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山田洋次「虹をつかむ男 南国奮斗篇」

 京橋にて。「映画監督 山田洋次」特集。97年、松竹。
 本作ヒロインの小泉今日子は、素晴らしい。
 いつも、なんだか、ふわふわした演技が、安定感を逆に欠いた印象を与え、ヘタっぴ過ぎる彼女が、見違えるほどいい。
 これは、おそらく、本作が室生犀星「あにいもうと」をモチーフ(パクリと言ってもいい)にし、小泉をヤンキー体質のお姉ちゃんにしたことで、彼女本来の美質が生きたのだと思う。
 ちなみに、前作「虹をつかむ男」(イッコ前に感想駄文済み)ヒロイン田中裕子の役名は十成八重子、これはあからさまに島津保次郎の傑作「隣の八重ちゃん」のもじりだが、本作の小泉の役名は祝節子、97年時点での映画のヒロイン名としてはやや古風だが、誰をイメージしているのかは、言うまでもない。

 本作での西田敏行は、前作とは違い、ぼうぼうのひげ面で終始通す。
 つまりここでの西田は、ハマちゃんプラス寅さんだけでなく、山田洋次初期コメディのハナ肇にも、回帰しているわけだ。
 ということで、西田の「粗暴度」は、前作を上回る。「映画愛」の描写が前作より減ったことと、あいまって、出来は前作よりは、よい。
 西田は、四国徳島の映画館主から、鹿児島の映画館主に変貌し、それは、不入りの映画館を閉館して、奄美諸島の島々を、流して歩く移動映写の流れ者に変化するためのものであった。
 芸達者な西田に歌を歌わせる。それもすばらしいが、本作の美質は、なんと言っても、ヒロイン小泉今日子、第二ヒロイン松坂慶子にある。松坂慶子は、ツンの時も、デレの時もいい。
◎追記◎ちなみに、小泉は、夫に逃げられ、幼い息子を連れて里帰り。松坂は、夫がスキューバダイビングのコーチとして、海外長期出張中で、小学生の息子と義母とともに、嫁ぎ先の民宿を守っている。山田映画真のヒロイン倍賞千恵子(小泉の伯母にあたり、役名絹代!)も、ひとり民宿を経営。
 つまり、いずれも山田洋次好み?の、未亡人か、擬似未亡人状態。前作の田中裕子も夫に死別。
 西田の憧れの君、松坂はともかく、吉岡秀隆青年(役名は平山)の恋愛相手を、何も年上の小泉にする必然性はないわけだが、山田洋次としてはワケありの女こそがドラマを深くする、という思い入れなのだろうか。


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by mukashinoeiga | 2014-01-19 12:35 | 旧作日本映画感想文 | Comments(0)

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