今井正「婉という女」岩下志麻河原崎長一郎緒形拳佐々木すみ江
京橋にて。「生誕百年 映画監督 今井正」特集。71年、ほるぷ映画。
前の家老が非情に有能かつ、謹厳な藩政を行った。灌漑事業などが成功し、藩財政は豊かになったが、反対派や、その有能ゆえの妬みも多かった。
その家老の死後、遺族は、その反対派たちによって、人里離れた山中の、一つ屋に、一家全員が軟禁、幽閉されて、40年。家老未亡人、家老の妾、このふたりと家老の間に生まれた男女の子供たちは、八人か。
ここら辺がほとんど説明紹介もなく、ドラマが展開して、ちょっと人物関係がつかみにくい。若い男女にかんしては、家老の遺児だとわかるのだが、年配の女性は、本妻なんだか、妾なんだか、下女なんだか、早い展開についていけず、だれだかよくわからないまま、ドラマに目を凝らすしかない。
また、子供たちも、本妻の子なんだか、妾の子なんだか、ほぼ同等の描写なので、区別がつかず。これに輪をかけて、母娘もお互い相手を「~様」と敬語で呼び合い、姉妹も同様。言葉使いでの区別も出来ない。
不親切なんだろうが、市川崑の横溝ミステリなら、だれが誰だか紹介する必要はあろうが、まあ、人間ドラマとしては、仕方ないことか。今井正演出は、人物整理が下手、ないしは、関心がない。
というのも、ドラマの中心は、だんだん、三女・岩下志麻に、絞られていくからだ。
不当にも、40年間幽閉された一家のドラマなのではない。まだ幼児のときに家族とともに囚われ、四十女として、初めて、世に出て行く女のドラマに、収束していく。
40年間の幽閉。考えるまでもなく、これはアウンサン・スーチーの場合より、ひどい。というのも、申し訳ない話だが。しかし、若い男女は、家から一歩も出られず、青年期になると、性欲の旺盛な時期になるも、対象は、目の前の、兄と妹、あるいは生みの母しか、いないことになる。
長女は、婚家から、引き連れだされ、夫や乳飲み子と生き別れのまま、幽閉され、数年で自害。ある兄(河原崎長一郎)は、次女・楠侑子や、妾だった母・佐々木すみ江にまで、手を出す。他人がいない、出合えないのだから、仕方がないといえば仕方がない。しかし、まさか、犯されて、身悶える佐々木すみ江を見るとは、思わなかった(笑)。
妹・志麻に迫られて、それでも、堅く操を守る兄に、緒形拳(笑)って。のちの鬼畜系俳優・緒方なら、真っ先に美形の妹に喰らいつくだろうに。ま、あだしごとはさておき。
岩下志麻は、たいへん、美しい。上から目線で、もと家老の娘として、はした侍を一喝する、凛とした役には最適。
ただ、緒方拳や、まだ若さでギンギンの北大路欣也などを想って、妄想夢にふけるシーン。身もだえ、あえぎ顔になるのだが、木で鼻をくくったような、義務感?丸出しのあえぎ顔とでも言いますか。エロいシーンに挑戦しても、で岩下はそういうシーンによく挑戦しがちなのだが、いつもコントみたいなあえぎ顔なんだよねー。あえぎ顔、下手すぎや。
余談。今回ぼくの見た席から、同列で数席はなれたところに、サラリーマン風の男。上映開始ぎりぎりに、その男の隣に、ばあちゃんが駆け込み着席。するととたんに、ばあちゃん、男を罵倒し始める。
「あんた、あんたのとなりだったのね」「やめてよ、あんたのせいで、映画の気が散るんだから」「やめてね。ホントに」と、しつこく罵倒する。男は反論せず、静かに、耐えるのみ。
特にうるさいようには、見えないが?
結局、さんざん男を罵倒したあげく、ばあちゃんは、一つ後ろの列に移動。後ろの列の隣客には、ぎりぎりの移動をわびている。
で、上映が始まったら、男はちいさなメモ帳を取り出し、筆記にかかる。ああ、ばあちゃんの言ってたのは、これかあ! 上映中のメモがき、ペンの音、ページをめくる音、ノートの白い光沢、となりでこれをやられたら、そりゃあー、映画には集中できないわナー。
フイルムセンターでは飲食禁止。上映前にペットボトルを飲んでいたら、警備員に注意された。前に、やはり今井正の映画を見る前に、ペットボトルを飲んでいたら、いかにも左翼臭の強そうな(笑)観客から注意された。
上映前の水分補給に、何の問題があるのか、ぼくにはよく理解できない。
であるならば、上映中のメモ行為は、もっと、いかんだろう。数は少ないけど、タマにいる。目障り、耳障りだ。
なに? フィルムセンターには、研究者も来る? 研究者なら、頭に叩き込め。ま、いまどきの映画研究者は、DVDで見て、映画館には、来ないらしいが。
男は、メモがきは最初だけで、後は放棄の模様。そりゃ、そうだろう。暗闇で、映画の展開を目や耳で追いつつメモなんて、プロの速記者じゃなきゃ無理。今まで見たメモ書き野郎も、大体、途中放棄が多かった。
「ふつうの字」しか書けない野郎には、はなから無理。そもそも普通に見ているだけでも、前述のように、情報量が多くて、追いつけないのを、それを速記文字でなくメモする、しかも暗闇でなんて、完全に無理、シロウトには。
さらに余談。結局メモ書き男は、途中放棄いたって、静か。その男を罵倒して、席替えババアは、映画の後半は、手に持っていたビニール買い物袋をがさがさ、ごそごそ、てめえのほうが、五月蝿いだろ(笑)。コントや。
おまけに、きれいなプリントなのだが、フィルムセンターの上映ピントが、最初と最後に、甘い。その甘さに、フィルムセンター映写技師は、気付かず。いや、ピント自体は合っているのだが、フィルムに潤滑油を過剰塗布なのか、あるいはレンズに曇りか。
こういうときは、受付スタッフにいちばん近い席の客が注意しに行くしかないのだが(フィルムセンターの場合は最後列)誰も行かない。みんな、ボケてるなあ、と思って、黙って、見ている。
◎追記◎2015年にも、レンズ焼けと思われるピンボケ映写が多発した。フィルムセンターは、レンズ劣化にまったく無痛覚なのだろうか。
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by mukashinoeiga | 2012-08-26 10:49 | 今井正 青い左傾山脈 | Comments(0)