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豊田四郎「風ふたゝび(ふたたび)」ハラセツ原節子池部良山村聰浜田百合子三津田健杉村春子菅原通済龍岡晋南美江御橋公

半年でバツイチのヒロイン、ハラセツをめぐる、池部良と山村聰の、典型的メロドラマ。
 まだまだ若いハラセツの、キャピキャピした部分と、女の色香が楽しめる、一粒で二度おいしい時期だ。男前・池部良も絶品で。
阿佐ヶ谷にて。「昭和の銀幕に輝くヒロイン 第75弾 原節子」特集。52年、東宝。
 二年後の成瀬「山の音」で義父となる山村も、ハラセツを後妻に、ともくろむ。
 しかし、昔のメロドラマ系映画で、よくあるパターンだが、死んで七回忌の亡妻に、瓜二つなので、恋に落ち、後妻にと、求婚、というのは、なんとも気持ち悪いな
 いい年こいて、若い娘に惚れるエクスキューズという側面があろうし、金持ちの中年男が何の根拠もなしに若い娘に惚れるのは、ちょっと、はばかれる、というフンイキを打破する?狙いなのか。
 たぶん、ヒヒオヤジの下心では、ありませんよ、と強調したいのだろうが、余計気持ち悪い悪設定のような気もする。
 亡妻への執着であって、眼前に現れた若い女性に対する崇拝とは、まったく違うような気がする設定だ。
 いずれにせよ52年の映画で、七回忌の亡妻という設定は、戦前への回帰と言う裏目読みも、出来よう。って、ン十年ぶりに、思わず使っちゃいましたぜ(笑)裏目読み(笑)。かつて愛読した「映画芸術」小川徹の、必殺定番ターム。ああ、恥ずかしい(笑)。

豊田四郎「風ふたゝび(ふたたび)」ハラセツ原節子池部良山村聰浜田百合子三津田健杉村春子菅原通済龍岡晋南美江御橋公_e0178641_06145128.jpg風ふたゝび 1952年(S27)/東宝/白黒/88分 <ラピュタ阿佐ヶ谷HPより>
■監督:豊田四郎/原作:永井龍男/脚本:植草圭之助/撮影:会田吉男/美術:河東安英/音楽:清瀬保二
■出演:池部良、山村聰、浜田百合子、三津田健、杉村春子、菅原通済、龍岡晋、南美江、御橋公
離婚したばかりの令嬢に研究者の卵と実業家が好意を寄せるが──。原節子の実兄、会田吉男が撮影を担当し、妹を美しくとらえた画で話題を呼んだ作品。純粋なメロドラマのヒロインを情感たっぷりに演じる。○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

 なお、映画はいたって普通の、定番的メロドラマ。
 美男美女の池部ハラセツが、なかなか相思相愛の情を、打ち解けて打ち明けられないもどかしさ。
 そのもどかしさのモトとなるのが、金持ち山村聰のハラセツへの執着であり、地位も金もない若い池部が逡巡する、メロドラマたる淡いの、せつない心情なワケで。
 ただし、そうはいっても、山村聰のハラセツの想いが、セクハラに、なっては、いけない。山村聰も、立派に、最終的には、池部に、ハラセツを、譲らねばならない。
 池部のハラセツへの思いは、ハラセツ本人に由来している(注)が、山村のハラセツへの思いは、亡妻に由来している。ここに勝ち負けの根拠は、はっきりしているのだ、という、当時のメロドラマ作法の時代的エートスにおける流行?が、「亡妻に似ているから、惚れた」という、ちょっと首肯しかねる、ワル設定の根拠かと、思われる。

(注)とはいえ、今は野菜市場に勤めている池部が、兵隊にとられる前は、三津田健教授のモト、化学を研究していた学徒であり、その恩師の娘であるハラセツに惚れるのは、やはり、若いころの、戦前回帰的心情の表れとも捉えることもでき、それは池部の「あなたへの想いが、ぼくの研究熱にふたたび火をつけた」という手紙にも、現れていよう。
 タイトルの「風ふたゝび」の風とは、そういう池部の戦前の研究家魂への回帰であり、ハラセツのバツイチ前の、娘としての情熱の回帰であり、と、すれば、山村の亡妻への志向と、池部の兵隊前の状態への復帰は、つまるところ、それは、ハラセツへの純粋な想いとは、いささかは、違うのではないか、と、「邪推」いたしますね。
 でも、まあ、こういう小川徹的裏目読みは、本当に「不潔だわ」(ハラセツの口調で)。

 上記ラピュタの解説にある<原節子の実兄、会田吉男が撮影を担当し、妹を美しくとらえた画>には、若干の異議を唱えたい。
 もちろんハラセツの美貌を多々捕らえたショットも、本作には数多く存在は、する。この時期のハラセツを撮って、それは普通である。
 その上で、本作では、これまで、あまり見たことのない「異貌」が、数多く散見されたように思う。
 ええっ、ハラセツって、こんな顔していたっけ、と、見たことのない表情が多々。
 普通のキャメラマンだったら、「原さん、ちょっと表情が、硬いな、もっと、やわらかく」と、NGにするようなハラセツのマスクを、次々に、撮っている、そういう印象。
 実兄としての特権というものが、もし、あるなら、「俺は、本当のハラセツの美貌を撮ってやるぜ」という思いもあったはずだろう。ハラセツも、兄には、それを許した、と思いたい。
 なお、ハラセツだけでなく、池部良の男としての美貌も撮えている。グッド。

 実業家・山村總の悪友に、菅原通済、御橋公、十朱久雄、なんだが、プロの役者の御橋、十朱に決して引けをとらない菅原通済(もちろん役名は菅原)の、融通無碍な演技力に、改めて舌を巻く。
 ワル目立ちしていないぶん、小津映画の菅原より、うまいと思う。もちろん好アシストの、杉村春子も、グッド。

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by mukashinoeiga | 2015-01-12 02:22 | 旧作日本映画感想文 | Comments(0)

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