山本弘之「第五列の恐怖」轟夕起子中田弘二永田靖見明凡太郎伊澤一郎潮萬太郎水島道太郎北龍二

超レア物だが、内容は、うーん。
 阿佐ヶ谷にて。「昭和の銀幕に輝くヒロイン 第86弾 轟夕起子」モーニング特集。42年、日活多摩川。
e0178641_6495140.jpg 通常は一週間上映の阿佐ヶ谷だが、フィルムセンターから借りたプリントは、三日しかできない縛りがある。平日最終日に行ったら、上映一時間前に、すでに長蛇の列(阿佐ヶ谷レヴェルではね)。
 案内の人から「補助席になりますが」、とりあえず並ぶ。その後もどんどん客が来て、返されていく。お詫びの轟夕起子しおりをもらって。
 おそらく三日間で、延べ百人近くは、見れなかったのではないか。
 場内に入ってみれば、なぜか普通席が一つ空いていたので、そこに座った。おそらくぼくの前にいた人が一人列から離脱しているので、そのせいか。「第五列の恐怖」を見に行って、列に並ぶ。

e0178641_6502621.jpg第五列の恐怖 (ラピュタ阿佐ヶ谷HPより)
1942年(S17)/日活多摩川/白黒/64分 ○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
■監督:山本弘之/原作・脚本:北村勉/撮影:内納滸/美術:仲美喜雄/音楽:飯田景應
■出演:中田弘二、永田靖、見明凡太郎、伊沢一郎
第五列(=スパイ)への警戒を国民に呼びかけるため製作された戦争映画。日本で新開発された無音発動機をめぐり、轟夕起子扮する女スパイ・YZ七号が破壊活動を計画。それを阻止するため憲兵隊は必死の捜査に乗り出すのだった…。轟が初の悪役に挑戦した異色サスペンス。めったに上映されない映画で、今回の特集上映の超目玉作品。

 なお相変わらずこの映画解説はヒドイ。本作はスパイ映画であっても、戦争映画では、ない。偏見で勝手に映画をカテゴライズするな! 007を戦争映画というか。言わないだろう。

 始まって十数分は、実に大勢の人物が同時に登場して右往左往。誰が誰だかわからず混乱するが、これは演出家の無能だ。ヤマサツやミッキー成瀬程度(笑)の交通整理能力を欠いている。
 時間経過とともに、落ち着くが。
 驚くべきは、轟夕起子の演技。通常の愛らしい、アイドル女優演技で「悪役スパイ」を演じる。まあいかにも悪役悪役していたら、スパイは務まらないか(笑)。
 ターゲットの航空機社長・見明凡太郎の娘に取り入り、そのホームパーティーに何食わぬ顔で「潜入」した轟が最新情報を得て、即興でピアノを弾く。そのピアノ曲を盗聴している外国人スパイ、ジェームス・ペインタース=高田弘(いかにもバタ臭い外人顔)が音符暗号を解読する。って、まんまヒッチコックやないかーい(笑)。
 ピアノが弾けて、なおかつ反日スパイらしい?適度なバタ臭さ?というところで轟が選ばれたのか。和風の花柳小菊では、イメージに合わないということかしらん。

e0178641_651158.jpg なお検索で見つけた映画収集狂というブログでは、

この轟夕起子演ずる女スパイのコードネームを「Y-27号」といいますが、「Y-27号」とは、どこがで聞いたような番号だな、と考えていたら、思い出しました。
ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督「間諜X27」でディートリッヒ演ずる女スパイのコードネームが、まさにX-27号でしたよね。なるほど、なるほど。
僕は、はたして当時の日本映画に「分野としてのスパイ映画」を娯楽として成り立たせ得るような欧米に匹敵する成熟した大衆的な土壌があったのかと疑問に思い続けていたので、この命名といい、シュチエイションといい、欧米作品を全面的に拝借した手掛かりを得て、なんとなく納得した気になりました。
また、この映画が憲兵隊司令部から特別な表彰を受けたということからも察せられるように、あるいは、作られた1942年の戦局が厳しく切迫した状況にあったことを加味しても、軍部が苛立ちをつのらせて大衆に大きな影響力を持つ防諜映画に眼をつけ、「肝いり」したと考えたほうが、あるいは自然かもしれません。
この作品、当時はあからさまな酷評もありましたが、国民の防諜観念を向上させたとして憲兵司令官より感謝状も授与されたということと、映画統制によって新会社大映に統合される前の、日活多摩川撮影所名義の最終作としても記憶されるべき貴重な作品と言えます。(以上引用終わり)

 正確に轟のコードネームは、YZ7號。映画収集狂さんはZを2と「誤読」したように思うが、いずれにしても誤読させるように「間諜X27」をパクったのは、間違いなかろう。ディートリッヒのような大スタアもスパイ役を演じている、という一言は、当時の清純スタアに、本作出演を後押しする格好の口説き文句だったろうし。

 なお本作のデータについて検索したが、文化庁の日本映画情報システムHPは、他の映画を検索したときもそうだが、全くの役立たず。典型的お役所仕事の税金泥棒。ひどさもひどし。みたら笑っちゃうレヴェル。
 日活作品データベースは、さすがに詳しい。

撮影所稟議書によれば撮影=糸田頼一となっている。2003年6月6日フィルムセンターで上映(ロシアからの返還フィルムの1本として)。現存フィルムはカット入れ替り、シーンダブリ等あり、1/3位欠落した不完全版であるが、ストーリー理解は可能"(現代劇)
監督山本弘之 キャスト野口少佐(憲兵隊長)=中田弘二 森本光雄=伊沢一郎 小柳二郎=北龍二 YZ7号=轟夕起子 平田淑子=国分みさを 寺田中尉=永田靖(特別出演) 昭和航空機社長・平田兵衛=見明凡太郎 航空会社専務=村田宏寿 水田=水島道太郎 門衛=小宮一晃 渡辺伍長=笠原恒彦 森本の母=三井智恵 スコット牧師=吉井莞象 金山鉱三=斎藤紫香 江川運転手=潮万太郎 ジェームス・ペインタース=高田弘 長野軍曹=菊地良一 車掌=井上敏正 ボーズ=富士木弘 渥美君子 若原初子 町田博子 文野朋子 小林桂樹 
脚本北村勉 音楽飯田景應 その他スタッフ原作/北村勉 撮影/内納滸 糸田頼一 美術/仲美喜雄 編集/辻井正則
<ご注意>戦前の製作作品(1942年以前)は、資料の不足などの事情により、当HPのデータの内容が必ずしも正確なものとは限りません。
製作国:多摩川 製作年:1942公開年月日:1942/4/16 上映時間ほか:モノクロ/94分現存分数66分/スタンダード・サイズ/9巻/2580m(以上引用終わり)

 製作国:多摩川は、ご愛敬だが、驚くべきは、ランニングタイムの三分の一が失われた不完全フィルムとのこと。
 同時上映の島耕二「暢気眼鏡」は[不完全]と明記している阿佐ヶ谷も、フィルムセンターとずぶずぶの文化庁も明記なし(わかる人にはわかる9巻という表示で手がかりつかめって>1巻は約10分)。

現存フィルムはカット入れ替り、シーンダブリ等あり 確かにおかしい繋ぎは散見しましたが、これってなんのせい? 当時の映写技師が、フィルム切れの際、いい加減につないだってこと? 確かにそれはありそうだが。

 なお戦前戦後を通じて数多くの脇役陣が多数出演の豪華さ。OLD映画ファンにとっては、うれしき限り。ただし最後尾の小林桂樹については確認できず。電車内で新製品の噂をする職工風の男の一人だろうか。
 なお令嬢役の国分みさをには、別データベースでは、國分ミサヲという表記もあり。ここら辺があまりプリントもデータも残っていない戦前映画の難しい/面白いところ。

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by mukashinoeiga | 2017-09-03 06:51 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(2)

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Commented by サセレシア at 2017-09-03 11:13 x
いや〜観たかったですな・・・
小生夏の恒例北海道ツーリングに出かけてしまいまして
行けずでした。このタイミングで上映するとはラピュタさんもイケズでんな。

しかし女スパイものも轟小姐をヒロインにもってくるのは興行的には理解出来るのですが、「当時の軍部がスパイへの警戒を国民に呼びかけるのが目的」ならばいっその事飯田蝶子や三好栄子あたりを起用するという大胆な発想が欲しかったと思うのは私だけ?
ガルボやディートリッヒ的なヒロインでは一応国民も何か疑うし・・・。
あっそうそうムカエイさん的にはナッちゃんでしたな。

PS 残暑お見舞い申し上げます。
Commented by mukashinoeiga at 2017-09-05 05:40
山本弘之「第五列の恐怖」へのコメント、サセレシアさん、ども。

>夏の恒例北海道ツーリング

 そちらの方が、よほど健康的で、うらやましい。

>飯田蝶子や三好栄子あたり

 女スパイは美人に限るということでしょうな。

>PS 残暑お見舞い申し上げます。

 こちらこそ。
 九月にはいって、思いのほか涼しいので、たすかっております。雨がちなのは閉口ですが。北海道はどうだったのでしょう。  昔の映画


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