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山崎徳次郎「事件記者 影なき侵入者」

 阿佐ヶ谷にて。「記者物語-ペンに懸ける」特集。62年、日活。
 フォーマットはいよいよ崩れ、禁断の領域(!)に踏み込んでくる。
 発端。各社の記者たちが、呉越同舟で、印旛沼に行き、鴨撃ちを楽しんでいると、ドザエモン発見、すわ、殺しか、という。その報を受けて、桜田記者クラブのメンメンも、色めき立つ。

 お話変わって、「丸福金融」のある支店の、支店長、男性社員、女性社員の三人に、同じ脅迫状が、届く。この三人、一年前に、電車内のスリ逮捕に協力した、お手柄、ということで、当時新聞報道された。この新聞には、お手柄の三人の住所氏名がばっちり載っていたため、スリが出所後、お礼参りという図式で。
 これにびびった、男性社員が、酔っ払った上、記者クラブに怒鳴り込んでくる。「お前たち新聞が、住所氏名を載せるから、お礼参りされるんだ」と。
 おりしも、その夜、支店長が、何物かに殺害される。
 こりゃあ、新聞が引き起こした事件か、われわれ記者にも責任アリかも、と、各社共同戦線で、取材も、一致して行う協定を結ぶ。

 つまり、これまで、各社抜きつ抜かれつ、わが社独自のスクープを狙い、ましてや、自分とこの新聞だけが、特落ちなんて、大恥だ、と競争してきた、記者クラブの面々が呉越同舟! 
 しかも部長刑事と、記者が一緒に深夜の金融会社事務所を訪ね、支店長の死体を発見する。つまり、記者と警察も、完全一体化!
 もちろんドラマだから、冒頭のドザエモンと、支店長殺しは結びつくのだが、それ以上に、抜きつ抜かれつのライヴァル紙の各社が協力し、警察と記者も一体化! 記者クラブの馴れ合いも、きわまれり?
 もはや、事件記者と警察の垣根は崩れ、なあなあ状態。
 たしかに、ともに事件の真相を追う、という新聞記者も、警察の刑事も、似たようなことをしていたら、馴れ合っちゃうよなあ、と。でも、それは、新聞記者としては、明らかに、一線を越えた、というところだろう。警察批判なんて、ハナから、出来なくなってしまう。
 本作は日活「事件記者」シリーズ第10作目にして、最終話。マンネリになって、フォーマットは、自然に、崩れていく。なお、のちに松竹で「新・事件記者」シリーズも、始まるのだが。

 永井智雄はじめ、各社の面々、警察、事件の被害者たちと、相変わらず、地味な脇役俳優たちの、渋い演技は、相変わらずで、楽しい。特に部長刑事役の俳優は鈴木清順「ツィゴイネルワイゼン」藤田敏八の声に劇似で、その声を聞くたびに、何とはなしにうれしい。
 このシリーズ、NHKのドラマから出発しているのに、記者も、犯人も、山崎パンの新発売のレーズンパンや、強力ワカモトやら、風邪薬やらを、実名で推奨、愛用する。ドラマ内タイアップCM多数。馬鹿馬鹿しくて、受ける。民間は、なにやら、せわしないのお(笑)。
 人の不幸を舌なめずりで報道し、実名記載で、さらに事件を生み出す、その自覚に欠ける新聞記者たち、本当に無自覚なのが、今の視点で見て、もはや爆笑の領域ではある。ドラマ自体は、こじんまりとまとまった良作なのではあるが。
◎追記◎「映画流れ者」にて、Heroさんから、ご指摘いただきました。「新・事件記者」シリーズは、松竹ではなく、東宝系東京映画でした。監督が松竹の人なので、勘違いしました。訂正します。なお、ついでに言えば、ラピュタ阿佐ヶ谷では、3/25から、東京映画の大特集あり。未見作をひろって、見ようかな、と。

◎追記◎
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by mukashinoeiga | 2012-03-18 09:13 | 映画版「事件記者」シリーズ | Comments(0)

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