松林宗恵「天國(天国)はどこだ」津島恵子沼田曜一木村功原知佐子金田正一

なんじゃあこりゃあ。56年、新東宝。
 渋谷にて「玉石混淆!? 秘宝発掘! 新東宝のディープな世界」特集。
 ひどさもひどし。
 例えば某ツイッターでは、

####@#### 5時間5時間前
松林宗恵『天國はどこだ』。泥酔した木村功が、沼田曜一に悪態をついた後、左隣の津島恵子にしなだれかかり、甘ったれた口調で弱音を吐いて膝に顔をうずめる、さりげないパンによる長回しは演出・撮影が一体化した名人芸。お化け煙突が見える干潟ロケが見事な傑作。

と、絶賛だが、映画弱者のぼくなど、ついぞ名人芸、見事さを感知できなかった。改めて、我が身の無知ぶりを知らされる羽目になった。

e0178641_5205717.jpg『天國はどこだ(デジタル)』1956年 (渋谷シネマヴェーラHPより)
監督:松林宗恵
出演:津島恵子、沼田曜一、木村功、原知佐子、阿蘇孝子、加藤嘉、金田正一(国鉄スワローズ)、町田行彦(国鉄スワローズ)、西村晃
暴力団に支配される東京湾の部落。医師の古沢は、保育園の昌子先生と共に変革に立ち上がる。そんな時、昌子の恋人の健が出所して…。無気力な大人、懐にナイフを忍ばせる小学生、馬券売りに駆り出される保育園児と、貧乏部落の殺伐描写に背筋も凍る。「俺にはこんなことしか…!」暴力しか知らずに育った健の叫びが心に痛い社会派ドラマ。c国際放映

 ちなみに今更ながら気づいたが、シネマヴェーラのHPには、チラシに乗っている、製作会社、上映時間、白黒かカラーか、脚本撮影等のスタッフ表記が、ない。
 そのままコピペすれば済むのに、ネットを馬鹿にしているのか
 限定された紙面のチラシより、情報量は膨大であることが可能なネットで、手を抜くって、どういうこと。
 さらに言えば、過去上映作品のページには、タイトルのみで、その他の情報が一切ない。終わった上映だから、労力は使いません、って朝日新聞か(笑)。
 他の名画座とは違い、無気力かつ根暗な声で、上映前案内をして、観客の意欲をそぐアナウンスといい、異様な映画館といってもいいだろう(笑)。

 で、本作だが。
 まず茫然自失なのは、ダブル主演の一人、木村功が、並み居るやくざたちをぼんぼん打ちのめす怪力男だということ。
 ひごろ、ひ弱な文系ダメ男を演じることの多い木村が、やくざ役というのが、すでに可笑しいのだが、だれ一人かなわない怪力のケンカ上等男というのが、もうダメなのよ(笑)。
 しかもクローズアップされれば、瞳に星(まあ、照明なんだけど)の、美青年仕様。いったいどうして、この木村功を、ケンカ上等男に設定しえたのか。
 もっとも、対立するやくざたちも、組長・加藤嘉、代貸・織本順吉、兄貴分・西村晃と、どう見てもやくざに見えない面々。
 ほぼ全員新劇VS新劇の、いかにも非力そうな(笑)やくざたち。これでは、木村功に毎度毎度叩きのめされるのも無理ない面々。
 ことに織本順吉など、何回も何回も、出会うたびごとに、木村に叩きのめされ、これでどうやって、組幹部としての体面、保てるのか。保てないだろう。
 兄貴分の西村晃も、毎度木村にいいようにボコられて、下っ端への示しもつかない状態。
 
 で、やくざとしての木村功も、????状態。
 どこの組にも属さない、一匹狼。何の後ろ盾も子分も親分もいない。これに、一応組織化している、加藤嘉組長のやくざ組織は、手も足も出せない。
 これが組長が、加藤嘉ではなく、天津敏か遠藤辰郎だったら、集団による闇討ち、恋人・津島恵子の略奪人質化など、木村をぎゃふんといわせる手はいっぱいあったろう。手ぬるすぎるぞ加藤嘉。
 というか、一匹狼の、流れ者でもない地域密着型の木村功が、厳密な意味で「やくざ」とカテゴライズできるのか(笑)という問題もある。
 ばくち、ケンカ、商店からのみかじめ料取得など、堅気ではないが、地域の子供らの面倒を見、住民への差別をとがめる、たぶん在日系のお兄ちゃん。
 現代ならば、シバキ隊などにかかわるようなハンチク野郎。

 東映仁侠/ヤクザ映画を見慣れたぼくたちからすれば、それ以前の、左翼リベラルな、いかにもお花畑映画で。これを見事、傑作という神経が、まるで理解できまへん。

 ただ、一点、誤解しないでいただきたいのは、名画座の使命とは、傑作も駄作も、ひとしく等価に上映すること。こんな駄作凡作を上映してくれてありがとう、という感謝の気持ちしか、ないことは、強調しても強調しすぎることはないだろう。
 それが歴史的価値というものだ。
 ただし、新作ロードショーなら、駄作は、許さないよ(笑)。作ったヤツは、馬鹿、とののしるよ(笑)。
 なお、原知佐子が、田原知佐子という本名でデヴュー作。大変愛らしいが、デヴュー作が売春婦というのも、新人女優としてはちょっと、優遇されていないかな、と。
 なお、男の子の名前はみんなパトリックだそうだが、本作での木村功は、ケンさん。ヒーローやくざの名前はみんな健さんなんだね(笑)。ちなみに本特集の企画者はシモケンさん(笑)。

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by mukashinoeiga | 2017-03-19 05:26 | 旧作日本映画感想文 | Comments(2)

Commented by お邪魔ビンラディン at 2017-03-19 22:32 x
この映画を見て感じたのは、五所平之助の怪作「愛と死の谷間」と雰囲気が似ているな、という印象でしたが、これはヒロインの津島恵子の存在感によるものかもしれません。結婚前の津島恵子にはお花畑がよく似合いますね。
脚本が瀬川昌治で、瀬川昌治で日本映画データベースを検索してみると、この映画の半年ぐらい前に東映で小林恒夫監督の「暴力街」という映画があって、主役は南原伸二ですが、その他の配役はこの映画によく似ています。木村功の起用は、おそらくそのあたりの流用と思われますが、当時の新東宝で、この映画の木村功の役にハマる人と言うと、まだ悪役スターとしての風格が十分でないころの丹波哲郎ぐらいしかいなかったですね。藤田進では歳を取りすぎているし、高島忠夫も宇津井健も似合いそうにないし、天知茂はまだ大部屋扱いです。
昭和31年だと、まだエンタテインメントとして現代のヤクザを描く表現のパターンも十分に確立されたものとなっていなかったので、たとえばほぼ同時期に公開された山本嘉次郎の「暗黒街」あたりでも、現在の目で見ると、いまいち面白みに欠けてしまう。悪者側のヤクザの悪事が面白く描かれるようになるのは、だいたい昭和35年前後からではないかと見ています。遠藤辰雄や天津敏、金子信雄あたりは、その進化の極点で活躍していたわけで、そうした表現に到達するまでの貴重な試行錯誤の貴重な一歩としてみれば、この映画の傑作扱いはヒイキの引き倒しで論外としても、駄作凡作として片づけるのもちょっと酷ではないかと思います。
Commented by mukashinoeiga at 2017-03-20 00:28
松林宗恵「天國(天国)はどこだ」へのコメント、お邪魔ビンラディンさん、ども。

>遠藤辰雄や天津敏、金子信雄あたりは、その進化の極点で活躍していたわけで、そうした表現に到達するまでの貴重な試行錯誤の貴重な一歩

 そう、この感想駄文で、「進化の過程」ということを、書き漏らしていたことを、いまさらながら気づきました。当時の何本か、生ぬるいやくざが登場する映画を見ていたことも、思い出しました。

 この映画では、むしろ木村と沼田の役を交換した方が最適かと思いますが、スタア女優津島恵子と沼田のラヴシーンなんて様になりませんからね。ラヴシーン込みの木村起用ということであれば納得です。
 「進化の過程」ということであれば、この映画の味わいも増すということです。  昔の映画
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