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佐々木康「旗本退屈男」「右門捕物帖」沢島忠

京橋にて。「日本映画史横断⑤ 東映時代劇の世界」特集。ともに59年、東映京都。
 それぞれのシリーズものから、今回一本ずつ見たわけだが、いずれもミステリとしては希弱な、謎ともいえないような謎の連続殺人を、プログラム・ピクチャアの時代劇ならではの浅薄な捜査と推理で、暴いていく。どちらも既見作(笑)。
 典型的な例を申さば、旗本退屈男なりむっつり右門なりが、怪しい男を尋問していると、どこからか矢が飛んで来て、その容疑者を殺し、証言を封じるのだが、ならなぜ、もっと効率的に、退屈男や右門を射殺さない(笑)。
 すべてがお約束の世界で、要はヒーロー役者のかっこよさ、スタア性を楽しむ映画。
 誰も、厳密なミステリなど言うものは、求めていない。それが東映時代劇の捕物帖モノの楽しさであり。
 この二作、ランニングタイムもともに、87分、まさに安価な、出来物の、ベルトコンベアの、加工食品、ジャンクフードだ。
 でも、それが、また、一時の娯楽として、楽しいのも、確かなんだよね(笑)。
◎追記◎とはいえ、旗本退屈男 謎の南蛮太鼓冒頭の、山根サーカス、松竹歌劇団を大動員した清国曲芸団シークエンスのモヴシーンの圧倒的すばらしさ。この贅(勢)は、映画史上に特筆すべき快挙だ。

佐々木康「旗本退屈男」「右門捕物帖」沢島忠_e0178641_15384980.png旗本退屈男 謎の南蛮太鼓 (87分・35mm・カラー) <フィルムセンターHPより>
将軍綱吉の湯島聖堂建立を祝して清国から招かれた曲芸団の周囲で起こる奇怪な連続殺人。『旗本退屈男』に続くシリーズ第24作で、山根サーカス、松竹歌劇団が総出演。右太衛門好みの大仕掛けで、佐々木康監督自身もシリーズ中のお気に入りと語る1本。
1959(東映京都)(監)佐々木康(原)佐々木味津三(脚)池上金男(撮)伊藤武夫(美)吉村晟(音)山田栄一(出)市川右太衛門、北大路欣也、櫻町弘子、山東昭子、佐久間良子、三浦光子、山形勲、柳永二郎、上田吉二郎、加賀邦男、進藤英太郎




佐々木康「旗本退屈男」「右門捕物帖」沢島忠_e0178641_1540715.png右門捕物帖 片眼の狼 (87分・35mm・カラー) <フィルムセンターHPより>
長らく嵐寛寿郎の当たり役だった江戸の同心「むっつり右門」を、東映で大友柳太朗が継いだ第1作。おしゃべり伝六に堺駿二、あばたの敬四郎に進藤英太郎が扮し、掛け合いも賑やかに主役の大友の魅力を引き立てている。脚本の鷹沢和善は沢島忠とその妻・高松富久子の共同ペン・ネーム。
1959(東映京都)(監)沢島忠(原)佐々木味津三(脚)鷹沢和善(撮)伊藤武夫(美)桂長四郎(音)鈴木静一(出)大友柳太朗、堺駿二、進藤英太郎、里見浩太郎、桜町弘子、雪代敬子、藤本二三代、花園ひろみ、原健策、三島雅夫、山形勲
◎追記◎上記ポスターの比較も、面白い。
 右太さんは、文字通りの一枚看板。柳太朗は、女優陣の顔写真や場面写真をコラージュ。東映の考えるスタア性の違い。

 たとえば早乙女主水之介(右太衛門)が、重要証人が発狂して施薬院にいると聞き込み尋ねると、見舞い客の女が名物団子を差し入れしたことを知り、その団子屋へ。すると「重要証人」桜町弘子と、すぐにすれ違う。
 むっつり右門(柳太朗)も、凶器の弓づるの販売店を訪れると、そこの番頭の怪しさに遭遇。
 すぐわかる、よくわかる。安易というもおろか(笑)。
 この手の映画に、徒労捜査というものは、なかなか存在しない。
 ちなみに、怪しい番頭に、漫才のいとしこいしの、やせたほうの喜味こいし単独出演。お笑いがシリアスな役をやると、味があっていい、の典型。やせこけた顔がシリアスに、ぴったり。もっと、活躍してほしかったレヴェル。

 こういう、捜査側にとっては、夢の展開というシチュが、江戸市中で展開されると、現代の視点から見て、当然冤罪の可能性も考えられるのだが、対象となるのが、誰の目で見ても怪しい、当人たちも堂々悪事を働く黒覆面の強殺集団だったりするので、その心配はカケラもないというもの。

 退屈男の、親戚筋の若者か、家事見習いならぬ武事見習いの若者・京弥に、北大路欣也。一見お稚児さん風のかれは、退屈男のナニなのか、とヤオイなら思うであろうが、退屈男・妹の山東昭子が、ぞっこんの様子。
 本作は、謎?の一味・櫻町弘子、妹・山東昭子、支那娘・佐久間良子、婀娜な女スリ・三浦光子と、美人女優も充実。
 いっぽう「右門捕物帖 片眼の狼」では、桜町弘子、雪代敬子、藤本二三代、花園ひろみと、何気に二線級。主演・大友の立ち位置か。そして、そのどちらにも関係する桜町弘子(笑)。

 旗本退屈男の家老に、堺俊二。ぼくは、東映時代劇レギュラー役者の中で、唯一こいつが嫌いで嫌いで(笑)。本作では、まだましなのだが、「右門捕物帖 片眼の狼」では、手下の十手持ち・おしゃべり伝六での、堺は、まさに破壊力炸裂。
 むっつり右門との対比で、さらにそのおしゃべりは破壊級のものとなり、かん高い声で、性急に、爆発的にしゃべり続け、しかもまったく面白くもなんともない。むっつり右門も、明らかにウザがって「少し黙れ」とか言って、背を向けるのだが、大友柳太朗の、豪快な一閃により、堺駿二、斬り殺してほしかった(笑)。
 コメディリリーフという立ち位置にもかかわらず、でしゃばってもでしゃばっても、一度として、クスリともできない。本特集のほかの映画でも、錦ちゃん橋蔵ひばりの、家老、いわゆる大大名や幕閣の家老職ではなく、せいぜい小大名、旗本の家老職、明治以降の言葉で言えば家令だろうか、そういう役ばかり演じた数は日本一だろうが、いかに東映及び東映ファンに愛されての多用だろうが、嫌いなものは大っ嫌いだ(笑)。
 とんびが鷹を生む、というのか、若いころの堺正章の映画的はじけっぷり演技は大好きなので、正章のほうには、老家老を演じて、親父の不出来振りの汚名を注いでもらいたい、というのは、ひそかな願望として、昔からあるのだが、それが一向にかなわないのは、やはり堺俊二の爆発的破壊力を、みなが記憶しているせい?なのか、堺正章の、オヤジに反抗するがごとく?のやせっぷりが似合わないのか。うーん。
 津川雅彦がマキノ雅彦を名乗ったように、堺正章にも、堺俊二的役割を、冗談にしても、演じてほしかった。かなわない夢なのね。

 ぼくの感想駄文では、主役のスタアのことは後回しになるのだが、陰の豪快、陽の豪快ともに、絶品の大友柳太郎、カツゼツがいいんだかわるいんだかの、あの絶妙なエロキューションで、いつもニコニコ。
 なお、大友の友の字に半濁点なのはいつものことで、これは大友の拘りだろうが、これもいつものこと、同じ年の映画で、片方は櫻町弘子、もう一方は桜町弘子、との混在は、どうも解せない。クレジット指示の俳優担当、または当の書き屋さんの、テキトーな自己判断、だと思うが、お飾り女優要員の桜町の軽量さかも知れぬが、櫻町ファンとしては、二階の女が気にかかる(笑)。

★Movie Walker★に、タイトル検索で詳細な作品情報あり。簡単な作品解説、あらすじ紹介(企画書レヴェルの初期情報の孫引きゆえ、しばしば実際とは違うが)。

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by mukashinoeiga | 2015-03-08 15:43 | 旧作日本映画感想文 | Comments(0)

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