2016年 01月 24日 ( 1 )

三隅研次「婦系図」

 京橋にて。「映画監督 三隅研次」特集。62年、大映京都。
 三隅流女性映画、快作の一本。あと1回の上映。
 ただし、雷蔵・万里昌代のカップルの話より、サイドストーリーの、木暮実千代・三條魔子おやこの話に、この映画化は5回というが、どの映画を見ても、つい泣いてしまう。再見の本作でも、ついついもらい泣き。

e0178641_8405569.jpg婦系図(99分・35mm・カラー) <フィルムセンターHPより>
1962(大映京都)(監)三隅研次(原)泉鏡花(脚)依田義賢(撮)武田千吉郎(美)内藤昭(音)伊福部昭(出)市川雷藏、万里昌代、船越英二、三條魔子、水戸光子、木暮実千代、千田是也、片山明彦、伊達三郎、石黒達也、藤原礼子、近江輝子
身分違いの恋を綴った「婦系図」の5度目の映画化。新東宝で「グラマー女優」として活躍していた万里昌代は、同社倒産後に大映へと移籍し、本作のお蔦役の好演によって新派/時代劇女優としての資質を開花させた。また本作は三隅が依田義賢と初めて組んだ作品でもあり、2人は以後も女性映画の名作を生み出していく。

 雷蔵・万里昌代パートの欠点は、恩ある先生との心理的三角関係が、もたらす緊張、意地の張り合いが、通俗心理としても、異常?心理としても、説得力に欠ける点にあるのだろう。
 ようは、気まぐれ暴君の、無理無体が、悲劇の原因なのだが、その無茶振りを、千田是也は、好演している。自分の気まぐれな振る舞いが、いかに他人に影響を及ばすか、まったく無頓着な暴君。
 そして、頭はよいが、スリ出身なのに、ストリート・ワイズに欠ける雷蔵。
 芸者としての粋、おんなとしての意地、つまり明治的ヤンキーの突っ張り主義、それが極めて情緒的な自己犠牲志向と結びついて、万里昌代も雷蔵も、甘美な陶酔の毒に浸っているかのように、見える。
 いわば、このカップルは、ふたりながら、完結した自己世界に閉じこもったジャンキーなのだ。ぼくには、そのように見える。

 いっぽう、世間知マスター(笑)木暮実千代は、生まれてすぐ手放した娘と、再会する。
 純真無垢な三條魔子は、その事実を、知らない。
 いわば世間の垢を知り尽くした女が、世間の穢れなどほとんど知らない初心な娘と、遭遇する。
 純真無垢な娘の、知らない者の強みを天然で発した、そのいちいちの振る舞いに、ただひたすらおろおろするしかない知りすぎた女の、呆然。これが、泣かずに、いられようか。

 そう万里昌代の悲劇は、中途半端さに、あったのか。中途半端に世間を知っていて、しかもまだ、純情さが、ある。
 この中途パンパが、始末に悪い。イッちゃなんだが、もっと小ずるく立ち回って、ストリートワイズに欠ける雷蔵を適時リードしてやれば、また展開は変わっていたかもしれない。姉さん女房になれば、よかったのだ。
 まあ、それでは、紅涙を絞る悲恋悲劇には、ならないか。

 さて本作では、原作改変により、水戸光子・片山明彦親子が登場。息子の嫁にと、三條魔子に御執心。この、小ずるい親子が、それなりの罰を受けるのに、弟子カップルを悲劇に叩き込んだ恩師・千田是也が、何のきずひとつ負わないのは、片手落ちであろう。
 そこが、このドラマの、弱いところ。

 なお、未来の嫁候補をあさりに、この親子、良家の子女が通う、女学校に授業参観(笑)、浅ましく娘たちをねめ回して、三條魔子に白羽の矢。
 で、魔子の学友エキストラの中に、ひとり目立つ顔、これがどう見ても藤村志保にしか、見えない。
 藤村志保といえば、
1.1962.04.06 破戒  大映京都  ... お志保
2.1962.07.01 斬る  大映京都  ... 山口藤子
3.1962.07.15 鯨神  大映東京  ... エイ
4.1962.08.12 長脇差忠臣蔵  大映京都
5.1962.09.01 青葉城の鬼  大映京都  ... 三沢はつ
6.1962.12.01 忍びの者  大映京都  ... マキ
7.1963.01.03 新選組始末記  大映京都  ... 志満 (以上、日本映画データベース)

 デヴュー作「破戒」をはじめ、この年には実質7本の映画を撮影している、この年の新人女優だ。いっぽう本作は、1962年2月21日公開とのこと。一種のスクリーンテスト的な、あるいは小手調べ的な、エキストラ起用なのか。
 三隅は気に入ったのかどうか、それとも大映京都イチオシの新人女優として使わされたのか、不明だが、「斬る」 「青葉城の鬼」「新選組始末記」と、最多3本も起用。特に「斬る」の冒頭を独占する藤村志保のすばらしさ。また、同作には、万里昌代も。

 感想駄文済みの三隅「大菩薩峠」でも、卑怯な小ずるい男を好演した片山が、本作でも小狡さ発揮。父・島耕二も、若き日に小ずるい小悪党色魔を好演していたが、さすが、親子、といっていいものか(笑)。
 水戸光子の不吉な娘に、藤原礼子。出てきたとたんに、その無表情が、不吉そのもの。藤原礼子といえば、代表作は、感想駄文済みの増村保造「爛(ただれ)」か。田宮二郎をトコトン追い詰める藤原の怪獣ぶりは、忘れられない。
 こういう不吉顔の女優を、それなりに遇しているのが、大人の大映たるゆえんで。

三隅研次監督『婦系図』 お蔦と主税の別れ


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by mukashinoeiga | 2016-01-24 08:41 | 三隅剣児女なみだ川と大魔剣 | Trackback | Comments(3)