筧正典「ありがとうが言えない」不思議な謎
渋谷・映画美学校試写室にて。Kiss My Stella Dallas Vol.3『若い娘がいっぱい』上映会。製作年不詳、学研映画。16ミリ上映。
感想駄文済みの筧正典「若い娘がいっぱい」上映後、筧正典「ありがとうが言えない」という学研教育映画短編もサプライズ上映。
その「概要」をコピペすべくネットで探し回ったが、ヒットせず。しかたがなく会場でもらった学研映画資料コピーを書き写すと、
筧正典「ありがとうが言えない」<学研映画№5429資料より>
製作 原正次/脚本 小林久三/演出 筧正典 出演/小笠原良知/八木昌子/山本龍二/浜田寅彦/原ひさ子
近頃の子どもは挨拶一つ満足に出来ない、という年配者の嘆きをよく耳にする。挨拶とは人間と人間をつなぐクサビのようなものだ。その挨拶を、民主的な意味で考えなおし、実践することに心を砕く親と子の、ひたむきな姿を描く。
16ミリ:28分/¥85,000 8ミリ:W(ダブル版)¥30,000 SM(シングル磁気版)¥33,000 SO(シングル光学版)¥33,000
「挨拶を、民主的な意味で考えなおし」などわざわざ「民主的」などのワードを「挿入」する、当時の教育界における、左翼全盛思考/志向/嗜好(笑)がうかがわれて、興味深い。
小林久三。松竹退社後は、ミステリー作家になったが、東宝退社後の筧正典ともども、アルバイト仕事かとおもわれる。
小笠原良知・八木昌子夫婦の小学生の子ども・山本龍二は雨の日の登校時、雨がやんだのち、傘をぶんぶん振り回して、学校へ。
バス停で待っていた大人たちに水滴が降りかかり、その中の一人、浜田寅彦に注意され、むかつく。
それを知った父は、息子に、注意した浜田に謝るように、促す。
バスに乗り合わせた父は、浜田に声をかけ、他人の子どもに声をかけ注意する浜田を賞賛する。
浜田は、自分の失敗談を語る。年取って出来た子どもゆえ、自分の息子を甘やかして、結果挨拶の一つも出来ない息子に育ててしまった。これではいけないと、他人様の子どもにも、注意するようになったんですよ、と。
ふーん。いかにもな「道徳教育」の教材映画だ。
しかし、当時は映画全盛期。東映なども、ニュー東映やら第二東映など、増殖していた時代だ。有り余る人材、資産を「本業」以外にも活用して、さらに日銭を稼ごう、という思惑もあって、やはり当時上向き始めた教育関連産業との連動として、教材産業に乗り出した、とおぼしい。
東映も日活も教育映画に手を染めている。東宝は、指田さんご指摘の戦時軍事映画で懲りたのか?業界ナンバーワンの余裕か、手を染めていないようだが?
しかし、このようなお子様ランチに、老練な映画屋さんたちが、満足するわけもなく(笑)、事態は意外の方向に(笑)。
浜田は、息子に再教育、神社で出会ったおばさんに、ありがとう、と感謝の意を。ヨクやった、とほめる父親に有頂天になった息子は、道に飛び出し「暴走車」に轢かれ、死亡。
なんなの、この余分な展開は。
挨拶が出来ない子が、出来るようになりました、でいいではないか、教育映画なんだし。
のちに、社会派ミステリーで鳴らした小林らしいというばらしいし、筧が助監督でついた成瀬は、交通事故を「得意のお題目」にしていた監督では、あるのだが。
まあ、むしろ当時はいわゆる「交通戦争」激化、子どもの死亡事故が相次いでいた、という世相ゆえの、トピック的なエピソードなのかもしれないが。
さて、父や浜田の指導よろしく、こちらも挨拶が出来るようになった少年を、達者に好演したのは、小学生男子ながら、アヒル口がエロい山本龍二って、その面影から察するに、かのアラカンの甥であり、のちのピンク映画の男優/監督の、子役時代ではないか。
ピンク映画で何回か見たことがある。その後、ゲイピンク、スカトロピンク、TVドラマでも活躍したらしいが、これは見ていない。
今回ネット検索でヒットした数少ない証言は、同僚AV男優・加藤鷹によれば、山本龍二は、スカトロ物AVで、「日本で一番ウンコを食っているAV男優」とのことである。スカトロ物には絶対食指を動かさないワタクシは、だいたい散歩中の犬の肛門すら、目にするのがいや(笑)。犬自体は可愛いとはおもうが、あの肛門を毎日目にするとか、絶対犬なんて飼いたくないタイプ(笑)。
きちんと挨拶が出来る子になっても、交通事故死したり、ウンコを喰いまくったり、なんか、とっても残念な結果になる、という、筧の演出自体はきわめてまぢめながら、なんだか、とっちらかった(笑)教育映画なのでした。
◎追記◎上記記述には、ぼくの勘違いかと思われる部分があると、下記コメント欄でお邪魔ビンラディンさんから、ご指摘を受けました。
ところで、今回最大の(というのも、おおげさだが)なぞは、前半は山本龍二少年が主役ながら、後半はその父に焦点が移るという構造だ。自分も大人ながら満足に挨拶も出来ないのに、子どもに挨拶しろ、と教えられるのか、という父親の葛藤が焦点に。
ここで、改めて上記学研資料コビーを読むと、
対象:家庭教育学級・婦人学級 母親学級・PTA(小学校)
と、あり、なんと、これは子供向けの映画では、なかったのだ。
普通教育映画などというと、学校の講堂で児童全員が鑑賞というイメージなのだが、さらに上記資料をよく見ると、タイトルの「学研映画」の上に、「躍進を続ける学研社会教育映画」とあり、これは、完全に、大人向けの映画なのだ。
むろん「上映会」には、親子で参加するケースが大多数なのだろうが、まんが祭りの子どもが主とは違い、こちらは親が主なのだ。
子どもには「映画見に行こう」、親には「子供のためになる教育映画に、お子さんと一緒に参加しませんか」で、親子を集めて、ついでに左翼的主張「も」「さりげなく」盛り込む、という趣向か。
どうりで共産党?浜田寅彦も、「善意の大人」役で出ているわけだ。
もっとも当時の新劇俳優はみんな左傾していて、終戦後なぞは、若手新劇俳優たちが、
「革命成就後は、ブルジョア・森雅之は、皇居前広場で公開処刑だ」と、いきまいていたくらいだ。
いったい たかが二枚目俳優のどこに、公開処刑に値する「罪」があるというのだ。まるで、彼らが心酔する、ロシア、中国、北朝鮮、北ヴェトナム、カンボジア、などとおなじ左翼根性そのもの。
この左翼根性、左翼ヘイトスピーチは、現在でも丸々受け継がれていて、国会前で「安倍、お前は人間じゃない、叩き斬ってやる」と、ボンクラ左傾教授が公言する始末。
ネットで、そんな実力もなさそうな引きこもりが誰かを殺害予告すると、とたんに逮捕するくせに、バックに大勢人を引き連れたバカが、現実にそういう扇動をしても、お咎めなしなのは、引き合わないのでは。以上蛇足。
★新・今、そこにある映画★日本映画・外国映画の、新作感想兄弟ブログ。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ
★人気ブログランキング・日本映画★
★にほんブログ村・名作なつかし映画★
by mukashinoeiga | 2015-10-04 05:31 | 旧作日本映画感想文 | Comments(2)