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三隅研次「巨人 大隈重信」宇津井健船越英二オール大映脇役陣

素晴らしい。三隅研次的傑作。
 主演・宇津井健、絶品。
 神保町にて。「素晴らしき伝記映画の世界」特集。63年、大映東京。16ミリ版にて上映。
 10年位前?であろうか。Heroさんが見てきて「素晴らしいですねー。あるんである、なんですよ」と絶賛していて、それ以来見たかったもの。ということは、かくなる傑作すら、めったに上映されない東京の名画座状況は、如何。
三隅研次「巨人 大隈重信」宇津井健船越英二オール大映脇役陣_e0178641_443158.png 明治期の、外務大臣、総理大臣にして、早稲田大学創立者の伝記映画。なのにたった103分。
 これが1963年の大映映画、三隅研次映画でなく、現代の映画(1970年代以降)であるならば、確実に2時間は越えていただろう。その大映ストイシズム、その三隅ストイシズム、素晴らしい。
 英国公使パークスとの激論外交から、明治三十五年、早大創立二十周年式典まで、一気に駆け上る、三=宇津井大の、映画的高揚。
 そしてこの高揚は、三隅お得意の剣によるものではない。
 言葉、言葉、言葉。ロゴス、ロゴス、ロゴス。
 膨大なせりふを、なんらブレることなく発し続ける宇津井健。まさに、明朗なる明治、明晰なる日本青春期、明快なる日本勃興期を体現する宇津井健。素晴らしい。
 特に多発する決めせりふ「あるんである」と言う語尾の、一点の迷いもない明晰を、堂々と演じる、素晴らしさ。
◎追記◎上記記念式典は、ぼくの勘違い。正確には、
早稲田大学の前身となる東京専門学校創立20年=同時にその専門学校を発展的解消しての、早稲田大学開校式、というものでした。
 なぜ、こんな誤記が発生したかというと、そもそもキネ旬の作品紹介が「早大創立二十周年」と書き、それをムーヴィーウォーカーが、そのままネット化し、それをぼくがコピペした、という孫引きの悲喜劇ですね。
 では、なぜキネ旬は間違えたのか、というと、キネ旬が書き写した、大映のプレスシートがそもそも間違っていたのか、大映のプレスシートを、当時のキネ旬編集員が「誤読」したのか、これは、きわめて誤読しやすいパターンだと思うから、後者の可能性が高い、ということでしょうかね。以上、追記。

 この宇津井健が、一切の主演男優賞からすがすがしく無視されたことの、爽快なまでの美しさ。
 これに比べるも愚か澤井信一郎「福沢諭吉」(感想駄文済み、つい最近同じ神保町で見たから、引き合いに出しました)の、いかなる意味でもの、つまらなさ。なお、本作においての福沢諭吉は老けメイクの船越英二。
 こんにち、福沢の言説がたびたび引き合いに出され、大隈が歴史教科書のページの奥に埋没したのは、「学問のススメ」「天は人の上になんちゃらかんちゃら」「東方の悪友を謝絶」などの、小泉純一郎ばりのワンフレーズ発言に長けていたせいだろうか。いや、福沢を、小泉に比較するなど、失礼であったか、妄言多謝(笑)。

 大映東京の大映男優陣を、かなり総動員した大映東京男優陣映画でもある。大隈を爆弾テロする、玄洋社社員(まだ顔に幼さが残る工藤堅太郎)が、大隅とは真逆に、ひとこともせりふを発しない、この対比。右翼テロの本質を、わかってらっしゃる三隅。
 医官・大山健二、と言うが、このテロの大隈を診療する場面での出演なのか? 大山健二、確認できず。
大隈を斬りにくる石黒達也、代表作と言うべき。
 スパイ学生・仲村隆、いかにもな適役。グッド。
★【映画】巨人 大隈重信 - いくらおにぎりブログ★
 やはり、なんとも素晴らしい本作のあらすじ紹介。あらすじを書くだけで、わくわくどきどき。いくらおにぎりさんは、平成の淀川長治ではあるまいか(笑)。

大隈重信伯の演説「憲政における世論の勢力」第1面

「あるんでアル」なんて、言ってないやないか(笑)。まあ、青春の激論期とは違い、穏やかな講演であるということもあるだろうしね。
 しかしそれにしても、明治の人の発言が、今でも、なんら違和感なく聞けるというのは、すごいことだよねえ。

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by mukashinoeiga | 2014-03-05 01:42 | 三隅剣児女なみだ川と大魔剣 | Comments(0)

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