加藤泰「風と女と旅鴉」中村錦之助三國連太郎丘さとみ長谷川裕見子

意欲作か失敗作か、たいへん「面白い」。
 京橋にて「京橋映画小劇場No.35 アンコール特集」。
 終映後、常連らしき老人がバカでかい声で「つまらん。話もしっくりしないし。監督がいかんのかな」
 知り合いが「でも監督は加藤泰ですよ」
 加藤泰だって失敗作はあるだろう? あるかしら。
 本作は見方によって、意欲作か失敗作か、意見が分かれるだろう。
 そもそもすべての加藤泰意欲的作品が、そうかもしれん(笑)。
 だって加藤泰、東映定食映画の関節を全部外しているんだもの。
 食材は全部、東映定番定食の食材だけ、それを全部使いきって、でも加藤泰、東映定食だけは作らないぞ、という(笑)。

e0178641_1125175.jpg2風と女と旅鴉(90分・35mm・白黒) (フィルムセンターHPより)
→「生誕100年 映画監督 加藤泰」より
1958(東映京都)(監)加藤泰(脚)成沢昌茂(撮)坪井誠(美)井川德道(音)木下忠司(出)中村錦之助、三國連太郎、丘さとみ、長谷川裕見子、進藤英太郎、薄田研二、加藤嘉、殿山泰司、上田吉二郎、河野秋武、星十郎
加藤泰が自らの作風を確立させた代表作。加藤が愛する「まともな世間から弾き出された奴。卑怯な奴。ずるい奴。そのくせ何処か底の抜けた気の良い奴。」が、化粧をせずに素顔をさらし、同時録音で周囲の音と混じりながら言葉を発しロー・ポジションのキャメラで活き活きと写し出される。物語の下敷きとなったのはニコラス・レイ監督の『追われる男』(1955)。
←この分割ポスターも東映定食番組にしては、モダンかな。

 同時録音で周囲の音と混じりながら言葉を発し だからしばしばセリフが聞き取れにくいのは、仕方がないのか
 ロー・ポジションのキャメラ 発情の錦ちゃんが地面に寝ころび、丘さとみのお尻を下から見るショット。必然性のあるヌードならぬ必然性のあるローボジを、このころはまだ模索していたのね(笑)。

 冒頭山道をひとり歩く旅人が、錦ちゃんじゃなくて連太郎、と最初から関節外し。そもそも連太郎、最初から最後まで妙なひょこひょこ歩き。これこそがリアル旅人の効率的歩行法だという発想なのだろう。
 錦ちゃんも、いわゆる清く正しく美しく強い東映時代劇ヒーローの真逆な小者(笑)。
 千両箱をセコくガメようとするし、好きでもない長谷川裕見子に気まぐれでキスし、丘さとみには発情しまくりだし、いろいろダダこねまくるし、拗ねまくるし、ほんとに小者(笑)。
 加藤泰も、チャンバラ映画なのに、クライマックスまでチャンバラほとんどなし。
 しかも連太郎、肝心のクライマックスで、いきなり銃撃され、ずーっと、座りっぱなし。まったく役に立っていない(笑)。アンチクライマックスの極み(笑)。これ、バディムーヴィーとしても変則か反則でしょう。
 なお冒頭でも錦ちゃんいきなり銃撃され大怪我。
 通俗娯楽映画の鉄則、ヒーローになぜか弾は当たらない、はずなのに、本作では主人公ふたりとも被弾で、大怪我と死亡。
 これでは東映おなじみ路線のミイちゃんハアちゃんファンの支持は、エラレマイ。

 なにやら連太郎といいフンイキだった長谷川裕見子が、いきなりのキス一発で、錦ちゃんにメロメロって。そうとう経験を積んでるはずなのに。で、これを見てしまった連太郎も、アマリに不自然に固まりすぎ(笑)。アツすぎる連太郎と、アツすぎる加藤泰のコラボの故か。
 錦ちゃんの丘さとみ目線も東映純愛路線から外れた、思春期発情少年のエロ丸出しだし。で長谷川裕見子とも丘さとみとも、ハッピーエンドならず、かといって一人旅立つ旅人との、別れの愁嘆場もなく。
 あらゆる東映定番を外しまくって、映画は終わるのでした。チャンチャン。

e0178641_11253240.jpg そしてモンダイなのは、やはり薄田研二か。
 ふだん憎々しい悪家老など、東映悪役陣のラスボスを演じることのおおい薄田が珍しく善人の町のまとめ役。とはいっても、錦ちゃんを息子同然に思い、見守りたい連太郎の弱みに付け込んで、町に甚大な被害を与えつつある進藤英太郎一味に、たった一人で立ち向かわせようという「真昼の決闘」状態の、理不尽さ。そんな過剰な義務などまったくないのに図々しく連太郎に押し付け、なおかつ連太郎には絶対の信頼を寄せつつ、錦ちゃんを悪しざまにいう。
 まさに分割して統治の典型か。ある意味進藤英太郎より冷酷な悪役で、薄田研二どんぴしゃりの適役だ。


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by mukashinoeiga | 2017-07-19 11:25 | 加藤泰突撃せよ炎のごとく | Trackback | Comments(4)

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Commented by お邪魔ビンラディン at 2017-07-21 01:25 x
この映画公開時は、おそらく二本立て上映だったはずで、こちらで東映定食の定番をはずしまくっても、もう一本の方で橋蔵や千代之介や里見浩太郎あたりを主演に据えたチャンバラか東映東京撮影所制作の刑事ドラマあたりをやっていれば、お客さんの方も納得して帰ったわけです。
加藤泰のあきらかな失敗作と言えるものは「丹下左膳 乾雲坤流の巻」(脚本石堂淑朗! 音楽鏑木創)と「真田風雲録」(脚本福田善之ほか 音楽林光)の二本でしょう。
デビュー作「剣難女難」から新東宝の「逆襲大蛇丸」までは習作期と見るとして、他は好き嫌いはあっても、この二本以外はハズレがない。もっとも、「阿片台地 地獄部隊突撃せよ」あたりは、必要以上に予算を節約しているのが明らかに画面から見て取れるので、ちょっと微妙なところでしょうかね。
Commented by mukashinoeiga at 2017-07-22 00:04
加藤泰「風と女と旅鴉」へのコメント、お邪魔ビンラディンさん、ども。

>加藤泰のあきらかな失敗作と言えるものは「丹下左膳 乾雲坤流の巻」(脚本石堂淑朗! 音楽鏑木創)と「真田風雲録」(脚本福田善之ほか 音楽林光)の二本でしょう。

「丹下左膳 乾雲坤流の巻」は、傑作だと思います(笑)。当ブログでも書いておりますので、ビシバシご反論くださいませ(笑)。「真田風雲録」については、これまた書いてるとは思いますが、なぜあれだけ世評が高いのか、全く理解できない凡作ですな。
 左翼パヨクどもの全共闘幻想かしらん。左翼は、映画程度のカルチャーすら全く理解できない典型かと。
「阿片台地 地獄部〈隊〉突撃せよ」は特集タイトル「加藤〈泰〉突撃せよ炎のごとく」の原型で、そんなに嫌いじゃないです(笑)。 昔の映画
Commented by お邪魔ビンラディン at 2017-07-23 02:14 x
いやぁ、「丹下左膳」への小生の評価は、たしかに勇み足の気がありましたね。
これは、むかしアテネフランセで見て、どうにもイマイチという印象を拭いきれず、昨年のフィルムセンターの特集で見に行かなかった数本のうちの一本です。
マキノの水島道太郎主演の三部作と記憶がごっちゃになってしまっていたというのと、娯楽映画の職人に徹しようとしない石堂淑朗脚本や加藤泰演出と「主演を演じるときの大友柳太朗というキャラクター」との相性の悪さに気を取られ、「娯楽映画として水準以上ではあっても、未見の松田定次が撮った四本の方が面白かったのではないか」「加藤泰ならもっとハジけた映画に仕上がるのではないかという期待に応えていない」ということから、つい点が辛くなってしまった次第で、いま、あらためて見直してみれば失敗作とまでは言い切れないかもしれません。
ただ、結果的に興行成績が記録的な惨敗であったのと、それをあらかじめ見越して松田定次版の四本がカラーなのに加藤泰版はモノクロにされたという事情も見ておくべきかな、と思います。(松田定次が丹下左膳シリーズを撮りはじめた頃をピークに、TVの普及で映画館入館者数は下降の一途をたどり、加藤泰版の頃には3分の1ぐらいになってしまったはずで、客が入らないのは加藤監督のせいでもないんですが)
Commented by mukashinoeiga at 2017-07-25 19:02
加藤泰「丹下左膳 乾雲坤流の巻」へのコメント、お邪魔ビンラディンさん、ども。
>娯楽映画の職人に徹しようとしない石堂淑朗脚本や加藤泰演出
 いや、むしろ本作では娯楽映画の職人に徹して、なおかつ自分のこだわりも充分表現できた傑作に感じました。ちょっとメキシコ時代のブニュエルみたいとは、贔屓の引き倒しかな。
本作がモノクロなのは、むろんぽくたちが大好きな大友、桜町、監督自身が、東映営業的に二線級だったのと、当時としては片腕切断のグロ描写は、明るく楽しいカラー映画に合わないと、判断されたのかもしれません。むろん加藤泰としても東映おなじみの赤ペンキまんまの血糊は、興ざめでリアルにあらず、と白黒はむしろ本望でしょう。当時は東映リアリズム(風)時代劇は、ほぼ白黒でしたからね。  昔の映画
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