増村保造「氾濫」サブリン佐分利信若尾文子沢村貞子左幸子叶順子中村伸郎船越英二伊藤雄之助
強度の強い絶品群像劇。ついで見の再見だが、何度見ても楽しめる大傑作。
京橋にて「特集・逝ける映画人を偲んで 2015-2016」。59年、大映東京。
この濃密な傑作が100分以内に収まるという奇跡の職人技!
マスマスムラムラや脚本白坂依志夫や音楽塚原晢ほか大映スタッフの、奇跡かつ平常運転の絶品!
これが70年代~現在の邦画だったら、一本立て指向もあり、二時間越えは必然であり、このシマリはなくなっていただろう。
登場する男ども、ほぼ全員ゲスの極み。
それに対応して、女たちも、ほぼほぼゲスい。あるいはそれなりに誠実な若尾文子も叶順子も沢村貞子も、ゲスな男に対応して、穢れていく。
その中で、主人公サブリンの、昔から変わらぬ茫洋たる朴訥たるたたずまいが屹立している。とはいえ佐分利も、妻子に隠れて左幸子と不倫、ゲスさからは、逃れてはいない。このゲスさが、人間の本質なのだ、とマスマスムラムラは、グイグイえぐり出していくのが小気味いい。
しかしこの熱気ある映画、ぼくはてっきり夏の映画と認識していたのだが川崎などコートを着ている。季節は秋冬なのか。
秋冬でも夏の熱気の映画、さすがマスマスムラムラ、素晴らしい!
8氾濫(98分・35mm・カラー) (フィルムセンターHPより)
1959(大映東京)(脚)白坂依志夫(出)川崎敬三(種村恭助)、三角八郎(荒田助手)、目黒幸子(邦子)(監)増村保造(原)伊藤整(撮)村井博(美)渡辺竹三郎(音)塚原晢夫(出)佐分利信、若尾文子、沢村貞子、左幸子、叶順子、中村伸郎、金田一敦子、船越英二、伊藤雄之助、多々良純、倉田マユミ
新製品を開発して重役となった技術者一家が崩壊していくさまが、日本の化学工業界の現状を背景に描かれる。出世欲のために女を食い物にする貧しい化学者の役を演じた川崎敬三は、1954年大映ニューフェイス合格から二枚目として売り出されたが、次第に人間の弱さや卑劣さを巧みに表現する性格俳優へと変貌し、大映映画に不可欠な名バイプレーヤーとなった。(文字変色が追悼対象の方)
やはり絶品のサブリンの重厚でありつつの軽妙さのすばらしさ。最後、重役を退き、ボロい研究棟で、多々良純研究員に向ける微妙かつ快活な笑顔が素晴らしい。
さわやかでありつつ絶品卑劣な川崎敬三。
絶品気持ち悪い笑顔がそれだけで気持ち悪い倉田マユミ(中村伸郎の妻)はその笑顔がすでにホラーだ。左幸子の、ぬめっとした顏も絶の品。三角八郎は、いつもながらの、愛嬌が、ゲスさを救っている。
という、濃ゆいメンバーの中で、幸薄い目黒幸子が、どこに出ていたのが、思い出せない(笑)。
幸子の幸はどこにある(笑)。
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by mukashinoeiga | 2017-08-13 05:28 | マスマス増村保造ムラムラ | Comments(4)
むかし、シネマヴェーラの支配人も、マキノ雅弘特集のときにフィルムセンターの番組編成に対する批判を公にしていましたが、今回も同様の編成になってしまったわけで。
この場を借りて苦情を言っておけば、必ずやフィルムセンターの担当者の目にもつくだろうから、場違いなことは百も承知ながら、ひとこと申し上げておきます。
>この場を借りて苦情を言っておけば、必ずやフィルムセンターの担当者の目にもつくだろうから、
いや、当ブログに、そんな影響力はないと思いますよ(笑)。フィルムセンターのアンケートに書いた方が有効かと。
>むかし、シネマヴェーラの支配人も、マキノ雅弘特集のときにフィルムセンターの番組編成に対する批判を公にして
その時にシネマヴェーラの番組を調べてみたのですが、てめーの番組も土日祝で全部を見られる訳ではないことを確認して、失笑しました。
そもそも67番組を2か月弱でやるのですから、どう編成しても無理なモノは無理です。
そしてこの件で非難するとしたら、まだ数日はやるフィルムセンターやシネマヴェーラより、完全日替わりが多い池袋だと、思っています。
むしろフィルムセンターに望みたいのは、「この10年20年30年都内名画座でもフィルムセンターでも1回も掛かってない収蔵作品特集」ですかね。
これはぜひ実現していただきたい。そん時は有給全部ぶち込みますから(笑)。そうか、これもフィルムセンターのアンケートに書いたほうがいいのか。一度も書いたことないんですよね。 昔の映画
そういえば、文芸座の日替わり上映では、30年前に「映画監督中川信夫」という本の上梓と合わせて当時の「文芸座地下」で行われた中川信夫特集で個人蔵のプリントを借りて上映された「恋風五十三次」は、その後上映されたことが皆無のようですね。「酒豆忌」幹事の中心メンバーも、ほとんど見たことがないという幻の作品になりかかっているので、この傑作は、プリントが現存していれば、ぜひもう一度見てみたい。