與那覇潤「中国化する日本/日中「文明の衝突」一千年史」

 ナドレックさんの<映画のブログ>というのが刺激的で面白く、時々のぞいているのだが、そこで数回にわたって紹介・批評されている本が面白そうで、読んでみた(文芸春秋刊)。
 著者の與那覇潤は、日本近現代史の学者で「帝国の残影 兵士・小津安二郎の昭和史」(未読)などの著作がある。

【<映画のブログ>では、以下の関連批評記事があります。】
『中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史』 ジャパニメーションの起源は中国なの?
『中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史』 どこにいる『風の谷のナウシカ』?
『中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史』 半世紀遅れた『天空の城ラピュタ』?
『中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史』 儒教vs『ナバロンの要塞』
『中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史』 日米映画のアジェンダの違い

 これを見てわかるように、歴史学の入門書ではあるが、かなり映画にも言及している。ジョン・フォード「わが谷は緑なりき」、深作欣二「仁義なき戦い」、ジェームズ・キャメロン「アバター」、三池崇史「一命」まで、約40本の映画が参照されている、映画ファンにやさしい(笑)歴史学入門書なのだ。
 昨年11月に刊行され、ぼくが買い求めたのは、5刷り目、それなりに売れているようだ。

 著者は、ここ数十年間のプロの歴史学者の間では常識になっているが、一般の歴史ファンには知られていない、最新の学説を、わかり易く紹介している。やはりそういうものにうといぼくから見ると、目からうろこの説ばかりだ。
 たとえば、

◎世界で最初に「近世」に入った地域は、江戸時代の日本でも、ルネッサンス期のイタリアでもなく、宋朝の中国である。
◎宋朝は、唐までの王朝とまったく違ったシステムを導入した、「画期的」な王朝であり、その宋で導入された社会のシステムが、中国でも、そして(日本以外の)全世界でも、現在に至るまで続いている。
◎「明治維新」とは、日本の「西洋化」ではなくて、実は「中国化」であった。
◎オバマのアカデミー平和賞受賞は、アメリカや、ヨーロッパ社会が「中国化」した結果である。
◎追記◎アカデミー賞は、もちろんノーベル賞の間違い。だから、映画バカってやつは(笑)。
 ついでに追記すれば、冒頭紹介した同じ著者の「帝国の残影 兵士・小津安二郎の昭和史」(未読)は、その後読んだが、ゴミ本クソ本の類で、こんなひどい本も珍しいというくらいのものである。 
◎日本の江戸時代まで続いた、封建制身分制度を、中国は600年前に廃止していた。
◎社会主義は江戸時代に似ている。
◎「戦前の暗い時代」とは、選挙結果を見れば一貫して社会主義政党が伸びていった時代である。
◎わかりやすく一言で言うと、大学レベルのプロの日本史では「軍部がやる社会主義」のことを「軍国主義」という。
◎「貧困は社会の責任」と主張する社会主義者は「進歩的」と思われがちだが、共産党などの例外を除くと、戦時中はこういう社会主義者が主に軍部と手を握って、江戸時代のような「反動的」な体制を作るのに貢献してしまった。
◎高校までのあらゆる教科書が教えているのとは逆に、明治維新は結局失敗して、昭和維新は成功した。もしくは、成功してしまった。
◎「あの戦争」を通じて、日本は世界に冠たる史上最高の社会主義国家を作った。
◎ここ30年ほどの日本近代史研究では、いわゆる、自由民権運動もまた、明治政府の自由競争政策への不満と、江戸時代の不自由だが安定した社会への回帰願望によって支えられていた。エトセトラエトセトラ。

 えっ、自由民権運動って、議会制民主主義など、西洋化近代化を目指した運動でなく、復古主義だったの?と、驚く。
 これだけ取り出すと、なんだかトンデモ学説のように聞こえますが、よく読めば、なかなか説得力があるのですね。
 著者は、ありとあらゆる歴史書を読み、パッチワークし、一般人の知らない「最近の学説」を紹介する。 それは、いいのですが、そこに「趣味の?映画鑑賞」が押し入り、歴史の裏づけを黒沢明映画、木下恵介映画、「三丁目の夕日」などを通して、検証する。これが、映画モノとしては、いただけない。ホンっトに、アナだらけ。映画、舐めんなよ(笑)。
 宮崎駿関係は、上記ナドレックさん<映画のブログ>に、詳しく、批評されているので、そちらをお読みください。
 では、ぼくはそれ以外の話から、進めよう。
 まず、著者は、黒沢明「用心棒」は<幕末以降に日本社会も巻き込まれることになったグローバリズムの暗部>を主題とし<明治への嫌悪>をあおり、同じく黒沢明「椿三十郎」は、<江戸への郷愁>を表わしているという。この、シリーズモノに、そんな違いがあるの?(笑)ということで、つづく。
 長くなったので、また、後日。
◎追記◎当駄文の続きです2~4
★椿三十郎 vs 桑畑三十郎★
★坂本龍馬 vs 伊藤博文★
★橋下維新の会 vs 明治維新★

◎さらに、一時、かなり凝っていたので?以下の駄文も、あり。これは、リンクするのが面倒だったので、リンクさせてません(笑)。
「真昼の決闘」:本当に名作なのか
...與那覇潤「中国化する日本/日中「文明の衝突」一千年史」。 暴力的だが、ヤミ経済で実力を働かす「中国化された明治」の悪党たち
小沢一郎という「病」:夜逃げ屋新党
...與那覇潤「中国化する日本/日中「文明の衝突」一千年史」が指摘するとおり、二兎を追ういいとこ取りは、しばしば、悪いとこ取りの結果に終わることが、多い。 
安達伸生「火山脈」
...與那覇潤「中国化する日本/日中「文明の衝突」一千年史」を引用すれば、分をわきまえよ、出る杭になるなという
千葉泰樹「美しき豹」
...與那覇潤「中国化する日本/日中「文明の衝突」一千年史」が示唆するように、麻薬や武器など非合法商品が闇取引されるならともかく、
鈴木英夫「大番頭小番頭」
...與那覇潤「中国化する日本/日中「文明の衝突」一千年史」風に言えば、中国化・西洋化された教育を施された、池部良が、

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by mukashinoeiga | 2012-04-07 01:19 | うわごと | Trackback | Comments(0)

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