沢島忠「水戸黄門 助さん格さん大暴れ」

 京橋にて。「日本映画史横断⑥ 東映時代劇の世界Part 2」特集。61年、東映京都。
 つまり、当時の新進監督・沢島忠による、パロディー版。月形龍之介も、こういうパロディー版でも、不動の威厳。

e0178641_1028954.jpg水戸黄門 助さん格さん大暴れ(92分・35mm・カラー)
月形龍之介主演の「水戸黄門」シリーズ最終第14作。当時売り出し中の松方弘樹と北大路欣也が、水戸光圀の家臣になる前の、青年期の助さんと格さんに抜擢され、正義感に溢れる若者を溌剌と演じる。「新人登用試験」や藩政における不正や腐敗の描写など、現代風刺がてんこ盛りの1作。
1961(東映京都)(監)沢島忠(脚)白坂依志夫、鷹沢和善(撮)山岸長樹(美)井川德道(音)佐藤勝(出)月形龍之介、松方弘樹、北大路欣也、北条喜久、渡辺マリ、岡田英次、小沢栄太郎、田中春男、夏川静江、清川虹子、菅貫太郎、小柴幹治、明石潮

 もうそろそろ人気シリーズも、鼻につき始め、というか、興収面でジリ貧になり飽きられてきたころ、こいつあ斬新監督に、ひとつ、任せてみましょう的な。ま、それもむなしく最終作となったというところか。
 面白いことは面白い。
 老人を主役から離し、若手ふたり組みの、やんちゃな大暴れに託す。
 正統派アイドルの北大路、やんちゃなヘン顔のひょうきんアイドル松方、ともに出色なり。の、アイドル映画の佳作とは、相成ったが。
 自農の水戸光圀が、自ら作った米による握り飯を助さん格さんに振舞い、「わしの米には、農薬など入っておらんぞ」といったり、時代劇なのに、英語由来の外来語を混ぜたり「現代風刺がてんこ盛り」な、パロディ的なつくりが、まあ、当時は「現代的」な新風を、「旧態依然」な東映時代劇に吹き込んだ、新しさ、というところか。
 しかし、沢島忠の新規さ、って、「現代の視点」から見たら、それほどのもの?って、思うのも事実であり。
 新規な外来語の時代劇への導入なぞ、とっくの戦前、マキノ雅弘/マキノ正博「鴛鴦歌合戦」などなどでもやっており、むしろ手垢がついた手法といっても、いいくらい。

e0178641_10291313.jpg ぼくは、常に疑問なのだが。
 淀みによどんだ(というのは、いささか、言い過ぎだとは思うが)旧習墨守の東映時代劇にあって、ちょこまかと新風を吹き込んだ沢島忠だが、むしろ実力以上に過剰評価されているのでは、ないか、というのが、ぼくの率直な感想で。
 本作脚本は白坂依志夫・鷹沢和善による。鷹沢和善というのは、沢島忠夫妻の共同ペンネーム、とのこと。ここら辺も、沢島の斬新さ、といったところか、ま、あくまでも、東映内部では、ですが。
 脚本が白坂ということであれば、他社ながら、増村保造が演出したほうが、絶対面白くなっていた、と断言できる。

 ゲスト・ヒロインが、ドドンパ娘・渡辺マリというのも、珍しい。感想駄文済みの松田定次「水戸黄門 天下の副将軍」59年では美空ひばりだったから、ずいぶん斬新で。やはり彼女としては、オトナシメの曲を歌うのが、伝統シリーズへの配慮か(笑)。渡辺マリも、そのパワー素晴らしく、もっと女優として、活躍してほしかった。

 なお、水戸藩の悪家老といえば藤井紋太夫だが、その藤井・岡田英次は、仮にも欲を出した家来・花沢徳衛を斬り捨てているのであり、その岡田をお咎めなしとは、黄門采配、いささかお花畑なお子さま志向では、あるまいか。
 あと、水戸出身者として言わせてもらえば、水戸城にいた助さん角さんが、次のショットで、大洗とは。単に海に向かって、バカヤロー、というには、水戸と大洗は、徒歩では相当の距離だぞ(笑)。
 東映京都撮影所で、手近の海岸ロケ、とは、いったいどこに行っていたのか、はいささか気になるが。

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by mukashinoeiga | 2015-05-24 10:30 | 旧作日本映画感想文 | Trackback(1) | Comments(2)

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Tracked from <徳島早苗の間> at 2015-06-26 18:10
タイトル : 「水戸黄門」がスペシャル版で復活。
◆「もう一回水戸黄門を」里見浩太朗の熱意で復活◆2011年に終了したTBS系の時代劇「水戸黄門」が6月29日午後9時からスペシャルドラマとして3年半ぶりに放送される。 次期将軍の座を巡る騒動に巻き込まれ、将軍候補(永井大)と共に旅に出る光圀。実子の松平頼常(高橋光臣)との父子の葛藤もテーマの一つとなる。演出、脚本とも、これまで水戸黄門を手がけたことがないスタッフをあえて起用。光圀の人間臭い部分も描かれ、キーワードは「ご老公 怒る」だ。 一方で、長年のファンの期待に応えるため、印籠のシーンは...... more
Commented by お邪魔ビンラディン at 2015-05-26 00:56 x
今回のフィルムセンターの東映チャンバラ映画特集は、松田定次や佐々木康の質の高い娯楽作品のスタンダードがあって、内田吐夢の「芸術志向」があって、マキノ雅弘の職人芸もあるという中に、やや異質なものとして沢島忠や工藤栄一が新風を吹き込み、のちにヤクザ映画で才能を全面開花させる加藤泰や山下耕作、あるいは結果としてTVにしか活躍の場を求められなかった何人かの職人監督の新人時代の傑作を紹介するという構成で、作品選択自体はなかなかよかったですね。
しかし、このシャシンを大映で増村が撮るとしたら、助さん格さんは雷蔵と勝新にあてがい、菅貫太郎扮するドラ息子役は、伊達三郎か船越英二あたりにやらせることで格好はつきそうですが、水戸黄門の配役でお手上げになってしまいますね。まさか、中村鴈治郎という訳にもいくまいし、長谷川一夫ではもっと無理。見明凡太郎では演技力はともかく華がないし。そうすると、柳永二郎とか志村喬あたりでお茶を濁すことになるのかな?
それにしても、この映画や加藤泰の『真田風雲録』の「現代諷刺」は、真っ先に風化してしまった部分ですね。岡本喜八の『にっぽん三銃士』や『近頃なぜかチャールストン』が、いま見るとまったく面白くないだろうと思われるのも、おそらく同様の理由で。
Commented by mukashinoeiga at 2015-05-26 21:43
沢島忠「水戸黄門 助さん格さん大暴れ」へのコメント、お邪魔ビンラディンさん、ども。

>作品選択自体はなかなかよかったですね。

 おっしゃるとおり、バランスのよい俯瞰でした。

>しかし、このシャシンを大映で増村が撮るとしたら、

 ぼくが勝手に妄想したのは、増村が東映に出向したパターン。まさに妄想の極致ですね。しかしそれくらい増村と沢島は、雲泥の差。

>この映画や加藤泰の『真田風雲録』の「現代諷刺」は、真っ先に風化してしまった部分ですね。岡本喜八の『にっぽん三銃士』や『近頃なぜかチャールストン』が、いま見るとまったく面白くないだろうと思われるのも、おそらく同様の理由で。

 おっしゃるとおり『真田風雲録』の、どこが、面白いのか、ぼくは何度見てもわかりません(笑)。『にっぽん三銃士』や『近頃なぜかチャールストン』も、同様です。いやー「映画批評」って、不思議ですねー(笑)。 昔の映画
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