石井輝男「監獄人別帳」渡瀬恒彦佐藤允賀川雪絵清川虹子嵐寛寿郎

いかにも石井流エンタメ。
 渋谷にて「甦る映画魂 The Legend of石井輝男 十三回忌追悼」特集。70年、東映。
 なんでもありの東映で、石井流エンタメはその本領を発揮する。開花する。
 あるいは、魔改造された。
 基本はアクション映画なのに、エロもグロもスカトロ趣味もナンセンスも、さらに泣かせメロもぶち込んで、過剰なまでの、豪華というか盛り過ぎというか、異常な幕の内弁当だ。まだ新東宝時代は、きわめてシンプルな映画を作るモダニストの石井がかくも窯変したのも面白い。
 そして役者も幕の内弁当方式だ。とにかく多種多彩。
e0178641_1522837.jpg 主演はデヴューしたての渡瀬恒彦、まだ少年っぽさを残した美青年風。ド下手な主題歌も兄・渡哲也にクリソツな美声。美声なのに音痴とは残念極まる。 
 渡哲也は老年の現在に至るまで、美青年風の演技を通した。兄との差別化を図ろうとしたのか、渡瀬は、東映時代は狂犬仕様、TV時代は温厚なオジさん化、激変も激変だが、兄との差別化では、一貫している。

監獄人別帳(35mm)公開:1970年 (渋谷シネマヴェーラHPより)
監督:石井輝男
出演:渡瀬恒彦、佐藤允、賀川雪絵、清川虹子、伊吹吾郎、大辻伺郎、蓑和田良太、尾藤イサオ、上田吉二郎、大泉滉、嵐寛寿郎、竜崎一郎、沢彰謙、荒木一郎、内田良平、千葉敏郎、阿波地大輔、沢淑子
地獄の網走刑務所。悪徳警察署長の謀略により投獄された吉岡兄妹は仲間たちと脱獄を図るが…。渡瀬&佐藤、伊吹&尾藤、香川&大辻が繰り広げる“手錠のままの脱獄”。思わず「『八甲田山』かよ!?」と叫びたくなる豪雪過酷ロケとB級テイストがない交ぜになった一作。後半の西部劇ばりの雪山チェイスと、美味しいところを浚っていく八人殺しの鬼寅=アラカンが超カッコいい!c東映

 本作は、よくよく考えると、奇妙な集団主役体制。主役は渡瀬だが、メインストーリーは、佐藤允。そして真のヒーローはアラカン(笑)。これも石井流豪華幕の内ということか。
 後半は渡瀬恒彦&佐藤允、伊吹吾郎&尾藤イサオ、賀川雪絵&大辻伺郎の三組の手錠のままの脱獄になるのだが、石井なら当然四組目として大泉滉&荒木一郎のおかまコンビも加えるべきだろう(笑)。
 そして、相変わらず無駄なエロ(笑)。東映の、石井のエロには、毎度うんざり。沢淑子は毎度面白いが、沢淑子ではエロ的に興奮しない(笑)。
 そしてあいかわらずのウンコネタ。うんざり。こんなんで笑えるバカがいることが信じられない。
 老人力もあげておこう。
 無茶苦茶つおい(笑)アラカン、最強ゴッドマザー清川虹子、便所にはまる不細工ばあさん。
 新人渡哲也のヒーロー性を強調する日活監督陣。
 新人渡瀬恒彦では心もとないので、老若男女のあらゆるアセットをぶち込む東映。東映ってやはり幕の内映画なんだなあ。さすが忠臣蔵オールスタア水戸黄門の会社や。

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by mukashinoeiga | 2017-06-09 01:53 | テリー石井 恐怖奇形番外地帯 | Trackback | Comments(2)

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Commented by お邪魔ビンラディン at 2017-06-10 01:13 x
この映画は「網走番外地」第一作のリメイクを骨格として、お色気要員として女囚を登場させたという格好です。女囚の描き方が「無駄なエロ」になってしまうのは、おそらく、監督の嗜好に原因がありそうです。
渡瀬恒彦が健さん(役名も橘真一で同一なら、殴り込みで網走に行くのも、危篤の母親がラストで持ち直したという御都合主義的展開も一緒)、内田良平が丹波で、南原宏治の代わりになるのが佐藤允と伊吹吾郎。あまり同じだと芸がないというので、佐藤允、尾藤イサオ、賀川雪絵三兄弟の仇打ちのストーリーをまぎれ込ませた。トロッコで仇を追いかけるシーンなど、番外地第一作の構図そのままです。丸のままの沢庵をかじるシーンは「いれずみ突撃隊」からかな?
もっとも、渡瀬恒彦のデビュー作「殺し屋人別帳」は、たしか「網走番外地望郷篇」のリメイクだったから、この時期、東映は本気で渡瀬恒彦を健さんなみのスターに育てようと考えていたのでしょう。
そういえば、この映画の伊吹吾郎の役名「モンマルトルの鉄」は、「殺し屋人別帳」の佐藤允の役名そのまんまです。
問題は、かなりいい加減な作り方をして成り立っていて、物語の随所に破綻があるのにも関わらず、映画として見て本当に楽しいということです。このあたり、メキシコ時代のブニュエルを思わせるものすらあるのですが、平成のはじめころでも、ブニュエルと石井輝男を同一の次元で論ずると、奇をてらっているだけだとしか見られなかったんですね。
Commented by mukashinoeiga at 2017-06-11 00:07
石井輝男「監獄人別帳」へのコメント、お邪魔ビンラディンさん、ども。
橘真一と出たところで健さんと同じだと気付きましたが、「網走番外地」には詳しくないので他は知りませんでした。あ、そいえばトロッコの追跡は記憶あり。
 リメイクとは微妙に違う(リメイクはちゃんと公言している)いわゆる使いまわしはマキノも共通する東映のお家芸。二番煎じでもなんでも面白きゃいいんだろ、という。
 現代なら、すぐにパクリだパクリだ、とネットで炎上しちゃう(笑)。ワタシ思うに一番搾りなるビールが大ヒットして以来の風潮だと思いますが如何(笑)。
 そういえば兄も日活で裕次郎をいくつか「リメイク」、弟は健さんを「使いまわし」。やはり兄弟とは似るものか。
 面白きゃなんでもオーケーの祝祭空間こそ映画だという映画作家は実は意外と多い。マキノもブニュエルもフェリーニも清順もタランティーノも以下エトセトラエトセトラ。石井暉男も確実にそうなんでしょね。 昔の映画




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