村野鉄太郎「雪の降る街に」高原巧山崎努小桜純子川口浩三津田健渚まゆみ

次の展開が読めない異色青春ドラマ?
 渋谷にて「シネマヴェーラ的大映女優祭 小西康陽とシネマヴェーラ渋谷によるセレクション」特集。62年、大映。
 都内の名画座が、大映というより、大映を吸収した角川映画に誘われたのだろう、それぞれ工夫した大映特集を展開する。面白い試みで、ファンとして歓迎したい。
 ただこの規模な特集は大映ならではの事情、多彩な作品があり、なおかつ地味で今まであまり光が当たってこなかったような点がある気もするので、次の展開はむずかしいかも。

e0178641_239305.jpg『雪の降る街に(16mm)』公開:1962年 (渋谷シネマヴェーラHPより)
監督:村野鉄太郎
出演:高原巧、山崎努、小桜純子、川口浩、三津田健、渚まゆみ
秋田の雪深い街。高校野球のエース・信夫の家をプロ野球選手の辺見が訪ねてくる。信夫は辺見の妹・久美子に一目で恋するが、彼女は信夫の兄・一郎に惹かれ…。雪深い街を舞台に、都会から来た娘をめぐる兄と弟の相克を『雪の降る街を』のメロディに乗せて描いたドラマ。スキーの選手生命を断たれ屈折した一郎を山崎努が演じる。【小西康陽セレクション】

 確かに本作は紛れもなく青春ドラマなのだが?
 まず第一に、大人のドラマに絶対的な安定感を持つ大映は、だからか、青春ドラマが、苦手。
 本作も、映画自体に青春感がないし、いかにも昔の田舎の高校生らしいジャガイモ顔の主人公にも青春感がないのだ。
 ジャガイモ君はある場面では、ふてぶてしいまでに大人っぷりなゲスさを発揮し、いかにも大映で。
 最後の大泣きは小学生っぽい。ジャガイモ君は、青春だけが、ない、とは言いすぎか。

 そもそも地元出身のプロ野球スタア投手の大瀬康一が肩を壊し、秋田の温泉で療養中。そのいもうと小桜純子に、ジャガイモ君は、一目惚れ。
 一切のタメもなく、彼女にアプローチ。ここには自分の田舎者でジャガイモ顔に対するコンプレックスが一切ない。まるでこの少年は、思春期の悩める少年ではなく、中年成金のスケベおやじのようだ、とはいいすぎですねはい(笑)。
 ジャガイモ顔の無名俳優と、華のない地味地味な新人ヒロイン。こんな組み合わせは、絶対に大映でしか、ありえない。
 地味地味カップルの主演ゆえ青春感はどんどん低減し、話をぼやけさせていく。
 それに湯をかけて、もとい、輪をかけて、話をボケさせていくのが、ジャガイモ君の兄・山崎努だ。
 世間では山崎努や緒方拳、仲代を名優扱いだが、ぼくはこの三人をうまいと思ったことはない。このハンチクな引きこもり君(というのも不正確だが。家族とも子供たちとも普通に接しているし)を繊細に演じるには、山崎の演技力では、はっきり不足。
 この複雑な彼を楽々演じきれるのは、この時期おそらく市川雷蔵ただ一人か。ただこんな低予算ノンスタア映画に雷蔵は出せまい。
 ド定番の定食番組を得意とする大映が、下手に文芸映画に手を出したというところかな。
 なおそれなりに余韻のあるラストも、ダークダックスの同名主題歌が流れ、すべて雰囲気ぶち壊し(笑)。

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by mukashinoeiga | 2017-11-17 02:39 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(2)

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Commented by お邪魔ビンラディン at 2017-11-18 01:02 x
同時代性から言ったら、あの主人公は雷蔵よりも伊丹一三、川津祐介、三上真一郎、江原達怡、菅原文太といったあたりが適任でしょう。それにしても、ちらっと出てくる脇役たちの層の厚さはこの時代のプログラムピクチュアならではで、村野鉄太郎にしてはイマイチといった出来でも、まるまる損をしたという気にはなりません。それにしても、ラストの主題歌挿入は、センスのないおエラいさんに無理矢理入れさせられたとしか思えませんね。
それから、山崎努や緒形拳は「TVの名優」なんですね。あの芝居は、TVのフレームで1時間ドラマの枠の中で演じてこそ活きるので、映画では、たまに「間違って」名演技になる場合があると見るべきでしょう。(たとえば野村芳太郎の「鬼畜」とか)
Commented by mukashinoeiga at 2017-11-19 05:05
村野鉄太郎「雪の降る街に」へのコメント、お邪魔ビンラディンさん、ども。
 さしずめインテリには似合わない川津三上江原菅原は、どうなんでしょうね。伊丹は老成していてセーネンのイメージないですかね。うーん。

>ちらっと出てくる脇役たちの層の厚さはこの時代のプログラムピクチュアならでは

 杜氏にアケボン、スカウトにウシマンさん、高松英郎ですからね。ウシマンさんはキャッチャー崩れの、高松はショート崩れのスカウトと、背景まで読めてしまう(笑)。
 あの主題歌はないなあ。
 野村芳太郎「鬼畜」は、あまりにシャレにならない陰惨で、出来不出来以前に、体で受け付けません(笑)。  昔の映画
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