、ひばりの歌を途中でぶつ切り、セリフの一言すらなく、アップのひとつもなく、雑な扱い。こういう雑なゲテモノ扱いから、ひばりは、スタートしていったのだ。
◎おまけ追記◎
漫談 耳と眼の話 (大辻司郎)

五所平之助 映画監督

2012/12/07 に公開
昭和初期、湯河原中西旅館にて。
漫談家・大辻司郎と脚本家・伏見晃と共に。(五所平之助旧蔵プライベートフィルムより­)
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by mukashinoeiga | 2015-03-24 09:28 | 珍品・怪作の谷 | Trackback | Comments(2)

中村登「わが闘争」

 渋谷にて。「甦る中村登」特集。68年、松竹。あと2回の上映。
 「わが闘争」といっても、かのアドルフ・ヒットラー「マイン・カンプ」とは、何の関係もない。
 一時、人気作家でもあった堤玲子によるベストセラー自伝小説の映画化であるが、「堤玲子」役を東映女優・佐久間良子が演じて・・・・って、えええーっ、堤玲子って、こんなに美人だっけ(笑)。

 むしろ本作で、中山仁の妹を演じた、新人女優・吉田日出子の方がぴったしカンカンなのでわ(笑)。
 ま、吉田日出子主演では、映画は、売れない、という判断は、松竹としては、真っ当だが(笑)。
 いや、ぼくも堤玲子さんを詳しく存じているわけではないけどさ、ぼくの若いころ、「面白半分」?などの、カウンターカルチャー誌に、ルサンチマンあふれる勢いのある、ややお下劣な、エッセイを書き飛ばしていて、それらを読んだ記憶がある。
 むろん当時はお子ちゃまであったぼくが、堤玲子の何たるかを知っているわけでもなく、無論堤玲子版「真淫姦婦」たる「わが闘争」なども、読んではいなかったが。

 しかし、コレだけは断言できる。
 もし佐久間良子のように、清純さと淫蕩さを併せ持つ「奇跡の美貌」に生まれていたら、ルサンチマンなど抱く必要はなかったのでは、ないか。明らかに、ミスキャストで、ある(笑)。
 祖父・吉田義夫、そして両親が桑山正一&野村昭子で、ある(笑)。この容貌魁偉な(笑)家系から、岩本多代、佐久間良子、香山美子、加賀まりこ、この美人四姉妹が、なぜ、生まれるのか(笑)。
 明らかにおかしいだろう、中村登(笑)。 このきょうだい唯一のオトコが、夏八木勲なのは、まあ、納得しても、よいが(笑)。
 しかし、東映から佐久間、夏八木を呼んでまで、どうしたかったのか、中村登及び松竹は。時にお公家さん集団と揶揄される松竹が、東映のワイルドなパワーを借りて、堤玲子の下世話なパワーも借りて、再生を図ったのか。
 まあ、松竹的には、無駄な努力だったが。
 結果的には「お公家さん」メロドラマの中村登及び松竹が、トンデモ怪作を作っちゃった、というところが、落としどころか。まじめなシーンで、笑いどころ多数の珍作状態。
 それとも、あえて、笑いを、取っているのか。

 佐久間良子も、東映ではなかなか作ってもらえない「きれいきれい女性映画」を、その「きれいきれい女性映画」の本場たる松竹で、「きれいきれい女性映画」の巨匠・中村登で、主演に招かれた、喜び勇んで、大船に行ったら、この「怪作」だった、という落ちは、あんまりだよね、という展開か。
 岩本多代、佐久間良子、香山美子、加賀まりこ、この美人四姉妹なら、松竹で、中村登で、「真っ当な」(笑)四姉妹ホームドラマが作れたものを。
 これに、佐久間良子なりのルサンチマンが現れたか(笑)。まあ、あだしごとはさておき。
 中村登も、たまには「変り種」の四姉妹モノを作ってみたかったのか。

 そもそもこの映画は、出だしからして意味不明。
 祖父がついデキごころから街娼を買い、梅毒菌をもらい、隔世遺伝で、孫娘の岩本多代が白痴で生まれた、以後堤家は狂いっぱなしの人生、ということらしいが、その祖父が、最初から吉田義夫なので、どう見ても、息子が生まれる前の「若いころの不始末」に、見えないから、観客は、混乱する(笑)。

 初対面の男・入川保則の自殺に、気前よく付き合う「堤玲子」だが、死ぬのは平気だが、心残りがあるという。
 実は彼女には「美少年願望」があり、死ぬ前に美少年の童貞をいただきたい(笑)、と町に繰り出す。
 喫茶店でノートを広げている高校生を誘い出し、そこらに駐車してあるトラックの荷台で、一発、童貞ちゃんをいただく(笑)。
 でも、この彼女のメガネにかなった「美少年」が、どう見ても「美少年」に見えず、ただの、ひょろりとした少年にしか、見えない。「美学」が感じられない(笑)。
 いっぽう彼女を、通り過ぎて行った男たち、中山仁、川津祐介、入川保則、それに兄弟だが夏八木勲 、彼らのほうが、童貞ではないにしろ、立派なイケメンぞろいでは、ないか(笑)。
 どうなってるの、この美意識(笑)。おかしいというしかない(笑)。

 まあ、映画は、特に松竹メロドラマは、美男美女が鉄則で、いかに自伝といえど、美化は避けられない。それは、わかる。わかるが、あまりに、ひどすぎないか。
 実話の映画化で、モデルより演じた役者がブ男(または、ブス)なのは、ぼくの知るかぎり、堀川弘通「おれについてこい!」で、鬼の大松を演じたハナ肇くらいか(笑)。まあ例外(笑)。

 それに「堤玲子」は、祖父以来の「劣悪な血筋」を嫌悪するあまり、男とは寝ない、子供は作らない、が心情のはずなのに、だからイケメンの川津祐介も拒否していたのに、「美少年」?の童貞はいただいちゃうし、入川とも結婚、出産も二度目は、前向きになる。
 これ(男とは寝ない)を守り通していたら、松竹メロとしても、異色作が出来たものを。確か70年代の彼女は、レズ宣言をしていなかったか? よく、わからん。

 映画の後半で、それまで描写に、文学少女の影も形もなかった「堤玲子」は、同人誌の合評会に参加し、詩集も自費出版。まるで、戦後版林芙美子、ははあ、この「文芸映画」風にだまされて(笑)佐久間良子は、松竹くんだり(笑)まで、売り飛ばされたのだな(笑)。朝日新聞言うところの「強制連行」のようなものか(笑)。

 しかし、佐久間良子も、男と寝ないことには売りにならず、まあこの時代の主演女優だから、男に被い被されて、そのあえぎ顔のみでセックスシーンを表現するのだが、もちろんことに、あの独特のタラコくちびるで、あえぐ佐久間良子の、あえぎ顔が超エロいのは、いうまでもない(笑)。
 佐久間良子、そしてもちろん香山美子のスバラシさで、持つ映画。
 ただし、これが「堤玲子」原作としては、完全な「原作レイプ」以外の何者でもなく、ああ本作への「堤玲子」の感想なんで、読みたい読みたい(笑)。完全なボロのクソだろう(笑)。

 なお、加賀まりこがらみのサブキャラで、石坂浩二。(第一回専属)の、クレジットも、ひょろひょろ青年で、印象も薄いが、最後にあんなに大活躍(笑)するとは、意外。
 岡山が舞台の映画ゆえ、長門勇特別出演。「ぼっけえ」という方言が冒頭にあるので、それと知れる。堤玲子、岩井志麻子、「八つ墓村」と、岡山は、ぼっけえきょうていで、負えんやせんがな、な危ない土地柄か(笑)。

 この映画、出来れば、マスマスムラムラで、見たかった(笑)。

★孤高の作家、堤玲子さんを復活させたい。:南川泰三の隠れ家日記ブログエッセイ・「猿の手相」★
 ある作家のブログによる、2005年時点での堤玲子。まさか、彼女がまだご存命とは意外であった。
 破滅型作家として、若死にしていた、という「印象」が、あった。むしろ「したたかに、自分だけは、生き延びるタイプ」という、意外な落ち。いや、これが、案外と堤玲子の本質なのかもしれん。ジャスコのイートインコーナーで、タバコをくゆらす堤玲子。堤玲子の「わが闘争」とは、死に急ぎとは真逆の、「生き延びる」ことであったのか。

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by mukashinoeiga | 2014-09-01 19:22 | 珍品・怪作の谷 | Trackback | Comments(2)

西河克己「白鳥」 吉永小百合渡哲也関口宏清水将夫下元勉二木てるみ

 阿佐ヶ谷にて。「昭和の銀幕に輝くヒロイン 第73弾 吉永小百合」モーニング特集。66年、日活。7月26日(土)まで上映中。
 この小百合モーニングも、そうそう朝っぱらから阿佐ヶ谷に駆けつけるわけにも行かず(ナンセ、朝が嫌<ヤ>というくらいですから>笑)松尾昭典「風と樹と空と」野村孝「未成年 続・キューポラのある街」森永健次郎「こんにちわ20才」と、3週見逃し続け(ただし「風と樹と空と」は昔に既見)、本作でやっと、阿佐ヶ谷に。
 以下、ネタバレあり。

e0178641_8581279.jpg白鳥 1966年(S41)/日活/カラー/80分 <ラピュタ阿佐ヶ谷HPより>
■監督:西河克己/原作・脚本:松山善三/撮影:高村倉太郎/美術:佐谷晃能/音楽:林光
■出演:渡哲也、関口宏、清水将夫、新井麗子、下元勉、二木てるみ、夏川静江、久遠利三、榎木兵衛、村上和也
結婚を控えた娘が病気の妹を抱える貧しい青年と出会い、次第に惹かれていく──。吉永小百合が二人の男を愛するという役どころで、清純派からの脱皮を試みた意欲作。それまでのイメージとは全く違う顔をみせる。

 信じられないストーリー(笑)。
 同時に二人の男(婚約者の上品(笑)な関口宏と、ワイルドな渡哲也)を愛してしまったために、自分が許せず?自殺してしまうムスメに、吉永小百合。
 イマドキ(50年前だが)こんな古風なドラマが成立しうるのか、三隅研次「剣」の市川雷蔵同様に不可解といわざるを得ない。
 ただし、吉永の父・清水将夫は、出征中、妻に裏切られ、妻は夫清水の実弟・下元勉と出来てしまい、実は吉永は父の実弟の子。同時に二人の男を愛してしまった娘・小百合に、「やはりお前は母親の不倫な血が流れていたのか」(大意)と、父はののしる。
 そういう「負い目」も、小百合には、あるのだが。
 にしても、同時に二人の男を愛してしまったために、自分が許せず?自殺? やりすぎでは。

 そう感じる理由は、吉永小百合にもある。
 彼女を初期にエキストラ的に(あるいはスクリーン・テスト的に)鈴木清順「すべてが狂ってる」で10秒くらい映して、そのご一切の小百合映画からオミットされた鈴木清順が、小百合とは関係なく、言った迷言、「映画を見てつじつまが合わないと感じるのは、主演俳優のせい」(大意)、つまり主演俳優に圧倒的魅力・説得力があれば、少々のつじつま不足?は、解消されてしまうという迷言だ。
 そういう迷言とはまったく関係なく(笑)吉永小百合には、この不条理をねじ伏せる「俳優力」が、なかった。ちなみに「剣」の不条理を、市川雷蔵は、ねじ伏せた、ように思う。
◎追記◎トいうか、「剣」のあの役を、ねじ伏せ可能な、唯一無二の役者が雷蔵その人だけなので、三島・三隅・雷蔵のコラボこそ、まさに奇跡!
 
 強い目ジカラの、明朗な意思、強固な快活さで、人気を得てきた少女スタアが、それだけではやっていけなくなる時期、つまり成長し、ある意味、「大人の事情」を演じなければならない時期に来て、こういう「同時に二人の男を愛する」シチュエーションに直面したときに、その、空っぽなまでの中身が、露呈してしまう。
 フクザツな「大人の事情」を表現する演技力、いや、そのバックグラウンドすらないことが、その演技をすかして、ばれてしまう。
 アイドル女優として「特化」した人気を得た者には、そもそも「バックグラウンド」がないゆえに、アイドルとして人気を博したという部分もある。
 かつて「アイドル女優」は、トイレにも行かないんだ、という「幻想」を振りまいて、人気を博した、という表現が、あった。
「トイレに」すら「行かない」女優が、どうして「大人の事情」を演じうるのか。まず、人生には「汚物」があり、それは避けられないと認めることこそ、「♪大人の階~段」を登る、第一歩では、あるまいか(笑)。
 うろ覚えだが、かつての、つかこうへいの迷言。その役者に信じうる「暗いバックグラウンド」があれば、教室で数学の公式を述べても、観客を感動させうるのだ、と。

 そういう「背景」を感じさせず、しかし大人らしい「女性の柔らか味」を得つつある彼女には、コドモらしい「強い目力」「強い、無垢な意思」の表現が、だんだん似合わなくなって、もはや「彼女は昔の彼女ならず」。
 「汚れちまった悲しみ」を表現するすべも背景もなく、「ただの美人女優」「ただの美人キャンペーンガール」としての「余生」を、消費せざるを得ないだろう。

 渡哲也の、死病が進行しつつある妹に、二木てるみ。顔にもギブスをはめ、寝返りは愚か、顔を天井以外に向けることすら不可能な、寝たきりの病人。
 小百合が贈った、きわめて高価そうな、外国製のオルゴールにすら、目を向けることすら、出来ない。
 もちろん話し相手の兄・渡哲也にも、小百合にも、目を向けることすらできない。
 まあ、こういう難病役は、演じる役者にとって、きわめて「おいしい役」であるという点を差し引いても、吉永小百合は、その演技のレヴェルで、圧倒的に、二木てるみに、負けている。
 「信じうる背景のあるなし」で、小百合は、二木てるみに、圧倒的に、かなわない。そういうことだ。

 その小百合が、渡哲也を追って、結果的にも二木てるみにたどり着くしょっぱな、小百合が通過する、ある私鉄駅前で、学生服の青年がアジ演説。
「憲法改憲と徴兵制につながる小選挙区制導入に反対!」
 イヤー爆笑しましたね(笑)。
 バカの一つ覚え、バカ左翼の一つ覚え、バカ左翼の、現在最新のアジ演説と、50年前のアジ演説が、まったく変化なし(笑)。
 いまは、「憲法改憲と徴兵制につながる集団的自衛権に反対!」ですか(笑)。
 少なくとも、まずバカ左翼諸君は、
「この50年以上、憲法改憲と徴兵制が来るぞ、来るぞ、と無駄な危機をあおってきたのに、実際は、この50年間、憲法改憲と徴兵制は、ありませんでした。少なくとも、この50年間、私たちバカ左翼は、狼少年として、日本国民の皆様を、だまし続けてきた、ペテン師です
 と、半世紀に及ぶ非を認めてから、そののち、「でも、いま、安倍政権になって、ホントウにやばいんです! 今度こそ、憲法改憲と徴兵制が、来るぞ来るぞ」と、百年変わらぬ(笑)アジ演説を、していただきたいもので。
 おそらく、朝日や東京や日刊ゲンダイの、インテリな読者(笑)は、何でこれほど報道されているのに、いまだに大勢のババアは、オレオレ詐欺に引っかかるんだ、と鼻で笑っておられると思いますが、そういうおまえらこそ、この50年間、憲法改「悪」と徴兵制がクルクル詐欺に、だまされ続けでは、あーりませんか、と言いたい(笑)。

 まったくの余談だが、「信じうる背景のあるなし」において、まったくのバックグラウンドを持たない、つまり脳内お花畑の吉永小百合は、いい年こいて、いまだにお花畑左翼少女のまま。
 「汚れちまった悲しみ」を表現するすべも背景もない「ただの美人女優」「ただの美人キャンペーンガール」こそが、ああ、左翼お花畑キャンペーンガールとしての人生に「同調」してしまうのも、ゆえない話ではないということだろうか。

◎追記◎吉永同様の「日活少女スタア」として、あるいは小百合以上の明朗快活さを振りまいていた和泉雅子が、同時に暗く沈んだ文学少女をも体現し、またやんちゃなちゃきちゃきムスメを演じた鈴木清順「悪太郎」シリーズ「刺青一代」、その他の日活映画でもそうだが。小百合と違い「バックグラウンドを感じさせた」しかし同時に「明朗少女アイドル」でもあった和泉雅子の、実質的な女優引退(長い休業?)が、つくづく惜しまれる。
 個人的には、生涯女優の小百合、ルリ子より、雅子、いづみ、礼子のほうに女優としてやってもらいたかったような(笑)。
わが青春の吉永小百合 PART.1(西河克巳インタ映像もあり)


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◎おまけ◎吉永小百合~浜田光夫と青春の想い出を語る~ 前篇

吉永小百合~浜田光夫と青春の想い出を語る~ 後篇


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by mukashinoeiga | 2014-07-25 02:23 | 珍品・怪作の谷 | Trackback | Comments(8)

番匠義彰「浮気のすすめ 女の裏窓」超珍作!

 神保町にて。《エロスのある風景》特集。60年、松竹大船。6/27(金)まで上映中。
 なんとも、アッと驚くア然呆然の珍作で。
 通常B級プログラム・ピクチャアながら、次の展開が、次々の展開が、まったく読めない、あれよあれよの逸脱振り(笑)。
「幻の湖」同然の珍作ぶりは、プロデュースの手腕によっては、場内大爆笑のカルト珍作に「成長」する可能性も(笑)。

e0178641_9155276.jpg「浮気のすすめ 女の裏窓」 <神保町シアターHPより>
S35('60)/松竹大船/カラー/スタンダード/1時間28分
■監督:番匠義彰■原作:吉行淳之介■脚本:椎名利夫■撮影:太田喜晴■音楽:牧野由多可■美術:川村芳久■出演:伴淳三郎、瑳峨三智子、山下洵一郎、岩下志麻、高峰三枝子、大泉滉、トニー谷
吉行淳之介の随筆を原作に、人々の性行動の可笑しみを描く。社長から逆恨みされ職を追われた男(伴淳)が、詐欺紛いの結婚相談所で働く羽目に。売春斡旋を生業とする女(高峰)と、そこに集う人々の色と欲とが絡み合う、皮肉とユーモアたっぷりの群像喜劇。

 なんと、主人公・伴淳三郎が、しどけないネグリジェの高峰三枝子にセマられ、同じくしどけないネグリジェの清川玉枝(笑)にセマられ、喪服姿も色っぽい瑳峨三智子に押し倒され、ダンゼン色っぽい人妻・杉田弘子に(金ゆえとはいえ)セマられ、さらに、当時清純派アイドル女優というべき岩下志麻に、年の差倍以上の結婚さえ、迫られる!
 これを不条理といわずして、何が不条理か!という、艶笑コメディだ。
 原作は吉行淳之介、おそらく「男女の機微」をテーマにした、週刊誌連載のエッセイと推察される。その、吉行がさまざまに見聞したり体験したりした事実が、伴淳三郎・山下洵一郎父子のドラマに集約されたため、あまりに濃密なエピソードつるべ打ちが、次々の展開が読めない珍ドラマに、発展してしまったのだと、推察するが(笑)。
 詳細は、あとでゆるゆると追記することにして(笑)傑作でも快作でもないが、まずは絶対のオススメ(笑)。
 個人的には、日本映画史を横断する奇作だとも、思う(笑)。
◎追記◎この伴淳三郎が、超カタブツで、次々襲い掛かる(笑)「女難」をすべて拒否。これは、どうなの。
 東宝喜劇などで、スケベ好色オヤジを演じているときは、あんまりもてず、今回の超カタブツではモテモテ。なかなか、うまいこといかしまへんなあ、というところだが、主人公がすべからく、女性からのアタックを拒否という構造は、いわゆる艶笑コメディとしては、いかがなものか、という。
 コメディとしてはともかく、艶笑コメディとしては、袋小路というか、隘路に陥りすぎてはいないか。
 なお、きわめて年若い岩下志麻が、初老・伴淳に、果敢にアタックの件。
 つい最近見た井田探「天使が俺を追い駈ける」(感想駄文済み)も、吉永小百合が三木のり平に恋して、アタック。
 つまり、これは、あるアイドルが「好きな男性のタイプは?」という、ありがちな質問をされて「笠智衆」と答えるようなもの(笠智衆存命時のエピソード)。
 同年代の男子アイドルの名を上げたら、生々しすぎて、しゃれにならない。さらには、その男子アイドルの女性ファンから、逆恨みも受けよう。さらに、当アイドルの、男の子ファンも、ドン引きか。
 50才の差の笠智衆、という、現実にはありえない、ファンタジー性ある回答こそ、アイドルとして浮世離れした、ふわふわ感あふれる無難な受け答えというものであろう。
 同様なことが、吉永小百合が三木のり平を、岩下志麻が伴淳を、という、非現実的であるがゆえのコメディ感というところなのだろう。
 しかし「天使が俺を追い駈ける」のような軽コメディでは、それはゆるされるとして、本作のような艶笑コメディとしては、どうなのか。やはり、「やばい感じ」があるべきであろう艶笑コメディとしては、それは場違いなのではなかろうか。
どうでもいいが、上記神保町シアターHPではスタンダードとなっているが、正しくはシネスコサイズ。
◎再追記◎ああ、大事なことを書き漏らしていた(笑)。
 最近、女性都議塩村文夏への都議会でのセクハラ発言が話題になっているが、本作の清川玉枝は「全国初の、そして現在ただひとりの女性市長」という設定。その彼女が、首都出張のお楽しみ、男性を買春するという設定は、いかがなものか(笑)。「全国初の、女性市長」なんて、ネット検索すれば、一発でわかる実在人物だろう。まあ、そんなヒマなネット検索なんてしないけどさ(笑)。
 まあ、この映画の制作当時は、セクハラなんて言葉も「実在」も、なかったということですからね。いい時代でした(笑)。いや、これは、反語的皮肉表現ですからね(笑)。
◎再々追記◎オヤジ・伴淳が、エロフィルムに「出演」したことに激怒した山下洵一郎、後年に自身、ピンク映画に出演したことを思い合わせ、大爆笑。ああ、人生は、すべからくブーメランだなあ、と。

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by mukashinoeiga | 2014-06-23 21:43 | 珍品・怪作の谷 | Trackback | Comments(4)