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斎藤光正「三人の女 夜の蝶」

 渋谷にて。「デビュー50周年記念 女優・梶芽衣子」特集。71年、日活、配給ダイニチ。
 配給ダイニチというわけだからか?日活らしからぬ?大映ライクな夜の女の風俗モノ。
 日活も、いつまでもアンちゃん映画ばかり作っていても、埒が明くまい、ひとつ、大映のまねをして?大人の映画にチャレンジしてみましょう、というわけか。
 梶も男性側主役・藤竜也も、日活ニューアクションのままでいいとして、女性側のセクシー描写には、明らかに日活ロマンポルノの萌芽があり、もちろん松原智恵子、梶芽衣子、山本陽子らの主役日活女優は脱がないが、無名の女優はバンバン脱いで、ベッドシーン。
 そして松原は、脱ぎはしないものの、きわどいレイプシーン、そして同じ藤との、レイプから始まる愛もある、というきわめて男目線での藤との連れ込み旅館での布団シーン、あんたは梶、山本と違って、主役なんだから、というスタッフの説得ゆえか。

 ここら辺に日活アクション(ニューも含めて)と日活ロマンポルノの、ミッシングリンクがありそうだ(笑)。
 そうか、ぼくたちは、「やるべきこと」(カタキへの復讐、自分への落とし前)をやらなければ「女も抱けない」日活アクションの清純派?志向から、倒産危機にいきなり開き直って、日活ロマンポルノに180度の大転換を遂げた、という認識でいたが、その間に、負け組み同士の大映との配給統合=ダイニチという、日活と真逆の<大人の映画>大映との<野合>があって、結果的に短期で終わったこの野合をミッシングリンクにして、清純派はエロに転換/転落?したということか。納得納得。
 (当時としては)期待させるだけ期待させて、やらずぶったくりの大映エロティック映画を反面教師にして、(当時としては)見せるとこは見せて、小銭を稼ぎましょう、というところか。
 これがアクションからロマンポルノへの、つなぎ目なのか。うーん、納得納得。
 ということで、ようやく本作の感想駄文に。

斎藤光正「三人の女 夜の蝶」_e0178641_5345682.jpg『三人の女 夜の蝶(デジタル)』公開:1971年 <渋谷シネマヴェーラHPより>
監督:斎藤光正
主演:松原智恵子、梶芽衣子、山本陽子、藤竜也、二谷英明、川地民夫、青江三奈
レイプされて婚約者に捨てられたことをきっかけに、上京してクラブのホステスになった綾子。そんなある日、同僚のあけみが連れて来たやくざを見た綾子は…。青江三奈『昭和おんなブルース』をモチーフにした女の転落ドラマ。クラブのママ役の山本陽子、ホステス役の松原智恵子と梶芽衣子という夜の蝶たちが美しい。©日活

 新宿のクラブのママに山本、そのパトロンに二谷、そのナンヴァーワン・ホステスに梶、レイプされた果てに田舎にいられなくなって上京した新人に、松原、という布陣だが。
 松原、山本という古いゼネレーションの典型的美人女優が、表情の引き出しが常に二つ三つしかないのに比べ、より若い世代の天然女優・梶の表情がくるくる変わるのが、面白い。古典的美人女優だからダメ、というわけではなく、アルカイックスマイルとしても、二流三流の松原、山本だから、ダメなのである。
 これは男もおんなじで、二谷、川地の昔ながらのパターン演技は、コメディではないのに、コミカルに見えてしまう、そういう時代に突入している。

 そして本作では、黒髪長髪がどの映画でも印象的でトレードマークの梶芽衣子が、なんと、茶髪ショートで登場、意表をつく。ショートの梶は、意外とほほふっくらで(まだ若年太りの頃だからだろうが)そうか、(若いころの)梶芽衣子は、ロングヘアでほほの両サイドを隠して、ほっそり美人を演出していたのか、と、丸わかりで(笑)。

 ところが、このショートはホステス営業用のカツラで、カツラを取ると、いつものロングの黒髪。
 茶髪ショート→私生活ではロング→ホステス時は茶髪ショート→やがて、私生活時もホステス時もロング。
 こりゃあ、梶芽衣子はやっぱり黒髪だわロングだわ、と本人が思ったかスタッフが思ったか、だんだん修正されていくのが、おかしい(笑)。
 のちのクール一本やり、寡黙女優とはちがう、ふつーの若手女優として素晴らしい。

 藤竜也は、のちに渡哲也のトレードマークとなった、ナス型サングラスで、ヤクザ役。ニューではない日活アクションでは、いささか情けない若い男ばかり演じていたのだが、ここへ来て開花。精悍にして純情もある、典型的日活アクションスタアと、ニューアクションのハイブリットを、演じて快。

 松原、山本、二谷、川地と、古いゼネレーションのスタア演技と、梶芽衣子、藤竜也のナマっぽい演技の混同、ほんの数年前まで難解と言われていた、鈴木清順ライクな演出、編集が、もちろん相当薄味になっているとはいえ、平然と使用されている、そういう変化。
 たとえば梶芽衣子が着衣のまま、ベッドに寝ている。そのままキャメラは壁に掛けられた衣装にパンニング。すると、照明が昼から夜に変わり、そのまま画面右から梶が入り込み、衣装に近づく。ホステスとしての身づくろいのため。
 ショットを変えずに昼から夜へ。この程度のことをしても、誰も、難解とは、言わない。そういうショットがいくつか。
 演技と演出の時代の変わり目、そのミッシングリンク。

 まったくちなみに、どの時点でか、梶芽衣子・浅野温子の親子役を実現してほしかったぞ(笑)。
アウト×デラックス 梶芽衣子 4月9日

ぴったんこカン・カン 梶芽衣子 2015年7月10日

 梶芽衣子は6分くらいから。

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by mukashinoeiga | 2015-08-02 05:36 | 旧作日本映画感想文 | Comments(0)

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