川島雄三「箱根山」加山雄三星由里子藤原釜足北あけみ佐野周二東山千栄子

らしくない大快作だ。62年、東宝。
 阿佐ヶ谷にて「芳醇:東宝文芸映画へのいざない」特集。5/20(土)まで上映中。
 昔見たときは、さわやか好青年加山雄三の主演のせいか、川島らしくないお子様映画で、笑いの少ない、まあ川島としては凡作の部類かな、と。
 ところが今回再見して、やはりらしくないという印象は変わらないながら、評価は180度!変わって、なんと大快作となってしまった(笑)。

e0178641_2348491.jpg箱根山ニュープリント (ラピュタ阿佐ヶ谷HPより)
1962年(S37)/東宝/白黒/105分
■監督・脚本:川島雄三/原作:獅子文六/脚本:井手俊郎/撮影:西垣六郎/美術:浜上兵衛/音楽:池野成
■出演:加山雄三、星由里子、藤原釜足、北あけみ、佐野周二、東山千栄子、三宅邦子、東野英治郎
観光開発が進む高度成長期の箱根。駆けひきと思惑が乱れ飛ぶなか、二軒の老舗旅館は対立し、煽りをくらった若い男女の恋路もなんだか前途多難──。「若大将」シリーズの名コンビが、ロミオとジュリエット風の恋人たちを好演している。

e0178641_20593647.jpg 旅館主人・佐野周二が、地形の模型を使って、とうとうと箱根の古代史を、泊り客の映画監督・藤木悠に語っている。通常の川島映画なら、映画監督などあちゃらかにハイハイ聞き流す感じ?
 ところが本作の藤木悠は、まじめに佐野の講義を聞き、適切なレスポンス。
 まさに日本映画、および東宝映画としては、らしくないインテリ同士の応酬。もちろんあたしゃ戯作者でゲス、という川島としても、らしくないのだ。
 そして圧巻は部屋の電気を消して、カーテンも閉めて、漆黒の闇の中、地形模型にペンライト当てて、「この初日が最初にあたる地点に古代人は住処を作ったんだ」というショットに演出と撮影の本気を見た。
 見る前は加山とホシユリの青春ものだから、カラーだと思っていたが、なんと白黒。しかし上記ショットは白黒撮影の極美。カラーでは、シマリない絵になって、その緊張美はウシなわれたろう。
 アイドル映画にも筋を通す。
 そういえば、本作の冒頭は、政治家役人、対立する二大交通系大企業、報道関係者の人いきれでむんむんする会議場。いわばなんちゃってヤマサツ映画の趣。これも白黒でなくては、味は出ん。
 そして劇伴が、なんだかサスペンス調。喜劇にも明朗青春ものにも合わないもの。
 川島がヤマサツ風にと、頼んだのかもしれない。もっともこの劇伴、本作にも合ってないんだけど(笑)。 
 二大交通系企業の対立、そしてその縮小版としての二大老舗旅館の対立、ヤマサツが撮っても面白そうだ。もっとも原作者の前身を考えれば(笑)、ヤマサツひきうけんだろうと、東宝が忖度して、川島にお鉢が廻ってきたのかもしれぬ(笑)。

 思えば加山はこの地域一番の秀才だし、その上司番頭・藤原釜足も、開発企業社長・東野英治郎も独自の人生哲学を持っている。
 ちゃらちゃら女子高生みたいなホシユリも、向学心。
 だからこの映画は、いつもの東宝喜劇にあらず。それを察したか言われたのか、森繁も有島一郎も藤木悠も、あちゃらか一切なし。
 これは市井のインテリ、準インテリ?が出てくる、川島らしくない異色作で、そして面白い。

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by mukashinoeiga | 2017-05-17 23:49 | 傑作・快作の森 | Trackback | Comments(4)

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Commented by サセレシア at 2017-05-18 16:51 x
私もこれ観に行きましたがご指摘の劇伴に違和感が強くて最後まで気分が乗らなかった印象です。

映画やドラマのいろいろなシーンにBGMを自分で勝手に選んで宛てがえて遊べるソフトって出来ないですかね?
役者のセリフを邪魔しないで音楽だけ変えられるものを。

小津の映画に植木等の歌とか、成瀬映画に殿様キングスとか。
イメージが変わって洗脳から解放されるようで面白いんじゃないかと…。

「豚金」も観ましたよ。
飯田蝶子先生の本領発揮でしたな。
出来ればあの特製ラーメンを食べきるまでワンカットでやってほしかった。
主演?の藤木氏が私には不気味に思えてしょうがなかったですが…。
「間」が良かったですね。


Commented by mukashinoeiga at 2017-05-18 23:13
川島雄三「箱根山」加山雄三星由里子へのコメント、サセレシアさん、ども。
>映画やドラマのいろいろなシーンにBGMを自分で勝手に選んで宛てがえて遊べるソフトって出来ないですかね?役者のセリフを邪魔しないで音楽だけ変えられるものを。

 うーん、技術的には可能でしょうが、それは明らかに著作権法違反(笑)。しかもアメリカ大統領選のトランプ集会で、リベラル系ロックスターが複数、オレの歌をトランプ集会で使うな、と抗議。いろいろ問題ありますな。まあ個人で楽しむのはいいんでしょうが、ソフト化はどうも。 

>小津の映画に植木等の歌とか、成瀬映画に殿様キングスとか。

ナイス!

>出来ればあの特製ラーメンを食べきるまでワンカットでやってほしかった。

 いやいやご高齢の飯田蝶子にラーメン完食を求めるのは(笑)。しかもアレ(笑)があんなにみっしり一杯のラーメンを(笑)。
 ちなみにたっぷり胡椒が、どう見てもきな粉にしか見えません(笑)。

>主演?の藤木氏が私には不気味に思えてしょうがなかったですが…。

 お邪魔ビンラディンさんいうとおり、彼が好青年演じるのは、ほんとに異例なんですよ(笑)。 昔の映画 
Commented by サセレシア at 2017-05-21 11:19 x
そういえば、蝶子先生がラーメン啜るシーンて小津の
「一人息子」で息子役の日守新一と屋台かなんかで
食べていたような記憶があります(当時の呼び名は
「支那そば」)。蝶子先生ラーメンが初めてだった設定らしく、日守新一が「この汁が美味いんです」とか説明してたような…。

あっこれ「箱根山」のスレでしたっけ…失礼。
Commented by mukashinoeiga at 2017-05-22 02:34
川崎徹広「豚と金魚 」へのコメント、サセレシア さんども。
>あっこれ「箱根山」のスレでしたっけ…失礼。

 いえいえ全然ノープロブレム(笑)。
「一人息子」では夜泣きラーメンの屋台から買って食べていましたな。やはり蝶子先生には、ラーメンが似合う。   昔の映画
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