佐分利信「愛情の決算」原節子三船敏郎八千草薫小林桂樹

 渋谷にて。「日本のオジサマⅡ 佐分利信の世界」特集。56年、東宝。あと2回の上映。
 再見だが、やはり、素晴らしい傑作である。
 佐分利信、原節子、三船敏郎の、主役三人の素晴らしさ。そして、脇役の一人ひとりにも、見せ場を用意する俳優愛に満ちた映画であることは、ほかのサブリン監督作と同様。
 以下、ネタバレあり。

e0178641_2243932.jpg愛情の決算(35mm)公開:1956年 <渋谷シネマヴェーラHPより>
監督:佐分利信
主演:佐分利信、原節子、三船敏郎、小林桂樹、千葉一郎、田中春男、堺左千夫、内田良平、八千草薫
子持ちの戦争未亡人・勝子は亡夫の上官だった楢崎と再婚するがうまくいかない。そんなとき、楢崎の部下だった大平と再会し…。無能で無気力で無口、遂に妻から三下り半を突きつけられる楢崎を佐分利、社会に出て恋愛し美しくなっていく勝子を原節子が演じる。大平役の三船敏郎と原節子の大人の恋愛映画にして、戦後日本人の変化を描く社会派ドラマ。

 結果として、原節子は、内田良平、佐分利信、そしておそらくは、三船敏郎と、三度結婚することになる。
 これは、翌年の(感想駄文済みの)佐分利信「夜の鴎」のアラタマと同様。新珠三千代も、四度結婚することになる。
 これはたまたまなのか、東宝プロデューサーの要請なのか、それともサブリン好みの題材なのか。
 波瀾万丈?な女の人生、あるいは女の人生やり直し、という題材がすきなのか。
 いずれにしても、あの仏頂面?で、いわゆる女性映画に才を発揮するのは、紛れもない事実である。

e0178641_2245366.jpg 小津の聖女・ハラセツが、自分の息子の誕生日を忘れるくらいに、恋に狂う。その輝き。
 若く精悍な、男の中の男・三船、繊細な男心を演じる、数少ない機会の三船だが、ホントウにすばらしい。
 その三船に、ハラセツを寝取られるサブリンも、うちのなかでは仏頂面だが、職場では、若い女性社員に精一杯おどける、少々ブザマな様子。頑固オヤジで、こういうの、いるよなあ、という道化ぶりに、微苦笑。
 どうせ三船には負け戦なんだから、徹底的に駄目男を演じてみようという、自虐。
 サブリン監督作の、出演サブリンの、自虐も、ここにきわまれり、という名シーンだ。

 <捨てられた息子>が、母より義父サブリンを選ぶ、ほのかなぬくもりも、いい。
 そうして、サブリン監督が本当にいいのは、サブリンの戦友たち一人ひとりの人生を、短い時間で、的確に、そして最大限に描ききったところだ。
 借金しに行った堺左千夫が、サブリンの見苦しい(笑)道化っぷりを見て、にやりと笑う絶妙。
 そして、愛らしい小林桂樹と、これまた愛らしい八千草薫のサブエピソードは、別映画としてスピンオフしてほしいくらいの、楽しさ。きっと絶妙なラヴコメに、なっただろう。垂涎。

 小林桂樹は、八千草薫が好き。八千草薫は、三船敏郎に、ほのかに片思い。三船はハラセツが好き。ハラセツは俺の妻だ、とサブリン。すべてのココロのベクトルが掛け違う。
 佐分利信監督作の代表作といっていいだろう。

 なおハラセツのバラック時代の隣人・賀原夏子が、下記Movie Walkerで、若い女と、クレジットされているのに、爆笑。下卑た、下世話な微笑を浮かべさせたら、日本一のこの女優が、シュミーズ姿で登場すると、とたんにハラセツを圧倒する存在感。
 いや、べつに、賀原夏子には、何の趣味もないが(笑)、賀原夏子のシュミーズ姿に目は釘付け(笑)。相変わらず下世話な微笑が素晴らしい。
 短い登場シーンで、各役者の個性を最大限に引き出す。これは原作どおりなのかもしれないが、案の定、ラストのシメにも、下世話に登場する。
 すべての俳優が、素晴らしい。
◎追記◎藤本真澄プロデューサー、ニックネームおねえちゃんの名物助監督・川西正純、照明・石井長四郎など、成瀬組で固められたスタッフであり、成瀬映画とも親和性が高い佐分利信が、とうとう成瀬に一度も出なかったのは、なぜなのか。
 松竹三羽烏のほかのふたり、上原、佐野は多用されているのに。
 小津が昵懇の里見弴の甥・森雅之が、とうとう小津映画に出演していないことや、松竹映画では上原を軽く扱っていることとともに、不思議。単なる掛け違いなのか、何らかの意趣なのか。
 コメディ路線で(笑)川島映画のサブリンも、見てみたかった(笑)。

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by mukashinoeiga | 2014-10-14 03:01 | 佐分利信 サブリン人生劇場 | Trackback | Comments(7)

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Commented by お邪魔ビンラディン at 2014-10-15 01:16 x
川島映画にサブリンを出すとすると、次のような役どころかな?
 「愛のお荷物」の山村聰の代わり
 「銀座二十四帖」の河津清三郎の代わり
 「風船」の二本柳寛の代わり
 「女であること」の森雅之の代わり
 「青べか物語」の森繁久彌の代わり
 「イチかバチか」のハナ肇の代わりをやると田中角栄そっくりになりかねんですね。
Commented by mukashinoeiga at 2014-10-15 03:28
佐分利信「愛情の決算」へのコメント、お邪魔ビンラディンさん、ども。
 挙げられた、山村聰、河津清三郎、二本柳寛、森雅之、森繁久彌、ハナ肇は「軽妙洒脱」なキャラが共通しており、そこが川島映画に起用された理由でしょう。(ハナだけは少し毛色が違うか)
 佐分利信は彼らと対極にある重厚ですから、軽妙にかけるサブリンは、川島には、やはりムリかな。
 その無理は承知で、たとえばフランキーあたりの代役でのサブリンを見てみたかった(笑)。    昔の映画
Commented by taisukez1962 at 2016-07-27 11:03
>無理は承知で〜

「幕末〜」のフランキーに代えてサブリンですか?…..面白い….てか観てみたい。
要領わるくてボコボコにされるんじゃないすかね?

三船さん相変わらずかっこいいっすねー。
黒沢映画ではちっとも思わないのに。

この作品といい、「下町」といい、持って行きますな。

>こころのベクトルの掛け違い
これが神妙すぎると抵抗を感じちゃいますが
この作品はその塩梅が巧いと思いました。

>小林桂樹と八千草薫のエピソードのスピンオフ
賛成賛成。
八千草さんカワイ娘ちゃんすぎるんですよ…ありゃ反則に近いですな。

へぇー...ムカエイさん賀原夏子が好きやったんや...へぇー…しかもシミーズ姿の賀原夏子が…



Commented by mukashinoeiga at 2016-07-27 12:28
佐分利信「愛情の決算」へのコメント、taisukez1962さん、ども。
 今度の阿佐ヶ谷のフランキー特集、見に行くことがあったら、脳内でサプリンに変換してみてみますか(笑)。
 三船氏、現代劇には、もっともっと出てほしかった。
 確かに反則な八千草ですが、なぜか主演作が少なくて、残念。旦那のせいか(笑)。

>しかもシミーズ姿の賀原夏子が…

 いや、だから、そこに、性的な趣味は、一点もないんでございますよ(笑)。誤解なきよう(笑)。 昔の映画
Commented by taisukez1962 at 2016-08-13 21:44

先日youtubeで小津の「浮草」をチェックしていたら、
ムカエイさん憧れの賀原のなっちゃんがお約束の
シミーズ姿で御出演されてましたよ。

何度も観ている作品なんですが、これまでは意識してなかったんで….。
しかも夏子スマイルと相俟って一瞬ゾクッと涼風が流れましたよホント。
夏子のシミーズはアグファに限るウン。

これ「愛情の決算」の三年後の作品なんですが、
小津さん観てたんでしょうなぁ。


Commented by mukashinoeiga at 2016-08-13 22:03
佐分利信「愛情の決算」へのコメント、taisukez1962さん、ども。

>何度も観ている作品なんですが、これまでは意識してなかったんで….。

 これからtaisukez1962さんも、賀原なっちゃんに、くぎ付け(笑)ですね。

>小津さん観てたんでしょうなぁ。

 いやあ、小津は、こっそり成瀬を場末の映画館なんかで、見てたと思いますよ。成瀬は、小津を、どうかな(笑)。  昔の映画
Commented by mukashinoeiga at 2017-07-31 20:45
佐分利信「愛情の決算」へのセルフコメント。

>小津さん観てたんでしょうなぁ。
>いやあ、小津は、こっそり成瀬を場末の映画館なんかで、見てたと思いますよ。成瀬は、小津を、どうかな(笑)。 

 アクセス数が上がったので、読み返してみたら超勘違いが判明(泣)。
やはり自分の映画の常連のサブリンが何作も監督してるんだから、多少は気になるでしょう。
 サブリン、なかなかやりおるな、と思ったのでは。 昔の映画
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