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今泉善珠「燃える上海」山村聡川路龍子森雅之中原早苗原保美脚本吉村公三郎

 阿佐ヶ谷にて。「現代文学栄華館 昭和の流行作家たち2」特集。54年、現代ぷろだくしょん。16ミリによる上映。
 「第一次」日中戦争の「準備期」に咲いた仇花というべき、清朝末期の皇女にして、日本人軍属の養女、「男装の麗人」川島芳子が、主人公。
 映画によれば、何とか日中戦争を回避すべく、いろいろ工作しているようだが、客観的に見たら、日中間でキャッチボールされているような存在。
 文字通りの仇花。
 彼女を、もと松竹少女歌劇の男役スタア・川路龍子が演じている。のだが、オトコ顔の甘さゼロの顔だちで、たびたびヨヨヨ、と泣き崩れられても。明らかに方向性を、間違えている。監督は新人らしいが、脚本は、吉村公三郎。だめな脚本、だめな演出。
 旧式定番のメロドラマ手法が通用しないキャラなのにね。
 もっと、りりしくあるべきキャラなのに。
 吉村映画が良かったのは、新藤兼人脚本の力が大だったということ、まるわかりの、不出来な脚本。
 演出も、ひどすぎる。まったくメリハリのない演出で、一応スパイ映画の、そこそこの演出でも、最低限はあるような緊張感すら、徹底的に欠いている。
 それなりに刺激的かつ映画的な素材(戦争間近かの、二つの国の間で苦悩するスパイ、祖国、裏切り、謀略、戦争)にもかかわらず、どんな愚鈍な映画ですら、最低限は観客に担保している、緊張感を、徹底的に、欠いている。驚くべき、情動の欠如。
 教科書に載せたいような、ダメ映画。すべてのショットが、せりふが、流れが、緊張を欠いた、凡庸さ。

 クレジットは、山村聡、川路龍子、森雅之と、三枚看板で。
 モリマ、準主役のような、クレジットだが、実は短い2シークエンスのみの出演。映っているのは、全部で2分とないのでは。しかも、最後のシークエンスでは、殺されちゃうし。弱小プロダクションの、典型的いんちき。
 役柄は、中国の作家。日本の作家・山村聡と連動して、日中開戦を、回避しようとする工作員。山村は、原作・村松梢風そのものか。
 ただし、見所は、こんな映画にも、ある。おそらく予算のない中で、戦前上海を再現、その美術力は、賞賛に値する。背景は、おそらく拡大写真の書割が多いと思うが、画質の悪い当時の白黒画面(しかも経年劣化した16ミリ・プリントでの上映だから、細かいテクスチャーは、はっきりいって、飛んでいる)で見ると、なんとも、リアルでさえある。
 さらに、きちんとした屋外セット、エキストラ。本当に素晴らしい。
 まじめな中国人活動家に、原保美。ナイス・キャスティング。川路龍子の侍女的キャラに、若い中原早苗。かわいい。

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by mukashinoeiga | 2013-02-02 21:32 | 旧作日本映画感想文 | Comments(0)

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